平野啓一郎のレビュー一覧
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分人という考え方によって、人が様々な相手や組織において振る舞う自分自身というものの違いを、すべての分人が自分自身であり、嫌いな分人でなく、好きな分人で生きれる相手や場所が愛であるとしている。これまで作者の本で、「ある男」や「マチネの終わりに」も、根底にこの哲学的感覚が根付いているのだなと。
この考え方に影響を与えたであろう作者や作品にボードレールの詩や森鴎外の小説、三島由紀夫、谷崎潤一郎等が挙げられており、谷崎潤一郎の「痴人の愛」は昔、実家にあったから読んだなぁと思い出しつつ、これは簡単にいうと性欲(特殊な)とし、数年後にかかれた「蓼食う虫」「卍」では変化を遂げているとされていたので機会があったら読んでみたい。その前に、この本では書ききれないからと省かれた論に関して谷崎潤一郎の「恋愛及び色情」が短く非常に面白いエッセイとして推されていたので、こちらをまず手に取ろうかな。
ダスティン ホフマンの卒業の映画のラストシーンを
恋が終わり愛が始まる2人はどうなるかという、どことなく不安げなシーンで終わると解説しているあたりも、これまでのモヤモヤに気づきを与えてくれた
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ネタバレ大好きな平野さんの新書です。
大分前に読み終えていたのだけど、ちょっと私には難しくてレビューの下書きだけしてほってました。
読んだ事の無い本の例がたくさん出ていて、そのあたりの理解が出来なかったのだけれど・・・
文学は直接的な実用性というよりは、異なる価値観を理解する助けだったり、他者への想像力を育む力だったり、社会的共感や自分の力で考えること、自分の考えを深めることなどが出来るようになったり、歴史的背景を学べたりもするものだと、私は受け取りました。
そもそも「役に立つか」という問いは現代っぽいけど文学には合わないですね。。
その他の章は、亡くなられた大江健三郎さんや瀬戸内寂聴さんなどへの追悼やエッセイでした。
悲しみが伝わり、特に寂聴さんへの追悼は胸を打たれました。 -
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仮想人形である母を通して過去と向き合いながら、現実世界で新たな出会いと成長をしていく。
出てくる人物は皆何かを抱えていて、むしろ主人公は「何もない誰か」のように私は思えた。一見どこか感情が欠落しているような言葉遣いだけど、思考の中を覗くと優しさや正義感もある…。
自分を殺して人の言う通りに動くリアルアバターという職業が彼をそうさせたのか…はたまた逆か…。
母の存在が大きかった主人公は、母の死後、新たな出来事や交友関係の中で自分の中の「本心」が育っていくような物語だった。
だけど、個人的には…もうひと展開あっても良かった…と思ってしまい⭐︎3です。 -
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ネタバレ映画では窪田正孝と安藤サクラの話だなと感じていたが、原作は妻夫木聡の話だった。
「ある男」は窪田正孝のことだと思っていたが、小説を読むと妻夫木聡=城戸の話でもあり、ダブルミーニング的なタイトルなんだなと感じた。
映画の最後の最後のクライマックスが小説だと序盤できたのが驚いた。あと映画だと城戸が在日三世であることはフレーバー的なものに感じていたが、小説はむしろ在日三世であることがかなり主軸におかれている話だった。
また、美涼が映画だと谷口の元カノくらいのポジションだったが、小説だとがっつり主要人物として扱われていて驚いた。美涼と城戸の間にほのかに生まれていた感情がよかった。
愛は人と人のどこにあるのか……という問いについて考えさせられる話だった。 -
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ネタバレロマンチックなラブロマンスもの。
とある出来事ですれ違いが生じてしまう2人…だが離れてしまっても、時が経っても、お互いのことを想っている…。
という感じの、照れくさくなるようなお話だ。
しかし!
とにかく2人が出会わないこと!
もどかし過ぎるだろ…と本当に思う。
だが、後半まで読み進めるまでは、本を開く度に毎回眠気との戦いだった。
…ということでハッキリ言うと、私はこの本を睡眠導入を目的に読んでいた(こういう本があるのは、眠りが悪い今の自分にとってありがたかったが…!)。
しかし、序盤、中盤まで読み進めても「こんなにも眠くて内容が入ってこないのは自分の体調が悪いせいか…?」ということも思った。
しかし、ちょっと原因がわかったかもしれない。
この本、人物の心理描写が大半を占めており、一見それらがとても丁寧に描かれているのに対し、風景の描写がほぼ皆無なのだ。
とにかく場所や場面のイメージが膨らみにくい。
せっかく海外が舞台だったりするのにもったいない…著者は物語の舞台には興味ないのかな…?と思った。
でも、後半の展開は気になって結構読み進められたから良かった。 -
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朔也という個人の話でありながら、社会と命の話を捉えていたことがすごいと思った。
小さな出来事に対する、登場人物間の感情表現が素晴らしかった。また一人一人の受け取り方の違いや、性格などが細かに表現されていると思った。
三好とイフィーと出会ってから、朔也に感じる違和感は物語の進み方を大きく変える要素だと思う。格差社会の渦に呑まれる者とそうでない者としての考え方の違いなどがはっきりと顕になっていく感覚があった。イフィーがクリスマスのお礼に送金してきた一件に対して、朔也と三好が感じた違和感や疑心、そしてその疑心を本人に伝えた三好とそうではない朔也というちょっとしたずれなどがよく表現されていた。
作家の藤原の手紙や発する言葉が面白かった。作者ももちろん作家でありながら、作中に登場する人物に作家らしい話し方、育ちのいい話し方、庶民的な話し方、など話し方に緩急をつけており、作者自身の思慮深さが窺えた。
考えさせられるような素晴らしい作品だった。 -
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人が1人死んだあとは、その空白を皆が埋めようとする。
突然、目が覚めた。否、生き返った。
目が覚め、帰宅したはずだったが、妻からは「あなたは3年前に死んだはず」と告げられた。
そしてその死因は「自殺」。そんなはずはない。自分は幸せだ。死ぬような人間じゃないはずなんだ。
この小説を読んで救われる人は絶対にいるはず。
自分の内側に内側にどんどん入っていくと何があるのだろう。
自分というものはいつも多面的で、いろいろな顔があることは自分自身にも分かります。
そして、人間の心の中のさらに奥深くに、なんとなく自分を信じられない自分がいる感じは分かります。
自殺なんかするはずはない、なんて思っていても、本当にそうなのだろうかと疑ってしまう本当にひとかけらの自分。
あの自分は何なんだろう、と思って、その答えが見えてくるような、何かが掴めそうな感覚が、この本にはあります。
自分が自分として生きていくための哲学と勇気をもらえます。
最後の場面が眩しく、本を閉じてまたタイトルに深く感嘆させられます。
(上下巻同じ感想です) -
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人が1人死んだあとは、その空白を皆が埋めようとする。
突然、目が覚めた。否、生き返った。
目が覚め、帰宅したはずだったが、妻からは「あなたは3年前に死んだはず」と告げられた。
そしてその死因は「自殺」。そんなはずはない。自分は幸せだ。死ぬような人間じゃないはずなんだ。
この小説を読んで救われる人は絶対にいるはず。
自分の内側に内側にどんどん入っていくと何があるのだろう。
自分というものはいつも多面的で、いろいろな顔があることは自分自身にも分かります。
そして、人間の心の中のさらに奥深くに、なんとなく自分を信じられない自分がいる感じは分かります。
自殺なんかするはずはない、なんて思っていても、本当にそうなのだろうかと疑ってしまう本当にひとかけらの自分。
あの自分は何なんだろう、と思って、その答えが見えてくるような、何かが掴めそうな感覚が、この本にはあります。
最後の場面が眩しく、本を閉じてまたタイトルに深く感嘆させられます。
(上下巻同じ感想です) -
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平野啓一郎の他の作品よりは、読みやすくはあったかと思うも、恋愛小説感を感じさせないというのが、個人的な感想か。
恐らくはギタリストとジャーナリストという職業の組み合わせにあまり馴染みがなく、また国を股に掛けるということに打ち解けられなかったか。
出会いというのが、必然で急激なところは認めるも、それとは逆に、これほどにまで錯綜した行き違いについては、主人公のもどかしさとともに物語性にも着いて回ってきているように思った。
しかしながらその物語性よりも、今から10年前であっても、イラク戦争や、PTSD、またスカイプなど普通に使用しており、インターネットと人と社会のつながりを考えさせられるところもあり、果ては東日本大地震をも組み込み、なんとも挑戦的なところを意識していたのかも知れない。
また「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」ということを著者は、もっとも伝えたかったのではなかろうか。
如何に伝えたいところに持っていくか、どういう言葉で紡ぐかが、醍醐味であろう。
終盤でのクラシック作品の演奏を表現するその文章力には、曲自体に包容されるかのようでまさに見事といえよう。 -
Posted by ブクログ
著者の思想がところどころ垣間見えました。個人は自己責任によってその人のアイデンティティが確立されるわけではなくて、周囲の環境に強く影響される(=反自己責任論)。だから小林謙吉の極悪犯罪にも世論と一緒になって非難できなかったのかなと。また反自己責任論の立場から見るからこそ、自己責任論背景の基に、社会から批判される自分の存在を憂いていて、他人の人生を生きることに強い憧れを抱いていたのではと思った。戸籍を交換してまで他人の人生を生きたいという願望は、並大抵の人が経験する苦悩レベルでは生まれないからこそ、このなんとも言えない読後感なんだと感じた。
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Posted by ブクログ
ネタバレ読後即映画も鑑賞。
私的に読むのに時間がかかった割には読後感がイマイチだった。作品が悪いのではなく、今の自分にはピタリとハマらなかっただけだと思う。映画も同様の感想。
とはいえ、読んでてロシア文学に似たような文体?というか流れを感じたり、ただの小説ではなかった。(私の中のただの小説→ストーリー映像が頭に流れてくるから感情移入しやすいし読みやすいので気楽に読める)
城戸の内面がすごく深くて初めましての作家だったけども、在日の方なのかな?と思うくらい。
最初の設定を忘れてたので読み終わって序章に戻るとまたスッキリする。
メモ
映画で伝えたい事と小説で伝えたいことってそれぞれ違うのかしら。
ホンモノの谷口の出番が映画は全然無かったり、恋愛要素もがっつりなかったり、夫婦問題もあっさりだったり、、でも最後の奥さんの浮気疑惑ははっきり映像化されてたり、、結構奥深いのかも。