平野啓一郎のレビュー一覧
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本書の表題となった講演録を含む、主に文学・芸術論について語られたエッセイ・批評集成。
文学は何の「役に立つ」のか?
著者は、「〇〇は何の「役に立つ」の?という問い自体に不思議さがあることを指摘し、役に立つかどうかは幾つかある価値のうちの一つでしかない」とした上で論を進めています。ズバリ最初に語られたその回答は、「だから自分は本を読んでいるのだろうか」と、自分の読書習慣を肯定されたような気持ちになりました(あまり文学は読んでませんが)。
自分はいつから役に立つかどうかだけで物事を判断するようになったのだろう、と過去を振り返ってみた。そして、自分もその価値観だけで他人の行動や判断に対して制限を -
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起承転結が明白なスリリングなお話ではなく、もっと哲学的な内容だった。作者の平野さんは、「主人公の自殺」という極端な例を用いて、「分人主義」という思想を提唱している。
分人主義とは、個人主義とは違い、対人ごと、環境ごとにいろいろな自分になり、鎧をかぶった「本当の自分」を認めないという考え方だそう。
作者の平野さんがこの分人主義を使って願っていることは意外とシンプルで、ただ生きてほしい、己の人生を全うしてほしい、それだけじゃないかなと思う。
物語だからこの主人公は空白を満たすために戻ってきた。でもこれは物語だから。現実世界に生きて、今どこかで思い悩んでいる人にもしもがあれば、もう二度と空白は満たせ -
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清水
人の生死の一部始終は、清水の水滴が落ちるその一瞬なのかもしれない。滴り落ちる水滴の音は希死念慮だったのか…。
高瀬川
官能的な時間は、その後の出来事や明かされる過去によって、こうも印象が変わってしまうのか、と感じた。一度読んで感じた気持ちはもう戻ってこないと思い知らされます。
追憶
「複雑なことを複雑に考えている人にとっての追憶とはこうなのか?」と思う新たな読者体験。
伝えたい内容の難解さを前に、言葉の定義を自分は果たしてしっかりと理解できているだろうかと自問させられた。
氷塊
氷は2人にとって何を意味していたのだろう。溶けることは…
描かれなかった物語の背景ー氷山の下では、氷に触 -
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人の死について考えさせられる作品でした。
大切な人に先立たれ、この世に置いてかれた人たちは、その、ぽっかりと空いた「空白」をその大切な人との記憶や記録などで満たそうとする。
それは故人を、ある意味「理想化」することでもあり、はたして正しかったとは限らない。
しかし、そうでもしないと「空白」を満たせずに壊れてしまうから。
「分人」という考え方に納得しました。
(「分人」とは他人と関わっている自分の部分的一面のようなこと。)
自分もこれに思い当たる節があり、裏表を使い分けているってよりかは、あの人といると自然とこういう態度をとるなぁってことがありました。
完璧主義な自分でもあるので、自己否定し -
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いろんな雑誌に著者が書いたエッセイを中心にまとめた本。わかりやすい。
平野氏はなんとなく敬遠していた作家だった。デビュー作の『日蝕』を読んだのもほんの数年前。ところがやはり同じころ、私は死刑について考えたくなっていて、たまたま書店で平野氏の『死刑について』を見つけ買って読んでみたところ、見事にはまった。文章の運び、思考の流れが滑らかで素直に頷けた。
ちょうど同じころに東京新聞で「本心」の連載が始まり、毎日欠かさず読んだ。読ませる面白さがあった。
そんなこんなで作家平野啓一郎の書くものが好きになった。
そしてこの本。文学をどう捉えるか考える上で私にとってよい導き手になった。 -
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非常に陰惨。殺人描写だけではなくて、犯罪被害者や加害者家族を取り巻く状況が全てグロテスクに感じた。
著者は本当に現代の日本社会のありようを、ものすごくシビアにみていて、その通りに写し込んである。
読むのが辛くなるような展開なうえに救いがない。
崇を誰も救えない、その状況がまた居た堪れない。
特にリアルに感じたのは、義理の妹の態度だ。
自分の言葉によって崇を冤罪一歩手前に追い込んだのにも関わらず、自責の念はあまり感じられない。
他に犯人が見つかっても、心の中ではまだどこかで疑っているようで、子どもが抱き抱えられたとき、明らかに触ってほしくない、と思っているように描写されていた。
一度疑われて -
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2040年、今から15年後の近未来。
アナログな私にとって、物語の始めは世の中の移り変わりに置いていかれそうでなかなか先に進めませんでした。
それでも読む進めていくうちに、世が変わっても人間にとっては避けられない「死」について正面から対峙する作者の信念のようなものに引き込まれていきました。
身近な人の「死」という喪失、そして自分が「生きていくこと」の意味。
わかっていてもどこかで無意識に避けているこの永遠のテーマが、読み終わって自分の心のどこかに根付いたような気がします。
それぞれの登場人物が向き合っている、日々の生活、生きていくこと。
重く心にのしかかる場面もあったけれど、どの人の人生もその