【感想・ネタバレ】ルポ 百田尚樹現象 ~愛国ポピュリズムの現在地~のレビュー

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Posted by ブクログ 2022年01月08日

本人とその周辺の人へのインタビューならびに来歴、作品を通して百田尚樹がなぜここまで支持されるのかに迫るだけでなく、中盤以降の「つくる会」の章で自分の知らない90年以降の右派論壇の概略も追えてめっちゃおもしろいし超参考になった。あとこれ読んでTwitterの「右でも左でもない普通の日本人」と書く人が少...続きを読むし見えてきて、要は中国と韓国に懐疑を抱く人、反中・反韓感情を持つ人が今の"普通(マジョリティ)の日本人"で、そしてそれは必ずしも与党支持や保守と結びつくわけでないってことが言語化できるレベルではおれはわかってなかった。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年01月13日

あやしい表紙ですが、内容はしっかりしていました。
百田尚樹を知ったのは、岩手県盛岡市のさわや書店が、当時ほとんど注目されていなかった『永遠のゼロ』という小説を約10,000冊も売ったというニュースだった。読んでみたものの、印象に残るような作品ではなかったため、その後も特に読むことはなかったのですが、...続きを読む時折、Twitterでの排外的、差別的な発言が話題になっていたりしていて気にはなっていました。
そんな中で手に取った本書は、百田本人も含め、問題になった『日本国紀』を出版した幻冬舎の見城徹にもインタビューを行うなど、著者が丁寧に取材を重ねており、”百田尚樹現象”なるものを通して見えてくる現代社会の姿がスッと腑に落ちた。
百田現象を説明するために「新しい教科書をつくる会」をかなり詳細に振り返っている点も、最初は「?」と思ったが、読み通してみると納得できるものだった。

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Posted by ブクログ 2020年10月06日

右派も左派も結局はどこかの火付け役から乗じる政治マーケティングに踊らされているんだなあとしみじみ。

百田尚樹に対するイメージをクロス分析させてみたら面白いんだろうな、と、この本読んで感じた。
にしても「百田尚樹現象」って秀逸な名前だなあ。「菅現象」これからあったりして。笑 
(もうパンケーキ事件で...続きを読むはじまってるかも!?)

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Posted by ブクログ 2023年04月16日

サブタイトルに愛国ポピュリズムの現在地とあった事から、左派的偏りが有るかと思ったが、百田尚樹=ネトウヨ的な短絡的な思考ではなく、ブームとも呼べる現状を本人へのインタビューを皮切りに、多くの人に取材し分析を重ねている。

2019年現在を第一章、そして保守層のうねりの原点となった1996年を第二章とし...続きを読むて構成している。第一章では本人、第二章では当時戦争論を著し脚光を浴びた小林よしのりさんに焦点を当て、そこから発展していった新しい教科書を作る会、それを作った当時の ムーブメントを検証分析している。

特徴的なのは左右問わず、直接インタビューを試みて、分析をしていることである。実地主義とでも言えるだろうか。しっかり地に足のついた分析がなされている。

(当時は顕在化していなかったが)(左派)メディアに抑圧された右派の反転攻勢という意味では、どちらの時代も同じなのかもしれない。ただ1996年に起きた現象は、いわゆる問題意識を持った人達の攻勢だったのに対し、現在の現象はもっと一般大衆を巻き込んだポピュリズム的な色が見える。これはその当時無かったSNSの発達にともない、マスコミの流す情報に疑問を持つ一定層がヨコヨコで繋がれたのも大きい要因だろう。

自ら情報発信できるようネット社会において、イデオロギーに囚われる事無く是々非々で臨む姿が、大衆に受け入れられたのだろう。良書である。

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Posted by ブクログ 2021年11月11日

どこまで理解できたのだろうか?という箇所もいくつもありつつ
終章を読んでいると突然これまでの内容がグワーッと脳内に流れ込んで来るような感覚になったことに驚く
と同時にこれまで読んだもの、聞いた事、見てきたもの、考えを巡らせた事たちへ向かって意識なのか記憶なのかが、まるで神龍に願いを叶えてもらった後の...続きを読むドラゴンボールのようにあちこちへ飛んでいき、それぞれが繋がる様子を傍観者のように見ているかのような
体験をした感がある、まったく不思議だった

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Posted by ブクログ 2021年05月16日

百田尚樹の発言の真意を、取材を元に分析していく。
わかりやすい論理であり。また中立的でもあり面白かった。
たまに、このような本を読むことは、考えるきっかけになる。

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Posted by ブクログ 2020年12月15日

Newsweek誌の特集からその補強的続編として読んだ。イデオロギーと情がキーワードであり、90年代のつくる会の活動との比較から現代の分断の空虚さを暴こうという試み。裏テーマとして「言葉の伝え方」に対する執筆者の思いを感じた。ネトウヨはパヨクを説得させることは出来ないし逆もまた然り。そして両者共に「...続きを読む普通の人々」を取り込むことが出来ない。そんな中で一際輝くのが無自覚なポピュリストたる百田尚樹という皮肉。ポピュリズムは右派も左派も正しい答えに辿り着くことはない。彼らが敵視するリベラルエリートもまた彼らを説き伏せることへ出来ない。個人的には「清貧な知性」のようなものに期待を抱くがそんなものは本当に存在するのだろうか…

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購入済み

人物ではなく現象に焦点

2020年09月08日

自分がこれまで感じてきたことが、しっかり取材した上で言語化されているようで、読んでいてとても爽快感あり。私は百田氏の本は読んでいないし、嫌悪感しか持っていない。しかしそうではない人々が彼を支えている。その「向こう側」から見たポピュリズムの分析には説得力がある。これまで考えていた「常識」は、覆されたの...続きを読むではなく、優先順位が入れ替わっているのだ。事実よりも感動、事実よりも「誇り」あるいは「自己肯定感」。そうした人々の求めるものに応えてきた百田氏という人物、そしてその現象を正確に理解する手がかりがここにある。

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Posted by ブクログ 2020年09月05日

つくる会を紐解くことで右派マーケットの広がりを分析しながら、探偵ナイトスクープのチーフ構成作家だった百田尚樹本人や彼を取り巻く人物へのインタビューによって、この時代の大衆と大衆が支持する百田尚樹という現象に迫っていく。

そもそも、百田尚樹もつくる会も大衆への思いを共有していた。「つくる会」側には教...続きを読む育界の圧倒的多数は朝日新聞・岩波書店の影響下にあり、自分たちは超がつくマイノリティーという自己認識があった。かつては左派が「攻」、文部省が「守」だったこの構図が96年に逆転していく。封じ込められていた大衆の思いを汲み取り、活動が大きくなっていく中で、数の上ではマジョリティーとなっても、マジョリティーとしての利益を得ていると実感できない人々が声を上げる非マイノリティポリティクスの状態となっていく。

つまり、それは大衆ファースト主義であり、ポピュリズムと言われるもので、社会が究極的に「汚れなき人民」vs「腐敗したエリート」という敵対する2つの同質的な陣営に分かれると考え、支配層が独占している支配構造を打ち破れという反権威主義、エリートを糾弾する現象となっていく。

ここにあるのは、事実は人の意見を変えられないということだ。ファクトではないと分かっているのに心が動かされる。ここに人間の本質がある。事実は弱く、事実を明示したところで真逆の信念を持つ人を説得できない。人は信じたいものを信じる。その大衆心理に寄り添うからこそ、イデオロギーは薄弱になっていく。

百田尚樹が重視したのはエビデンスやファクトより
感動だった。この時代の憤りの申し子となることで大衆を掴むのだ。そして、敵か味方かが第一に問われるようになる時、分断は加速していく。これは正にアメリカで起きていることとも言える。

百田尚樹を支持するファンは、安倍政権に好感をもつネット右翼とは異なる。保守を自認し、保守とリベラルの中間に位置して政権と距離を置きながらも、不満を溜め込んだオンライン排外主義者だ。

その中で、決定的につくる会と百田尚樹とで異なるのが、かつての右派的なイデオロギーが完全にに消失していることにある。見城徹と百田尚樹を強固に結びつけているのは右派的なイデオロギーの共有ではなく、ただ面白いものを大衆=マスに届けようとする意志、それだけである。放送作家のように、そして洋服を着脱するかのようにイデオロギーを着脱して小説を書く。百田尚樹現象は新しいポピュリストが担い手となり「現代」と共振した、全く新しい現象となった。

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Posted by ブクログ 2023年01月10日

前半ではタイトル通り百田尚樹の現象について、インタビューも交えて書かれる。これは良いのですが、後半では90年代のつくる会についての記述がほとんどで、この本を手に取る人はだいたい知ってるのではないかとも思いました。
とはいえ結論としては、つくる会の活動と百田尚樹は地続きのように見えて明らかな切断がある...続きを読む、という内容なので、現象の違いを浮き彫りにするためには必要な記述だったのだろうと思います。

つくる会自体も当時は冷ややかに見られがちでしたが、そこからさらに劣化したかのように思われている百田尚樹的なものが、どうしてそのような印象を持たれてしまうかについては、わかりやすくまとまっていると思います。

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Posted by ブクログ 2020年06月28日

雑誌の時(ニューズウィーク)の時の方が、短くまとまってて好きだったかな。
特に『百田尚樹現象』というタイトルで、まあそれを理解する必要はあるとはいえ、後半は丸々「新しい教科書を作る会」のルポとなっていて、結構ゲンナリとした。

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