平野啓一郎のレビュー一覧
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天才ギタリスト・蒔野聡史と、聡明なジャーナリスト・小峰洋子。細胞レベルで惹かれ合う二人の恋模様を描いた本作は、読み終えた後も、胸の奥で心地よい余韻が鳴り止まない一冊でした。
特に印象に残ったのは、「言葉の旋律」「現実と虚構の融合」「ラストシーンの希望」という三つの要素です。
1. 音楽のように響く、言葉の旋律
この作品に散りばめられた言葉の数々は、まるで蒔野が爪弾くギターの音色のように、美しく気高い旋律を奏でていました。中でも、私の心に深く刻まれた二つの言葉があります。
「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。」
この本を貫く最 -
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冬に合うほろ苦恋愛小説、クラシックやクリスマスジャズを聴きながら幸せで静謐な時間を過ごせた
恋愛小説に出てくる人物の行き過ぎた心理や、何番煎じか分からない試練を斜に構えて見てしまうのだが、これは作家との相性なのか、本作の人物の肩書きは馴染みのないもので、それが逆に愛に対する人の熱や引っ込み思案は万人共通するんだと思えた。
アポロ13の引用が本作の核だと思った
『大気圏に無事突入するには、2.5度の幅の回廊を通らなくてはなりません。角度が急だと摩擦熱で炎上しますし、浅すぎると、池に石を投げた時のように、外に弾き飛ばされます。』
初めての平野啓一郎さんでしたが
持ちわせてる知識に圧倒されながら -
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私の中で『サロメ』といえば、ビアズリーの悪魔的で蠱惑的なあの絵、あるいはモローのあの幻想的でアイコニックなあの絵。どちらもインパクト抜群でつい見入ってしまう歴史に残る絵ですが、当の文学作品は読んだことがなく、結局このワイルドの『サロメ』に私を導いたのはやはりビアズリーでした。ビアズリーの生涯を知るにつけて、ワイルドのサロメを読まずにはいられないわけだったのですが、もうひとつ、オスカー・ワイルドという人間への興味も、そこにはありました。
本書はオスカー・ワイルドのサロメを平野啓一郎版新訳として、現代に生きる私たちに馴染みやすい文体で読める、という楽しみ方だけでなく、平野氏によるサロメの解釈、さら -
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平野啓一郎さんがこれまで講演で話されたことや、文芸誌などに寄稿された文学・文豪・文学作品への批評やエッセイなどを収録したものとなっています。その冒頭に収録されている或る研究集会の基調講演のテーマが「文学は何の役に立つのか?」ということで、これがそのままこの本のタイトルになっています。
このタイトルを少し噛み砕くと、「文学は、私たちの人生や社会に対して、どんな価値があるのだろうか」ということになるのかと思いますが、この本を読んで私なりに思ったのは、以下のことでした。
文学は、①社会の不条理に気づかせ考えさせてくれること、②人間関係の機微を巧みな表現で心を動かされること、③現実社会からの解放す -
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アラフォーになって運命の人に出会うという大人の恋愛小説。
40代目前とは、一般的に社会的な地位をある程度確立し、人生設計を考える時期なのかなあと思う。
そんな中で人生のパートナーを決めるというのは、愛以上に安定を求めるものなのかなと私は考えている。
そんな中で、まるで学生の恋愛のように、燃えるような愛に突き動かされて惹かれ合う2人が印象的だった。
こんな運命の人って素敵だなあ。
安定や好条件を投げ打ってでも、愛に従う2人がかっこいいなあと思った。人を愛している自分が好きってめちゃめちゃ素敵だと思う。
2人の大人な価値観とその葛藤もとても丁寧に描写されていて引き込まれた。文章表現がとても繊細で -
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475ページ。長い。
足ることを知る、森鴎外、高瀬船。最愛の人の他者性と向き合う人間性としての誠実さ。
AIアバターという未来風の書き方だが、取り上げている議題は、死生観、格差社会といった、従来からある話。自由死を選ぼうとした母の本当の声を聞きたくてアバターを作るが、それは本当に母親か。いや、本当の母親とはそもそも何か。自分たちは普段、人の一面を見ているに過ぎない。加えて、それは変化していくものでもある。一面、一時それを切りとって、それは本当にそうなのだろうか?
格差社会においては、いろんな意味でもう十分という人々も出てくる。自由死を選ぶことは本当に良くないことなのだろうか。
人間とし -
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人にはいくつかの分人が存在する。
家族や友達、同僚、上司と。
それぞれと接する時の自分はテンションや気の使い方も異なっていていろんな自分がそのにいる。
どれが本当の自分なのか。
幸せであっても疲労は溜まるし嫌いな自分は消したくなる。
この装丁はなぜゴッホなんだろうという謎も納得。
ゴッホのいろんな顔と自殺の真実が物語と結びついて後半はかなり面白くなってきました。
そして、終わり方に鳥肌、、。
りっくんを抱きしめる直前に消えちゃったってこと、、?
彼の悔いが残った空白が満たされたから消滅したのかな。
2回も大切な人がいなくなるなんて耐えられないけど、これを読みきって生の尊さが身に染みました。
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「大切な人へ贈る本」という帯が付いていました。
まさにその通りでした。感動し涙が止まりませんでした。
読み終えた時、序盤の頃に出てきた「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。」という言葉の真意に触れた気がしました。
今を生きる私やこれからの私(未来)の考え方捉え方が、過去の出来事に違った意味を持ちうるという。私自身も過去の悲しみを優しく包み込む事ができた気がしました。この本との出逢いに感謝しています。
実話に基づく小説と、冒頭で述べられています。
忘れられない人がいる方、ぜひ読んで欲しい。人を愛する心がとても美しいです。