平野啓一郎のレビュー一覧
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ネタバレ普段恋愛小説はあまり読まないが、なんとなく題名に惹かれて手に取った。この本は心が揺さぶられる大人の切ない物語だった。
蒔野と洋子が会う予定だった日、二人はほんの小さなすれ違いが重なって、更に早苗が洋子に送った別れを告げる偽メールによって一緒に歩むはずの二人の道が分たれてしまった。
この時、蒔野も洋子も精神的にダメージを負っていたために、相手のことを想い、また自分が傷つかない方向に進んでいったのだと思う。
早苗は大変なことをした、との自覚がありながらも自分の行為を自分の中で正当化していく。
早苗には全く共感はできないが、自分の間違いをなんとか正当化しようとする心理は多少は理解できる。
蒔野と洋子 -
Posted by ブクログ
ネタバレ映画鑑賞時も馬に蹴られろ!と心底思っていたのだが、原作を読んだことでより詳細に深く彼女の心情や思想がわかった今でも、やはりわたしは三谷早苗という人物が嫌いだ。
仕組んだ事そのものより、2人が許すしかなくなる要因を得た後に全て自白しているあたり、本当にタチが悪い(意図していないなら余計に)。せめて墓場まで持っていく気概は見せてくれよと思ってしまう。
それはそうとして、「過去の意味合いは変えられる」という主題をニューヨークでの再会をもってして表現し締め括るストーリー構成がとても良いし、平野さんが綴る物語には心揺さぶられるなぁと改めて感じた。
映画サウンドトラックは作中でキーとなっているクラシックギ -
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1. 「過去は変えられる」という発想について
作中の核心的なテーマである「未来が過去を変える」ということへの共感。
人それぞれに様々な過去があるけれど、その「過ぎ去った過去を、今とこれからの未来によって『良いもの』へと変えていくために努力すること」、その営み自体が人生そのものなのではないか、という気づき。
2. 「誰かの人生の脇役」として生きることの不可能性
作中では、牧野を輝かせるために「脇役としての人生」を生きようとした早苗の姿勢が称賛され、一見それが美しく、格好いい生き方であるかのように描かれていた。読んでいる最中はその風潮に流されそうにもなった。
しかし、深く考えてみると、そ -
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自分の核なんてものは無くて、
分人の集合体に過ぎないとすると、
核がだめなら何をやってもだめだ、とはならず
いくつかある分人の一つが、良くない状況を
作っていただけなんだと思える。
これからいくらでも修正できるんだと。
いじめや虐待の過去があっても、
分人の考え方があれば
「自分は嫌われやすい人間だから‥」とか、
「この人は暴力を振るわないだろうか‥」と
思わずにいられる。
自分も過去の経験から、自分なんてと思うことが
あるけど、現在の分人の比率は
当時のそれとは変わっているんだと知れば
少しは安心できるかもしれない。
数年にわたる変化に限らず、一日単位でみても
会社にいる自分、家にいる -
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ネタバレ名作、、、平野さんの本はどれも示唆に富んでいて考えさせられるけど、中でも一番好きかも。
どの瞬間か分からないけどどこかで消失してしまうと分かってからの日常の輝きたるや、、最後の湖のほとりのピクニックは本当に何気ない一瞬なのに儚くて美しくてぼろぼろと泣いてしまった。公園の「イカ」も、何気ないけど楽しい日常の1シーンとして良い象徴だった。
千佳の「秘密」のこともすっかり忘れていたけど、一緒に実家に帰って徹生が千佳のことを「善い人」だと説いたシーンもとても印象的で泣いてしまった。このあとも一緒に生きていけたらいいのにね、残された千佳がまた実家に帰れる未来はあんまり想像できなかったな。分人主義の考え方 -
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ネタバレ身近な人を亡くした人なら誰でも、生き返ってくれたらどれだけよいか、また会えたら話せたらどれだけいいか、何度も空想すると思う。復生者という概念は完全なるファンタジーなのに、それを通じて、人の死の儚さにとことん現実的に向き合っている不思議さ。平野さんの哲学的でじっくりと思考している小説が本当に好きだ。
実際に復生者が現れてしまったら、大切な人を亡くしたひとはその人が帰って来る日を待ち望んでしまって、それこそ現実世界に戻れないんじゃないだろうか。
↓かなり冒頭の文章だけど、本当に死の儚さを綺麗に切り取った表現。
「生きている人間は、日々活動して新しい。変化し、豊富になる。昨日とは違うことを感じて -
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「本当の自分」という、実体のない不可侵の塊を探すのをやめさせてくれる本だった。一貫したたった一つの「個人(インディビジュアル)」として生きるのではなく、対する相手や環境ごとに生まれる複数の「分人(ディビジュアル)」のネットワークとして自分を捉える。この視点は、真面目に生きようとするほど息苦しさを感じる現代において、非常に実用的な思考ツールになる。
●「一貫性」の呪縛からの解放
世間では「裏表のない人」が美徳とされるが、本書は相手によって態度やキャラクターが変わることを「不誠実な嘘」とは呼ばない。親といる自分、職場の自分、趣味の仲間といる自分。そのどれもが「本物の自分」であるという肯定は、 -
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上下巻の構成とは知らずに上巻だけ買って一気読みしてしまい、待ちきれず途中駅でわざわざ下車して下巻を買った。本当に面白かった〜〜
一つ一つの描写で、自分が日々当たり前に見ている景色、考えていることがよりクリアに的確に表現されていく感じ、読んでいて気持ちいいなと思う。
分人主義についての本を読んだことがあったので考え方自体は元々知ってはいたけど、自殺についての見方は新しくて、且つ納得感があった。
あと、直前に原田マハの『たゆたえども沈まず』を読んだおかげで、ゴッホの肖像画のくだりがより一層深みを増したように思う。
佐伯は結局何者だったんだろう。
平野啓一郎の本、好き!