あらすじ
文学は、私たちの人生や社会に対して、どんな意味があるのだろうか。──
人間の生を真摯に見つめ、現代の問題群に挑み続ける小説家が、文学の力を根源から問う。大江健三郎、瀬戸内寂聴ら、先人たちの文業にも触れながら、芸術や社会へと多岐にわたる自らの思考の軌跡をたどり、読者を新たな視座へと誘う。
『ある男』『本心』『富士山』を執筆しながら、平野啓一郎は何を考えていたのか。創作と時代を映すエッセイ・批評集成。
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ぶっちゃけ、難しかった。ふわっと読めるような本ではなかった。わかりやすい、でも結局色々理解はしたけど、それといった結果には辿り着けなかった。ふわぁっとした概念(?)が生まれた(?)
面白かった…。
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平野啓一郎さんがこれまで講演で話されたことや、文芸誌などに寄稿された文学・文豪・文学作品への批評やエッセイなどを収録したものとなっています。その冒頭に収録されている或る研究集会の基調講演のテーマが「文学は何の役に立つのか?」ということで、これがそのままこの本のタイトルになっています。
このタイトルを少し噛み砕くと、「文学は、私たちの人生や社会に対して、どんな価値があるのだろうか」ということになるのかと思いますが、この本を読んで私なりに思ったのは、以下のことでした。
文学は、①社会の不条理に気づかせ考えさせてくれること、②人間関係の機微を巧みな表現で心を動かされること、③現実社会からの解放すなわち現実逃避することで心を癒してくれること、④新しい価値観を知って多様性のある生き方やコミュニケーションを学ぶこと、
このように、文学(小説)の中の人物を通じて、読者の認識や感情に変化を起こさせる、あるいは経験させてくれる、ということです。
そういう意味では、文学は、世の中を真っ当に生きていくために役に立っている、お金を払って読むだけの十分な価値がある、と言えるのだと私は思います。
また、私が文学に求めるものという観点からの思いですが、世の中にはたくさんの文学作品があって、中には摩訶不思議な世界へ引きずり込んでいくようなものもありますが、それぞれに作者の想いが込められているので、その中には、きっと自分の悩みや苦しみの理解者になってくれたり、自分の想いとシンクロして強く共感できる作品があるはずです。そんな文学作品に出会えることを楽しみに、これからも読書を続けていきたいと思いました。
巻末には、生前親交のあったドナルド・キーン、瀬戸内寂聴、大江健三郎の葬儀で読まれた弔辞が特別収録されており、そこには大先輩作家への敬愛の念を強く感じました。
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学校の教科書に載せてほしい!と思うほどの内容。
子どもの頃は読書を娯楽として純粋に楽しんでいた。大人になって日々に忙殺され、今また読書をする時間を持つようになったが、読んでいて、この時間に意味はあるんだろうか、単なる趣味ではあるのだけれど…とモヤモヤした事が何度ももある。その感覚を、うまく解消してくれた。
難しくて理解に時間のかかる批評もあったが、総じて素晴らしい1冊。これは手元に置いて、時々じっくりゆっくりと読みたい。
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書き下ろしでなく、寄稿したものを集めたものだが、書名の答えを多くの方は感じられると思う。本書の内容そのものが、文学から得られること、考えること、書くことなどが凝縮されているし、改めて著者の凄さを実感できた。
登場人物の描写を詳細にすると、読者も同じように感じるので、読み疲れしないようにコントロールしているとの内容が、個人的に大きな気づきだった。
そんなに文学作品は読まないが、読んで良かったと思う。
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創作活動と並行して積み重ねた講演、批評、随筆をまとめたもの。
文学は、声にならない違和感、説明できない痛み、うまく言えない孤独。そういうものを、
無理に整理せず、そのまま差し出す。
平野啓一郎氏が
読んでると、どんな文学に影響を受け、どんな作家を座標軸にしているのかがわかる。
流行や話題性ではなく、
人間の内面・倫理・孤独・分断・時間を
粘り強く掘り下げてきた作家たち。
だからこの本は、
文学論であると同時に、
平野啓一郎という作家の精神史みたいにも読める。
文学は役に立つか、ではなく
自分はどんな文学を必要としてきたか。
と言う感じ?
関係ないけど、
最近「瀬戸内寂聴」というワードが出てくる・・・多作だからまようけど読んでみようかな
Posted by ブクログ
文学・芸術に関して、著者が寄稿したエッセイや批評、講演録、弔辞などをまとめたものである。ドナルド・キーンや大江健三郎、瀬戸内寂聴といった錚々たる顔ぶれとの交遊も伺い知れる。
著者の小説はまだ読んだことがなく、文章を読むのは初めてだったが、硬質に見えて、意外と読みやすい。
評論を書こうとすると、対象をよくよく観察し、客観性をもって言語化する技術が必要になる。多様な視点を持たなければ、独りよがりな説得力に乏しい論文になる。
つまり文学とは、人間を多面的に考察していく営みであり、これは古来から、おそらく未来永劫なくなることはない。
「文系不要論」が言われて久しいし、文系の中でもとくに人文学の肩身がせまい現状で、それでもあえて言いたい。
文学ほど、役に立つものはない(かもしれない)。
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表題の講演録について。
「役に立つか」と「価値があるか」は違う。「役に立たなくても価値がある」と言い続けることが大事。
…とのことだが、これは文学に限らず、必需品以外のモノ・コト全てに当てはまる。
「役にたつ」と「価値がある」は違う、よく考えれば当たり前とも言えるが、日常の中では同一視していると思える出来事、言葉、人も思い当たる。役にたつこと至上主義、みたいな。
もちろん、価値がある、ということの判断軸は多様であるべきで正解はない。人によって、また同じ人でも時々によって違うだろう。
なので、読みながら自分の思考は次第に文学の話から離れて、色んなところに乱れ飛んでしまった。
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本書の表題となった講演録を含む、主に文学・芸術論について語られたエッセイ・批評集成。
文学は何の「役に立つ」のか?
著者は、「〇〇は何の「役に立つ」の?という問い自体に不思議さがあることを指摘し、役に立つかどうかは幾つかある価値のうちの一つでしかない」とした上で論を進めています。ズバリ最初に語られたその回答は、「だから自分は本を読んでいるのだろうか」と、自分の読書習慣を肯定されたような気持ちになりました(あまり文学は読んでませんが)。
自分はいつから役に立つかどうかだけで物事を判断するようになったのだろう、と過去を振り返ってみた。そして、自分もその価値観だけで他人の行動や判断に対して制限を加えたり、口出ししたりしていたなと少し反省。
本書で「社会の歯車として「役に立つ」ことと、身近な誰かにとって自分が「役に立つ」ことがどこかで結びついているのではないか、というのが近代だった。」とあり、吉本隆明の共同幻想論に通ずるものを感じた。
映画オッペンハイマーについての批評はノーラン作品好きとしても非常に読み応えがあった。
日本に原爆が落とされた、その経緯のおかしさについて私は知らなかったので、衝撃を受けた。
映画オッペンハイマーは未視聴なのでこれを機に鑑賞したい、というか、しなければ。
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文章を添削する立場になって手に取った本。
思ってたんと違う、って思ったのに、思った以上に面白くて全部読んでしまった。
瀬戸内寂聴とドストエフスキーついて知りたくなった。
役に立つことと価値がある事は違う。
人間は役に立つかどうかは関係無く、存在そのものに価値がある。憲法で謳っている。
主人公への共感から多くを得る。
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いろんな雑誌に著者が書いたエッセイを中心にまとめた本。わかりやすい。
平野氏はなんとなく敬遠していた作家だった。デビュー作の『日蝕』を読んだのもほんの数年前。ところがやはり同じころ、私は死刑について考えたくなっていて、たまたま書店で平野氏の『死刑について』を見つけ買って読んでみたところ、見事にはまった。文章の運び、思考の流れが滑らかで素直に頷けた。
ちょうど同じころに東京新聞で「本心」の連載が始まり、毎日欠かさず読んだ。読ませる面白さがあった。
そんなこんなで作家平野啓一郎の書くものが好きになった。
そしてこの本。文学をどう捉えるか考える上で私にとってよい導き手になった。
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秀作。
読む度に作者の見識の高さを感じさせられる。
戦争についての内容が多い。作者は戦争を体験した世代でないのを踏まえながら。
森鷗外の良さは分からない。三島由紀夫は凄い作家だと思う。
分人は面白い発想。人は場面毎に色々な顔を持つが全てその人なのだと。なるほどと思わされた。それでいいんだと。
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【文学は何の役に立つのか?】 平野 啓一郎 著
いつも疑問に思うことがタイトルになっていたので読んでみました。本書は、著者の講演などをまとめたもので、表題については冒頭の35ページとなっています。著者も「答えるのに苦慮する問い」とのことですが、「一つの理由」を見つけたとあります。ネタバレはまずいと思いますが、この理由やその後の論考などは同意するところ大でした。
平野氏の著作は好きでほとんど読んでいますが、本書のほかの論考を読むと、自分と幼少期の経験が似ていることがわかりました。また、文章もきらきらと美しいのですが、三島由紀夫に留まらず、ハイデガー、大江健三郎など多数の文学・芸術に接していることもわかり、本書は一つの芸術評論という建付けにもなっています。
平野氏の『あなたが政治について語る時』も8月に出版され、並行して読みましたが、時事問題についても強い関心を持っていることがわかり、平野ワールドに浸った猛暑日でした。
Posted by ブクログ
「文学は何の役に立つのか?」
考えた事あります?
言われた事あります?
私はちょっと違うけど、「そんなに本読んでるのなら、少しは頭良くなった?」
的なことを言われた経験があります。
その時も今もどう答えるべきか分からず、本書を手に取りました。
いや〜平野さん、文体が難しい!苦笑
言い回しというか、表現が文学的で私にはあまり理解できないところが多々!ありました。
って事は、本をやたらめったら読んでも理解力はつかないのかな…。
ま、ところどころすっ飛ばして読みましたが、すごく共感したところもありました。
それはね、「文学が個人を介する意義」というところに書かれてました。
人間は、他人と語り合う時に、自分の固有名詞と共に悩みを語り合うのはけっこう難しいんです。
例えば「不倫についてどう思いますか?」ということを議論する場合、やっぱり「不倫は良くないと思います」と言うしかない。けれど、『アンナ・カレーニナ』という本を読んで不倫についてどう思うか議論をすると、「不倫をする気持ちもわかります」と言えるわけです。
他人を経由することによって、僕たちは、自分では引き受け切れないけれど本当は感じとっているものを言葉にすることができる。
文学には、読んでいる時の他者への共感と、読み終わった後、読み終わった人同士が文学を介することによってより自由に、或いはより寛大に共感し合うという効果があります。
ね?
まさにここで私達がやってることよね♡
文学を読んでいれば話題に事欠かない。とも。
ちょっと何言ってるか分からないところもいっぱいあったけど(笑)文学は私の役に立っていることは、分かった!(⌒▽⌒)
この方も京都大学出身なのよねー。
成瀬→森見→平野。
平野文学も、是非!
Posted by ブクログ
評価が低いのは自分が理解できないところがたくさんあったからで、決してこれがつまらないというわけではありません。
ドフトエフスキーなんてカラマーゾフ上巻で挫折したし、絵画に至ってはほとんど分かりませんでした。
平野さんがあらゆる芸術の造詣が深いことは分かりましたね。
瀬戸内寂聴や大江健三郎との対談や弔辞は、羨ましいですね。これからの日本文学会をしょって立つ人ならではです。
Posted by ブクログ
本書はいわゆる、エッセイ集といったものであるから、タイトルにある「文学は何の役に立つのか?」について、延々と語られるわけではない。
小生はタイトルのみで本書を手にとったため、やや拍子抜けしたが、オッペンハイマーに関する内容はとても興味深かった。