平野啓一郎のレビュー一覧
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オスカー・ワイルド作、平野啓一郎訳
ワイルドはアイルランド人なのに、原作はフランス語とのこと。
筋書きは知っていたつもりだけど、元々持っていたイメージとはだいぶ異なる印象。とてもわがままな王女が無茶苦茶をする話であることは同じなのだが、少女の超ツンデレぶりが逆に清々しいくらいだ。サロメが、ヨカナーン(ヨハネ)の白い肌、黒い髪、赤い唇を順に褒めたり貶したりする様は、滑稽でもあり、切なくもあり、ストーカーが死を以て相手を独占しようとする様とも重なる。どうしてもキスしたいから首を斬る、と言う発想はぶっ飛んでいるが、紀元前からずっと語り継がれてきたお話である以上は、ある程度は普遍性のある感情なのだろう。
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Posted by ブクログ
ネタバレ感想
非常に内面的に切り込んだ作品。言い回しや文学的な表現が多いため、分からない部分もあるが、この作品を通して色々考えさせられることは間違いない。最後に何かどんでん返しがあるかと思ったが、救いようのないまま終わった。
残された家族の苦しみなど色々考えてしまう。被害者家族も加害者家族も生きていくのが辛い。
サイコパスはどうしても発生してしまうので一概に社会や家族のせいのするのは違うような気がする。
マスコミの過剰な煽りや一部の騒ぎ立てる人に社会が合わせていくと社会が成り立たなくなるし、みんなウンザリする。昨今の社会はそのような気配を多分に感じる。
あらすじ
バラバラ事件以降、模倣犯による犯行が相次ぎ、世の中は混乱を極める。そんな中、警察は兄の崇が怪しいとして逮捕勾留するが、自供を引き出せない。
そうこうする間に北崎が、同級生の女の子を殺害したとして、警察に自首し、京都での良介の殺害への関与も仄めかす。崇は勾留期間が過ぎたことで釈放となる。
事件は、お台場での中継中に再び起こる。北崎と共犯と思われる男が生放送中に自爆テロを起こして多大な被害をもたらす。
主犯は篠崎と北崎だったが、兄の崇への疑いは晴れない。父親が鬱で自殺し、母親も精神を壊していた。最後は兄の崇までも精神を病み、電車に飛び込んで自殺する。 -
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ネタバレ感想
内面的に複雑な心情描写が多いので、登場人物の心情を容易に理解するのは難しいな。
兄の崇の話が文学的過ぎて難しい。自分なんかもっと単純に物事を考えて生きてるって思ってしまう。
上巻の最後になってようやく事件。殺人事件ものの小説で誰かが殺されるまでたどり着くのにここまで長かった小説は記憶にない。兄怪しすぎる。
あらすじ
良介は、母の兄弟が亡くなったことを機に家族3人で実家に帰る。兄も久しぶりの帰省となった。母親が兄に昔から不気味な怖さをかんじていたことを聞く。また、父親がずっと伏せっていることから、兄は鬱病ではないかと懸念を持ち、病院に行くことを進める。
北崎友哉は中学生。いじめられて仕返しをしたことで学校で問題になる。好きな女の子がバスケ部の先輩といかがわしいことをしていたことをネット上に晒す。自分がその女の子を助けようとするも拒否され、苛立ちを募らせる。自分のことを虐げるものを殺したいとネット上の日記で吐露し、ある人からそれを実現する方法があるとコンタクトされる。
良介の妻の佳枝は旦那がネット日記で本音を挙げていることを悩んでいた。自分に直接相談して欲しいと思っており、兄の崇に相談していた。良介が大阪に出張に行くにあたって兄と会い、そのことについて話すと思っていた。大阪出張時に良介と連絡が取れなくなる。
京都でバラバラ死体が発見された。人体の部位は全国で見つかり、話題を呼ぶ事件となった。殺されたのは良介であることが判明した。 -
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重いわ。
すごい筆力だけど、なにしろ重い読後感。
「決壊」というワードは、ダムを連想させる。
思えば、崇のダムははじめから満水だった。
それでも、なんとか騙し騙し、運用上の工夫で決壊せずに踏ん張ってきた。
そこへ、既に決壊してしまった者の濁流が、周囲のダムの決壊を誘発し、流量を増した急流となって流れ込んできた。
崇のダムはそれでも持ち堪えた。そして、流域の住民を避難させ、安全を確認した後、決壊した。ダムはもう、カラだ。
僕らはダムを決壊させてはならないルールの中で社会性を保っている。そのルールに縛られているからこそ、決壊への、破壊への欲望が頭をかすめることがある。それにどう立ち向かうか。
「国民の知る権利」「説明責任」というマジックワードを無思慮に振りかざして知性の代わりに暴力を手にしたマスメディアの挙動。
何かといえば「抜本的な改革」と言って歴史を無視した思考の浅い政策を繰り返す政府。
およそ大人の振る舞いとは思えない挙動を通じて、子供たちはどのような知的成熟を得られるというのか。
悪魔の語る言葉と、崇たちエリート同士の会話は、どちらも読者にとって意味不明で支離滅裂に映る。京大出身の作者は、頭脳の優劣や精神疾患の有無によって、語られる言葉の是非に差はないと言っているように思う。
では、何を信じれば良いのか。
その迷いを決壊させてはいけない。
安易な答えに飛び付かず、迷い続ける覚悟を持て。
それをかつて、先達は「節度」と呼んだのではないか。 -
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ネタバレ⚫︎受け取ったメッセージ
膨大な選択肢から選び取る自由。
一つの分人が失敗したとしても、
別の分人たちが支えてくれる。
そして自分は死ぬ瞬間まで変化し続ける。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
人間がテクノロジーに管理される、暗い未来を乗りこえる――
ベストセラー『マチネの終わりに』著者が挑む、人間×自由の可能性とは。
人工知能、自動運転、ドローン、ビッグデータとレコメンド機能……
技術の進化によって、私たちの生活からは「自分で選択する機会」が失われつつある。
人間の自由意志はどこへ向かうのか?
予測不可能な未来と、その過渡期を乗りこえるための、新しい自由論。
田川欣哉氏(Takram代表)、大屋雄裕氏(慶應義塾大学法学部教授)、
上田泰己氏(東京大学大学院医学系研究科教授)――
現代の「自由」をめぐる三人の専門家との対談を収録。
⚫︎感想
多様性という言葉は昨今頻繁に使われる言葉となったが、それを自分個人に当てはめるのが平野啓一郎氏の提唱する分人主義である。
その分人たちが様々な選択をし、失敗したとしても他の分人が支えれば良いという前向きな考え方は素敵だと思う。そして、死ぬ瞬間まで変わり続けるのだというメッセージは、死ぬまで生きる希望にもなる。 -
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第一弾の「本の読み方」では、スローリーディングについて語られていたが、第二弾のこちらは、小説の仕組みについて語られていた。小説を書く人、書いたことのある人が読むと、新しい視点や面白い試みなどが得られると思う。
前作の方は高校生にもおすすめしたいが、こちらは高校生では少し難しいかもしれない。それだけ小説が複雑で深みのあるものなのだと感じた。
・四つの質問
1.メカニズム(小説の仕組みはどうなっているか)
2.発達(その作家の人生のいつごろの作品か)
3.進化(社会・文学の歴史的にどんな意味を持つか)
4.機能(作者意図と読者の意味づけ、小説の振る舞いはどうか)
・主語になる登場人物と、最終的な着地点としての大きな述語
といった、第一部の大きな枠組みの説明に始まり、第二部では作品を取り上げての解説となる。
難しくはあるが、読んでいてなるほど、と思わされることが多くてためになった。国語の授業などでいかせたら面白いと思う。 -
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露出プレイから生じた事件のルポルタージュに見せかけた、純文学。テーマがテーマのため性的な描写が散見される。好き嫌い別れるだろうから人には薦めづらいな。
ただのありふれた事件のルポルタージュかと思っていたら、実生活を『本当』と捉え、ネット上の記号に適応した姿を『嘘』と捉える女と、性欲の発露こそ『本当』で、澄ました顔で取り繕う社会生活こそ『嘘』と捉えた男。その場限りの行為の上では利害が一致していたのに、関係が続き今後を考えていく上で互いの世界の捉え方の違いが破滅に繋がっていくという、作者の考えが伺える、評論じみた小説だった。私はこの意図に終盤まで気付けなかった…。
この方ルポも書くんだな、なんて思っていたら、やはり平野啓一郎。一貫したテーマで描かれていた。
ただ、本当に好き嫌い別れると思う…