平野啓一郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
気がつくと3年が経過し、徹生は一度死んでいた。
徹生だけでなく、日本では復生者として一度死んだ人が生き返る現象が起き始める。
当時の検死では自殺と判断された。
しかし、「自殺なんてあり得ない。誰に殺されたのか?」というミステリー調で物語は始まる。
ミステリーを好まないので身構えこそしたが、読み進めるうちに、平野啓一郎の思想である「分人主義」や深い「死生観」へとテーマが移り変わっていく。分人主義を小説という形式に落とし込んだ作品とも言える。
印象に残った一節を3つ抜粋したい。
まずは、死生観について。
「どんな人生でも、死に方にさえ立派であれば、立派な人生だ。――それは人を破滅させる思 -
Posted by ブクログ
「私とは何かー個人から分人へ」が平野啓一郎さんの著書ではじめて。その中で紹介されていたため読んでみることにしたのが今回。
分人が当たり前の世界で、それが他者の良い面悪い面を受け入れやすい世の中を作ってるようで、別の分人を別人のように扱う節も見えたり、悪いことが肯定されたり、良いことの評価が弱くなったり。人間そんなもんだよなと思った。
監視社会の生きづらさと安心感の狭間のもやもやもよく分かる。「神様が見てる」みたいな程よい「恥」は似たような要素を持つのかもしれない。でも生き過ぎた恥の文化は同調圧力にも繋がる。
分人主義も監視社会も、何事もバランスが結局大事やなと。 -
Posted by ブクログ
天才ピアニストと聡明かつ美人ジャーナリストの結ばれない愛の物語。
2人の出会いのシーンで感じたのは、教養で付き合える人の幅が広がるということ。
洋子の教養には驚かされるものがあった。
話の中盤からは「三谷はなんてことをしてくれたんだ…」という想いでしかなかった。
彼女さえいなければ蒔田と洋子は深い愛で結ばれ、幸せな家庭を築いていたというのに。
しかし、蒔田に尊敬と異常なまでの愛情を持って大きな過ちを犯した三谷を強く責めるものは、誰もいなかった。責められなかったという方が正しいのか。
愛に結ばれず、しかし互いに愛と信じた道を歩んでいく。なんとも寂しく、大人な話だと思った。
40を過ぎて人 -
-
Posted by ブクログ
新型コロナウィルスのパンデミックを挟んで、10年近く前にまとめられた書籍であるにも関わらず、アテンションエコノミー、SNSがもたらすエコーチェンバー、そしてAIによるオートメーション化がどのように「私たちの自由」と関わるのか、問いことに言及している視点の奥行きの広さと深さに驚かされる。
刊行当時理解されなかったであろう事柄、特にUber Eatsが都市部では当たり前となり、リモート会議も珍しくなくなったパンデミック以降の感覚では、「職業」によって回収される近代的個人から分人的な働き方を通じて得られる自由、あるいはリモートワークで得られる住む場所の自由も実感のあるものとして深く理解できる。