平野啓一郎のレビュー一覧
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人の死について考えさせられる作品でした。
大切な人に先立たれ、この世に置いてかれた人たちは、その、ぽっかりと空いた「空白」をその大切な人との記憶や記録などで満たそうとする。
それは故人を、ある意味「理想化」することでもあり、はたして正しかったとは限らない。
しかし、そうでもしないと「空白」を満たせずに壊れてしまうから。
「分人」という考え方に納得しました。
(「分人」とは他人と関わっている自分の部分的一面のようなこと。)
自分もこれに思い当たる節があり、裏表を使い分けているってよりかは、あの人といると自然とこういう態度をとるなぁってことがありました。
完璧主義な自分でもあるので、自己否定し -
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たぶん11/7〜11/20
かなり新鮮な新書。大学受験を思い出した。評論ってこんな感じだったな。新書って、主張がある分、例示に逆説、視点を変えて主張に向かう感じが若干疲れたかも。新書ってエネルギーいるかも。
中身については…、
分人主義っていうのはたしかに言い得て妙で面白かった。たしかに、今まで、本当の自分って何?本当の自分があるってことは偽って無理して欺いている自分がいるのか?と思うところはあったかもしれない。
分人主義はindividual(個人)の対義語divisualとして定義される。個人の中には、相手とのコミュニケーションを円滑にするための分人がコミュニティないしは相手単位で存 -
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いろんな雑誌に著者が書いたエッセイを中心にまとめた本。わかりやすい。
平野氏はなんとなく敬遠していた作家だった。デビュー作の『日蝕』を読んだのもほんの数年前。ところがやはり同じころ、私は死刑について考えたくなっていて、たまたま書店で平野氏の『死刑について』を見つけ買って読んでみたところ、見事にはまった。文章の運び、思考の流れが滑らかで素直に頷けた。
ちょうど同じころに東京新聞で「本心」の連載が始まり、毎日欠かさず読んだ。読ませる面白さがあった。
そんなこんなで作家平野啓一郎の書くものが好きになった。
そしてこの本。文学をどう捉えるか考える上で私にとってよい導き手になった。 -
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人によってキャラを演じ分けるという行動はだれにでもあるはず。私自身も、恋人と職場の同僚への接し方は明らかに違います。著者はそのような現象を「分人」という「個人」とは異なる単位で説明しており、生きていく上では、自分が複数の分人を抱えていることを肯定すべきだと主張しています。
本書ではあらゆる対人関係をこの「分人」の視点で解説しています。例えばコミュニケーションが苦手だと思っている人について、その原因を「相互の分人化の失敗」だと主張しているのも興味深かったです。
また、思春期の反抗も分人で説明しています。親に対する分人と友達同士の分人とが、混ざってしまうことを避けようとするからだと言います。さ -
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非常に陰惨。殺人描写だけではなくて、犯罪被害者や加害者家族を取り巻く状況が全てグロテスクに感じた。
著者は本当に現代の日本社会のありようを、ものすごくシビアにみていて、その通りに写し込んである。
読むのが辛くなるような展開なうえに救いがない。
崇を誰も救えない、その状況がまた居た堪れない。
特にリアルに感じたのは、義理の妹の態度だ。
自分の言葉によって崇を冤罪一歩手前に追い込んだのにも関わらず、自責の念はあまり感じられない。
他に犯人が見つかっても、心の中ではまだどこかで疑っているようで、子どもが抱き抱えられたとき、明らかに触ってほしくない、と思っているように描写されていた。
一度疑われて -
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外国が舞台に出てくる男女の物語ということで、最初、昔読んだ『冷静と情熱のあいだ』が思い出されました。
「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです」の言葉が心に残っています。なるほど、現在未来の捉え方によっては、過去の解釈が変わることはあり得るなと気付かされました。
あと、無理をして通してきたことは、結局は何年かかってもバネのように戻ることになるのだなと思いました。大きな流れには逆らえず、在るべきところに向かって流れていく。
平野啓一郎さん、沢山の文献を参考にしたり調査されたとは思いますが、このような作品に書き上げるなんて凄い方だなと思い -
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良かったです、タイトル通り「私とは何か」についての解釈を深められる本だなと思いました。
過去と現在、誰といるか、で何となく自分のコミュニケーションが変わることは自覚があった。
あとは、大人になるにつれてあんなに仲良かったあの子とは会わなくなったり。何となく一緒にいることに気疲れしちゃったり。新しく大好きな友達に出会ったり。そんな変化も感じていたこの頃、この本を読んで腑に落ちるところがありました。
「私という人間は、幾つもの人格の上で成り立つもの」というのが本書の内容である。その人格は他者との交流を経て形成される。
個性とはその人格の構成要素で決定するゆえに、誰と関わるか、つまり誰と関わ -
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ネタバレ次男の死と離婚を経て故郷に戻った里枝は「谷口 大祐」と出会い再婚する。長女も産まれ、家族4人で幸せに暮らしていた。しかし、大祐は林業の仕事中に事故死してしまう。
大祐から止められていたが、大祐の親族に連絡を取ると、大祐は別人だと告げられる。
里枝から相談をうけ、弁護士の城戸は「谷口 大祐」の正体を調べていく。
難しい!? いや、面白かったんです! でも、最後までいろいろ考えました。
時間がかかりました。Audibleなのに。
城戸と里枝を中心に、登場人物に感情移入し、楽しみながらも、自分は全てを理解しきれない、明確な答えを出しきれないモヤモヤを抱えて読み進めてるしんどさがありました。
う