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事故による大怪我で片足を失った女優と、その義足を作ることになったデザイナー。しだいに心を通わせていく二人の前に立ちはだかる絶望、誤解、嫉妬……。愛に傷ついた彼らが見つけた愛のかたちとは? 「分人」という概念で「愛」をとらえ直した、平野文学の結晶!
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Posted by ブクログ
交通事故により片足切断という悲劇に見舞われ、悲しみと不安に沈む女優・叶世久美子(本名中村久美)と、たまたま事故から救助し、何の因果か彼女の義足のデザインを任される事になった主人公・相良郁也が、徐々に彼女と心を通わせていくラブストーリー。 「焦らず少しずつ、未来のことを考えていきましょう。不安を感じ...続きを読むる時には、どんなことでも相談してください。解決のための具体策を、一つ一つ考えていきましょう」 「思ってること、感じていることを一つ一つ話していけば、一緒に考えられるんだから。少しずつでも前進するよ」 「人のすべてなんて、見えるはずがない。だったら、自分の一番良いところが見えるようにすべきだよ。誰にだって光の当たっている部分と、そうじゃない部分がある。中村久美の一番素敵なところに、光があたるようにしよう。陰の部分は、そっとしておけばいい。どうしても、その陰翳の中で何かを語りたくなったら、その時は、俺に話せばいいよ。こうして、いつでも側にいるから」 これは、ただの愛を育むラブストーリーではない。 タイトル通り、『かたちだけの愛』である。 相良郁也は、確かに久美に恋をして、深く愛情を深めていく。 しかし、叶世久美子はどうだろうか。 客観的に女性目線で見れば容易に分かるけれど、男性目線(特に当事者)では盲目になってしまう、『愛が無くても誰にでも媚びを売る魔性の女性』がいて、叶世久美子はまさにそれ。 要所要所で叶世久美子の魔性行動が現れている。 自分にとって都合のいい男に媚びを売って、自分に夢中にさせる。これは愛ではない。 自分の身に起こった不幸ですら、利用する。 自分を裏切った最低男の三笠竜司ですら利用するし、相良の部下まで水面下で手を出し利用する。 気を引くためなら、愛情を確認するためなら、悲劇のヒロインになってなんだって利用する。 本当にこの手の女性は存在して、数多の女性から嫌われる存在となるが、男性から見ると「なんで嫌われてるんだろう?知れば知るほど、とってもいい子なのに」となる。 すごく厄介なこの魔性の駆け引きや遣り取りを、女性作家ではなく、男性作家が描き上げたことに、とても評価したい。 「好きという感情に前後があるならば、前半は〈恋〉で、後半は〈愛〉なのだろう。恋が、刹那的に激しく昂って、相手を求める感情だとするならば、愛は、受け入れられた相手との関係を、永く維持するための感情に違いない」 「彼は今、久美といる時の自分が好きだった。他の誰といるときの自分よりも好きで、この自分なら愛せるのかもしれないという気が初めてした。愛とは、相手の存在が、自らを愛させてくれることではあるまいか?」(分人主義的考察) 「技能とは、何であれ、その人の時間の使い方の果実である。そのために費やされた努力の時間を想像させて、人を敬意へと導く」 「先に愛し始めた人間にとって、恋愛は常に、神秘的な人事問題である。それは、たった一つしかないポストを前にして、ライバルに出し抜かれ、理不尽な評価に愕然とする勤め人の懊悩と、恐らくは相通じるものである」 最後にふたりは強固に結ばれるが、『かたちだけの愛』なので、きっかけさえあれば、こうやって培ってきたものも、呆気なくとても脆く崩壊してしまうのだろう。 この著書を読んで、なんで『かたちだけの愛』と疑問に思った男性は、こういう魔性の女に要注意。
『一日二四時間の中で、人間が考えられることって、三つしかないと思うんです。ー過去のことか、現在のことか、未来のことか。』 『人はなるほど、たまたまそんなふうに誰かを見ることなど出来ないのだろう。彼の中の何かが、そんなふうに彼女を見させていた。』 『私は、人間のへそ曲がりなんだと思いますね。完璧だ...続きを読むって言われると、完璧じゃないところが気になるじゃないですか。』 『人が一緒の時には、相変わらずの他人行儀だったが、二人きりになると、もう敬語は使わなかった。お互いに、声のトーンが少し低くなり、ゆっくり話すようになって、ささやかな笑いの吐息が、電話をしていると、よく耳に触れた。大げさな相槌も、捻り出したような話題も、自然と必要なくなっていった。』 『恋愛とは、よく言った言葉だと彼は思った。好きという感情に前後があるのならば、なるほど、前半は恋で、後半は愛なのだろう。恋が、刹那的に激しく昂ぶって、相手を求める感情だとするならば、愛は、受け容れられた相手との関係を、永く維持するための感情に違いない。』 『愛とは今、相手に配慮を通じて表現されるよりも、無我夢中に自己満足を通じて表現された方が、遥かに信用出来、真実らしいと感じられるのだった。』
「分人」という単語が直接出てくるわけではないが、2人の人間がいかにして「分人化」するか(関係を深めていくか)というのが主題となっている。 平野作品の中では読みやすい、爽やかなラブストーリー。 2人の肌と肌(指先)が初めて触れ合う瞬間の描写が秀逸。
平野先生の作品の中では、「決壊」が一番好きだったが、今日から「かたちだけの愛」が一番好きな作品になった。 「決壊」や「葬送」に比べると話のテンポが早く、物語にどんどん引き込まれ1日で読み終えてしまった。 こんなに美しい小説を読んだことが無い と感じる程、文章が美しい。 「あわや だいさんじ」登...続きを読む場の度にクスっと笑ってしまった。
芥川賞作家・平野啓一郎氏による初めての恋愛小説です。『日蝕』や『葬送』などの重厚な作品を書くというイメージが強い方だったので、最初は正直面食らいました。 この記事を書く際にはじめて知ったのですが、この本は平野啓一郎氏にとって初めての恋愛小説だったのですね。物語は交通事故によって左足を切断するという...続きを読む重傷を負った『美脚の女王』の異名をとる女優の叶世久美子と、離婚を経験し、デザイナーとしての仕事は順調なものの、心にどこか空白の部分を持ったデザイナーの相良郁哉が中心となって物語が進んでいきます。 さいしょは作中にちりばめられているiPod nanoやWikipediaやグーグルやユーチューブというまさに現代を象徴するキーワードに正直面食らいましたが、この作家は古典を多く描いてきて、つい最近もオスカー・ワイルドの「サロメ」を彼が翻訳を書いているはずなのにこのシフトチェンジはすごいなとさえ思いました。で、話を戻すと、映像化は困難ですが、山あり谷ありの王道的な恋愛小説で、最後まで一気に読み終えてしまいました。 相良と叶世の二人の展開も魅力的ですが脇を固める人間もまた個性的なキャラクターが多くて、相良の母親のような役どころを演じる原田紫づ香と叶世のマネージャーを務める曾我もまた、人間味のあふれるキャラクターで、特にマネージャーで彼女が所属する事務所の社長である曾我には叶世久美子を育てる、という身のささげ方には 『こういう生き方もあるのか!!』 という驚きがありました。 義足が完成して、叶世と相良はファッションショーに赴く、というのがこの作品のハイライトですが、結末は自身で確認いただくとして、もう一度、人を愛してみようか…。この本は僕にそんなことを思わせてくれました。本当に久しぶりの恋愛小説を読んでそんなことを思いました。
デザイナーの仕事にまつわる華やかな世界に触れることができて新鮮だった。恋愛における細やかな心情がよく描かれていた。
平野作品は「分人」という概念でよく言われますが、この概念を特に持ち出さなくても、愛することに揺れ動く主人公の気持ちや考えが丁寧に描き出されています 無理のない、時にハラハラさせるストーリー展開で、ページがどんどん進みます 悲惨な事故に遭った女性が、愛されることでそれを乗り越えていく・・・純粋な気持ち...続きを読むでラストでは涙が溢れました
ー それで、いつの間にか、こう思うようになってた。愛って、もっと偶然的で、選ばれる人間に優劣があるわけでもなければ、選ぶ人間が賢かったり、愚かだったりするわけでもない。ただたまたま、誰かと誰かが出会って、うまくいったり、いかかったりするだけだってね。 そう思えば、俺の家族は、誰も傷つかずに済む。組...続きを読むみ合わせの不幸だったって。―けど、そんなのが愛なんだろうか?別れた俺の妻が、ど うしても我慢できなかったのは、俺のそういう考えだった。なぜわたしと結婚したのって、よく訊かれたけど、あの頃は、今みたいなことが自分の中で整理できてなかったから、きちんと答えられなかった。……悪いことしたよ、彼女にも。ー 主人公が本当の愛の形に触れていく物語なのに、なんでタイトルが『かたちだけの愛』なんだろう?そこだけがいまいち理解できず腑に落ちない。 「かたちだけの愛」で簡単にやり過ごそうとしてきた主人公が、本当の愛を見つめ直す過程を描いているのからなのかなぁ〜。
愛するってなんだろうと深く考えさせられた。 他の誰といる時の自分よりも好きで、そんな自分を愛せる。そういう相手を見つけるといいのかもしれないと思った。 愛って深い。
読みやすい恋愛小説。 最後の愛についての考察、わたしもそうなのではないかと最近考えていた。 自分のままでいられ、くつろげる、自分を含めたその空間と時間もまるごと好きでいられる。 そうできる相手に出会い、同じでいられることは紛れもなく幸せだと思う。
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平野啓一郎
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