平野啓一郎のレビュー一覧

  • 本心

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    2040年、今から15年後の近未来。
    アナログな私にとって、物語の始めは世の中の移り変わりに置いていかれそうでなかなか先に進めませんでした。
    それでも読む進めていくうちに、世が変わっても人間にとっては避けられない「死」について正面から対峙する作者の信念のようなものに引き込まれていきました。
    身近な人の「死」という喪失、そして自分が「生きていくこと」の意味。
    わかっていてもどこかで無意識に避けているこの永遠のテーマが、読み終わって自分の心のどこかに根付いたような気がします。
    それぞれの登場人物が向き合っている、日々の生活、生きていくこと。
    重く心にのしかかる場面もあったけれど、どの人の人生もその

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    2025年10月12日
  • 本心

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    全体のテーマ

    『本心』は、テクノロジーが人間の記憶や死後の存在までも再現できるようになった社会で、「愛」「自己」「他者とのつながり」が何によって成り立つのかを問う物語

    ・「愛は、今日のその、既に違ってしまっている存在を、昨日のそれと同一視して持続する。」
    …愛とは変化し続ける他者を「同じ存在」と見なす行為であることを示す。
    相手が変わっても、それでも愛そうとする「鈍感さ」「誤解」「強さ」のいずれかによって、愛は続く一方で、「今日の愛もまた昨日とは違い、明日には消えてしまうかもしれない」という、愛は永遠ではないが、だからこそ尊いのだという哲学的命題。

    ・「どの自分として死を迎えるか」という

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    2025年10月11日
  • ある男

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    ネタバレ

    2022年に映画化し、気になっていた作品。
    やっと読みました。
    平野啓一郎さんの作品を初めて読んだが、
    文章が硬めで表現方法が難しく何度も単語を調べた。
    読み進めていくと、単語の難しさを後回しにしたくなるほど物語が深かった。
    単に里枝の亡夫の戸籍交換の事実がわかっただけでなく、戸籍交換しなければならなかった過去、結婚後も嘘をつき騙していた訳ではなく言えない理由があったこと、他人の人生を丁寧に生きていたこと、里枝を心から愛していたこと。
    城戸が谷口大佑とすり替わっていた原誠の真実を追うごとに彼の壮絶な過去と芯の部分の優しさを感じた。
    城戸の生きる境遇や里枝の息子の葛藤も心動かされた。
    とても良い

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    2025年10月11日
  • 悲しみとともにどう生きるか

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    東畑開人さんのアジールとアサイラムの話、そして若松英輔さんの「死者は、、」という話がすごく良かった。

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    2025年10月11日
  • 文学は何の役に立つのか?

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    ネタバレ

    秀作。
    読む度に作者の見識の高さを感じさせられる。
    戦争についての内容が多い。作者は戦争を体験した世代でないのを踏まえながら。
    森鷗外の良さは分からない。三島由紀夫は凄い作家だと思う。
    分人は面白い発想。人は場面毎に色々な顔を持つが全てその人なのだと。なるほどと思わされた。それでいいんだと。

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    2025年10月11日
  • ある男

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    改めて、刻一刻と過去になる今を大切に噛み締めて生きたいなと思った。過去は変えられないが、そのことは人生においてプラスにもマイナスにも働く。城戸と同じような夫婦関係を私も築いているが、城戸はこの先をどう生きていくか気になった。私は城戸のように妻を受け入れたり、まわりの情にほだされたりしないことはできないかもしれない。

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    2025年10月08日
  • ある男

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    初めての平野啓一郎。面白い。単純にこの作品を1人の人間が考えて書ききったことに驚嘆。世の中には天才がいるんだなあ。戸籍のことや在日朝鮮人への関心も生まれ世界が広がった。主人公の苦悩にシンクロして自分もパートナーとの関係を改めて考えた。自分たちのパートナーシップは自分の家族、友人、職場の人間、そして社会から良くも悪くも影響を受け続けていく。関係を続けていくには対話が必要で、それができない人との関係は長く続かないなと思った。相手の言うことに耳を傾けて、相手がちゃんと聞いてもらえたと思ってくれるようにこれからも頑張ろうと思った。

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    2025年10月06日
  • マチネの終わりに

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    「人はかえられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど実際は、未来は常に過去を変えている、変わってしまうとも言える。過去はそれくらい、繊細で感じやすいもの」という蒔野の言葉が心に残った。なるほどなー。
    福山と石田ゆり子の映画も見てみたいなーと思った。大人な素敵な恋愛小説だった。

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    2025年09月27日
  • 空白を満たしなさい(上)

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    ありきたりな設定ではあるが、それぞれの心理描写と社会的な立ち位置が想像以上に面白くて、サクサク進む。下巻が楽しみ。

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    2025年09月26日
  • ある男

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    ネタバレ

    宮崎にいるりえと夫と子供たちのパートが一番惹かれた。
    不幸ばかりが見つかる過去から逃げ切って、幸せな生活を手に入れて死ねた、とても幸福な人の話だったことに気づくと救われる気持ちになる。
    悠人はきっと、束の間のお父さんの一生分の愛を受けて、良い子になる。絶対なる!と思った。
    推理するような展開が面白かった。

    かげの主人公、城戸の家庭と城戸の逡巡などについてはイマイチ分からなかった。この人物像は作者に近いから省略されているのかなと邪推した。

    作者が男だけあって、やっぱり登場人物の男性たちが表情豊かだなと思った。女の人は、良い役を貰っているけれどやっぱり「主観」という描き方じゃなくて遠い感じがし

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    2025年09月23日
  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ

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    個人と分人。分人は決して多重人格のことではなく、対人関係ごとに分けられる異なる人格のこと。複数の人格すべてが本当の自分である。そのような捉えかたを分人主義という。
    私にとって新鮮な言葉と考え方であった。
    人によって接し方を変える。人によって指導方法を変える。平等ではなく公平になる指導。
    分人という考え方で腑に落ちる事が多々ある。

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    2025年09月21日
  • マチネの終わりに

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     ギターリストが魅力的な女性と出会い、お互いに想いを深めてゆくの物語。男性女性のそれぞれの視点から物語が進むが、非常に長い年月が語られる。お互いの想いと、そのずれを長い時間の中で描いてゆくところは、「汝、星の如く」とも少し似ている気もしたが、それよりは硬い雰囲気の小説だった。

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    2025年09月21日
  • ある男

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    この人の2冊目だから、わかってきた感。難しいとこもあるし、スッキリする訳でもないんだけどなんか好きなんだよな~~おもしろいし

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    2025年09月20日
  • マチネの終わりに(文庫版)

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    手術直後の満身創痍な状態で読んだので、深くは読めなかったのだけれど、それでも惹き込まれる本だった。元気になった時にもう一度しっかりと読みたい。
    ただ、他の平野啓一郎の本とは違い、かなり主人公やヒロインから距離を置いた視点で書かれていると感じた。序文でもチョロっとは言っていたが。
    作者の有り余る知識量と文体の快さにノックアウトされそう。クラシックギターを聴いた事がなかったので、入院中のベッドの上で聴いた。

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    2025年09月19日
  • 文学は何の役に立つのか?

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    【文学は何の役に立つのか?】 平野 啓一郎 著

     いつも疑問に思うことがタイトルになっていたので読んでみました。本書は、著者の講演などをまとめたもので、表題については冒頭の35ページとなっています。著者も「答えるのに苦慮する問い」とのことですが、「一つの理由」を見つけたとあります。ネタバレはまずいと思いますが、この理由やその後の論考などは同意するところ大でした。

     平野氏の著作は好きでほとんど読んでいますが、本書のほかの論考を読むと、自分と幼少期の経験が似ていることがわかりました。また、文章もきらきらと美しいのですが、三島由紀夫に留まらず、ハイデガー、大江健三郎など多数の文学・芸術に接して

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    2025年09月18日
  • マチネの終わりに(文庫版)

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    凝った文体ではあるが伏線があって楽しめる。大人の生きざま。三島的な言葉遣いと耽溺の色合い、次作が楽しみになります。

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    2025年09月15日
  • 空白を満たしなさい(下)

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    平野啓一郎はジャンルがないと言われるけれど、私にとってはやっぱり平野作品にしかない特徴があると思う。文体の滑らかさも含めて。
    出てくる人物の思考が、紡がれる描写の端々から伺えて、人格を持った存在として認識させられる。当たり前だけれど、悪人や善人で人を切り分けない。だからなのか、物語が終わると置いてけぼりにさせられた気持ちになる。あまりにも人々がリアルすぎて、この人たちのその後の人生があることを前提のように捉えてしまって、私にはもうその人生を垣間見させてくれる権利が無くなったような。そんな心持ちになる。
    分人思考というが作家の思想に深くあるのだと思うけれど、そこが本作品に組み込まれたことで、それ

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    2025年09月15日
  • 空白を満たしなさい(上)

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    平野啓一郎はジャンルがないと言われるけれど、私にとってはやっぱり平野作品にしかない特徴があると思う。文体の滑らかさも含めて。
    出てくる人物の思考が、紡がれる描写の端々から伺えて、人格を持った存在として認識させられる。当たり前だけれど、悪人や善人で人を切り分けない。だからなのか、物語が終わると置いてけぼりにさせられた気持ちになる。あまりにも人々がリアルすぎて、この人たちのその後の人生があることを前提のように捉えてしまって、私にはもうその人生を垣間見させてくれる権利が無くなったような。そんな心持ちになる。
    分人思考というが作家の思想に深くあるのだと思うけれど、そこが本作品に組み込まれたことで、それ

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    2025年09月15日
  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ

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    自分の中にぼんやりとあった考えを文字にしてくれている本に巡り会うと視界がクリアになるような感覚になる。まさにこれはそういう本。
    本当の私は一つでなくて、対人関係によって様々な私(分人)を生きている。
    平野氏の小説の中にある考えを取り出してまとめてくれているのでまたこれを読んだあとに小説を読み返すと更に楽しめそうだ

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    2025年09月15日
  • ドーン

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    ネタバレ

    「ディヴィジュアル」「分人」の単語が要所でかなり出てくるのは、平野啓一郎みがある

    アストーときょうこの心情描写、不安や焦燥感はかなり緻密に描かれてて迫ってくるものがあった

    やっぱり宇宙船のような密閉空間で過ごす中で、分人は増えたりしないのか

    登場人物がやや多めで、正直よく分からず読み進めてた部分もあった

    分人はoperationalではなく、cooperativeに育まれるんだ、みたいな台詞が気に入っている

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    2025年09月15日