平野啓一郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
★★★★= 80~100点 = I like it.
インターネットが人間に与える影響を考えさせられる本です。
こんな人に特にオススメ
・ネットなしの生活には戻れない人
以下、本の内容に触れます(ネタバレあり注意!)。
内容
「ウェブ進化論」の梅田望夫と「決壊」の平野啓一郎の
ネット社会をテーマにした対談。
感想
本書に出てくる「ネットは増幅器」とは、
インターネットの特性を見事に表現した言葉だと思います。
ネットを使えば、自分の興味のある分野に、
どこまでも詳しくなることができるような、
知の増幅器としての機能。
スーザン・ボイルに見られるように、
人の感動 -
Posted by ブクログ
この巻で主に語られているのはサンド夫人の娘・ソランジュの結婚をめぐる一連の騒動で、それに引っ張られてどんどん読み進めることができたんだけど、読み終わって印象に残るのはやっぱりドラクロワの煩悶だったりします。
ようやく完成した議員図書室の天井画とそれを見るドラクロワの描写で第一部が完結するからかも知れないですが(しかしこの天井画、ほんとうに見たい……!)
作中ドラクロワは仕事をするためにアトリエへ行くことへの「抵抗」を、単なる「怠け癖」ではなく「時間の問題」ではないか、というようなことを考え続けていて、最後に完成した天井画の下で「奪われたのは享楽の時ばかりではなかった。彼の生の時そのもので -
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襟を正して読んでいた長編がようやく読み終わった。
昨今主流のストーリィを追いかけ、言葉を読み飛ばしてはいけない小説。
思いの他、時間がかかったのもやむをえない。
一昨日、「ショパン伝説のラストコンサート」横浜公演で
平野氏のお話と朗読を聴く。
人間ショパンと天才ショパンを描きたかったのだそうだ。
四巻は人が死ぬこと、いなくなるということの実感について
絶えず問われ、答えを求めていたように読める。
フランショームとドラクロワ、ショパンの親友だけが
真の寂しさと戦い、そして芸術家として飛翔することを
思わせる結末に、19世紀を生きた彼らの姿が
今現代の私たちの生活と関わっていくような気がした。 -
Posted by ブクログ
『ウェブ進化論』は読んだことがなかったけど、平野啓一郎の『本の読み方 スロー・リーディングの実践』は読んだことがあったので手にとってみました(ちなみに小説はまだ読んだことがない)。
同じ新潮新書の対談集としては『14歳の子を持つ親たちへ』(内田樹/名越康文)以来で、これはそれとは主題が違うので比べられないのですが、どちらかというとこちらの方が刺激的だったような気がします。というのも対談している二人が文学とITという、全く異なる世界で生きている二人だから。
随所に見られる二人のネットに対する捉え方の微妙な違いが面白い。おおまかな部分についてはお互い同意している部分も多いけど、もっと深く探ってい -
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第三者の目を通して冷静に描く主人公二人の描写がリアリティーに溢れ、本当に現実の事件として起こっているのではないかと思うほど。
平凡な中学校教師<吉田希美子>は、とあるきっかけで出会い系サイトを介し、一人の男性<方原盈>と出会う。<ミッキー>というニックネームを名乗っている間は、現実の地味な<吉田希美子>とは切り離され、大胆に振舞えた。
インターネット上、特に自分を知るものがいないとき、人は奔放に自分を表現できる。現実社会での「自分」、例えばSNSの中での「自分」。もちろん両者とも「自分」である。
「本当の自分」とは一体何なのか、少し立ち止まって考えてみるいいきっかけになる一作だと思う。
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ネタバレ自分が日頃から疑問に思っていることや、うすうす感じ始めていることが明文化されており、「あ。やっぱりそうか。」と思えた。
(本という媒体がなくならないことに関して)梅田 一覧性とか携帯性とか、やっぱりコンテンツ自身ではなくパッケージ性が重視されているということですよね。
(グーグルはダークサイド的なものを嫌悪しているのに、中国の検閲を受けたり、アメリカ政府の介入を認めていることについて)梅田 情報を広くあまねく皆に利用可能にするというビジョンを、世の中との軋轢を最小化しつつできる限り実現していくという、プラクティカルな考え方だと思います。
(ハッカー・エシックスについて)梅田 プログラマーという -
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純文学というのは、とっつきにくくてどうも苦手です。
「清水」「追憶」は、どうしても読めませんでした。
「清水」は、阿部公房のような、いわゆるシュールレアリズムというものでしょうか?
文庫版を電車の中で読んでたら疲れてしまいました。
「追憶」も同じく。実験的すぎて、頭に入ってこなかった。
こういう類の作品は、静かなところで落ち着いて読まなければならないな、と思いました。
「高瀬川」「氷塊」は、見事です。
丁寧な心象描写にぐいぐいと引き込まれていきます。
特に「氷塊」に出てくる少年の思春期らしい、真っ直ぐで繊細な感情は、読んでるこちらにもひしひしと伝わってきて、身を切られる思いでした。