平野啓一郎のレビュー一覧

  • 死刑について

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     芥川賞受賞作家による死刑廃止論。
     講演の内容ベースだから読みやすい。

     なぜ死刑廃止論の立場に至ったか、日本での死刑存置論の問題点はどこか。単なる冤罪のおそれを超えて、日本の立法、行政、行政、さらに人権教育の不完全さにまで及ぶ、考え抜かれた廃止論が展開される。
     
     死刑に賛成し存置を唱えることは、被害者遺族への真の思いやりではない、というのは重要だと思う。
     「憎しみ」の連帯ではなく、「優しさ」を持つ国へ、という主張は、死刑に限らず、昨今の日本の抱える分断・対立全般に当てはまる。著者の小説のファンにも是非読んでもらいたい。

     それにしても、某有名大学で名誉教授の憲法学者は、死刑に当たる行為をする人の人間の尊厳を否定して、死刑に賛成なんだとか。こういう学者は個人的には軽蔑する。

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    2025年12月30日
  • 空白を満たしなさい(下)

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    ネタバレ

    下巻は「分人」解説主体で、そこばかりに目が向きがちになるけれど、ラデック氏や池端氏の語りから"生き方"や"死後の生き方"など、なかなか重たいものについて考えさせられる。哲学的なようで、宗教的なようで、現実的でもあり、混乱。

    未知の父親の影を追い求めていた主人公だからこその「空白を満たしなさい」。父から息子への想いが凝縮されたタイトルの意味に、鳥肌其の一。どう活用するかは、大人になった息子がその時判断するでしょう。託せば良いさ。つべこべ言わず、子を信じろ。

    個人的には、自分が死んだ後で誰に何と言われようと気にならないし、まだまだ生きていかねばならない人たちにいつまでも自分を想ってほしいなどとは思わない方なので、〈ネイバー〉の在り方や復生者のエゴに、後半はあまり共感できない部分も多かった。何をしたかよりも何が目立ったのか問題とか、死後どうありたいかを考えるとか、あとゴッホの件などは納得しかないのだけれど。

    ただ生きて、今そこに存在していることが尊いのだと、改めて思った。一度死に、生き返ったからこそ、の二重三重の苦悩も、不幸なようで幸せな時間だったと言えるのかも知れない。

    最後の最後に鳥肌其のニ。これはどういうことなのでしょう?
    「だった。」が「だ。」とか、「あと少」でぶったぎるとか、色んなパターンに置き換えて考えてみたのだけれど……。ただ、璃久くんがそれまで以上に傷ついていなければいいなと思う。4歳の子供にこれは惨すぎる。

    分人主義という考え方をもう少し掘り下げてみたくなって、この本を読みながら新書をポチり。

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    2025年12月26日
  • ご本、出しときますね?

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    本好き芸人であるオードリー若林と小説家達とのトーク本。小説家であっても一人の人間。人の面白さから読みたくなった本が沢山ありました。
    書き手の面白さから本を手に取りたくなる一冊。

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    2025年12月16日
  • 文学は何の役に立つのか?

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    文学・芸術に関して、著者が寄稿したエッセイや批評、講演録、弔辞などをまとめたものである。ドナルド・キーンや大江健三郎、瀬戸内寂聴といった錚々たる顔ぶれとの交遊も伺い知れる。
    著者の小説はまだ読んだことがなく、文章を読むのは初めてだったが、硬質に見えて、意外と読みやすい。
    評論を書こうとすると、対象をよくよく観察し、客観性をもって言語化する技術が必要になる。多様な視点を持たなければ、独りよがりな説得力に乏しい論文になる。
    つまり文学とは、人間を多面的に考察していく営みであり、これは古来から、おそらく未来永劫なくなることはない。
    「文系不要論」が言われて久しいし、文系の中でもとくに人文学の肩身がせまい現状で、それでもあえて言いたい。
    文学ほど、役に立つものはない(かもしれない)。

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    2025年12月16日
  • 小説の読み方

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    今まで小説を適当に読んでいたけども、
    小説を読むために四つのアプローチ
    ①メカニズム
    ②発達
    ③機能
    ④進化
    があり、主語と述語、大きな流れの矢印など意識して読むなど読むための手法を学んだ。うーん、もっと早く、、、学生の時にこういう本読んでたらよかったなと。
    何作かが例として取り上げられているが、古井由吉氏の『辻』が難解!平野氏の解説みて何となく読み方が分かったけど、自分の読解力の無さが悲しくなった。今後もっとスローリーディングで丁寧に読んでみよう…

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    2025年12月12日
  • 文学は何の役に立つのか?

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    表題の講演録について。
    「役に立つか」と「価値があるか」は違う。「役に立たなくても価値がある」と言い続けることが大事。
    …とのことだが、これは文学に限らず、必需品以外のモノ・コト全てに当てはまる。
    「役にたつ」と「価値がある」は違う、よく考えれば当たり前とも言えるが、日常の中では同一視していると思える出来事、言葉、人も思い当たる。役にたつこと至上主義、みたいな。
    もちろん、価値がある、ということの判断軸は多様であるべきで正解はない。人によって、また同じ人でも時々によって違うだろう。
    なので、読みながら自分の思考は次第に文学の話から離れて、色んなところに乱れ飛んでしまった。

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    2025年12月11日
  • 死刑について

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    ネタバレ

    死刑廃止に限らず、何かを論じようとすると、必ず出てくるのが感情論。声が大きいのも感情論派。

    物事に「絶対」と言い切れるものはほとんどないと思うので、自分たちが「絶対」正しいという人たちとは距離を置きたい。
    争いの多くはその対立から生まれるが、一歩離れて両方を理解しようとするとなかなかどちらにも与せない。当事者以外はそうあるべきだと思うのだけれど。それが法治国家のはずなのに。

    筆者は「人権教育の失敗」を死刑が支持され続ける理由の一つとして挙げている。確かに「人権」を正しく理解している人がどのくらいいるかと考えると、己を省みても心許ない。

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    2025年12月10日
  • 文学は何の役に立つのか?

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    本書の表題となった講演録を含む、主に文学・芸術論について語られたエッセイ・批評集成。

    文学は何の「役に立つ」のか?
    著者は、「〇〇は何の「役に立つ」の?という問い自体に不思議さがあることを指摘し、役に立つかどうかは幾つかある価値のうちの一つでしかない」とした上で論を進めています。ズバリ最初に語られたその回答は、「だから自分は本を読んでいるのだろうか」と、自分の読書習慣を肯定されたような気持ちになりました(あまり文学は読んでませんが)。

    自分はいつから役に立つかどうかだけで物事を判断するようになったのだろう、と過去を振り返ってみた。そして、自分もその価値観だけで他人の行動や判断に対して制限を加えたり、口出ししたりしていたなと少し反省。

    本書で「社会の歯車として「役に立つ」ことと、身近な誰かにとって自分が「役に立つ」ことがどこかで結びついているのではないか、というのが近代だった。」とあり、吉本隆明の共同幻想論に通ずるものを感じた。

    映画オッペンハイマーについての批評はノーラン作品好きとしても非常に読み応えがあった。
    日本に原爆が落とされた、その経緯のおかしさについて私は知らなかったので、衝撃を受けた。
    映画オッペンハイマーは未視聴なのでこれを機に鑑賞したい、というか、しなければ。

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    2025年12月10日
  • 本の読み方 スロー・リーディングの実践

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    今までは速読でなんとなく分かったつもりでいたのが全く意味のないことに気づかされた。スローリーディングによって得られるもの、また、実践などができてとてもいい本だと思う。

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    2025年12月08日
  • 空白を満たしなさい(下)

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    起承転結が明白なスリリングなお話ではなく、もっと哲学的な内容だった。作者の平野さんは、「主人公の自殺」という極端な例を用いて、「分人主義」という思想を提唱している。
    分人主義とは、個人主義とは違い、対人ごと、環境ごとにいろいろな自分になり、鎧をかぶった「本当の自分」を認めないという考え方だそう。
    作者の平野さんがこの分人主義を使って願っていることは意外とシンプルで、ただ生きてほしい、己の人生を全うしてほしい、それだけじゃないかなと思う。
    物語だからこの主人公は空白を満たすために戻ってきた。でもこれは物語だから。現実世界に生きて、今どこかで思い悩んでいる人にもしもがあれば、もう二度と空白は満たせない。
    平野さんの願いが詰まったこの本が、今どこかで思い悩んでいる人に届いてほしいと思う。

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    2025年12月08日
  • 高瀬川

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    清水
    人の生死の一部始終は、清水の水滴が落ちるその一瞬なのかもしれない。滴り落ちる水滴の音は希死念慮だったのか…。

    高瀬川
    官能的な時間は、その後の出来事や明かされる過去によって、こうも印象が変わってしまうのか、と感じた。一度読んで感じた気持ちはもう戻ってこないと思い知らされます。

    追憶
    「複雑なことを複雑に考えている人にとっての追憶とはこうなのか?」と思う新たな読者体験。
    伝えたい内容の難解さを前に、言葉の定義を自分は果たしてしっかりと理解できているだろうかと自問させられた。

    氷塊
    氷は2人にとって何を意味していたのだろう。溶けることは…
    描かれなかった物語の背景ー氷山の下では、氷に触れ続けてしまった2人はこの短編の構造のように重なり合ってしまっていたのか…

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    2025年12月07日
  • 本の読み方 スロー・リーディングの実践

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    読むの遅いのがずっとコンプレックスだったけど、ゆっくりじっくり読んで、着実に自分の中に生かしていく読み方もありだと思った。能動的に読もうと思う

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    2025年12月06日
  • 文学は何の役に立つのか?

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    「役にたつ」ではなく「価値がある」と言い換えたい。

    絵画については知識がなさすぎて言っている内容が理解できなかった。

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    2025年11月27日
  • 空白を満たしなさい(下)

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    人の死について考えさせられる作品でした。

    大切な人に先立たれ、この世に置いてかれた人たちは、その、ぽっかりと空いた「空白」をその大切な人との記憶や記録などで満たそうとする。
    それは故人を、ある意味「理想化」することでもあり、はたして正しかったとは限らない。
    しかし、そうでもしないと「空白」を満たせずに壊れてしまうから。

    「分人」という考え方に納得しました。
    (「分人」とは他人と関わっている自分の部分的一面のようなこと。)
    自分もこれに思い当たる節があり、裏表を使い分けているってよりかは、あの人といると自然とこういう態度をとるなぁってことがありました。
    完璧主義な自分でもあるので、自己否定して嫌になるときには、その「分人」を見守るような人になりたい。

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    2025年11月24日
  • 文学は何の役に立つのか?

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    文章を添削する立場になって手に取った本。
    思ってたんと違う、って思ったのに、思った以上に面白くて全部読んでしまった。
    瀬戸内寂聴とドストエフスキーついて知りたくなった。

    役に立つことと価値がある事は違う。
    人間は役に立つかどうかは関係無く、存在そのものに価値がある。憲法で謳っている。
    主人公への共感から多くを得る。

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    2025年12月22日
  • 空白を満たしなさい(上)

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    自分はすでに死んでいる!?
    主人公は、復生者として蘇った死者。
    死ぬ直前の記憶がなく、妻と子供と幸せな家庭を築いていたはずなのに、自殺したと非難されていた。
    自殺などするはずがない…。
    死の間際には一体何があったのか、真実に迫る作品。
    読んでいると、真実は一体何なのか、頭が混乱します笑
    下も続けて読みます。

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    2025年11月20日
  • 空白を満たしなさい(下)

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    ネタバレ

    「死」について深く考えさせられた作品。特に自殺について。自殺をしてしまう人の考えは、もちろん死者に聞くことができないのであくまで推測の話になると思うが、自分自身を消してしまいたくなるほどに追い込まれていると死のうとしていなくてもそういう行動となってしまうという作者の考えに深く考えさせられ印象に残った。最後の終わり方も読者にその後を託すような感じのため想像力を掻き立てられた。読後の口コミや評価などをみて読者それぞれの解釈、ストーリーがあって見ていて楽しい。

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    2025年11月16日
  • 文学は何の役に立つのか?

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    いろんな雑誌に著者が書いたエッセイを中心にまとめた本。わかりやすい。
    平野氏はなんとなく敬遠していた作家だった。デビュー作の『日蝕』を読んだのもほんの数年前。ところがやはり同じころ、私は死刑について考えたくなっていて、たまたま書店で平野氏の『死刑について』を見つけ買って読んでみたところ、見事にはまった。文章の運び、思考の流れが滑らかで素直に頷けた。
    ちょうど同じころに東京新聞で「本心」の連載が始まり、毎日欠かさず読んだ。読ませる面白さがあった。
    そんなこんなで作家平野啓一郎の書くものが好きになった。
    そしてこの本。文学をどう捉えるか考える上で私にとってよい導き手になった。

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    2025年11月09日
  • 小説の読み方

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    本書は、文字通り小説の読み方を解説した作品。国語の教科書的な印象を受けつつ、小説ってそうやって読むんだという新鮮な気づきがあった。主語について、情報を追加していく文章と、物語のプロットを進めていく文章とに分かれるという視点だけでも、今後結構読み方が変わりそう。

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    2025年11月08日
  • 決壊(下)

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    非常に陰惨。殺人描写だけではなくて、犯罪被害者や加害者家族を取り巻く状況が全てグロテスクに感じた。
    著者は本当に現代の日本社会のありようを、ものすごくシビアにみていて、その通りに写し込んである。
    読むのが辛くなるような展開なうえに救いがない。
    崇を誰も救えない、その状況がまた居た堪れない。

    特にリアルに感じたのは、義理の妹の態度だ。
    自分の言葉によって崇を冤罪一歩手前に追い込んだのにも関わらず、自責の念はあまり感じられない。
    他に犯人が見つかっても、心の中ではまだどこかで疑っているようで、子どもが抱き抱えられたとき、明らかに触ってほしくない、と思っているように描写されていた。

    一度疑われてしまうと、その汚点は、消しても消しても薄い染みが残り、みんなその目で見る。
    本人に咎がなくても、一度汚物として扱われたら、元のようにはけして扱ってくれない。現実社会もきっとそうだし、似たようなことはあらゆることで起こっている。本当にゾッとした。

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    2025年11月03日