平野啓一郎のレビュー一覧

  • 決壊(上)

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    ハッとさせられる言い回しが多い。
    特に印象的だった下り。
    「現代では、冗談でもなんでもなく、悪は健康の欠如にすぎなくなっている。古の偉大な宗教家が悪の問題のつもりで扱っていた人間が、実は脳に気質的な障害を抱えた病人だったと知ったり、
    生育史に重大な問題を抱えた行為障害者だったと知ったら、愕然とするだろうね。篠原も、鳥取の少年も、悪ではけしてない。ただ、健康でなかったというだけだ」

    罪と罰はすでに古くなってしまった。
    罪は誰のものでもなくなってしまった。そんな時代に生きている。

    神は死んだ。
    そしてたぶん、罪も殉死したのだろう。

    この作品では、連続殺人犯をとおして、倫理というものの限界を

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    2020年10月04日
  • ドーン

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    火星探査船「ドーン」に乗り込み、人類初の火星探査を果たして一躍英雄となった宇宙飛行士・佐野明日人。しかし、闇に葬られたはずの火星でのある「出来事」が、アメリカ大統領選を揺るがすスキャンダルに。
    近未来の宇宙飛行、ラブロマンス、大統領選をめぐる情報戦…輝かしい要素が満載にも関わらず、この小説が目指しているのはその方向ではないようでした。むしろ惨めで地味な現実が暗雲のように立ち込めています。精神に異常をきたしたクルーの世話に追われ、自らも薬に頼らざるを得ないほど追いつめられる明日人。帰還後は軍事企業のCEOに絡め取られそうになり、妻の今日子とは不和に。
    しかし読み進めるうちに、気が滅入るどころか、

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    2018年10月22日
  • 決壊(下)

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    非常に重い内容.赦すとは何か?強く考えさせれれる.この小説で提示している問題は,答えがでる事柄ではないと認識しつつ,自分なりに逃げずに考えると言うことが大事.著者はほぼ同い年.

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    2018年10月09日
  • 自由のこれから

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    今まで自分が考えていたことを正確に言葉で表現してくれていて、すごくスッキリした。
    自分の行動は全て自由で自分自身が決断しているのだと思われがちだが、実は周りの価値観や環境によって行動が制限されている事実を認識しておかなければいけない。

    この「〇〇しなければいけない」という表現自体も誰にとってどういう結果にとって〇〇しなければいけないのか、定義されていない。
    こうやって設定を曖昧にして、自分に関係しているのではないかと思わせることも、人の行動を制限している。

    自由と制限は表裏一体で、どちらかが大きくなれば、もう一方は小さくなる。そのバランスを認識しながら自分たちが、世の中がどの方向に進んでい

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    2018年09月23日
  • 決壊(下)

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    ネタバレ

    深い心の闇。暗く渦巻く謎。
    未成年者の犯罪。ネットを介した脅威。警察の横暴。
    現実にありそうな恐怖。
    それらを奥深く描いている作品。
    犯人は主人公??と思わせるストーリー。ラストは辛いものでした。
    難しい会話が続き、主人公・崇の言葉を理解していないところもあると思う。登場人物の心の声が痛い。
    犯罪物の声は理解を絶する。殺人に快楽を覚える闇は、常人では理解できないが、そこをえぐるように描いているのが、ますます恐怖というか気味悪い人物像を想像していきました。
    ラストは本当に痛い。悲しいとか、簡単な言葉では表現できません。
    胸の奥に真っ黒なインクをこぼしたみたい。それが浸透してしまわないように……。

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    2018年03月19日
  • 自由のこれから

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    自由の根幹である「〜がしたい」あるいは「〜がしたくない」さらには「どっちでもいい」という欲望が自発的なものと外部から刺激がどのように組み合わさって作用するのかを考察。
    イノベーションによる未来、法のシステム、遺伝と環境それぞれと自由の関係性についてはその道の専門家と対談を行い掘り下げる。
    締めは著者の持論である分人、以前は個人の自立が無いように思えた分人ですが、膨大な選択肢に対して複数の分人を持ち、時間の経過(いわゆる加齢)に伴って自身の分人の比率を変えるとの考えは、100年ライフにふさわしい気がしてきた。

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    2018年03月11日
  • かたちだけの愛

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    作者の恋愛観には、そうだよなあと共感できるところが多かった。分人主義を恋愛の形から理解するにはもってこいの一冊。

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    2018年02月04日
  • ドーン

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    分人主義の理解を深めようと読む。自分としては「空白を満たしなさい」の方が、よりポジティブな分人主義の理解に役立った。本作は、600ページを超える大作だが、全体を通して暗く陰鬱な気持ちから逃れられない。ただ、分人主義の考え方がなければ、未だに主人公の救いはないのかもしれない。

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    2018年02月26日
  • 自由のこれから

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    自由について、それはどういうことが問題になるの色々な話を通して見つめる。体系的な本ではないけれど対談などもあるので、多角的でわかりやすいかもしれない。自動運転の例なんかはわかりやすかった。

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    2017年12月18日
  • サロメ

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    妖しい月光の下、継父ヘロデ王の御前で艶やかに舞ってみせた王女サロメが褒美に求めたものは、囚われの美しき預言者ヨカナーンの首だった――少女の無垢で残酷な激情と悲劇的結末を鮮烈に描いた「世紀末最大の傑作」が、芥川賞作家・平野啓一郎の新訳で甦る! 宮本亜門舞台化原作。(裏表紙)

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    2017年12月12日
  • マチネの終わりに

    購入済み

    大人の恋愛小説

    ピースの又吉さんイチオシの小説ということで購入した一冊。
    この本のキーワードを自分なりに5つ挙げるとしたら、すれちがい、嫉妬、過去と未来、後悔、葛藤。
    イラク情勢やリーマンショックからの経済破綻や大規模災害などの世界的なテーマを絡ませ、その時代的な流れと共に愛し合う二人の主人公の恋愛を描いた作品。専門的な知識がなく難解な部分も多いが人間関係の部分に関しては話が分かりやすいので特に問題なく読めた。
    嫉妬により二人の恋愛関係を破滅させる人物、婚約者であった人物の泣きつきなどなかなかワクワクさせる展開も多く、主人公に感情移入できる要素満点な面白い話だった。THE文学といったかんじの文章でそこだけ少し

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    2017年10月26日
  • 高瀬川

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    「高瀬川」と「氷塊」は面白かった。「氷塊」のつながりは見事。「清水」と「追憶」はよくわからなかったが、全体を通して構成が芸術だと思った。カバー写真も美しい。

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    2017年08月24日
  • 自由のこれから

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    「考える本」というよりは「模索する本」という感じ。

    「自由とは何か」という茫洋とした命題に対し、様々な角度からのアプローチが提示され、そして一つの答えを出すのではなく、それこそ分人主義的に多角的に完結されている感じ。

    この本を読む前に筆者の分人主義に関する本を、小説でも新書でも良いので、読んでおくと、より理解が深まると思う。

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    2017年07月01日
  • 透明な迷宮

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    いやー、面白かった!

    どれも不思議な感じのする短編ばかり。
    とにかく最後の「Re:依田氏からの依頼」がすごかった。
    表題作「透明な迷宮」も結構好き。

    「Re:依田氏からの依頼」の中の気に入ったフレーズを少し。
    「受信したメールの返事を書きそこなって過ぎた二日間は、あっという間に感じる。しかし、送信したメールの返事を待つ二日間は長い」232頁

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    2017年04月06日
  • 「生命力」の行方――変わりゆく世界と分人主義

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    社会からアート、エンターテイメント、そして文学まで、多様性における生命力(強い影響力を持つこと)が何処に向かうのかをエッセイと対談で考察、通低するのは個人の多様性である分人です。本丸の文学についてはやや難解ではあるものの他の分野での著者の博覧強記ぶりには驚かされる。先日参加した人工知能のイベントでは暦本教授と対談もされていたので、次は人工知能関連のエッセイにも期待したいところです。

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    2017年03月26日
  • 葬送 第一部(下)

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    ネタバレ

    上巻ではややもたついていたストーリー展開が,サンド夫人の娘のソランジュがクレサンジュと結婚するあたりから加速し,ドラクロアが自ら描いたリュクサンブール宮の天井画を観て自ら驚愕するところまで.
    徐々に病に冒されていくショパンの影が薄くなってゆき,話の着地点がどこなのかが見えなくなってきた.第2部が楽しみだ.
    この小説を読んでいて見事だと思うのは,登場人物が会話を,特に親しい友人と,交わす場面における思考の流れ,飛躍の描写である.
    ドラクロアは,例の自由の女神の絵の印象が強いのだが,リュクサンブール宮の天井画はすごく観たくなった.ショパンももっとちゃんと聴いてみようかしらん.

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    2017年11月28日
  • 高瀬川

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    平野啓一郎さんが「葬送」後に著した短編集。
    当時平野さんは28歳。ご自身の言葉によると
    「作家としての挑戦」であり
    「男と女の性的な関係に取り組んだ」作品集。

    男女の性行為を細かに描いた「高瀬川」
    不倫に悩む女性と
    実母を求める少年の妄想が交差する「氷解」
    の2作のみならず
    難解な「清水」と「追憶」にも
    確かに、若さが迸るにおいがする。

    「高瀬川」には 男女間のズレの
    居心地の悪さが見事に描かれている。
    セックスという最も密なコミュニケーションを経ても
    ラブホテルの作為的で冷笑的な空気がそうさせるのか
    二人の距離は濃厚になっていく。
    そんな一夜を「ペットボトル」に詰め込み
    時間という川に流

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    2016年06月07日
  • あなたが、いなかった、あなた

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    短編集だが、色々な手法を凝らしている。
    これまでに味わったことのない短編集。

    「鏡」「女の部屋」「母と子」は特に驚いた。

    文学には程遠い自分が一番気に入ったのが「フェカンにて」
    この短編の主役は、平野啓一郎先生ごい本人にとても近い。
    私はご本人であろうと思い込んで読んでいた。

    先生の作品である「葬送」にも触れられ、
    私が先日読んで、どう読むべきか酷く迷っていたドフトエフスキーの
    罪と罰にも触れていた。とても興味深い。
    当たり前だが、私の軟弱な「あぁ面白かった。」という感想とは
    かけ離れている。
    読み方のレベルが違いすぎて溜息しか出てこない・・・。

    この本を読んで、何故かもう一度平野啓一

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    2016年05月29日
  • 葬送 第一部(上)

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    日本人らしからぬ古典のような書き口。心のひだに分け入った心情表現。ドラクロワ、ショパン、サンド…いい意味で偉人を俗にしてくれている。

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    2016年01月13日
  • 「生命力」の行方――変わりゆく世界と分人主義

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    ネタバレ

    平野啓一郎のエッセイ集
    社会論、思想論からエンターテインメント論まで、理論の納得感と博覧強記ぶりに感動しました。
    以下、印象的だったところ
    ・教養は話題のデータベース。話題たりうるトピックが色々ある中でも、それを話題にすることでコミュニケーションが一段上等になるものが、教養だった(p.18)
    ・殺人事件には赦す本来の主体がいない(p.47)
    ・機能分化された社会では職業選択を自由化することが効率的。職業選択は義務でもある。自分のアイデンティティーに相応しい職業を選べと。自分とは何かを問うて人生の目的を考える必要が生じる(p.55)
    ・神秘主義・オカルティズムにおける病気治し。万人が否定しない価

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    2016年01月03日