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Posted by ブクログ
平野啓一郎の「文学は何の役にたつか」を読み終えた。エッセイや評論集の類いで、中には僕には難解のものがあったが、大半は興味が惹かれるものだった。
三島由紀夫、ドナルド・キーン、瀬戸内寂聴、大江健三郎、安部公房、古井由吉、ハン・ガン、ドストエフスキー、森鴎外などたくさんの文豪が登場する。
寂聴さんにはかなり可愛がって頂いたようで、お酒の席で寂聴さんからたとえば甘粕正彦のリアルな話を聞いていたなんてことが書かれていると僕までなんかワクワク楽しくなったのだ。
この本を通じて、まだまだ読みたい本、読まなければならない本がたくさんあると実感した。
ちなみに平野啓一郎は「正気を保つため」に文学は役に立っていると書いている。
Posted by ブクログ
平野啓一郎さんがこれまで講演で話されたことや、文芸誌などに寄稿された文学・文豪・文学作品への批評やエッセイなどを収録したものとなっています。その冒頭に収録されている或る研究集会の基調講演のテーマが「文学は何の役に立つのか?」ということで、これがそのままこの本のタイトルになっています。
このタイトルを少し噛み砕くと、「文学は、私たちの人生や社会に対して、どんな価値があるのだろうか」ということになるのかと思いますが、この本を読んで私なりに思ったのは、以下のことでした。
文学は、①社会の不条理に気づかせ考えさせてくれること、②人間関係の機微を巧みな表現で心を動かされること、③現実社会からの解放すなわち現実逃避することで心を癒してくれること、④新しい価値観を知って多様性のある生き方やコミュニケーションを学ぶこと、
このように、文学(小説)の中の人物を通じて、読者の認識や感情に変化を起こさせる、あるいは経験させてくれる、ということです。
そういう意味では、文学は、世の中を真っ当に生きていくために役に立っている、お金を払って読むだけの十分な価値がある、と言えるのだと私は思います。
また、私が文学に求めるものという観点からの思いですが、世の中にはたくさんの文学作品があって、中には摩訶不思議な世界へ引きずり込んでいくようなものもありますが、それぞれに作者の想いが込められているので、その中には、きっと自分の悩みや苦しみの理解者になってくれたり、自分の想いとシンクロして強く共感できる作品があるはずです。そんな文学作品に出会えることを楽しみに、これからも読書を続けていきたいと思いました。
巻末には、生前親交のあったドナルド・キーン、瀬戸内寂聴、大江健三郎の葬儀で読まれた弔辞が特別収録されており、そこには大先輩作家への敬愛の念を強く感じました。
Posted by ブクログ
創作活動と並行して積み重ねた講演、批評、随筆をまとめたもの。
文学は、声にならない違和感、説明できない痛み、うまく言えない孤独。そういうものを、
無理に整理せず、そのまま差し出す。
平野啓一郎氏が
読んでると、どんな文学に影響を受け、どんな作家を座標軸にしているのかがわかる。
流行や話題性ではなく、
人間の内面・倫理・孤独・分断・時間を
粘り強く掘り下げてきた作家たち。
だからこの本は、
文学論であると同時に、
平野啓一郎という作家の精神史みたいにも読める。
文学は役に立つか、ではなく
自分はどんな文学を必要としてきたか。
と言う感じ?
関係ないけど、
最近「瀬戸内寂聴」というワードが出てくる・・・多作だからまようけど読んでみようかな
Posted by ブクログ
文学・芸術に関して、著者が寄稿したエッセイや批評、講演録、弔辞などをまとめたものである。ドナルド・キーンや大江健三郎、瀬戸内寂聴といった錚々たる顔ぶれとの交遊も伺い知れる。
著者の小説はまだ読んだことがなく、文章を読むのは初めてだったが、硬質に見えて、意外と読みやすい。
評論を書こうとすると、対象をよくよく観察し、客観性をもって言語化する技術が必要になる。多様な視点を持たなければ、独りよがりな説得力に乏しい論文になる。
つまり文学とは、人間を多面的に考察していく営みであり、これは古来から、おそらく未来永劫なくなることはない。
「文系不要論」が言われて久しいし、文系の中でもとくに人文学の肩身がせまい現状で、それでもあえて言いたい。
文学ほど、役に立つものはない(かもしれない)。
Posted by ブクログ
表題の講演録について。
「役に立つか」と「価値があるか」は違う。「役に立たなくても価値がある」と言い続けることが大事。
…とのことだが、これは文学に限らず、必需品以外のモノ・コト全てに当てはまる。
「役にたつ」と「価値がある」は違う、よく考えれば当たり前とも言えるが、日常の中では同一視していると思える出来事、言葉、人も思い当たる。役にたつこと至上主義、みたいな。
もちろん、価値がある、ということの判断軸は多様であるべきで正解はない。人によって、また同じ人でも時々によって違うだろう。
なので、読みながら自分の思考は次第に文学の話から離れて、色んなところに乱れ飛んでしまった。
Posted by ブクログ
本書の表題となった講演録を含む、主に文学・芸術論について語られたエッセイ・批評集成。
文学は何の「役に立つ」のか?
著者は、「〇〇は何の「役に立つ」の?という問い自体に不思議さがあることを指摘し、役に立つかどうかは幾つかある価値のうちの一つでしかない」とした上で論を進めています。ズバリ最初に語られたその回答は、「だから自分は本を読んでいるのだろうか」と、自分の読書習慣を肯定されたような気持ちになりました(あまり文学は読んでませんが)。
自分はいつから役に立つかどうかだけで物事を判断するようになったのだろう、と過去を振り返ってみた。そして、自分もその価値観だけで他人の行動や判断に対して制限を加えたり、口出ししたりしていたなと少し反省。
本書で「社会の歯車として「役に立つ」ことと、身近な誰かにとって自分が「役に立つ」ことがどこかで結びついているのではないか、というのが近代だった。」とあり、吉本隆明の共同幻想論に通ずるものを感じた。
映画オッペンハイマーについての批評はノーラン作品好きとしても非常に読み応えがあった。
日本に原爆が落とされた、その経緯のおかしさについて私は知らなかったので、衝撃を受けた。
映画オッペンハイマーは未視聴なのでこれを機に鑑賞したい、というか、しなければ。
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