平野啓一郎のレビュー一覧

  • ある男

    Posted by ブクログ

    人間なら誰でも一度は考えたことがあるであろう「別の誰かになったら」を体験できる今作。戸籍を変えたら別人になるのか。否、戸籍は変われど別人とはなり得ずそれも含めて1人の人間である、と自分は結論付けた。
    中盤で間延びしている感があったが、全体的にはとても面白かった。豊富な語彙で人間の”存在”と”内面”を哲学的に描写する平野啓一郎らしさ全開の作品ではないか。

    0
    2026年06月13日
  • マチネの終わりに(文庫版)

    Posted by ブクログ

    大人の高尚な関係性を感じて、恋愛ものかな?と感じて読み進めた。
    主人公の周りの人間臭い人達の中で、主人公たちも他者には人間臭い対応の中、それぞれに対する慈しみや感応性に特別感を感じていきました。
    終わり方も、読者の想像でいろんな形が広がる形で、どんな形を想像しても、一緒に歩もうがそれぞれ歩もうが、かけがえの無い人との繋がりが続く良い形だなぁと、余韻に浸りました。

    0
    2026年06月13日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    「一体,愛に過去は必要なのだろうか?」の問いに,今までとは違う観点から考えさせてくれた一昨.

    心に残った場面.
    「彼は今,自分とは何か,ではなく,何だったのかということを,生きるためというより,寧ろどういう人間として死ぬのか,ということを意識しながら,問い直すように迫られていた.」
    「国家は,この一人の国民の人生の不幸に対して,不作為だった.にも拘らず,国家が,その法秩序からの逸脱を理由に,彼を死刑によって排除し,宛らに,現実があるべき姿をしているかのように取り澄ます態度を,城戸は間違っていると思っていた.立法と行政の失敗を,司法が,逸脱者の存在自体をなかったことにすることで帳消しにする,と

    0
    2026年06月11日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    映画で見たのですが、どうしても登場人物たちの背景をもっと知りたいと思って原作を。
    自分の人生を捨てたくなる時、全く別の誰かになりたくなる時、そんな瞬間がある人間が存在していて、
    その方法があって、今までの人生を捨てて新しい自分で生きている
    でも、その人の中身はその人
    人間の汚い面と綺麗な面全部見せられた感じした

    0
    2026年06月09日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    愛した夫の死後、彼が全くの別人だったと判明する。弁護士である主人公が「戸籍交換」の裏側に迫る展開には裏社会のリアルな生々しさがある。
    在日3世である主人公の背景描写は少し冗長に感じたが、他人の人生を調べるうちに彼自身の中にも「別の人間としてやり直したい」という成り代わり願望が徐々に芽生えていく構成が面白い。
    何より、主人公が今の家庭を守ろうと決心した直後に妻の浮気が発覚するラストが不穏で良かった。

    0
    2026年06月08日
  • 自由のこれから

    Posted by ブクログ

    新型コロナウィルスのパンデミックを挟んで、10年近く前にまとめられた書籍であるにも関わらず、アテンションエコノミー、SNSがもたらすエコーチェンバー、そしてAIによるオートメーション化がどのように「私たちの自由」と関わるのか、問いことに言及している視点の奥行きの広さと深さに驚かされる。

    刊行当時理解されなかったであろう事柄、特にUber Eatsが都市部では当たり前となり、リモート会議も珍しくなくなったパンデミック以降の感覚では、「職業」によって回収される近代的個人から分人的な働き方を通じて得られる自由、あるいはリモートワークで得られる住む場所の自由も実感のあるものとして深く理解できる。

    0
    2026年06月07日
  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ

    Posted by ブクログ

    本当の私はいない。様々な相手との間で分人が生まれる。心地よい分人、好きな分人を足場にその分人の構成比率を高めれば良い。

    たとえいじめられたとしても、自分を愛されない人間と本質規定してしまってはならないとの言葉に勇気をもらった。
    本当の自分、自分はひとつと思っている人はそこが汚されると苦しみが生まれる。
    あくまでその時々の出来事に過ぎないのだ。
    黒いシミが現れたとしても、シミを広げることはない。自分は多面的である。広い目でみれば良いのだと思った。

    0
    2026年06月06日
  • 透明な迷宮

    Posted by ブクログ

    audibleにて。

    平野さん6作目。
    今回は 聴読だったけど、やっぱり平野さん好きだ〜。

    短編集だけど、どの話も凄く引き込まれた。
    どことなく不思議で濃密。
    独特な味があってクセになりそう。
    どれも面白かったけど、私的には 『消えた蜜蜂』『火色の琥珀』が特に好きだった。
    その『火色の琥珀』は 火を愛する男の話で、朝井さんの『正欲』がめっちゃ頭をよぎるお話だったなぁ。

    平野さん他の作品も気になる〜

    0
    2026年06月06日
  • マチネの終わりに(文庫版)

    Posted by ブクログ

    バイオリニストとジャーナリストとしてそれぞれ華麗なキャリアを送っている2人だが心の内奥には不安を抱えている。2人が自然と出会う回数が増える中でも、お互いにないものを補完しながら支えあって送る日々は長続きしなかった。悩み抜いた末に出した別れという重い決断は必ずしも負の感情によるものでもない。人生の中で下す決断には常に悩みがつきまとう。新たなステージを歩もうとしているすべての人の後押しをする作品である。

    0
    2026年06月04日
  • マチネの終わりに

    Posted by ブクログ

    自分がいましているような若い恋愛ではなく、詩的で思慮深い大人の恋愛だった。困難が多く、憧れはしないが、素敵だった。イラクの話や音楽の話は正直あまりピンときていないが、その情景描写や、登場人物の心理描写は、こちらが経験していなくとも共感するほど繊細だった。初めて知る言葉遣いや熟語が多く、3ページごとにスマホでその意味や用法を検索した。自分の気持ちや状況を緻密に表現する力が向上した気がする。

    0
    2026年05月31日
  • 本の読み方 スロー・リーディングの実践

    Posted by ブクログ

    自分は日本語を母国語にして生まれ育ったから、日本語で書かれたものを理解することは難しいことではない、とは一切思えなくなったとき、他人はどのように文章を読み、小説を読むのか、ということが気になって、この手の類の本を集めている。

    ひと口に「本の読み方」「文章の読み方」と言っても、この道は果てしない。読みたい本、読むべき本は山のようにある。一つの本を一読ですべて理解することは不可能で、本質的には再読こそが真の読書のあるべき形である、などということを痛感している中で、私は本を読むのが遅いと告白してくれた小説家の存在にどれだけ救われたことか。

    読むスピードが書くスピードを上回るわけは絶対にないのだか

    0
    2026年05月30日
  • マチネの終わりに

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    音楽のことはわからないから情景はあまり想像できずそこは映画を見て確かめてみたい。
    正直早苗のやっていることは共感できなかったが
    そこをうまくまとめて最後には嫌悪感はなくなったから良かった。

    0
    2026年05月28日
  • 本心

    Posted by ブクログ

    恥ずかしながら、平野啓一郎は初めて読んだ。難解そうと勝手に思っていたのと、たぶん長編小説を読むのが面倒になってたからなのかも。でも読んで良かった。

    仮想空間が発達した近未来の日本。格差が広がり、固定し、「こっちの世界」と「あっちの世界」が同時進行している社会。どっちの世界に属するかはすでに固定されている階層で決まっている。金のない人間は仮想空間で一時の安らぎや刺激を「体験」しながら生きている。この社会では自由死が認められていて、主人公の青年の母は息子にも自由死したいと宣言したにもかかわらず、結局は事故死してしまう。母はなぜ自分から死にたがっていたのか・・・。経済的には豊かではないが、息子がい

    0
    2026年05月24日
  • 決壊(下)

    Posted by ブクログ

    ★★★★ 何度も読みたい

    本作の中心にはずっと『孤独』があった。悩みを相談できない孤独、近しい人の死、その悲しみを誰とも同等のものとして共有できない孤独。遺族でありながら疑われる崇を中心に、寂しさを抱え続ける登場人物たち。

    崇の独白やセリフには、ずっと誰しも関係者のそれぞれに対してペルソナを使い分けているという『自己の細分化』の思想が流れている。それが物語の後半では行動・罪にも拡大され、『原因の細分化』にまで差し掛かっている。心理学が発達した現代では、行動は全てが生育環境と遺伝に帰属し、罪は「不健康」の結果であると考えられてしまう。それに納得してしまう崇の姿勢は日本の法制度への『理想的』な

    0
    2026年05月24日
  • 決壊(上)

    Posted by ブクログ

    ★★★★ 何度も読みたい

    3歳の息子・妻に恵まれながらも、優秀な兄への劣等感を抱え続ける良介、幸せを感じながらも、夫に対しもっと頼ってほしいと無力感を感じている良介の妻・佳枝、万人に優しく振る舞いながらも、他者からの評価と自分の存在意義が結びついていると思えず悩む、良介の兄・崇、義実家との軋轢や仕事での不調で鬱病に悩む良介の父・治夫、夫と向き合いながらも、夫の鬱からくる暴言に限界を感じ始めた良介の母・和子といった、一見幸せながらも不協和音を奏でる沢野家と、学校でのいじめや過保護な母にうんざりし、厨二病まるだしのブログで心の安寧を得る中学生・友哉の人生が交わっていくミステリ?まだ前編だが、非常

    0
    2026年05月22日
  • 本心

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    身近な人が自らの意思で命を立ちたいと考えたとき、自分は止めるだろうかそれとも本人の意思を尊重するだろうか。それが母なら?もしくは恋人なら?

    私はこの物語を読んで、格差が浮き彫りになった社会では、貧困層は自らの命を終えると言う選択をしなくてはならない時が来るのに対し、富裕層はそういった心配をせずに寿命を迎えることができると言う差に愕然とした。自らの命を「もう十分」と思ってしまう時が来るのだろうか。

    この物語は主人公の心情がありありと描写されている。中でも、自問自答の形式が多く、葛藤の中で生活していることがわかる。V Fである「母」に、生前の彼女の「自由死」の本心を尋ねようとするが、次第に現実

    0
    2026年05月21日
  • 本心

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    それぞれの人物の背景によって、本心を語るまたは本心がわかるまでは難しい…。それに、結果的に主人公が良い方向に向かいそうで安心したが、「あの時こうしておけば」という後悔は少しでも排除したいと思わされる。
    平野さんの描写は、難しく感じる時もあるが、なんとなくわかるような気もして、読み応えがある。 475ページとボリュームがあったが、半分くらいからどんどん没入していった。

    0
    2026年05月20日
  • ご本、出しときますね?

    Posted by ブクログ

    作家の人たちってこんなに話上手いんだなと驚く。
    飲み会の場で話しているようなフランクさもありつつ芯を食った内容になっている。
    紹介されている本も面白そうなものばかりで、ウォッチリストにたくさん入れた。話し手さんの本も未読のものは代表作くらいは読んでおこうという気になった。

    0
    2026年05月19日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    愛にとっての、人にとっての過去とは何かを問う小説。面白い。

    過去が人生を形作ってきたのは間違いなく、
    他人が関知する余地はない気もするが、犯罪者の子など知られたくない過去を持つ人からすると、他人に知られることで不条理にさらされる。

    幼少期の環境や出自、学歴が原因で貧困になった人などは貧困のまま老後を迎えたりなど、環境のせいで人生が苦しい人がいる。

    この小説のように悪手に縋ってでも過去を変えたい人がいるが、国家として救済の措置がない社会問題を反映した小説だと感じた。

    0
    2026年05月16日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    「あなたはどうなのか」と問いかけられた。

    世間の目を逃れて究極の手段で他人になり代わり、その過去まで引き継いで生きることで手にした幸せ。愛は若枝のように、中途からでも芽生え直し、従来の枝の延長上をしなやかに伸びゆくことができる…という像が思い浮かんだ。
    この場合、彼を縛っていた「世間の目」とは倫理的に正当といえるのか。咎められることのない安全なポジションから、彼に不当な責め苦を負わせていたのではないか。

    事実関係の輪郭を澄明に綴る筆致はルポルタージュさながら。この手触りが、愛と苦悩についての問いかけを、読者を当事者に巻き込みながら、生きたものにしているように感じる。

    0
    2026年05月12日