序盤や終盤の展開をみるとたしかに「恋愛小説」なのだが、はたして筆者は「運命的な惹かれ方をしあった二人の恋愛模様」を描きたかったのか?というと、違う気がしている。
というより、「描きたいことをいろいろ詰め込んでみました!」感をどうしても感じてしまい、そしてその「描きたい一つ一つの題材」がそれこそ「ひとつの作品の核」になりうる重いものばかりであるからこそ、中途半端な描かれ方となり、かえって一つ一つの要素が薄く感じられる。もっというと軽んじられている、という印象になっていると個人的には感じた。ひとつひとつの要素がうまく絡んでいないというか。
複雑というより、「ちぐはぐ」。
また、物語としての大きな「転」である二人のすれ違いについては、正直言って稚拙さが目立つ展開だと思った。まさかのアンジャッシュ。
いい大人同士、直接話せばすぐ解ける誤解であるだろうに、ドラマ性をもたせたいからか、直接二人が話せなかった理由として「イラクでの自爆テロに巻き込まれた経験によるPTSD」や「恩師の危篤」を利用するところに、かなり嫌悪感と不誠実さを感じた。
冗長だと感じるシーンもあれば、「え、ここの展開こんなにあっさり?」と思うところもあり、読んでいてのカタルシスがうすい。
特に、二人がすれ違う原因を作った戦犯★早苗の罪の告白・真実の露呈シーンは読者が読みたいところだと思うのだが、思ったよりあっさりしてる上に蒔野も強く責めないのですっきりしない。
かといって早苗の好感度があがるような(肩を持ちたくなるような)シーンもほぼ書かれていないので、(ってか蒔野が早苗をすきになっていく描写すらない。ポジション的には早苗悪くないはずなのに、さすがに脇役すぎる。ちょっと不憫)
蒔野が真実を知ったあとでも「早苗と別れない選択」をする・早苗との「家族としての親密さ」に説得力がない。子供もいれば「別れろ!」とは簡単に言えないのはそうだし、献身的に支えてきてくれたというのはそうなんだけど。
けっきょく早苗は罪悪感に苛まれるくらいで最後までお咎めほぼなしなのもなんだかなぁ。
いろいろ文句を書いてはいるが、洋子と父のシーンだったり、洋子・蒔野・ジャリーラの3人で過ごしたパリの夜のシーンはよかったなと思う。
映画はもしかしたら尺の問題的に、いろいろとカットせざるを得ないであろうから逆にすっきりしてみやすくなってるかも、と思った。観てないけど観てみようかな?