平野啓一郎のレビュー一覧
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小説は、他者と自己の関係というテーマを絶えず題材としてきた。
そんな中で、タイトルにもなっている「高瀬川」という短編は、男女の性にからんだ人間の関係性を、男と女がホテルで一夜を過ごすというシチュエーションで、こんなにリアルに掘り下げることができるのか、と驚かされる作品だった。
遠い昔にサトウトシキのピンク映画を初めて見た時に、タブーである男女の性にまつわる心理描写をこんなにリアルに描く世界があるのか、と当時学生だった僕は驚いたのだが、それに似た、しかしそれを純文学としてさらりとやれるんだなあ、という感嘆と呆れが混じったような。。
どこまでが作者自身の体験に基づくものかは知らないが(知っ -
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第3巻。
重苦しい空気が漂い、物語の展開も陰鬱であった前二巻とは打って変わって、第二部は華々しいショパンの演奏会で幕を開ける。
著者自身が曲を聴きこんで聴きこんで、徹底的な取材と分析を重ねて書いたのであろう「紙上演奏会」は圧巻の一言で、読者は鬼気迫るショパンの姿をハラハラしながら見守ることになる。ここまで感情移入させられてしまうのも前二冊によって形作られた「ショパン像」が読者の中にあるからで、これぞ長編小説の醍醐味だと思わされる。
復活を果たした病弱な音楽家に贈られる惜しみない拍手と歓声は、そのまま革命のシュプレヒコールに変わる。この華々しさと喧騒と、時代の変化を憂うかのような厭世感が物語 -
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全4巻、やっと読み終わった。去年の秋くらいから読み始め、ゆっくり併読しながら読み進めていった。
ドラクロワとショパンが邂逅するフランスを描いた重厚な大作だった。この二人を中心に様々な人が登場し、それを通して二人の天才の姿、芸術が語られる。僕の中では、トルストイの小説のような手触りに似ている。トルストイはロシア文学だが、似ていると思ったのは、狙ったと思われる古めかしさだけではなく、きっとその当時の国の姿、そこで生きる人々の姿が、主人公達の強い輝きとともに生き生きと語られていたからだろう。
最も素晴らしかったのは、ショパンの演奏会のシーン、ドラクロワの天井画のシーン。それぞれ、聴覚と視覚、別個 -
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芥川賞作家・平野啓一郎氏による時事に関するエッセイです。この本を読んでいてとき、狂牛病の話が九州であって、 平野氏はそれより先にこの話題を書いていた箇所を読んで 平野氏の先見の鋭さに驚いたことがあります。
実のところを申し上げますと、僕が平野啓一郎氏の一連の作品を読もうと思ったのは、ツイッターで平野氏に送ったメッセージになんと、平野氏ご本人から返事を貰ったからという実に単純な理由からでした。でも、高校時代に『日蝕』で挫折して以来、彼が文句なしの天才なことは分かっているのですが、正直言ってどうもとっつきにくかったので、小説はともかくとしてエッセイからまずは始めてみようと思って手にとって読んでみ -
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★★★★= 80~100点 = I like it.
インターネットが人間に与える影響を考えさせられる本です。
こんな人に特にオススメ
・ネットなしの生活には戻れない人
以下、本の内容に触れます(ネタバレあり注意!)。
内容
「ウェブ進化論」の梅田望夫と「決壊」の平野啓一郎の
ネット社会をテーマにした対談。
感想
本書に出てくる「ネットは増幅器」とは、
インターネットの特性を見事に表現した言葉だと思います。
ネットを使えば、自分の興味のある分野に、
どこまでも詳しくなることができるような、
知の増幅器としての機能。
スーザン・ボイルに見られるように、
人の感動 -
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この巻で主に語られているのはサンド夫人の娘・ソランジュの結婚をめぐる一連の騒動で、それに引っ張られてどんどん読み進めることができたんだけど、読み終わって印象に残るのはやっぱりドラクロワの煩悶だったりします。
ようやく完成した議員図書室の天井画とそれを見るドラクロワの描写で第一部が完結するからかも知れないですが(しかしこの天井画、ほんとうに見たい……!)
作中ドラクロワは仕事をするためにアトリエへ行くことへの「抵抗」を、単なる「怠け癖」ではなく「時間の問題」ではないか、というようなことを考え続けていて、最後に完成した天井画の下で「奪われたのは享楽の時ばかりではなかった。彼の生の時そのもので