あらすじ
新聞社の科学記者として科学を伝える仕事をしてきた著者は、2015年、科学の新たな地平を切り開いてきたアメリカで、特派員として心躍る科学取材を始めた。だが、そこで実感したのは、意外なほどに広がる「科学への不信」だった。全米各地での取材で、地球温暖化への根強い疑問や、信仰に基づく進化論への反発の声があちこちで聞かれた。その背景に何があるのか。先進各国に共通する「科学と社会を巡る不協和音」という課題を描く。
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Posted by ブクログ
これは…面白いしなかなか興味深い本。ドーキンスの「神は妄想である」を読んだ後だったので、より深くアメリカの理解が深まった。
科学を信じてない人は、ただ知識がないということではなく、「その人の思い」から生じているという。人は、自分の信じたいものを信じるし、周囲の環境によって情報も偏る。よく知らない科学者が言うことより、信頼する親の言うことを信じる人だっている。これって日本でも同じことが言えると思う。
なので知識を増やせば科学的な考え方に至るわけではない、ではどうするのか?というのが本書の内容なのだが、最終的な解決策に至るまで、現代アメリカの政治や宗教事情が露わになる。
例えば地球温暖化については支持政党によってデタラメだと信じている人もいるし、宗教への信仰心が強く科学への不信を募らせる人もいる。
とりわけ私が問題だと思ったのは、進化論を支持する人は20%ほどしかいないということ。そして根強い創造論への支持から、教育現場でも創造論を教えるようと働きかけている人たちがいることだ。子供の頃に「創造論が正しい」と学び、大人になって進化論を支持する人はほぼいないだろう。これは子供が進化論に興味を抱くことを阻害し、学問の発展に大きな影響を与えるのではないかと思う。
対岸の火事のように思えるが、日本も他人事ではいられないと思う。昨今、いわゆる陰謀論と呼ばれる非科学的な思考を目にする機会が増えた。子供の健康や教育の機会を奪いかねない。そして親から子へ思想が受け継がれていくと、科学に不信感を持つ人間が増え、国力が落ちていくのでは、と考えてしまう。
本書では、科学を理解してもらうにはコミュニケーションが必要だと語る。なぜ科学に不信があるのか?何が心配・不安なのか?事実を押し付けるのではなく、相手を理解する必要がある。