平野啓一郎のレビュー一覧
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『ウェブ進化論』(ちくま新書)の著者である梅田夫望と、『日蝕』『葬送』(ともに新潮文庫)などで知られる小説家の平野啓一郎が、ウェブ世界の可能性とそれにともなう人間観の変化について語った本です。
両者とも、インターネットのもつインパクトの大きさを認めながらも、人間の理解については異なった意見をもっており、そのことは「おわりに」で梅田が次のような的確な表現で述べています。「私はむしろ「社会変化とは否応もなく巨大であるゆえ、変化は不可避との前提で、個はいかにサバイバルすべきか」を最優先に考える。……「社会の変容」への対応という視点から「個の変容」をとらえようとする傾向が強い。しかし平野さんは「人間一人ひとりのディテールをミクロに見つめること」によって「個の変容」を考え、その集積として「社会の変容」を考えようとする」。
とくに、実名でネット社会をわたり、そこでの反響をビジネスにつなげていくたくましい「個」と、匿名でネット上にことばをつむいでいくことでみずからのアイデンティティのオルタナティヴな可能性を発見する「個」のあり方がテーマになった第2章が、読み応えがあるように感じました。
対談本ではありますが、インターネットの急速な発展による「人間」の変化が本質的なレヴェルで論じられており、おもしろく読むことができました。 -
Posted by ブクログ
「考える葦」
「透明な迷宮」「マチネの終わりに」「ある男」執筆時に、作家は何を考えてきたのか。
文学、思想、美術、音楽、エンタテインメントから社会問題まで広範なテーマに亘る六十七篇の論考を集成した批評・エッセイ集。
第1章:私達自身のような「夭折の天才」(ドナルド・キーン「石川啄木」)から始まる本書は、とにかく読む疲れるものであった。広範なテーマだけであれば良いものの、中身が難解。文章の視点や書き振りは文学的であったり哲学的であったり、思想的であったりする。
単に知識があればすらすら読めるってなもんでもない。読むのが大変。さらりと読めた所すら、果たしてこの解釈であっているのだろうかと不安になる。教養を試されている気がして、胃がチクチクチクチク...。とにかく体力がいる。小説の方がずっと読みやすいなと思った。
「私たちは、今日、巨大な世界との対峙を余儀なくされている。なるほど、個々には葦の一本に過ぎまいが、 しかし、決して孤立した葦ではない。古今東西に亘って、たくましく繁茂し続けている一群の葦であり、 宇宙を包み込むのは、その有機的に結び合った思考である。
決して孤立した葦ではない。確かにそうだ。 -
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人類初の火星の有人探査船ドーン。迫るアメリカ大統領選挙の行方と陰謀に巻き込まれていくクルーの運命は。火星探査は正直おまけであり、メインは大統領選挙。SF要素はほぼない。
話としては正直詰め込みすぎで、宇宙の話必要なかったのでは?という気もする。しかし、背表紙解説にも書かれているが、「分人(ディビジュアル)」という概念については、かなりふに落ちるものがあった。作られたキャラクターではないが、相手や環境によって変わる自分をそれぞれのディブとして捉える考え方は、自分を統合しなければならないという考え方から自由になれる素晴らしい捉え方だと思った。対人関係と一くくりに考えてきたが、誰との関係が問題であるのかという分析的思考を持つのに役立ちそう。 -
Posted by ブクログ
著者のデビュー作である『日蝕』と、第二作『一月物語』を収録しています。
『日蝕』は、ルネサンス期のリヨンを舞台に、トマス主義者である一人の青年僧が、ヘルメス主義にもとづいて錬金術をおこなっているという老人のもとを訪ね、奇怪な出来事を体験する話。『一月物語』は、明治30年の奈良県十津川村を訪れた青年が、夢とも現実ともわからないなかで美女と出会い、その謎めいた魅力に惹かれていく話。
両作品ともに、晦渋な文体とシンプルなストーリー・ラインがアンバランスさを感じさせます。デビュー直後には「三島由紀夫の再来」という煽り文句と、何人かの批評家たちの辛辣な評価に取り巻かれていました。なかには「暴走族の落書き」といったようなことばもあったように記憶しています。
ただ、その後の著者の作品を知ることのできる現在から振り返ってみると、このころから著者は一貫して、小説でなしうることはいったいなにかという問題に持続的に取り組んでいることがわかります。そうしたものとして見れば、本書も一つの試みとして興味深く読めるように思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ様々な技法で小説、文章というか、本というメディアを
分解、再構成している、そんな短編集。
老いのために少しずつ体が崩れる世界の青年。
ただ、その小説のページ下部には短いエッセイが
挿絵の代わりについている作品。
一文だけの作品。
親子の人生をインタビュー形式で作り上げる作品 等々
だが、この短編で最もコアなのは主人公が自殺する小説を
書こうとしている小説家の作品だろう。
おそらくは著者自身(平野)が投影された「大野」が
主人公だが、その「大野」が、さらに自分の小説の
主人公をみつめるため、実に不思議な感覚に陥る。
さらにテーマは死である。
死とは何か。小説にとっての。自分にとっての。
小説とは何か。「大野」にとっての。実際の著者にとっての。
多次元に見つめ表現しようとする。
色々と興味深いが、面白いかと言えば、人それぞれだろう -
ネタバレ 購入済み
感想
正直スッキリしない終わり方でした。
ご想像におまかせします的なのはよくある手法ですが、この作品で?と
思ってしまいました。
登場人物達の精神状態が不安定すぎて、私のように想像力が貧困な人間には
「その後」を想像するのは難しいです。
でも2人の「愛」については、とても共感しました。
あんなに深く人を愛し愛されたい!片思い中の身には羨ましい限りです(笑)
作品に流れる空気感はとても好みです。
一定した静かさと、ロウソクの明かりの中にいる感じがしました。
「実話を元に」とのこともあり、リアルな人間性も感じました。
読後スッキリしなかったのが残念です。