• ルポ 百田尚樹現象 ~愛国ポピュリズムの現在地~
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    人物ではなく現象に焦点

    自分がこれまで感じてきたことが、しっかり取材した上で言語化されているようで、読んでいてとても爽快感あり。私は百田氏の本は読んでいないし、嫌悪感しか持っていない。しかしそうではない人々が彼を支えている。その「向こう側」から見たポピュリズムの分析には説得力がある。これまで考えていた「常識」は、覆されたのではなく、優先順位が入れ替わっているのだ。事実よりも感動、事実よりも「誇り」あるいは「自己肯定感」。そうした人々の求めるものに応えてきた百田氏という人物、そしてその現象を正確に理解する手がかりがここにある。

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    2020年09月08日
  • 新装版 墜落現場 遺された人たち 御巣鷹山、日航機123便の真実
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    命の重みを受け止める

    「墜落遺体」のその後をたどるドキュメンタリータッチの作品。未曽有の航空機事故が社会や人間にどんな影響を与えたのかを知る上で貴重な記録である。事故から35年(!)が経った今日、事故の風化への懸念が示されているが、一概に事故の風化をとらえるべきではないと感じた。航空会社や警察・自衛隊、医療機関などではこの時の教訓や経験を生かした運用改善などもあるように思う。それにしても日本の8月はなんという偶然を生んだことか。6日、9日、12日、15日。命の重みを受け止め続けなければならない。

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    2020年08月28日
  • 新装版 墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便
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    必ず読まれるべき作品

    強烈な印象としてこの事故は私の記憶に刻まれている。中学1年生の夏休み。義父の故郷でテレビに釘付けになった。同年代の女子が生存していたことも、記憶のきっかけになった。本書で描かれるのはあの事故の「裏側」である。文字になっている事象は、正直想像できない。人間が形をそこまで変える事故とは…。そして臭い…。想像も実感もない。事故当時を知る私でさえ、そうなのだ。あるから30年以上経過した今日。何が伝えられ、残されるのか。必ず読まれるべき作品。

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    2020年08月27日
  • AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争
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    「色」と記憶の関係

    庭田さんのあとがきにあるエピソードを読み、「色」と記憶の抜き差しならない関係性を感じさせられる。当人が思ってもいなかったような記憶が「色」によって呼び覚まされる。思い込んできたことや、記憶からこぼれていたものが。科学技術の発展によって75年前の記憶が蘇ると同時に、その時を経験していない我々へ訴えかける情報に厚みをもたせることもたいへんに興味深い。動画のカラー化というのは以前からあったが、写真というさらに一般人の日常に近い媒体のカラー化は戦前と戦争の風化を抑制する大きな力になるのではないか。

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    2020年08月17日
  • 鉄路の果てに
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    旅がしたくなる

    韓国から中国東北部を経由し、シベリア鉄道で亡父の辿った鉄路を行く。シリアスでありつつ、微笑ましくもある道中記。形は変わり、時は流れても、そんな旅に出てみたくなる人間の性を感じる。それにしても私はあまりにも日露の歴史に疎い。勉強したい。

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    2020年08月16日
  • 絶滅危惧職、講談師を生きる(新潮文庫)
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    6代目

    聞き取る人がいて、客観的な証言も入る構成によって、神田伯山の生い立ちや二ツ目に至るまでの気持ちの動きや変化がよく分かるものになっている。彼の独白だけでは、ちと厳しかったようにも思う。とにかく演芸が好き、という気持ちは伝わる。講談業界の次の課題は、彼の次が出てくるのか、だろう。まだ本格的な危機は脱していないように思う。ちなみに昨夜久しぶりにラジオ「問わず語りの神田伯山」を聴いたが、相変わらずひどかった(いい意味で)。

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    2020年08月16日
  • ルポ 人は科学が苦手~アメリカ「科学不信」の現場から~
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    久しぶりに「唸った」

    と言っても本当に声に出して唸った訳ではないが「なるほど」と思うことが多く、実り多い一冊である。トランプ現象を始めとして、最近のBLMなど、アメリカという国と国民をどのように理解したらいいのかという問題意識にバッチリとハマる内容。「科学」VS「非科学」あるいは「知性」VS「反知性」のステレオタイプな理解では何も進まないことがよく分かる。これを実際の生活や仕事にどう落とし込むのか。それが今後の課題となる。課題が見えるというある意味最高の読書体験となった。

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    2020年08月16日
  • 給食の歴史
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    素晴らしい新書

    給食を軸に、日本の近代史を辿ることで、教育はもちろんのこと貧困問題や食糧政策など、日本社会の実相を明らかにする。そもそもの着眼点とその意図を明確に論じられている著者の力量に敬意を感じます。学べたことはたくさんありますが、子どもの発達と食との密接な関連を知ることができました。私も使っていた先割れスプーンが使われた経過なども分かります。

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    2020年08月08日
  • 沖縄から貧困がなくならない本当の理由
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    残念

    結論から言うと非常に残念な本。「本当の理由」が結局、本当の理由という論証なく著者の主観で貫かれているので、非常にモヤモヤ。ある側面からの沖縄県民の特徴は描けているとは思うが、それは一面的である。典型的な木を見て森を見ずである。そもそも主題が沖縄の経済問題を論じたいのか、社会論なのか、文化論なのかがよく分からず、厳しい評価にならざるを得ない。在籍する沖縄大学のHPに書かれた「モットー: いま、愛なら何をするだろうか?」を参考にされたい。

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    2020年07月29日