平野啓一郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
恋愛が人生を大きく変えてしまう強さがある反面、それは自らだけではないため、すべてはタイミングであり、それが運命と呼べるのだと感じた。
洋子の父ソリッチが言っていた「自由意志というのは、未来に対してはなくてはならない希望だ。自分には、何かが出来るはずだと、人間は信じる必要がある。そうだね? しかし洋子、だからこそ、過去に対しては悔恨となる。何か出来たはずではなかったか、と。運命論の方が、慰めになることもある。」
まさに強い意志たちが交差したいわゆる"運命"を、お互いの意志により惹き合わしたラスト。
なにが幸せかはわからない。
ただこれがなければ生きられないはあるのだろう。 -
Posted by ブクログ
純粋に恋愛小説としても楽しめると思うが、私自身は、「過去を変えられる」というフレーズに取り憑かれた。作者の作品で、直近に「ある男」を読んでいるのもあり、なにかこう、人が生きる上で、逆らえない、未来に向かう時間の流れと、その中で、人が人と魂同士で関わり合うことによってお互いに及ぼし合っているチカラを感じて、哲学的な物も感じた。作品から読み取ったとしては、あまりに月並みな薄っぺらい言葉になってしまうかもしれないけれど、辛い過去も、今、この瞬間を生きる事で、良いものに変わるのであれば良いなという勇気をもらえた。今、そして未来を生きる希望というか…いつか、きっと という。
-
Posted by ブクログ
読んでて一番きついのは、二人とも相手を嫌いになったわけでも、気持ちが冷めたわけでもないってこと。むしろ想い合ってるのに、誤解とか、ちょっとした選択のズレとか、自分から動けない不器用さとかが積み重なって、取り返しのつかないところまで行ってしまう。「あの時ちゃんと確かめてたら」「あの一言を言えてたら」って、読んでるこっちが何度もやきもきさせられた。
平野啓一郎の「人生は連続してるようで、実はいくつかの決定的な選択の積み重ねでできてる」みたいな考え方が、この二人のすれ違いを通してめちゃくちゃ説得力持って迫ってくる。恋愛小説っていうより、大人になってからの選択とか後悔について考えさせられる話やっ -
Posted by ブクログ
気がつくと3年が経過し、徹生は一度死んでいた。
徹生だけでなく、日本では復生者として一度死んだ人が生き返る現象が起き始める。
当時の検死では自殺と判断された。
しかし、「自殺なんてあり得ない。誰に殺されたのか?」というミステリー調で物語は始まる。
ミステリーを好まないので身構えこそしたが、読み進めるうちに、平野啓一郎の思想である「分人主義」や深い「死生観」へとテーマが移り変わっていく。分人主義を小説という形式に落とし込んだ作品とも言える。
印象に残った一節を3つ抜粋したい。
まずは、死生観について。
「どんな人生でも、死に方にさえ立派であれば、立派な人生だ。――それは人を破滅させる思 -
Posted by ブクログ
「私とは何かー個人から分人へ」が平野啓一郎さんの著書ではじめて。その中で紹介されていたため読んでみることにしたのが今回。
分人が当たり前の世界で、それが他者の良い面悪い面を受け入れやすい世の中を作ってるようで、別の分人を別人のように扱う節も見えたり、悪いことが肯定されたり、良いことの評価が弱くなったり。人間そんなもんだよなと思った。
監視社会の生きづらさと安心感の狭間のもやもやもよく分かる。「神様が見てる」みたいな程よい「恥」は似たような要素を持つのかもしれない。でも生き過ぎた恥の文化は同調圧力にも繋がる。
分人主義も監視社会も、何事もバランスが結局大事やなと。 -
Posted by ブクログ
天才ピアニストと聡明かつ美人ジャーナリストの結ばれない愛の物語。
2人の出会いのシーンで感じたのは、教養で付き合える人の幅が広がるということ。
洋子の教養には驚かされるものがあった。
話の中盤からは「三谷はなんてことをしてくれたんだ…」という想いでしかなかった。
彼女さえいなければ蒔田と洋子は深い愛で結ばれ、幸せな家庭を築いていたというのに。
しかし、蒔田に尊敬と異常なまでの愛情を持って大きな過ちを犯した三谷を強く責めるものは、誰もいなかった。責められなかったという方が正しいのか。
愛に結ばれず、しかし互いに愛と信じた道を歩んでいく。なんとも寂しく、大人な話だと思った。
40を過ぎて人 -