芦沢央のレビュー一覧
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芦沢央さん、今までとちょっと違った作風な気がしました。
この小説を読んで、まず思ったのが「才能の大きさ」についてです。
狭い世界では才能がある立場にいても、才能が厳選された集団の中で、その才能が必ずしも開花するとは限らないんですよね。
現実的には、道半ばで諦める人の方が多そうです。
将棋の小説はいくつか読んできましたが、読むたびに、とにかく厳しい世界だと感じます。
しかも、かなり若いうちからその道一本の人生を歩まなければ、上には行けない世界。
若くして職業を一本に絞らなくてはならないリスクは、もはや博打そのものです。
この小説に登場するメインキャラクターは、“芝”と“大島”の二人です。
芝は、将棋の世界で生き残りをかけ続けている人間。
一方の大島は、将棋を諦め、東大へ進み、弁護士という別の道を選んだ人間です。
正直、芝の考えていることはよくわからない。笑
でも、勝てないことの苦しさは分かる気がしました。
ライバルの謙吾がのし上がっていく中で、自分は連敗。
負けるたびに、自分の進退についても考えてしまう。
才能があるから棋士になれた。
でも、その才能がどれほど大きいものなのかは分からない。
実際に闘い続けてみないと、自分の才能の大きさなんて分からないんですよね。
才能はある。
けれど、その才能は小さい。
それを自覚して、棋士への道を諦めたのが大島です。
将棋の世界しか知らない。
将棋のことしか知らない。
そんな若者が奨励会を辞める覚悟とは、想像もつきません。
将棋の世界では、もしかしたら弱者なのかもしれない。
けれど、そんな大島を賢いと思ってしまうのは私だけでしょうか。
人生のやり直しがきくタイミングで、大事なものを諦め、別の道に勝負をかける。
大なり小なり、そうやって折り合いを付けながら生きている人がほとんどだと思うのです。
つくづく思います。
こういう崖っぷちに立たされた人間の物語と、何かを諦めた人間の物語は、最高に面白い、と。 -
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ネタバレ塾講師が殺害された事件を巡って、警察、犯人を匿う女、そして小学生の桜介と当たり屋をさせられている波留。これらの人たち目線で物語が紡がれていき、それらが最後に交わり真実が明らかになっていく。
夜の道標というタイトルの秀逸さが沁みる物語だった。道標というと目的地までの方向や距離を示すもので、夜には暗くて遠くが見えないため助けになるものとなる。
しかし、それが人生に置き換えられたとき、それでも良い意味に捉えられると思うけど、この物語では悪い方向、なにもわからない暗闇を歩いているからこそ、従わざるを得ない道しるべとなってしまっていた。犯人の阿久津や波留、また阿久津の親、殺害された塾講師も良いと信じて行ってきたことが、悪い結果を招いてしまっていた。現実でも後から振り返ればこういうこともできただろうということはたくさんあるけど、そのときにある情報を元に判断してしまった結果失敗するということはよくあるよなーと思う。 -
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4人の作者による短編集。
なかでも。
金子玲介「ゼリーに満たされて」
メチャクチャ面白かった!!
星新一のショート作品を彷彿とさせる!
超高度知的生命体の異星人と何をやってもダメな主人公の康太。2人の出会いと日々の生活が織りなすストーリー。
異星人のゼリ郎は自信をなくす康太対し、「康太は努力する事ができる。感謝する事ができる。それは何より素晴らしい!」
このセリフ単純だが、凄く好き。
作者の作品をみたら、「死んだ山田と教室」作者だったのね。作風好きかも!!
斜線堂有紀「人魚の骨を拾い往く」
ホラーとミステリーがバランスよくて良かった!
デビットフィンチャーの映画のような感じ!
人魚はいるのか?いないのか?
法月綸太郎「次はあんたの番だよ」
小田扉の似たタイトルの作品かなぁと思ったら、
正統派ミステリーだった。気分じゃなくて乗れなかった。。。。
芦沢央「ひび割れ」
超絶ブラックな会社の話。
どうしても、池井戸先生の情景で浮かんでしまう。
まさに自業自得?パワハラ上司の結末はこんなもの。 -
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ネタバレ作品の舞台の街が、私の故郷の近くだ。なんだかそれが面白かった。
波瑠が虐待を受けている、というのが一番ショックだった。
無邪気とも見える桜介。波瑠を心配しているクラスメイト。
本当は、手を差し伸べれば、波瑠に助けの手を差し伸べる人たちはたくさんいるのだ。
でも、渦中の人間にはそれが分からない。
波瑠だけではない。渦中の人間って、分からないもんなんだ。
閑話休題。
障害を持つ子供、障害と言っても重度なわけではない。それでも本人たちにしてみたら大きなことで。
俺は〇〇ができないから、人の気持ちを想像することができないから、空気を読むことができない。
そんな人たちは、かなりの人数がいると思われる。かつてわたしの周りにもいたのだ。
優生保護法。暗い時代を思い起こさせる法律の名前。
塾の先生の戸川だって、それはそれは子供たちのことを思い、そのために行動していた。なのに、その時代の国の方針に沿う形での発言が、不幸を招くことになってしまったのだ。
ガッツリとそれぞれの登場人物達を描ききってある作品だと思った。 -
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ミステリー小説との触れ込みで読み始めた
カリスマ監督率いるダンスカンパニーが舞台となる。
主役に選ばれた藤谷誠が新作の公演直前で姿を消してしまう。
殺される被害者が終盤までこの人だと予測していた
が、すっかりミスリードされた!
藤谷誠と恋愛関係になった女性たち、藤谷誠の代役に選ばれたダンサー等の視点で物語が進んでいくに
連れて関係者の過去や性格が見えてくる。
芦沢央は、短編の名手だと思っていたが長編作もしっかりとした構成や緊迫感のある描写で読み応えがあった。
ダンスの知識がなくても十分にダンサーの世界がどれほど過酷な競争社会かなのかが伝わってきた。 -
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四編の短編集。どれもモヤモヤする系で読み心地はよろしくないので、この作家陣のファンとか、新しい作家探したい人とか、イヤミス系嫌いじゃない人にお勧めです。とりあえずどれも面白かったです。
「ゼリーに満たされて」金子玲介
頭に声が鳴り響き、網で助けたウサギっぽい何かは超高度知的生命体。まわりとうちとけられない、ケーキ屋の息子、小5の森康太は徐々にそいつと仲良くなっていく。そいつはゼリーが好きらしくて毎日康太の作ったゼリーを食べていた。
金子玲介さん、本当に会話文が面白いですね。最後の1行以外は結構明るい感じで楽しく読みました。
「人魚の骨を拾いに往く」斜線堂有紀
子どもも少ない離島に残る人魚の伝説を調べに来た桂木鶫(つぐ姉)に夢中になった5年の伊瀬瑞貴。しかし、子どもたちは糜爛洞という人魚伝説のある洞窟に迷い込み、助けに行ったつぐ姉は行方不明、捜索隊も1人死亡。何故か子どもは全員助かったのだが、その結果に納得いかない瑞貴が大人になって取った行動は…。
「次はあんたの番だよ」法月綸太郎
この探偵シリーズを読んでいなかったけど、込み入ったロジックが面白かったです。えーっと、こういうこと?って、読み終わって考え込みましたけどね。ランニングが趣味の男が公開してない近くで殺された女性の顔をした死体を見たという。しかし、その死体はなく、いや、あれは夢でみたのだと。どっちにしても不可解な供述で…。
「ひび割れ」芦沢央
カリスマ社長のいるリフォーム会社に就職した刈谷は圧に耐えながら仕事や目標発表をしていたが、ある日高所から落ちた。気づくと一緒に作業していた指導する後輩の大槻は自分を助ける気配などなくて…。
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ネタバレ初めて読む芦沢央さんの作品。もっと早く知っておきたかった作者。
『イヤミス』×『どんでん返し』
紗英と奈津子という二人の視点で交互に物語が進むのですが、それぞれの視点で描かれた後に、謎のインタビュー記事のようなものが挟まれます。特にインタビューを受けている人間も、この2人とは少し距離のある人物で前半は進むのです。この中で、2人が何がしの事件にかかわっていくこともわかるけれど、その全貌は明らかになるどころか、むしろモヤモヤとした違和感ばかりが募っていきます。
ただ、途中でその違和感が一気に解消され、そこからは、巡るページが止まらず、読後は解説を読み、そこからはエピローグに戻って違和感を一つずつ取り戻していく。ここまでがこの本の楽しみ方。
改めて思うのは、叙述トリックを得意とする作家の凄さ。もし自分が作家なら、映像化を見据えた作品づくりをしてしまいそうですが、叙述トリックは十角館の殺人や向日葵の咲かない夏のように、映像化が難しいジャンルでもある。だからこそ、文字でしか成立しない仕掛けで読者を楽しませるという覚悟と技術が際立つ。本でしか味わえない体験を、真正面から提示している点に強い魅力を感じた。
また、イヤミスというジャンルに触れるたびに「作者は性格が悪いのでは」と思ってしまいそうになるけれど、決してそうではないのだと思う。むしろ、人間というものを知りすぎている。善意や悪意、正しさや歪みといった感情のグラデーションを正確に捉え、それを決して美化しない。その冷静さがあるからこそ、読者の心に強く刺さる。
読むときの心の状態は少し選ぶけれど、それでも多くの人に届く力を持った作品だと感じました。 -
Posted by ブクログ
普段家族が将棋をABEMAやNHKで見ているので、多少の馴染みはある。
棋士の頭の中は本当に未知の世界。芝の章は文章にも癖があって読みにくいけど、これが自分には理解できない棋士の頭の中なのかなぁと思いながら読んだ。
AIの導入で、棋士がミスするのを楽しむエンタメになった…… 的な文(うろ覚え)を読んだ時、終盤で大逆転する盤面は確かにおもしろくはあるなぁ…… と棋士の気持ちも考えずに思っていた。将棋を楽しむにハードルを下げてくれたAIは偉大だけど、弊害もあるのかもしれない。
大島の章の、芝との差を感じてしまうところや、奨励会の厳しさ、辞めることへの葛藤が苦しくて、フィクションだけど、かなり取材をしているようなので、こういう悩める棋士がいるのだろうな、と、これまでとは違う視点で将棋を見るようになった。
評価があまり高くないけど、自分は楽しめた。