平野啓一郎のレビュー一覧

  • 本の読み方 スロー・リーディングの実践

    Posted by ブクログ

    スロー・リーディングを勧める本ですが、読みながら「速読や多読をそこまで否定しなくてもいいのでは」と何度も思いました。浴びるように本を読みたい時期もありますし、時に清涼剤のように一気に読み切る喉越し爽やかな読書体験が楽しい本もあります。

    一方で、先へ先へと読み進めるあまり、小説の細部を取り落としているという指摘には耳が痛かったです。どんな本でもまず著者の主張を正確に理解すること、本に費やされた時間や関わった人たちへの敬意を忘れないことにも共感しました。

    特に面白かったのは、引用、執筆時期の比較、共感からの想像、「誤読」など、具体的な読み方が紹介されているところです。森鴎外の作品を実際にどう読むのかという実践例もあり、「ゆっくり読む」とは何をすることなのかがよく分かりました。

    速く読むか、遅く読むかの二択ではなく、その本をどう読みたいかによって選べばいいのだと思います。最後に「本は何をどんなふうに読んでも構わない」と着地するところには少し脱力しましたが、そのくらい自由でいいのかもしれません。自分の読書に「ゆっくり味わう」という選択肢に重みが増した一冊でした。

    0
    2026年09月16日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    作者が主人公を選ぶというメタ的な導入が秀悦で、その後の展開もミステリー小説のようで、最後まで一気に読めた。主人公の弁護士が、未亡人となった女性からの依頼で夫(谷口)の過去を探るお話。途中で谷口の元カノと仲良くなるも変な不倫エンドでなく、妻と向き合い直す姿勢がリアルで、谷口の人生と重ね合わせながら、愛とは何度も愛し直すのだという、過去も含めてその人なのだという感覚が興味深かった。主人公の読書家ロマンチストぶりや、在日韓国人3世という出自への苦悩が、すこしくどいくらいで、あーこういう人いそうだなーという、むしろリアリティがあった。

    0
    2026年09月13日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    一つ一つの表現が美しく気持ちよく読めました。真相に近づいていく展開も飽きさせず惹き込まれていったと思います。
    読み終わってから、ふと物語の冒頭を読んでしまいました。

    0
    2026年09月12日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ルーツあるいは遺伝子、置かれた環境、過去、戸籍
    自分を構成する要素のあれこれ
    重要なのは何だろう
    大切なのはどれだろう
    評価されるべきものは一体何で、本来関係ないものは何なのか

    新天地で新しい人生を始める為に別人の戸籍まで必要とするのかと少々驚いた。だけど結婚して家族を持ちたいとなると親が殺人犯という事実は足枷以外の何物でもないのだろうなと思う。突然道路に突っ伏して泣いたと語られる原のシーンは印象的で彼の苦悩が忍ばれた。
    継父亡き後も慕い、真実を知った後も継父に寄り添って涙した長男の存在がとても良かった。本書はとかく掴みの謎が興味を引くが、継子という視点があることで奥行きが感じられる造りになっていた。

    0
    2026年09月09日
  • 透明な迷宮

    Posted by ブクログ

    見たことも感じたこともない世界に誘われる短編集。
    読んでいてアンティークを感じさせる表現もあれば、東日本大震災後の近年の舞台もあり、読者を飽きさせない。
    難解な言葉も多く、文章自体が比喩的で難しいのに、それでも読みたくなる不思議な魅力を持つ作品ばかり。
    火に欲情する男性を描いた"火色の琥珀"が好みだった。

    0
    2026年09月09日
  • マチネの終わりに(文庫版)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    過去は未来の経験によって捉え方が変えられる というキーワードが とても 印象的でした 過去によって未来が変わるのは 時間軸からいってそうなのだと理解できるけれども その逆もあるんだなと気づかされた
    過去のことを変えられるのは 未来しかないという言い方もできるかもしれない 
    また一人の人が自分のエゴを突き通し間違った行動を起こしてもそれを間違えたと思うか思わないか そしてエゴがあるからこそ そのれは間違いではないのじゃないか
    そして もし仮に過ちを犯したと思っていてもその人の人格 全てが過ちを犯した人にはならない
    その人の他の部分も面で評価してしてるからこそ人間の心は揺れ動き 苦しいんだと思う

    0
    2026年09月09日
  • マチネの終わりに

    Posted by ブクログ

    雰囲気を台無しにするような一言を書かせていただくと…

    お節介な大阪のおばちゃんが一人いたら、ここまで話は拗れなかっただろうに!!!笑




    相手を慮る成熟度があるから言えないこと…
    大人だぁ。

    わたしは、
    恋でバカになって傷つけ傷つけることも
    全て込みで真剣に向き合いたい。
    だから、わたしには憧れ止まりのふたりの話かも。

    0
    2026年09月06日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    登場人物がとても多い上に、自分があまり読まないジャンルの本で、読み終わるまで時間がかかった。
    実際の社会で、こんなことはないと思いながらも、長く読めた日はちゃんと本の中に入り込めたので、これを機にたまのサスペンスも良いかな?映画もあるようなので、見てみたいと思いました。

    0
    2026年09月03日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    その人をその人たらしめるものはなんなのか?生い立ち、過去、思い出、それらを脱ぎ捨てたくなった時に、人は返信願望をなる。そんな願望を抱いたことのない人には分からないやり場のない痛みについて考えさせられた。

    0
    2026年08月31日
  • マチネの終わりに(文庫版)

    Posted by ブクログ

    クラシックギター奏者の蒔野と、記者の洋子。
    現実の社会情勢を背景に、二人の出会いからすれ違い、それぞれの人生、そして再会までが、フィクションとは思えないほど丁寧に描かれている。読み終えて、「運命とは何だろう」と改めて考えさせられた。

    私が特に心に残ったのは、「過去は変わる」という考え方。

    過去に起きた出来事そのものは変えられなくても、その出来事をどう受け止めるか、どんな意味を持たせるかは、その後の人生によって変わっていく。
    実際に私自身も、今が良い方向に変わったことで、以前は嫌だった過去の記憶まで少し違って感じられた経験があり、この言葉にはとても納得した。

    読み終えたあとも、「この先、二人はどうなるのだろう」と誰かと語り合いたくなる。
    そんな余韻がいつまでも残る作品だった。

    0
    2026年08月30日
  • 空白を満たしなさい(上)

    Posted by ブクログ

     最近死者が生き返る事象が頻発している中、会社の屋上から転落死した主人公・徹生も現世に「復生」した。自殺と思われていた彼の死だったが、徹生自身にそんな記憶はなく誰かに殺されたのだと訴える。生き返ったとしたら喜ぶはずの妻も息子も戸惑いが強い様がリアルで寂しい。徹生を殺した疑いが強い最有力容疑者・佐伯を始め、薄気味悪い登場人物ばかりで息苦しくなる。自殺と考えられていたから、徹生が生き返っても歓迎されないのか。死に方によって周囲の反応は全く違うのか。展開が気になるので次巻へ。

    0
    2026年08月30日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    過去は変えられないが 未来は変えられる
    私が知っている その人の面は一面でしかない この方に登場する主人公の城戸の妻 香織が浮気をしていた。母親の顔、妻である顔、会社員の顔。
    裏切りの行為であっても 許す 許さないのではなく そして なぜそういう風にしたのか と問いただす でもなく それはその人の一場面でしかなく 全てを知ろうと思うこと自体無理である
    自体が大ごとになった時に対処するにとどめ る。
    とある男の真相を探る中で人間はいろんな面を持つということを理解した主人公。
    だからこそ 一番身近である 妻でさえも 色んな面があると理解できた。

    0
    2026年08月29日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「ある男」が宮崎で過ごした3年9か月。
    これがかけがえのないものであったことがわかり、なんだか救われたような気持になりました。
    長生きしてほしかったな…。(そうしたら小説になじまないけど)

    0
    2026年08月29日
  • マチネの終わりに

    Posted by ブクログ

    未来は常に過去を変えている。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。

    紛争、テロ、天災に見舞われる世の中で生きた男女の新しい愛の形

    0
    2026年08月28日
  • マチネの終わりに(文庫版)

    Posted by ブクログ

    全然うまくいかない
    けど、美しいラブストーリー
    過去は変えられるし、変わってしまう。
    過去は変わってしまうんや。

    0
    2026年08月26日
  • マチネの終わりに

    Posted by ブクログ

    作者の文体がとても上品で丁寧で、それがそのまま高貴な2人の人物像を思い浮かべさせるものだった。芸術についての背景知識が多く、あまり詳しくない自分にとっては置いてけぼりになるところはあったものの、2人の美しい世界観の裏にはそれら芸術が広がっていて、上質で眩しい恋愛関係を作っていた。たった数回会った関係性でここまで物語を広げられるものなのかと読んだ後に感動した。未来をどう生きているかで過去自体は変わらないけど、過去の見え方は変わってくるという主旨の、個人的に心に残ったフレーズも多く、時々読み返して学びにしたい。

    0
    2026年08月23日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    やはりこの方の表現する文章の書き方が好きだ。
    思った以上に複雑で登場人物も増えてきたので、もう一回読みたいなぁ。
    過去を聞くと、良い過去であれば良い人に見えて、犯罪歴とか悪い過去を聞けばやっぱり、とか、だから、とか、そう言う目で見てしまうものなのかな。
    過去を積み重ねて今の自分だから、過去の経験からしてしまう考え方の癖とか抜けないよね。過去の自分が好きだった部分もあるけど、今が辛すぎるとと新しい自分になりたくなるね。

    0
    2026年08月16日
  • ある男

    Posted by ブクログ

    感想
    この作品は登場人物の内面をよく描くことで構成される。自己とは一体何なのか?

    人であれば一度は考えることかな。

    最後、城戸の結末が書いてないので気になる


    あらすじ
    弁護士の城戸は、里枝という女性から亡くなった夫の素性を調べて欲しいと依頼される。里枝は宮崎の田舎で結婚し、次男を失ったことから夫と別れ、谷口大佑と出会った。しかし、大佑は1年後に事故で亡くなる。その後、実家に知らせると兄がきたが、大佑ではないと言う。里枝は離婚調停の時に世話になった城戸に大佑の素性を調べてもらうように依頼する。

    城戸は大佑の素性を洗いながら自己というものについて考える。自身が在日3世のコリアであること、東日本大震災をキッカケに妻とソリが合わなくなったことなど。そのうち戸籍の交換を仲介して服役している小見浦に会いに行き、戸籍交換のヒントを得る。調べるうちに死刑囚の小林の息子が、大佑である可能性が浮上する。しかも、複数人と何度も戸籍交換したかもしれないことが分かってくる。そして、大佑を名乗った人物はやはり死刑囚の息子の原誠であるとわかる。

    大佑の元カノである美涼が大佑になりすまして作ったfacebookのアカウントにきていたメールを糸口にして曽根崎と名乗る大佑に会って情報交換する。また、城戸は妻の香織に事情を話して、関係がよくなるように話し合いたいと言って、関係が改善される。しかし、妻の携帯から不倫の兆候らしきものを見つけたが黙っていた。

    城戸は原誠の調査報告を里枝の元へ出向いて報告する。自我に対する考え方にも決着をつける。

    0
    2026年08月16日
  • 小説の読み方

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    エンタメ★
    学び★★★★
    癒し★★★
    本の読み方に続く続編、
    小説の読み方で紹介しているのが
    小説の読み方のアプローチとしてニコラス,のティンバーゲンの4つの質問というもので
    1メカニズム
    2発達
    3機能
    4進化
    というもの。もともと動物行動学における動物の行動に対するものだが、小説の読み方にも通じる物があるとしてそれぞれの項目を説明するところから始まる。それと
    矢印の方向にも気を使うよう説明している。
    その後具体的に色々なジャンルの小説の一場面を紹介し、4つの質問に沿って解説していく。深い読み方だし、そうやって読むのかと今回も新しい発見があった。

    0
    2026年08月15日
  • マチネの終わりに(文庫版)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    「人は変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているのです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。それくらい繊細で、感じやすいものではないでしょうか。」
    本の冒頭と後半に出てくるこのセリフ。2回目が染みるの何の。
    天才ギタリストと、努力家の美しきジャーナリスト。教養を持って世界を違う目で見る2人にしか分かち合えない世界。嫉妬してしまうくらい素敵だった。儚かった。

    めちゃくちゃ面白かった。久しぶりにぐいぐい読んでしまう小説を読んだ。面白かった、は違うか。ただ2人の男女が出会い、すれ違い、また再開するまでの話なのだが。そこにイラク戦争での体験や、天才ゆえのスランプなどがもつれあい、洋子の知性や教養の美しさも相まって情熱的な崇高な愛に感じられる。人はこんなに、何個の罪を犯してでも、誰かを愛してしまうものなのだろうか。

    海外の話がよく出てくるので、この海外にいるタイミングで読めたのは良かったと思う。
    教養を身につけたいと浅はかに思ってしまう。洋子さん素敵すぎる。憧れる萌子先輩のようだと思いながら読んでいた。

    0
    2026年08月15日