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2019年秋、福山雅治、石田ゆり子主演で映画化!大人のための恋愛小説。
主人公のギタリスト蒔野と、ジャーナリストの洋子は、わずかの時間話しただけなのに一瞬で恋に落ちる。仕事や、人の嫉妬、戦争など複雑に絡み合い二人を引き裂こうとする。その後二人はそれぞれ別々に結婚して家庭を築き、でも忘れられない二人が再会するとき…というお話。
全体的に著者の言葉選びが秀逸で美しいです。直接的な好きだという表現をしなくても、会話の端々から「それって好きってことだよね?」とわかってしまう感覚が何とも大人だなと思えます。
また、著者の平野啓一郎さんは、他の著作で分人(状況や相手によって異なる自分になる)主義について書かれています。自分の中の複数の人格を認めてあげる(例えば「あの人と話している自分が好き」)。その観点でもう一度読むとまた違った見方ができるのではないでしょうか。おすすめです。
Posted by ブクログ
映画版を見たし、葬送を読んだので同じ著者の方という事で借りました。ギターを少し始めた事もあって、ギター用語は読んでいてわかったので興味深かった。映画と違うのは洋子の母親が長崎原爆の被爆者という事が強調されている点で、他にも蒔野の共演者がはっきり書かれていないがおそらく自殺したようなくだりは、映画には出てきたかと思います。また洋子が自爆テロに巻き込まれた後遺症でPTSDを患って服薬していて、その心理的負担からやすやすと別れ話を信じていったというのも、小説版では書かれていた事です。概ね普通なら早苗に非が集まるところを、それを回避しているのもこの小説の特徴で、それがこの小説の純な印象を深めていると思われます。
Posted by ブクログ
なんてドラマチックな大人のラブストーリー!今までで1番の恋愛小説だった。イラク戦争、PTSD、金融市場、音楽業界、広げ過ぎというくらい複雑な設定を丁寧に点と点を結んでいく、深くて緻密なプロットが凄まじい。平野さんからは世界がこんな風に見えてるのか。本物の教養ってこれか、、、。文章は抽象的な形容詞をわかりやすく使って描写されていて、読みやすいのに圧倒された。
一階の奥の席に座る洋子に幸福の硬貨を贈る場面、大泣き。これは泣くなと言われても無理!!!
心がぴったり合う、運命的な出会い憧れるなぁ。現実は違うにしても、物語で追体験できるならこれ程幸せなことはない。平野さんありがとう。 そして洋子が終始素敵すぎる。賢くて温かくて、内面から溢れ出るセンスを身に纏うようなこんな女性になりたい、、、。余韻に1ヶ月くらい浸った。最高の読書体験をありがとうございます。
Posted by ブクログ
良い作品!だけど、流石にグダグダしすぎだと感じてしまった。ドラマチックでありつつも、とても現実味のある物語構成で面白かった。自分は普段から「過去は捉え方次第。後悔と捉えるか良い経験と捉えるかも今の自分次第であり、必ずしも一面的ではない」という考えを持っていて、この小説は「過去は変えられるし、変わってしまうとも言える」というのがかなり主題となっている。初めて作品としてそういう題材のものと出会ったので、興味深く共感しながら読めた。
しかし物語としては、三谷が勝手に洋子さんにメールを送った時点で、「あ、その方向性なんだ」と思いそこからは度々手が止まってしまった。そこの真実に囚われる必要がないくらい、それぞれの人生で様々なことが起こり、読者としても物語を楽しむことはできた。だが、読めば読むほど「いや早く連絡して一緒になりなよ。何をウダウダしてん」と思ってしまい、その思いは最後まで消えなかった。もちろん「連絡をしない」という選択をとり続けた洋子にも責任はあるし自由意志だが、騙され続けた洋子があんまり浮かばれないなと思ってしまう。普通に可哀想。
作中の「今、意味があるのは、洋子に愛されなかったという事実ではなく、早苗に愛されたという事実だった」というセリフが印象に残っている。蒔野が自分を客観視した時、早苗がこんなにも恩師の介護や自分に尽くしてくれて、それに対し自分も確かな好感を抱いていると気づき、それがどんなに恵まれているかを理解した。これは折り合いをつけて現在を肯定したのだと思う。ウダウダ諦めることとの決定的な違いは、自分の中や周りに「自分を前に進める材料」が十分なほど揃っているか、そしてそれに気づけているかどうかだと思った。
運命的な出会いはとても綺麗なものだが、実現されるべき奇跡として短絡的に描くのではなく、運命とは短絡的な奇跡ではなく、現在の選択によって自ら意味づけ(チューニング)られるものなんだと読み取り、考えさせられた。
人生の様々な場面で「出来たはずのベストな選択」、もしこうだったらという妄想があると思うが、それが常に作中で描かれており、折り合いをつけながらみんな生きているんだなと思った。しかしそれは必ずしも妥協ではなく、現在のベストな選択として生きていくことができるので、とても「人間的」だなと。「諦念」も重要なキーワードだと思うが、その気持ちは本当に諦念と呼べるものなのか、それを打ち破る熱は本当に残っていないのか、ただの理論武装ではないのか、そもそも打ち破るのが自分にとっても相手にとっても「善」なのか。大人の恋愛だからこその心情が丁寧に描かれていて共感できた。
この著者は心情描写や物語の説明がとても丁寧なので、小説ならではの「味わいながら読む」という醍醐味が発揮されていて、本で読んで良かったと思える好きな作家の一人。回りくどかったりして好みではない人もいると思うが、文学作品としてとても好き。でもクラシック音楽はわからないし、まだ大学生なので音楽の話は結構ささっと流し読みでした。大人になって再読したらまた違う感想になるのかな。でもこんなに感想が出てくる時点で、とても良い小説だったのだろうと思う。
---印象に残った言葉---
- 「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」
- 恋の効能は、人を謙虚にさせることだった。年齢とともに人が恋愛から遠ざかってしまうのは、愛したいという情熱の枯渇より、愛されるために自分に何が欠けているのかという、十代の頃ならば誰もが知っているあの澄んだ自意識の煩悶を鈍化させてしまうからである。
-内的な理由なら、せっかく止めてまで作った時間を、有効に活用しなければと、あまり思いつめない方がいいでしょうね。
-愛とはだから、若い人間にとっては、一種の弛緩した恋でしかない。
-生まれ持った才能が、否応なく他人の嫉妬や羨望を搔き立ててしまう人間は、何か意外な親しみやすさを身につけなければ、たちまち孤立してしまうのだろう
-リチャードに非はなかった。それでも確かに、彼女にとっても、傷は傷だった。
-幸福とは、日々経験されるこの世界の表面に、それについて語るべき相手の顔が、くっきりと示されることだった。
-今、意味があるのは、洋子に愛されなかったという事実ではなく、早苗に愛されたという事実だった。
-忍耐には大抵、損得勘定が伴うものだが、人より多くの我慢を強いられているという意識の身を焼くような煩悶にとって、他方で、人が当然に守っている禁止をこっそり破っているという疚しさは、一服の清涼剤となった。
-蒔野は、この広い惑星の上で、洋子に出会うための確率といったようなことを考えた。それは、人為的には決して実現不可能な出来事であり、しかし、その偶然を、まるで必然であるかのように繫ぎ止めておくために、人間には、愛という手段が与えられているのではないか。
-何か出来たはずだったという思いが、彼女の心から平穏な諦念を奪ってしまっていた。それは、必ずしも不可抗力の運命ではなかったのではないか。
Posted by ブクログ
中年の男女による、国境を超えた恋愛小説。
受験期に、現代文の論説でお世話になった、あの「分人思想」でお馴染み平野先生の作品だが、文体は柔らかく、物語の展開としても読みやすい。そして何より登場人物の容姿や舞台となる場所の情景描写が魅力的で美しい。またギタリストの緊迫したステージ上での描写もリアルで、解像度が高かった。
登場人物は年齢的に内面が成熟しており、いわゆる「いい大人」なので、相手に本音を隠したり、強がったりするのだが、それが原因でお互い好き同士なのにすれ違ってしまう。まだ若い私にとってはもどかしかった。本当に好きな相手なら本音を言い合えないと分かり合えないと思うし、恋愛においては弱さを見せて甘えることも大切だと感じるからだ。
しかし、「愛すること」=「相手を想うこと」だと定義付けるなら、相手を想って自分の本音を犠牲にしてきた彼らこそ、真に相手のことを愛せていたのかもしれない。
そして、この物語の結末は、読者に未来を想像させる余白を残している。いわゆる、「ムナクソ小説」なのなもしれないが、逆にそこまで細かく描かれていたらあまりにもクリアで面白くなかったかもしれないと私は思う。この締め方が、物語に余韻を与え、より味わい深いものにしているのでは無いだろうか。
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