平野啓一郎のレビュー一覧
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ネタバレ一気に読んでしまった下巻。
平野作品のカバーはよく考えられているのだろうと思ったから、絶対にゴッホの「自殺」についての描写(もしくは自
殺ではなかったのではないか)というテーマが出てくるのかと思ったら、下巻の絵が実はゴッホではなく、弟のテオだったのでは?という説が出てきて、それは私も初耳だった。
平野さんが興味を示している「分人」についてこの作品ではよりわかりやすく語られている気がする。やはりこの作品を読んでから、「本心」を読むともっとわかりやすかったのかなとも思う。
でも入門というか、手にとるようなテーマとして、「本心」に出てくる母親のVFっていうのは興味深かった。
子供2人、家族を持つものとして読んでいくとしかし、やっぱり徹生は幸せ像に殺されてしまったのではないかと思ってしまう。必死になりすぎて、疲れていることも認めずに、自ら命を絶ってしまうなんて。でもそれが日本社会が築き上げた、働きづくめの日常、そしてそれすら相談し合えない時間の無さとすれ違い、こんなことはあり得るんじゃないかという気がしてくる。あまり育児のプレッシャーや子供への愛情を感じなかったけれど、それは璃久との描写が「子供の日の兜の写真を撮った時」ばかり強調されたからかもしれない。でも、叱ってしまう部分の描写や、離乳食を食べさせるときにイライラしてしまうのは共感した。
側から見ていると、もっと良いアプローチがある(正解)がある、と思ってしまうのかもしれないけれど、両親たちは必死にやっているんだよな。親たちのメンタルを健康に保ちつつ、子供をしつけていくのって本当に大変だと思う。
映像化作品も途中まで見てみたのだが、やはり徹生の心理描写が全然足りていない気がしたのと、妻、千佳は小説にはもっと可愛らしさとうちに秘めた弱さや脆さみたいな絶妙なバランス感があった気がする。 -
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スローリーディングのすすめ
『本当の読書は、単に表面的な知識で人を飾り立てるのではなく、内面から人を変え、思慮深さと賢明さとをもたらし、人間性に深みを与えるものである。そして何よりも、ゆっくり時間をかけさえすれば、読書は楽しい。私が伝えたいことは、これに尽きると言っていい。』
Recommendation for Slow Reading
"True reading is not about adorning oneself with superficial knowledge, but about transforming oneself from within, bringing about thoughtfulness and wisdom, and adding depth to one’s humanity. Above all, reading is enjoyable if you simply take your time. This, more than anything, is what I wish to convey." -
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ネタバレ分人という視点、苦悩の扱い方、そして「死」がもたらす余波に深く揺さぶられた。
分人について、誰かと一緒にいるときの自分と、一人のときの自分って確かに違う。その中には好きな自分もいれば、あまり好きじゃない自分もいる。
本書の中にはすごく哲学的な内容もあり難しい部分があって、そこは斜め読みしてしまった。
いつか再読したときには少しでも分かるといいな。
ラストのシーン、光の描写が美しくて切なくて…。
残された家族のことを思うと胸が痛いし、「死ぬことって、自分だけの問題じゃないんだな」と改めて考えさせられた。読後も余韻が残る、深い一冊だった。 -
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ネタバレ分人の考え方を深ぼる試みを感じる作品。「空白を満たしなさい」でも思ったけれど、平野さんはとことん哲学と向き合うのが好きで、火星探索がどうだったかだとか、なぜ死んだ人が生き返るのか(空白を満たしなさいの設定)だとか、そこのからくりの説明に1ミリも関心がないのが、清々しくてよい。
自分が好きだと思える、世の中のためだと信じられるディヴ(分人)を差し出したい、というリリアンの願いは切実で、共感できる。明日人の複雑な心境はわかるような、わからないような。
私を構成する多数のディヴの中でも、
・心地よく、多くの他者と共有できるもの(パートナーや友人の中にいる時の自分)
・心地よいが、他者との共有は困難なもの(秘めた分人、自分だけの世界)
・心地悪いが、他者と共有せざるを得ないもの(嫌な環境の中にいる時の自分)
・矛盾しあう分人
とか、色々な分類ができるなぁと思った。
あとは、生きるディヴが強制的に少なく固定される学校生活は、だから窮屈だったんだなぁとか。
「ありたい私である」と言ってしまうと、大それて聞こえるけれど、「そうありたい分人を持つ」「自分を好きだと思っている分人をメインにする」のような考え方に細分化して生きるのは、有意義な気がした。 -
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本書は『本の読み方スロー・リーディングの実践』の続編であり実線偏であります。現代の純文学、ミステリーさらにはケータイ小説も含めた計九作品を題材に、予備校の授業のようなイメージで解説してくれます。
本書は芥川賞作家・平野啓一郎氏による読書論・第2弾です。個人的には『本の読み方スロー・リーディングの実践』の小説版であると捕らえております。
この記事を読むために何回か再読しましたが、読みながらイメージしたことは丁度、予備校の現代文の授業風景で、平野氏が黒板で講師をする映像が頭に浮かび、もしかしたら平野氏は小説家としてだけではなく、予備校講師の道を選んだとしても、人並み以上の成功を手にしていたのではなかろうかとさえ、思ってしまいました。
ここで取り上げられている作品は、ポール・オースター『幽霊たち』綿矢りさ『蹴りたい背中』ミルチャ・エリアーデ『若さなき若さ』高橋源一郎『日本文学盛衰史――本当はもっと怖い「半日」』古井由吉『辻――「半日の花」』伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』瀬戸内寂聴『髪――「幻」』イアン・マキューアン『アムステルダム』美嘉『恋空』――の9編で、まさか平野氏が「ケータイ小説」の走りである『恋空』にまで言及しているとは正直思いませんでしたし、今でも驚きを隠せませんでした。
しかし、作家が小説を読み込むということはここまでクオリティの高い知的生産活動になるのかということに、読みながら本当に驚かされました。
『蹴りたい背中』にある『コミュニケーションのとり方』学校小説というジャンルの中に横たわっている『疎外感』。筆者自身が『エンターテイメントに徹した』と言わしめる『ゴールデンスランバー』も筆者が読み解くと「いかにうまく読者を裏切るか」などの技巧的なものから、作品がいかに『読者の声を代弁する』かということについてまでの言及がなされており、「ここまで読み込むのか!」という思いが頭をよぎり、まだまだこれを見習わないとなぁ、と自分の努力不足を恥じ入るばかりでございました。
僕の小説の読み方はただ単に『読んで味わう』『好みによって読む作家の作品を選ぶ』というまことにもってプリミティヴなものであったかを痛感させられてしまい、これをきっかけにして、筆者の境地にたどり着くのが到底無理であると自覚しつつも、この本に記されている読みかたも、今度からは自分の読書の方法のうちに取り入れてみよう、なんて思っています。
そして、繰り返しますが、この本を読んでいると氏の『講義』を1対1で受けたような気分になり、とても有意義な時間でございました。
仮に、平野氏のような現代文の予備校講師がいると、現役時代に小説を読まなかった高校生が、大学に入ると猛然と読書をしたりすることがあったりするので、人や本との出会いというのは本当に大切なものでございます。
※追記
本書は2022年5月11日、PHP新書版に、ドストエフスキーの『罪と罰』と平野氏の『本心』の解説を新規追加し、再編集の上、『小説の読み方 (PHP文芸文庫)』として文庫化されました。 -
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本書は作家・平野啓一郎氏が提唱する「スロー・リーディング」を解説したものです。夏目漱石『こころ』や三島由紀夫『金閣寺』から自作の『葬送』まで、古今の名作を題材に実践的な手法の数々を 教えてくれます。
この記事を書くために先ほど何度目かの再読をいたしました。本書は作家・平野啓一郎氏による「本の読み方」をいわばマンツーマンで指導してくれるといった趣旨のもので、3回ほど再読すると味の出るつくりになっております。
作中で平野氏が「もっと早く本が読めるといいんだけどなぁ」と嘆きつつ、先輩の作家に「自分は本を読むのが遅いんですが、どうすればいいのでしょうか?」と尋ね、「実は自分もなんだ」と回答を得て、ほっとしたという箇所を見ていると、彼ほどの才能があっても、こういうところは悩みどころなんだと、正直さとほほえましさに思わずニヤリとしてしまいました。
「速読家の知識は単なる脂肪である」などのずいぶんアグレッシブなタイトルの元に自分もいくつか速読に関する本を買って読み、「これは自己啓発本だ」と一刀の下に切り捨てる箇所はなんとも思い切った筆致だなぁと思うとともに、『スローリーディングは「五年後、十年後のための読書である」』といい切る部分は確かにそのとおりで、自分自身も必要に迫られてビジネス書を読む場合は『実践する』という観点に則って読むために即効性を求め、これが5年後10年後の自分にどう影響を与えるか? という観点では確かに読んでおりませんでした。
ビジネス書の大半は正直、さらりと読めるものがほとんどで、ここに書かれているようなテクニックを遣わなくてもいいと思うのですが、例外というものは確かにあって、たとえばドラッカーの『マネジメント』やマイケル・ポーターの『競争の戦略』なんかは何度も読まないとわかりません。それ以外の本はたいてい斜め読みしても十分だと思います。
さらに、古今東西のテクストや古典を通して平野啓一郎氏の「本の読み方」というのは自身が高校時代に現代文の試験が苦手だったという経験から、スローリーディングの読み方を生かして出題者の『意図』を知るという読み方に変えたところ、成績が尻上がりに上がっていったというエピソードや、小説家ならではの『小説の読み方』。というもの参考になるかと思われます。
僕自身が最近見落としていることのひとつに『辞書癖をつける』というものがあって、『わからないことは辞書を引いて調べる』ということをグーグルなどに頼って、ついおろそかにしてしまうことも自戒しなければならないな、と思いながらページをめくっておりました。
ただ、平野氏の推奨する読書方法は古典や小説において、最大限の効果を発揮するものであろうと思われますので、それ以外のものに関してはほかのやり方を適用しようかと考えております。
※追記
本書は2019年6月4日、新書版を加筆・修正し再編集し『本の読み方 スロー・リーディングの実践 (PHP文芸文庫)』として文庫化されました。 -
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いや〜ゴールイン!
第一部でも書いたけれど、難解な芸術論…は苦戦。
ただ、第二部はショパンの最期があり、彼を取り巻く人々の群像劇もあり…一気に読んだけれど、読後は魂が抜けたような、でも、壮大な時代を共に駆け抜けたような…そんな脱力感もありつつ、平野さんの力量を改めて実感した体験でした。
政変があり、伝染病があり…混乱する何か大きな出来事の中では芸術は…芸術家というものは…やはり影響をダイレクトに受けるものなのですね。。。
生きるか死ぬかと言う時に、絵画や音楽や文学なんて「不要不急」と云われた、コロナ禍を思い出し、なんだ何も変わってやしないじゃないか…と感じました。
ただ、だからそれらが無くなったのか?と問えば、決してそうではない。病んだ時代にこそ、悲痛な時にこそ、優れた芸術は人々に寄り添い、慰め、語りかける。自論ですが「良い文学とは常に弱者に寄り添うもの」と思っているので、そういった意味では、まさに優れた芸術とは、不滅なのだと思います。
1人は病に苦しみ抜いて短い生涯を閉じた天才。
もう1人は画壇から遠ざけられながらも信念を貫いた孤高の天才。
2人の天才に共通する「孤独」が、ふと何気ない会話の中に交差して、他の者には理解し難い、けれど唯一無二の絆があった。
ドラクロワはショパンの最期に間に合わなかった…いや、意図的に遠ざけた…その点において、他の友人とは異なっているけれど、彼にとってショパンとの別れはもっと根源的な部分で感じる何かであって、物理的な距離よりも、尚、そこを超えて、共に歩み続ける芸術家として深い部分での繋がりを表しているように感じました。
そこにあるはずの者が居ない…
まさに「不在」こそが「死」なのだろうけれども、ドラクロワがそこに留まらずに描き続けることは、天才同士の暗黙の了解の上に成り立つ友情なのではないかな。。。
この小説には書かれていないけれど、、、
この後、ドラクロワはあれほど嫌われたアカデミーの会員となり、多くの公共事業を請け負い、大家となります。そして、印象派といわれる後の画家達に大きな影響を与えるようになる。
彼も結核性の喉頭炎を患いながら、最期は家政婦のジェニーに看取られて亡くなるまで、旺盛な意欲を仕事に注ぎ、膨大な作品を残しています。
ショパンの楽曲は今に至っても燦然と輝清華続けているだけでなく、「ショパンコンクール」は国際的なコンクールとしてピアニストの聖地にもなっている。
2人の天才の成した功績は、彼らの情熱を裏切らず、時を超えて今でも人々に寄り添い続けていることを思うと、やはり優れた芸術は不滅だと、改めて思います。
そして、文字通り身を削って作品に心血を注いだ芸術家達に、深い尊敬と感謝の念を抱きます。 -
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ネタバレなんだかずっと歴史の転換点にいるという話を聞くような気もするけれどー歴史的には、その「期間」が転換「点」とされるのか…
大澤真幸さんと平野啓一郎さんのお二方は、これまでも対談を重ねてこられていたそうで、
この本に収録されているのは、2020年~2022年に4度行われた対談。
1. 平成の天皇が退位を宣言した後の2019年1月
2. コロナ禍の2020年8月
3. コロナ禍の2021年3月
4. ロシアのウクライナ侵攻後の2022年4月
あとがきでは、
_諸々の大問題を直視するならば、未来予測はどうしても悲観的になりがちだが、私が大澤さんと一致しているのは、反シニシズムであり、また、自己批判なきナルシズム及び「現実主義」を偽装した「現状追認主義」への批判であって、本書でも、各々にあるべき未来の理想について語り、その選択の仕方を考えた。(平野) -
Posted by ブクログ
最近読書の勢いが増していたが、速く読むことを意識し過ぎているのではないかと自省し、本書を手に取ってみた。面白かった小説などは内容が映像として頭に残っているが、ふむふむと納得しながら読んでいると思っていた新書などは思い出せないものが多い。そんな中で「著者が長年書いたものを短時間に、ましてや速読法などで理解するのはおこがましい」というメッセージは心に突き刺さりました...
後半は古典作品から抜粋した文章を用いて本の読み方を説明していたが、自分が興味のあるところだけを読みました。本棚に残しておきたい本ではあるので、また気になったタイミングで読破したい。