平野啓一郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ平野啓一郎のエッセイ集
社会論、思想論からエンターテインメント論まで、理論の納得感と博覧強記ぶりに感動しました。
以下、印象的だったところ
・教養は話題のデータベース。話題たりうるトピックが色々ある中でも、それを話題にすることでコミュニケーションが一段上等になるものが、教養だった(p.18)
・殺人事件には赦す本来の主体がいない(p.47)
・機能分化された社会では職業選択を自由化することが効率的。職業選択は義務でもある。自分のアイデンティティーに相応しい職業を選べと。自分とは何かを問うて人生の目的を考える必要が生じる(p.55)
・神秘主義・オカルティズムにおける病気治し。万人が否定しない価値、健康と幸福(p.59)
・松坂の60億円は"外貨"(p.84)
・原発と偽ソフィー問題。原発問題に関しては、ハイデッガーと逆のことを言わなければならない。すなわち、人は千年後、万年後にも生きているかのように考えなければならない(p.137)
・全体意志と一般意思。前者は特殊意志の集合(p.147)
・キャプ翼のロベルト本郷(p.158)
・PAシステムはヒトラーの演説のためにナチスが開発したとされるが、ロックコンサートはそれを言わば民主化した(p.185)
・人間は、穏やかなコミュニケーションの中では「人当たりのいい自分」をプレゼンしようとするが、危機的な状況に陥ってイライラさせられると、本音を言おうとする(p.293)
面白かったです。 -
Posted by ブクログ
やっと読み終わった。
とにかく凄いボリュームで、それはページ数や文字数ということでなく、話の重さ、文章、世界観、何をとっても凄いボリュームであった。
私が読んだ本の中では、共に過ごした時間が一番長い作品だったと思う。
カタカナの名前が主人公である小説は大の苦手だが、これだけ長いと誰が誰なのか明確に判別できるようになる。
世の中には、こんなに美しい文章で表現出来る人が居るのだなぁと、一文一文読む事に感動を覚える程、文章が心地よい。
この作品の中では、たくさんの人物が登場し、彼らの心の動きが丁寧に描かれている。
何故男性作家さんなのに、こんなに女性の心の動きまで熟知されているのだろう。。。
私が読む本の中では、No.1になり得るくらい難解な本だったが、文章の心地良さも過去読んだ本の中では No.1 だった。
もう一度読めば、登場人物の気持ちを、もっと余裕を持って追っていけるのかもしれない。再読必至な本。 -
購入済み
ありがとう分人主義
大変現実に即したわれわれの精神の捉え方で、観察的にも統計的にも物理的にも、この説明がしっくりくるし、具体的な問題解決の方法も見えてくる。
発明、発見! -
Posted by ブクログ
ネタバレ近作『空白を満たしなさい』の感想ツイートがわたしのTLを潤す今日このごろ、待って待ってまだ追いかけ切れてない作品いっぱいあるねん!! ということで読んでみた『高瀬川』。
ざっくり言うとおもしろかったです。
■清水
この人の小説には、いつも説明が明晰すぎるところがあると思う。「存在が、――そう、今はもう疑うべくもなく、この私の存在が、次々と過去へと放り出されてゆくのだった。」(p22、原文は「この私の存在が」に傍点)この段落を書けるならば、この小説はあまり書かれる必要がなかったのではないか、というような気がした。滴り落ちていく清水とか、鳩の屍体とか、そういったイメージを付随することに意義があるというなら異論はとくにないけれど。
■高瀬川
生々しいのになぜか下品ではないエロス。
会話文のぎこちない感じは相変わらずだなあと思ったけど、細かい心理描写はけっこう楽しく読めた。
鴎外の『高瀬舟』は、どのくらい関係あるのかな。裕美子が流産について語るところは、弟殺しの罪を告白する喜助と通じるところがあるかも。
そういえば、流産も「流れる」といいますね。
最後の、鷺が流れずにひっかかっちゃったペットボトルを不思議そうに眺めているシーンが好き。
余談ですがこれ読んでたら、電車の中で男子高校生がチラチラこっちを見ていた。
うーん、きみには、ちょっとまだはやいかな~(笑)
■追憶
レイアウトを駆使した視覚的な作品。
おぼろげ。読むというより絵のように眺めて鑑賞するものかな。
最後には全文がついているので、そこを読むと何が書いてあったのかはわかるけど。
これだけ視覚的だと、文庫と単行本では、同じ小説なのに全然違う作品になるのじゃないか。
■氷塊
少年と女性の両方の視点から二段組で同時に描かれる(二人にとって共通な部分は一段になる)という面白い試み。
少年は女性を見て死んだと聞かされていた母親が実は生きていたのだと思い込み、女性は少年を見て不倫相手の息子なのだと思い込む。
なんかアンジャッシュのコントに似てる。
少年パートを最初に読むか、女性パートを最初に読むか、どういう読み方をするかで感じ方が変わってきそう。わたしは両方少しずつ読んだ派。もどかしい感覚。
こんな風にいろんな文体や技法を駆使していろんな小説を書く作家である平野啓一郎が、「分人」という概念を思いついたのは、なんだかよく分かる気がするな、などと。 -
Posted by ブクログ
小説は、他者と自己の関係というテーマを絶えず題材としてきた。
そんな中で、タイトルにもなっている「高瀬川」という短編は、男女の性にからんだ人間の関係性を、男と女がホテルで一夜を過ごすというシチュエーションで、こんなにリアルに掘り下げることができるのか、と驚かされる作品だった。
遠い昔にサトウトシキのピンク映画を初めて見た時に、タブーである男女の性にまつわる心理描写をこんなにリアルに描く世界があるのか、と当時学生だった僕は驚いたのだが、それに似た、しかしそれを純文学としてさらりとやれるんだなあ、という感嘆と呆れが混じったような。。
どこまでが作者自身の体験に基づくものかは知らないが(知っちゃいけない気もする)、こんなに感情的な一コマを客観的な心理描写で重ねられると、僕だったら(同性だけど)怖くてこの人とはつき合えないなと思う。体を許した後に女性が、心を許すべく、自分の秘密を語り始める描写などは、リアルすぎて吐き気がした。
「大野」が主人公の短編は「フェカンにて」もあるが、いずれも読後感がたまらない。くせになる。 -
Posted by ブクログ
第3巻。
重苦しい空気が漂い、物語の展開も陰鬱であった前二巻とは打って変わって、第二部は華々しいショパンの演奏会で幕を開ける。
著者自身が曲を聴きこんで聴きこんで、徹底的な取材と分析を重ねて書いたのであろう「紙上演奏会」は圧巻の一言で、読者は鬼気迫るショパンの姿をハラハラしながら見守ることになる。ここまで感情移入させられてしまうのも前二冊によって形作られた「ショパン像」が読者の中にあるからで、これぞ長編小説の醍醐味だと思わされる。
復活を果たした病弱な音楽家に贈られる惜しみない拍手と歓声は、そのまま革命のシュプレヒコールに変わる。この華々しさと喧騒と、時代の変化を憂うかのような厭世感が物語を支配しているのだが、きっと当時のパリもそんな雰囲気だったのだろう。
全体を通してみて、第一部はドラクロワを視点に据えた描写が多かったのに対し、この巻ではショパンを中心として物語が進行している。
そのためだろうか。もしかして全四巻から成るこの小説は、四楽章で構成された一つの楽曲であるのではないか、という印象を新たに抱いた。
初楽章と第二楽章は短調で書かれていたのに対し、この巻は第三楽章にふさわしく長調で書かれ、前述のような華々しい第一主題と、勇ましく野心的な第二主題を持っている。
はたして最終楽章はどの調で書かれ、どのような響きの主題を持っているのだろう。とても楽しみだ。