平野啓一郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
私は死刑廃止派
死刑について深く考えるために読む。
在置派だった筆者による考察・論調は自分では到達出来ないような視点を提示してくれる。
法のもとに人を殺すことが可能な国は…人権を軽視しているようで嫌だし、殺人をしてはいけないけれど死刑による殺人はOK(やむを得ない)というのは、人間が命に優劣をつけているとも取れる。
同じ命あるものに、同じ人間の自分が優劣を決める可笑しさ、悲しさ、、不思議に思うけれど、自分が判断・手を下す訳じゃないから、他人事なのかな?廃止は理想なのかな?
なんて自分の考えに固執しないよう、在置派の考え・論理をこれからも知っていきたい。
まずは、考えるきっかけに良本だと思う。 -
Posted by ブクログ
「分人主義」という他者に対する「個人」という見方ではなく、いろんな他者と相対するときの複数の人格を自分と捉える考え方がベースにあって、そのベースの中で、「自由」「幸福」「テクノロジーの進化」「本当の自分」などのテーマをさまざまな専門家と対談しながら、書かれていた。
分人主義という考えが非常にしっくりきて、心理学的には「自立」の考え方と似てると思った。「自立」は1人でなんでもできることではなく、様々な組織、コミュニティーに属することで依存先を増やすこと。そうやって、自分を見つけることが「自立」と言われたりしてる。
「分人」や「自立」は全然違う表現だけど、複数の他者から見た自分という観点が全く同じだと思った。
いくつか感銘を受けた部分はあるが、個人的には大屋さんとの対談で出てきた「幸福」の見解が良かった。幸福とは振り返ったときに「満足」しているかどうか。"振り返ったときに"というのが肝だなと。今この瞬間だけの幸せとなると、快楽(食、スマホ、など)が浮かぶが振り返るとだいたい後悔することが多い。振り返って満足するときは大抵、そのときは面倒だと思ったりすることだったりもする。
そして、その行動を選択する「自由」も自分で選択できることが重要であり、そういうシステム設計や政策が必要だよねって話があった。
結構オススメです。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ最近、自分でも本の読み方にスピードを求めず、ゆっくり、じっくり読むことを心掛けている。丁寧に本を読み終えることで、読書により得られるものが濃厚になってきたように感じる。そのことを確かめたいという目的もかねて、本書を読んでみた。
”「スロー・リーディング」とは、差がつく読書術である。その「差」とは、速さや量ではなく、質である。”とあり、これの事だな思った。確かに著者が言われるように、試験勉強や、期限に間に合わせるために論文を仕上げるというような目的でもなければ、本を速く読まなければならない理由など何もない(笑)。
”「速読」は明日の為の読書、「スロー・リーディング」は、5年後、10年後の為の読書”という言葉には、大きくうなずける。
3章あるうち、最後は「古今のテクストを読む」として、著者による「スロー・リーディング」の実践講義となっていた。題材として取り上げられていた作品は、次の通り。
・夏目漱石「こころ」
・森鴎外「高瀬舟」
・カフカ「橋」
・三島由紀夫「金閣寺」
・川端康成「伊豆の踊子」
・金原ひとみ「蛇にピアス」
・平野啓一郎「葬送」
・フーコー「性の歴史Ⅰ 知への意志」
学校では学べない、国語の授業のようだった。自分はちゃんと読んだぞと思っていても、講義を聞いてみて、「やっぱり安易に読んでいたんだ」とか、「大事なところを読み落としてしまっていたんだ」とか、過去の読書姿勢を改めて反省するハメになってしまった。
”「遅読」は「知読」”という言葉、良い言葉だなと思う。 -
Posted by ブクログ
上下巻を一気に読んだので疲労感と謎の涙。
黄泉がえりという映画が昔あったなぁ。
死者がやり残したことをやるというファンタジー感と、誰が犯人なのか?というサスペンスミステリー感がありつつも、テーマは「死」そのもの。残された人の空白や、残してしまう人への焦燥感、一瞬の死際の印象でそれまでの「生」が塗り変わってしまう影響力、自殺、分人の概念など、さまざまな角度から「死」を照らしている。
「死」は暗闇、消滅といったイメージもある一方、佐伯のいうように、義務からの解放という救いの側面もあるように思う。
「死」という事実やそれまでの過程を知ってしまうと思い出すたびに胸が苦しくなるので、いっそのことなにも知らないまま、遠いどこかで元気に過ごしていることにしたい。それほど「死」は強烈にショッキングだ。やはりこれを受容するには、真っ当に歳を取り少しずつ機能を失っていくような死に方をせめてすべきで、自殺や事故のような唐突な「死」だと残された者に与える穴が大きすぎる。
尊大なようで、一瞬の宇宙の塵にも満たないような人生。深く考えすぎず良い自分も悪い自分も受け入れてシンプルに生きていけたら楽なのだがなかなかそうもいかない。
分人については「私とは何か」を先に読んでいたのですぐに理解できた。 -
Posted by ブクログ
創作活動と並行して積み重ねた講演、批評、随筆をまとめたもの。
文学は、声にならない違和感、説明できない痛み、うまく言えない孤独。そういうものを、 無理に整理せず、そのまま差し出す。
平野啓一郎氏が
読んでると、どんな文学に影響を受け、どんな作家を座標軸にしているのかがわかる。
流行や話題性ではなく、 人間の内面・倫理・孤独・分断・時間を 粘り強く掘り下げてきた作家たち。
だからこの本は、 文学論であると同時に、 平野啓一郎という作家の精神史みたいにも読める。
文学は役に立つか、ではなく 自分はどんな文学を必要としてきたか。
と言う感じ?
関係ないけど、
最近「瀬戸内寂聴」というワードが出てくる・・・多作だからまようけど読んでみようかな -
Posted by ブクログ
2026年1冊目はこちらの本。何気なく買ったものの積読されていた本。読み始めたらあっという間に読み終わってしまった…面白い…
まず速読というものについて、痛烈な批判が展開されるのがなんとも面白い、まったく容赦がない。速読というものに憧れたことも取り組んでみたことは無し、逆にいうと特に悪いイメージもなかったけど、この本で完全に否定派になりました笑 速読本が最終的には自己啓発と結びついており、未知なる自分を解放していく的な文脈で語られている、というのは大変面白いなと思った。
第2部、魅力的な誤読、そもそもこの捉え方がもう面白い。そうか、誤読って別に悪いことじゃ無いんだ。余地が残された点について、読者は独自の解釈や想像をしていいし、それが醍醐味なんだなと改めて。先へ先へじゃなくてより深くへ。
第3部、実際の作品の一節を紹介しながら具体的にどのように読んでいくといいのか、の超実践的な部分。あるようでなかったというか、ここまで小説の文章そのものを題材にじっくり読み解いていく本ってあまり無いのでは?読む上でのコツを感覚で掴めるのと同時に、それぞれの作品についても読んでみたいと思えるというお得感。
改めて、漫然と読んでいることが多いなあと実感。作者の意図や伝えたいものを読み取りながら読む癖をつけていきたいです。