平野啓一郎のレビュー一覧

  • 葬送 第一部(下)

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    ネタバレ

    第一部下巻。ショパンの愛人の娘が身持ちの悪さで有名な彫刻家と結婚することになり、物語は急展開。登場人物の感情表現の細かさ深さに圧倒されつつ引き込まれる。一方でドラクロワは全身全霊をこめて大作を完成させるが、最後に完成された作品を眺めて、自らに驚愕する場面が凄い。
    とにかく隙のない、密度の物凄く濃い小説です。

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    2013年01月22日
  • 高瀬川

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    小説は、他者と自己の関係というテーマを絶えず題材としてきた。

    そんな中で、タイトルにもなっている「高瀬川」という短編は、男女の性にからんだ人間の関係性を、男と女がホテルで一夜を過ごすというシチュエーションで、こんなにリアルに掘り下げることができるのか、と驚かされる作品だった。

    遠い昔にサトウトシキのピンク映画を初めて見た時に、タブーである男女の性にまつわる心理描写をこんなにリアルに描く世界があるのか、と当時学生だった僕は驚いたのだが、それに似た、しかしそれを純文学としてさらりとやれるんだなあ、という感嘆と呆れが混じったような。。

     どこまでが作者自身の体験に基づくものかは知らないが(知っ

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    2013年01月21日
  • ディアローグ

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    ネタバレ

    今まで読んだ小説家の対談集は、作家同士のダイアローグが多かったので、起業家、映画監督、建築家、宗教家から文豪まで多岐にわたっていて、筆者の関心領域の広さに素直に驚いた。一方で、対談相手も高橋源一郎や瀬戸内寂聴のように、「三島の再来」と言われた筆者の素顔を引き出そうと逆質問を仕掛けたりと、ただ「ダベリ」を文章に起こした対談とは一線を画した緊張感が、読み応えを与えてくれる。

    個人的には、対談を通して大江健三郎という作家を再認識することが出来て面白かった。こういう世代を超えたダイアローグはもっともっと企画されて良いと思う。

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    2013年01月14日
  • 文明の憂鬱

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    10年以上前の随筆集。日常的な生活の変化(進歩)が人間の思想、人間関係、感情に与える微妙な影響を考察し、それがやがて文明社会の在り方に変化をもたらしていく考察を丹念に行っている。そのため、全然古びていない。難解な文体を操る小説家は、自らの思考過程をこんなにもストレートに、かつ深く、それでいて簡潔に書き記すことが出来るのだと感服した。

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    2012年12月21日
  • 日蝕・一月物語

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     ルビなしでは読めない漢字の連なりで、読み続けることができるか不安なままページを進めるうちに、この漢字を含めた表現力に引き釣りこまれていきました。 自分にもう少し、中世キリスト教の基礎知識があったらなぁとも思いました。
     科学ではまだ解き明かされない領域の広いころを舞台にしているて、この「日蝕」も「一月物語」も死を直面にした刹那の輝きに神を感じさせられる。
     「一月物語」では泉鏡花の高野聖を思い出していました。夢と現の境界線の甘さ、古典的な味わいがある。

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    2012年12月16日
  • 葬送 第二部(上)

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    第3巻。

    重苦しい空気が漂い、物語の展開も陰鬱であった前二巻とは打って変わって、第二部は華々しいショパンの演奏会で幕を開ける。
    著者自身が曲を聴きこんで聴きこんで、徹底的な取材と分析を重ねて書いたのであろう「紙上演奏会」は圧巻の一言で、読者は鬼気迫るショパンの姿をハラハラしながら見守ることになる。ここまで感情移入させられてしまうのも前二冊によって形作られた「ショパン像」が読者の中にあるからで、これぞ長編小説の醍醐味だと思わされる。

    復活を果たした病弱な音楽家に贈られる惜しみない拍手と歓声は、そのまま革命のシュプレヒコールに変わる。この華々しさと喧騒と、時代の変化を憂うかのような厭世感が物語

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    2012年11月30日
  • 決壊(上)

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    平野啓一郎の比較的新しい小説。上下巻で1000ページ強ってことで、とにかく長い。現代社会における「違和感」や「気持ち悪さ」をあぶり出す表現力はさすがであり、これぞ現代文学って感じ。この人は本当に頭いいね。

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    2012年11月25日
  • ウェブ人間論

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    ウェブの発展とともに、人間はどう進化していくのか?
    ネットの光の部分、影の部分、各業界、各個人のネットの活用方法を規定するモノはない。
    情報をうまく制御する能力が求められているのだ。
    私は、人間がものすごく成長したり感動したりするのはやっぱり現実の世界だと思うから、ウェブをうまく活用し、現実世界での自分に役立てていきたいと思う。
    でもこれからはどうなるんだろう。
    この時代、かなり面白い。

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    2012年08月05日
  • 決壊(上)

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    勉強好きな人の文章って感じ。わかりやすくはないし読みやすくもない。僕は好き。
    なんか細部に目がいってしまって、物語の核というか、著者の「一番主張したいこと」をよく読めてない気がするという反省。現代社会と人間を、その「世界」の脆さという観点から描いてるって感じかねー

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    2012年06月24日
  • サロメ

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    淫靡! その一言に尽きる。聖人に恋した王女サロメの「わたし、あなたの唇にキスしたいわ」は殺し文句。継父の子への執着、同僚の兵士を見つめる兵士と、禁断の愛要素にも満ちております……!

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    2012年05月14日
  • 日蝕・一月物語

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    表面的には、硬派な文体を取っている。それでも、どこか暴風のような乱流も感じる。それはまるで、本質そのものを知ってしまったが、若さゆえに、その非情な感情が過剰な顕示欲に結晶化しているような感触だ。確かに硬派な清閑さはあるが、その裡で燃え盛る狂気にも近い情動を感じる。しかもその光景は、無声映画を見るように、静かだ。そこに作者自身の強烈な生命力を感じた。

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    2012年03月02日
  • 葬送 第二部(下)

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    全4巻、やっと読み終わった。去年の秋くらいから読み始め、ゆっくり併読しながら読み進めていった。

    ドラクロワとショパンが邂逅するフランスを描いた重厚な大作だった。この二人を中心に様々な人が登場し、それを通して二人の天才の姿、芸術が語られる。僕の中では、トルストイの小説のような手触りに似ている。トルストイはロシア文学だが、似ていると思ったのは、狙ったと思われる古めかしさだけではなく、きっとその当時の国の姿、そこで生きる人々の姿が、主人公達の強い輝きとともに生き生きと語られていたからだろう。

    最も素晴らしかったのは、ショパンの演奏会のシーン、ドラクロワの天井画のシーン。それぞれ、聴覚と視覚、別個

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    2012年02月21日
  • 日蝕・一月物語

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    著者の作品は初めて読んだが、独特の世界観に引き込まれた。
    文章や単語の使い方の分かりにくさはあるにしても、それを上回る魅力たっぷりの作品だった。
    読み応えのありそうな著作が多々ありそうなので、今後も楽しめそうだ。

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    2011年11月16日
  • ウェブ人間論

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    ネタバレ

     2006年の書だが、ブログやSNSにおいての自身の人格やポジションについて考えるためのたたき台として良資料。二人の見方がズレていないことも確認できる。

    ・私的なことを公的な場所へ持ち込まない「日本人の古い美徳」があり、むしろリアルな世界で仮面をかぶって生きていかなくてはならない社会性。という環境においてWEBは個々のアイデンティティを豊かで確固たるものにしていく大切な道具である。

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    2011年11月15日
  • 文明の憂鬱

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    芥川賞作家・平野啓一郎氏による時事に関するエッセイです。この本を読んでいてとき、狂牛病の話が九州であって、 平野氏はそれより先にこの話題を書いていた箇所を読んで 平野氏の先見の鋭さに驚いたことがあります。

    実のところを申し上げますと、僕が平野啓一郎氏の一連の作品を読もうと思ったのは、ツイッターで平野氏に送ったメッセージになんと、平野氏ご本人から返事を貰ったからという実に単純な理由からでした。でも、高校時代に『日蝕』で挫折して以来、彼が文句なしの天才なことは分かっているのですが、正直言ってどうもとっつきにくかったので、小説はともかくとしてエッセイからまずは始めてみようと思って手にとって読んでみ

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    2013年08月18日
  • 日蝕・一月物語

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    『日蝕』も『一月物語』も単行本で読みました。
    読みづらいとかいう意見はよく聞きましたが、大学時代に、お前の頭の中は別世界か!ってつっこみたくなる哲学書を読まされてばかりだったので、それに比べたら読みやすかったです。漢字もわざと難しいものを用いてますが、文脈でおおよそ読めます。
     逆にこんな漢字があるんだと新しい発見もあったりして、別の楽しみもあります。

     

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    2017年08月15日
  • ウェブ人間論

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    島宇宙化していくウェブ世界への懸念を述べる平野氏に対し、自分にあった居場所を見つけられれば人は幸せになれると説く梅田氏。ウェブ世界のみならずリアル世界への両氏の態度の違いが鮮明になる第四章が特に興味深く読めた。この本の刊行後以降もツイッターやフェイスブックなど新たな潮流が生まれているので、それらをふまえた再度の対談を期待したい。

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    2011年04月22日
  • あなたが、いなかった、あなた

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    短編が全部実験ぽくて、筆致も違ってるし、作家さんが楽しんで書いてるんだろうなという感じがします。ただし実験がすご過ぎて物理的に読めない作品?もあります

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    2011年02月26日
  • ウェブ人間論

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    ★★★★= 80~100点 = I like it.
    インターネットが人間に与える影響を考えさせられる本です。

    こんな人に特にオススメ
    ・ネットなしの生活には戻れない人

    以下、本の内容に触れます(ネタバレあり注意!)。


    内容
    「ウェブ進化論」の梅田望夫と「決壊」の平野啓一郎の
    ネット社会をテーマにした対談。


    感想
     本書に出てくる「ネットは増幅器」とは、
     インターネットの特性を見事に表現した言葉だと思います。

     ネットを使えば、自分の興味のある分野に、
     どこまでも詳しくなることができるような、
     知の増幅器としての機能。

     スーザン・ボイルに見られるように、
     人の感動

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    2011年02月24日
  • 葬送 第一部(下)

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     この巻で主に語られているのはサンド夫人の娘・ソランジュの結婚をめぐる一連の騒動で、それに引っ張られてどんどん読み進めることができたんだけど、読み終わって印象に残るのはやっぱりドラクロワの煩悶だったりします。
     ようやく完成した議員図書室の天井画とそれを見るドラクロワの描写で第一部が完結するからかも知れないですが(しかしこの天井画、ほんとうに見たい……!)
     作中ドラクロワは仕事をするためにアトリエへ行くことへの「抵抗」を、単なる「怠け癖」ではなく「時間の問題」ではないか、というようなことを考え続けていて、最後に完成した天井画の下で「奪われたのは享楽の時ばかりではなかった。彼の生の時そのもので

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    2021年02月19日