平野啓一郎のレビュー一覧
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自分は日本語を母国語にして生まれ育ったから、日本語で書かれたものを理解することは難しいことではない、とは一切思えなくなったとき、他人はどのように文章を読み、小説を読むのか、ということが気になって、この手の類の本を集めている。
ひと口に「本の読み方」「文章の読み方」と言っても、この道は果てしない。読みたい本、読むべき本は山のようにある。一つの本を一読ですべて理解することは不可能で、本質的には再読こそが真の読書のあるべき形である、などということを痛感している中で、私は本を読むのが遅いと告白してくれた小説家の存在にどれだけ救われたことか。
読むスピードが書くスピードを上回るわけは絶対にないのだか -
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恥ずかしながら、平野啓一郎は初めて読んだ。難解そうと勝手に思っていたのと、たぶん長編小説を読むのが面倒になってたからなのかも。でも読んで良かった。
仮想空間が発達した近未来の日本。格差が広がり、固定し、「こっちの世界」と「あっちの世界」が同時進行している社会。どっちの世界に属するかはすでに固定されている階層で決まっている。金のない人間は仮想空間で一時の安らぎや刺激を「体験」しながら生きている。この社会では自由死が認められていて、主人公の青年の母は息子にも自由死したいと宣言したにもかかわらず、結局は事故死してしまう。母はなぜ自分から死にたがっていたのか・・・。経済的には豊かではないが、息子がい -
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★★★★ 何度も読みたい
本作の中心にはずっと『孤独』があった。悩みを相談できない孤独、近しい人の死、その悲しみを誰とも同等のものとして共有できない孤独。遺族でありながら疑われる崇を中心に、寂しさを抱え続ける登場人物たち。
崇の独白やセリフには、ずっと誰しも関係者のそれぞれに対してペルソナを使い分けているという『自己の細分化』の思想が流れている。それが物語の後半では行動・罪にも拡大され、『原因の細分化』にまで差し掛かっている。心理学が発達した現代では、行動は全てが生育環境と遺伝に帰属し、罪は「不健康」の結果であると考えられてしまう。それに納得してしまう崇の姿勢は日本の法制度への『理想的』な -
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★★★★ 何度も読みたい
3歳の息子・妻に恵まれながらも、優秀な兄への劣等感を抱え続ける良介、幸せを感じながらも、夫に対しもっと頼ってほしいと無力感を感じている良介の妻・佳枝、万人に優しく振る舞いながらも、他者からの評価と自分の存在意義が結びついていると思えず悩む、良介の兄・崇、義実家との軋轢や仕事での不調で鬱病に悩む良介の父・治夫、夫と向き合いながらも、夫の鬱からくる暴言に限界を感じ始めた良介の母・和子といった、一見幸せながらも不協和音を奏でる沢野家と、学校でのいじめや過保護な母にうんざりし、厨二病まるだしのブログで心の安寧を得る中学生・友哉の人生が交わっていくミステリ?まだ前編だが、非常 -
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ネタバレ身近な人が自らの意思で命を立ちたいと考えたとき、自分は止めるだろうかそれとも本人の意思を尊重するだろうか。それが母なら?もしくは恋人なら?
私はこの物語を読んで、格差が浮き彫りになった社会では、貧困層は自らの命を終えると言う選択をしなくてはならない時が来るのに対し、富裕層はそういった心配をせずに寿命を迎えることができると言う差に愕然とした。自らの命を「もう十分」と思ってしまう時が来るのだろうか。
この物語は主人公の心情がありありと描写されている。中でも、自問自答の形式が多く、葛藤の中で生活していることがわかる。V Fである「母」に、生前の彼女の「自由死」の本心を尋ねようとするが、次第に現実 -
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「あなたはどうなのか」と問いかけられた。
世間の目を逃れて究極の手段で他人になり代わり、その過去まで引き継いで生きることで手にした幸せ。愛は若枝のように、中途からでも芽生え直し、従来の枝の延長上をしなやかに伸びゆくことができる…という像が思い浮かんだ。
この場合、彼を縛っていた「世間の目」とは倫理的に正当といえるのか。咎められることのない安全なポジションから、彼に不当な責め苦を負わせていたのではないか。
事実関係の輪郭を澄明に綴る筆致はルポルタージュさながら。この手触りが、愛と苦悩についての問いかけを、読者を当事者に巻き込みながら、生きたものにしているように感じる。
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すれ違いと運命
面白かった。未来が変わることで過去が変わる。過去も変えることができる。
抜粋
「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」
洋子は、長い黒い髪を首の辺りで押さえながら、何度も頷いて話を聴いていた。
「今のこの瞬間も例外じゃないのね。未来から振り返れば、それくらい繊細で、感じやすいもの。
....・生きていく上で、どうなのかしらね、でも、その考えは?少し怖い気もする。楽しい夜だから。いつまでもこのままであればいいのに。 -
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私自身、属するコミュニティによって無意識にキャラクターが変わることは、以前から自覚していた。
ただ、その変化のなかで「他者の存在」をそこまで意識したことはなかった。ここでいう分人とは、「相手との反復的なコミュニケーションを通じて、自分の中に形成されていくパターンとしての人格」だという。
個性とは分人の構成比率である。そう考えると、「自身の理想の個性を保つためには、付き合う人を選ぶことが重要だ」という考えが、腑に落ちた。
特に印象に残ったのは、愛についての記述。愛する相手とは、その人に向き合うことで生まれる“自分の分人”を、好きでいさせてくれる存在なのだという。
「一緒にいて楽しい人を選びな -
Posted by ブクログ
分人とは、例えば学校の中のあなたと家庭内のあなたの人格、ネットの中全然違うよね。
キャラとか人によってあなたは変容している。
でも、顔はひとつしかない。
個性だとか自分らしくとか言うけど、違うのが普通だし分人が多ければ多いほど、あなたと人との関係は柔らかくコミュニーションがとれている。
嫌なことがあっても、それはその人と分人の自分が合わなかっただけで、自分は愛されなかった人間だと本質規定してしまってはならない。
引きこもりなどの閉鎖的な環境は、過去の分人しか生きられないので苦しくなる。
色んな人と出会い複数の分人がいるからこそ、幸せな自分に出会うことが出来る。
分人のレベルで見ると、愛とはその