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地球温暖化を疑問視したり進化論を拒絶する人が米国には多い。その理由は「科学リテラシーの欠如」ではなく、個人の価値観や信念にある。そのため、科学的な事実を事実として伝えるだけでは、人々を事実に至らしめる事はできない。ではどうすれば良いか。本書による答えは、相手を尊重し、共感を得るように伝えること。伝え方が大事だということだ。
本書は米国での多方面への取材を通じて、「反科学」が醸成される仕組みを分かりやすく説明する。その上で科学の伝え方についての新しい動きを紹介する。著者は新聞社の科学記者だけあり、説明が分かりやすい。本文に添えられた写真やイラスト、グラフも大いに参考になる。
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先進国アメリカには、進化論や気候変動を信じない人々がかなりいて、宗教や政治が結びつくことで科学的な根拠が蔑ろにされる状況に大変驚いた。米国に限らず科学の観点から正しくともそれが絶対にならない世の中である事を認識すべきなんだと思った。良書。
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人々の共感を得るには事実を並べて「こんなに証拠がありますよ」ということではなく、よりわかりやすく相手の立場に共感しつつ、伝えていく努力が必要ということが重要だと認識。事実(厳密には科学的事実)よりも共感力とコミュニケーション力のほうが重要ということ。
大半の日本人としての感覚では、科学的思考は正しくて、その結果として生まれた各種自然法則は、正しいと「信じて」いる。ところが本書でのキリスト教の信仰にかかわる問題(進化論の事例)や、経済的政治的信条にかかわる問題(=地球温暖化の事例)については、素直に自然科学の法則よりも、信仰にもとづく聖書における事実や政治的に経済的に自分に都合の良い都合の良い考えに従うということです。
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純粋に面白い。
データと現場の声が交互に提出されることで、数字にリアリティが持てるようになる。
アメリカの近代史を政治と宗教の関係から読み解く一冊。
日本にしか住んだことのない日本人からすると、文化人類学的な読み方も出来る。
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公共の交通機関が皆無のアメリカのド田舎に留学経験がある私としては正直、トランプ大統領が誕生した時は何の意外性も感じなかったんですよね。。。この本で書いている通り未だに進化論を信じてない人が多くいて、その様な人達が通わせる学校まで存在しているんですよ。留学していたのは20年位前なので、その当時と変わっている事も多い筈ですが、キリスト教をベースにした行動規範や思想は変わらないんでしょうね~。著者の主張する通り、科学に対するリテラシーを持ちつつ、意見の異なる人と平和的に議論出来れば良いですね。
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科学をどう伝えるか。
価値観、信仰、利害。
こうしたものを超え、普遍的であるべき、と筆者が考える科学を、どう伝えればよいか。
そうしたことを、考える本。
学べば学ぶほど、自らの仮説・直感を補強していき、頑なになる傾向があること。
論理は好悪の奴隷、という話。
演説に大切なものとして、論理、信頼、共感をアリストテレスはあげたことを紹介する。
それが、どうやら結論のようだった。
「反対している人たちは何を心配しているのか。
自分はただ事実を押し付けるだけになっていないか。
お互いの心を結び付ける何かを見つけ出せないか。」
「科学を巡るコミュニケーションでも、気持ちを大事にすることで誤解を解きほぐす道が開けるかもしれない。」という結び。
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事実を訴え続ければ、分かり合える。
そんな考えは甘いのかもしれない、と思わされました。
アメリカでは今でも進化論や地球温暖化を信じていない人がいるという入り口から、人々が反化学の思考に至るプロセスを、現地の人の取材を交えて解説した一冊です。
進化論や地球温暖化を信じない人たちとは、どのような人たちなのか。個人的には常識に疎い、学力の高くない人たちばかりなのではないか、と思っていたのですが、本の中で紹介されている人たちは、決してそういう人ばかりではない。新聞記者だった著者の質問にも丁寧に対応する様子が見られます。
また地球温暖化を否定する人の中で学力が高い人ほど、否定の傾向が強くなるというデータも示されます。
これは学力が高い人ほど、自ら情報を得ようとするのですが、その際自分の思いに近いものを選択する傾向が強くなるため。昨今ではSNSの発達で、自分好みの情報しか入ってこないという傾向はますます強まり、その分自分の中の考えはより強く固定化されていきます。そして自分の信条と異なる情報は頑なに受け入れなくなっていく。
そして現在、自分たちは様々な情報に踊らされています。「新型コロナウイルスはただの風邪と変わらない」「コロナワクチンを打つと、妊娠ができなくなる」
コロナ脅威論と非脅威論、ワクチン派と反ワクチン派、二つの断絶は決して近づくことはない。そうした断絶は化学の分野にとどまらず、歴史認識や政治的信条でも見られます。
この断絶を超えるには、ただ上から事実を訴えるだけでは足りないというのが著者の意見。事実を分かりやすく、誠実に伝えるのは当たり前。相手と同じ視点に立ち、たとえ意見が異なろうとも、相手がなぜ異なる信条を持つに至ったか理解し共感し、その上で事実を粘り強く唱えることが必要だとしています。
今のあらゆる断絶を超えるヒントになる一冊だったと思うのですが、一方で断絶を超えることの難しさを改めて思った一冊でもありました。
久しぶりに「唸った」
と言っても本当に声に出して唸った訳ではないが「なるほど」と思うことが多く、実り多い一冊である。トランプ現象を始めとして、最近のBLMなど、アメリカという国と国民をどのように理解したらいいのかという問題意識にバッチリとハマる内容。「科学」VS「非科学」あるいは「知性」VS「反知性」のステレオタイプな理解では何も進まないことがよく分かる。これを実際の生活や仕事にどう落とし込むのか。それが今後の課題となる。課題が見えるというある意味最高の読書体験となった。
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近年、よく問題として取り上げられるようになった、合理性と信条の対決。人々の信条の背景にあるのは何か。それを解消するためにどのような取り組みが行われているか。がテーマ。最終章における、演劇的手法による取り組みが興味深かった。
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アメリカには反進化論の人が多いとかいうのはよく聞くが、その状況がよくわかる。それよりも「科学知識が増えるほど意見が両極端に分かれる」という調査結果が衝撃的。科学的な考え方をどのように促進したらいいのか考えさせられる。
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トランプ政権後のアメリカで起きていることの報告として、とても興味深く読んだ。
支持政党によって銃規制に関する計算で違いが出てしまうというのが、個人的に衝撃だった。
リスクコミュニケーションの世界に片足を突っ込んでいるものとして、正しいことだけを伝えても駄目なときは駄目と認識しているが、一方で本の最後の章で、どうすれば伝えていけるかに触れており自分も意識していきたいと感じた。