芦沢央のレビュー一覧
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金子玲介さんの短編が収録されているので、手に取ったが、斜線堂有紀さん、芦沢央さんと豪華なラインナップで驚いた。(法月綸太郎さんも有名だと思うが、あまり知らない。)
「最後の一行」として最もインパクトがあったのは、金子玲介さんの短編だった。
ふわふわのうさぎのような物体と少年との交流を通し、全体的に暖かな空気が流れているように感じた。物体は健気にもしばらくは自分の星に帰らず、少年が大人になるまで見守ると言ってくれるのだが、段々と弱り果てていく。
ああ、これ死んじゃうんだろうなと思うが、最後の一行で衝撃的な事実が明らかになる。
少年はものすごく後悔したと思うが、私はこの終わり方は嫌いじゃない。
物体の、打算とか、媚びとかが一切ない少年への気持ちが愛しく思えた。
芦沢さんの救いのない短編も楽しめた。まさにバッドエンド。でもこれはしょうがないと思う。
この主人公がこうなってしまったのも報いだとしか思えない。
主人公が勤めている会社が精神的にブラック過ぎて、終始、嫌な空気が漂っていた。トップに気にいられるためなら、自分も後輩も犠牲にする主人公のやり方には全く賛成できない。溜飲が下がるとまでは言わないが、ラストは、まあそうなるよねと思ってしまった。 -
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自分の子供が自殺したと思った父親が、子供が何故自殺したのかを調べる話。
学校でのやり取りの場面はなんだか息が詰まる展開で、大人になれば「ひとりでいること」に対してのハードルは下がるが、思春期特有のそれを恥ずかしいと思う気持ちが分かるようで、煩わしかった。
何かで見たが、日本と違って海外ではいじめをした人を病院に入れるらしい。
人をいじめるなんて、病気だ。ということで、日本だと加害者よりも被害者を守ることが多いが、実際病院なんだろうと思う。
打算で狡猾で自分を魅せるのが上手い子は、大人が思うよりも多くいるし、そういう子を早く見つけ出す方法が何かしらないのかなと思った。 -
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ネタバレ「女の友情」を集めた短編集。
ドロドロした不穏な始まりから、終盤にかけて謎が解けていき、おそらくハッピーエンドと呼ばれる結末なんだと思う。
ただ私は、一般的なハッピーエンドで感じる爽やかな「良かった!」という感じよりも、砂を噛んだような嫌なザラザラ感が残ったんだよな。
それは面白くなかったということではなく、あまりにも描写がリアルで自分の心の中にある嫉妬とか、疑念とかが炙り出されるからなんだと思う。
芦沢央さんの作品は初めて読んだけど、このリアルな描写を他の本でも感じてみたくなった
私は1番最後の『正しくない言葉』が1番好きでした。
それぞれのお話に緩い繋がりがあるから、それを探すのも楽しかった。 -
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作品紹介・あらすじ
こんなことになるなんて!
1行目は全員一緒、25編の「大騒ぎ」。
早起きした朝、昼の休憩、眠れない夜ーー。
ここではないどこか、今ではないいつかへ、あなたを連れ出す7分半の物語。
『黒猫を飼い始めた』『嘘をついたのは、初めてだった』『これが最後の仕事になる』に続く、会員制読書倶楽部:Mephisto Readers Club(MRC)で配信(公開)された大人気ショートショート集第四弾。
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25編からなるショートショート集。
Mephisto Readers Club(MRC)が贈る大好評シリーズ第4弾とのこと。既に第3弾と第6弾は読み終えた。
最初の一文は必ず「だから捨ててと言ったのに」で始めなければならない、という括りがある。
他のシリーズと同様に玉石混交。ただ他のシリーズよりも本書の方が面白い作者が多かった。ただ、飛び抜けて面白いというわけではなかった。
以下が面白かった作者。
須藤古都離
黒澤いづみ
岡崎隼人
砥上裕將
清志まれ
舞城王太郎
高田崇史
背筋
多崎 礼
谷絹茉優
夕木春央
最果タヒ
このうち清志まれはいきものがかりの水野良樹のペンネーム。谷絹茉優はChevonというバンドのヴォーカリスト。ミュージシャンが二人参加している。
上記の中では砥上裕將と夕木春央が特に良かった。歳を取ると、こうした小さな感動話に思わずウルっとしてしまう。そして最果タヒの文章。詩人だからなのかもしれないけれど、とても心に響いてきた。 -
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女子高校生・加奈の転落死をきっかけに、加奈本人、友人の咲と真帆、父親の聡、そして聡の同僚・早苗の視点が交差していく群像劇。
高校のベランダから転落して亡くなった娘は、“自殺だったのか、それともいじめがあったのか。”心理学者でありながら、自分の感情をうまく扱えない父・聡が、その答えを探し始めるところから物語は動き出す。
特に印象に残ったのは、女子高生の人間関係の描写。
「友達が人生のすべて」「クラス内のヒエラルキー」といった、女子特有の息苦しさが嫌なほどリアルに伝わってくる。咲の傲慢さや支配的な態度、そしてその女子高生カーストの中で悩みながら、咲の言いなりになってしまう真帆の心情がとても丁寧に描かれていて、いちいち妙に納得させられた。女子という存在の複雑さを、うまく言葉にしている。
一方で、アスペルガー症候群の早苗は、もっと物語の中で重要な役割を果たすのかと思っていたが、思ったほど活躍はなく、少し物足りなさを感じた。また、聡の復讐に関する描写も、もう少し踏み込んでほしかったというのが正直な感想。
それでも、人の弱さや歪み、関係性の残酷さが静かに積み重なっていく物語で、読み終えたあとには重く、じんわりとした余韻が残る。 -
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パワハラ上司の悪事を暴きたい二人の話から始まる全8章(序章、終章含め)。この二人が悪事を暴く為に色々と動く間に二人の間にも変化が訪れる。そんな二人の掛け合いも面白い。短編集のようにも読める、だけどある章に出てきた登場人物が次の章では彼らのドラマが始まり、自身の生活の中でもスーパーでレジ待ちの後ろにいる人や、道ですれ違う名前も知らない人々にもそれぞれにドラマがあり、悩んだり時には笑ったりして生きてるんだなぁと実感する。最近続けて芦沢先生の作品を読み、これまではイヤミス強めだったのが今回はちょっとほろっとするお話もあって最後まで楽しかった。
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ネタバレ5つの物語からなる短編集
どれも将棋がテーマでありながら一つ一つ違うストーリー
どれも奥が深く、短編集にするのがもったいないくらい
1話め 弱い者
大震災後の避難所が舞台
被災者を元気づけるための復興支援で将棋を指していた北山八段は、おぼつかない手つきながら時折鋭い手を指してくる少年に惹きつけられる。ところが強いはずの少年が詰めを誤り悪手を打つ。それも二度も。
試合後の表彰式で少年へ「奨励会に入らないか」と提案する北山。さらに「内弟子にならないか」とも。
そこではじめて少年だと思っていたその子が、実は女の子であったことを知る…
避難所で起きていた犯罪。見知らぬ人が夜中に布団に入ってきていた事実。あまりの恐怖に、自ら髪を切り「男の子」になり切って自分の身を守るしかなかった彼女。
悪手を放っていたのは、試合を終わらせないため(彼女につきまとうボランティアが帰るのを待つため)だったことが判明する。
大震災の後の復興には莫大なお金と時間がかかる。地震直後には命が助かった喜びしかないが、長期化するにつれて様々な問題が出てくる。
無いに等しいプライバシー、避難所に持ち込む荷物の差、女性なら月のものも来るし、いびきで寝られないこともある。赤ん坊なら泣かずにいられないし、ミルクやオムツも足らなくなる。持病の薬が足らなくなる人、コンタクトレンズがなくなって目が見えない人… 何日もお風呂に入れず、トイレは汚物で溢れかえり衛生状態は日に日に悪くなる。そんな中で起こる犯罪… これは本当に起こり得る話で、実際起きていた話も聞いたことがある。女性だから男性だから、では済まない話。物語は帰りの空港に向かっていた北山が、迎えの車を断るつもりで口を開くシーンで終わる。その後どうなったのか、は読者に委ねられる。避難所に戻って少女と話をし、内弟子にしたのだろうか。この続きを読みたかった。
2話め 神の悪手
奨励会の三段リーグ。満26歳の誕生日を含むリーグ終了までにプロになれなければ退会を余儀なくされる。その最終日の前日に、啓一の部屋を訪ねてきた村尾は、まさに最後のリーグであり、現在第二位タイ。村尾は、明日の最終戦で啓一が戦う、現在トップの宮内への攻略戦を教え、宮内に勝ってくれと頼む。明日の最終日に啓一が戦うのは、トップの宮内と村尾の2人。
啓一が宮内に勝ち、村尾に負ければ、村尾はリーグ優勝となりプロになれるのだ。
あまりの理不尽な話に、部屋を後にしようとする啓一だったが、村尾に引き止められた腕を振り解いたとき、村尾は大事なトロフィーが宙に舞うのを受け止めようとバランスを崩して転倒し動かなくなってしまう。怖くなってそのまま部屋を立ち去ってしまった啓一。翌日、リーグ開始時間になっても現れない村尾。そして村尾が教えた手の通りに進める啓一。棋譜の通り寸分違わず進んでいく対局。この対局をアリバイに変えるアイデアが浮かび、すがるように棋譜通りに打つ啓一。神が味方している、と思うほどに…
人間の「自分だけが助かれば」という浅はかな願いに、読んでいて胸が締め付けられるような気がした。そして最後。村尾の作った棋譜ではなく、自分の読んだ手を打つ啓一。果たして勝負はどうなったのか…
村尾はどうなったのかも含めて、結末を想像して悶絶する自分がいた。
5話目の恩返しは、将棋の駒を作る駒師の話。タイトル棋将戦で戦うのは、国芳棋将と弟子の生田。使う駒を選ぶ前検分で、兼春の作った駒と師匠の駒が出され、ここでも師弟戦に。一度は兼春の駒が選ばれながら、「もう一度選びたい」と言われ最終的に選ばれたのは師匠の駒であった。一度選ばれ歓喜しながら、最終的に落とされた兼春は、駒を作ることができなくなってしまう。駒師の話は、前に読んだ「盤上の向日葵」でも出てきたが、将棋の駒を作る駒師の凄さがよくわかる話であった。
他の2編も複雑でよくできた話で、全部が良かった。本当に全て長編で読んでみたい作品だった。