平野啓一郎のレビュー一覧

  • 決壊(下)

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    怒涛の展開で、下巻は息もつかせぬ感じだったような気もします。ドミノ倒しのように、悪意とそれに関わった警察・マスコミ・人がさらに人を壊していくということに圧倒されました。

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    2020年09月04日
  • 決壊(上)

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    一見問題なさそうな家族の日常に軋む小さなひずみ、危うい家族・不穏な学校生活の爆発前の状況が書かれており、読む人間を不安へと引きずり込むのがうまい。上巻の終わりには一気にそれらが不幸の連鎖へとなだれ込んでいく。
    ひどく残虐な事件を描写しているにも関わらず、嫌悪感を持たせないのは、各々の思考の解説を克明にしているからかなと思う。

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    2020年09月04日
  • ドーン

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    人に薦められて読んだ。

    最初は分人主義やら「散影」やらいろいろ近未来要素がたくさん出てきてよくわからなかったり、登場人物の相関関係が把握できなかったりしたけれど、読んでよかった。最後まで読んで、もう一度、読み直すと、よりいろいろわかりながら読める気がする。

    近未来のお話。火星に初めて降り立った宇宙飛行士の佐野明日人を中心に、火星でのミッションを「無事」終えて帰還してからの、それぞれの事情、環境に翻弄されながら、そして、いつしか大統領選に巻き込まれながら、それぞれが自分がどうしたいのかを悩んだり、立ち止まったり、時に暴走したりしながら、選び取っていく。

    宇宙飛行士は誰でもなれるわけではない

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    2020年08月15日
  • ドーン

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    初のSF小説。SF小説はフィクションでありながら、実社会の問題を定義していると思っているため、社会情勢、経済や政治の歴史であったり、社会が向かっている方向を知っていなければ理解できないジャンルであると思い敬遠していた。

    本作は火星探査船「ドーン」で、人類初の有人火星探査から帰還した医師であり宇宙飛行士・佐野明日人。帰還後に火星で撮されたある映像により英雄から転落。
    探索船「ドーン」をタイトルにしながらも、火星探査までの過程の小説ではなく、帰還後の社会について、大統領選挙、テロという社会問題をテーマに近未来を描写し、現実社会の課題を示唆している。

    一方で、本作で提唱されている「分人」なる新し

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    2020年06月15日
  • 「カッコいい」とは何か

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    文化を本格的に分析する本って、あまり読めていませんでした。
    この本はとても面白かった。
    丁寧で、論理的で、読み応え、納得感がとてもあります。

    「かっこいい」っていう感覚って、常に大切にしたいと思うんですけど、
    そのかっこよさって、いったい何なのか。
    それを考える基盤を与えてくださったかなと思います。

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    2020年06月09日
  • 「カッコいい」とは何か

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    筆者は、「かっこいい」を「しびれるような生理的興奮をもたらし、強い所有願望、同化・模倣願望をかりたてるもの」と定義している。この本を読む数ヶ月前、あるロックバントの初ライヴに行って、まさに「しびれる」ような体験をしたばかりだったので、どんどん読み進めた。音楽、ファッション、文学、宗教、政治、経済など、いろいろな視点から分析している。章によっては、多少、文章が冗長に感じられるところもあったが、それ以上に、考えさせられることが多かった。かっこいいを考えることで、自分の生き方、美意識を問い直してみたい人におすすめです。

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    2020年05月10日
  • サロメ

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    巨万の富を約束されても欲しいのは一貫としてヨナカーンの首。
    頑固一徹。
    王様に長々と説得されたとしても、欲しいのはあの人の首の一言。
    一連のやりとりがとても滑稽でもあり、サロメのどうしようもない感じがまた狂気を感じました。
    愛を知らないから?拗らせてしまったから?
    純粋過ぎるから?後のとんでもない行動、斬首された人の首にキスだなんて‥想像するだけで気持ちが悪いですが、
    愛していたからこそ出来る事でもあるのかもしれませんね。

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    2020年05月06日
  • 自由のこれから

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    ネタバレ

    自由というのは、一人ひとりが、尊厳を持った状態で暮らせる社会
    ・『私とは何か』を読んだ時にも感じたことですが、改めて平野さんは凄い人だと思いました。『私とは何か』では、私が中々腑に落とすことができないでいた構造主義についての疑問に「分人」という言葉でヒントを与えてくれました。この『自由のこれから』では、人類が一度は獲得したかのように見えた自由が、新自由主義の元、レコメンドという「仮想的な自由」によって束縛を強めているのではないか?という新たな問いを生む機会を作ってくれました。また、慶大法学部教授である大屋雄裕さんとの対談では、教授の見解「満足」を引き出しています。

    ・『私とは何か』は、私の人

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    2020年05月03日
  • ドーン

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    最愛の子を失った夫婦が、互いが知らなかった、それぞれの「分人」を認め、受け入れ、「個人」として新たな一歩を踏み出す物語。
    「火星プロジェクト」「大統領選」「戦争」。ストーリーは壮大。一方で、物語の終末が「個人」の歩みに還るのは、それらの物語を紡ぐのが、あくまでも「個人」であり、人類は地球で「個」を認めた唯一の存在だからか。


    役立つものが生きているのではなく、生きているものが役立とうとする。
    分人 ディヴ 何種類の「自分」が発生しているか
    死を乗り越える 認める
    圧倒的に強いリーダー 寄り添う隙のあるリーダー
    主語の大雑把さに注意
    散影
    国民として認められるということ

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    2020年04月25日
  • かたちだけの愛

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    作中で相良は2人に自分のマイナスな過去・生い立ちを話している。マイナスな過去・生い立ちを話すのはとても勇気のいることだし、本当に仲を深めたいと思った人にしか自分は話せない。
    話しても良いと思うような人と出会えることは幸せだと思う。

    「私とは何か」で好きな考え方の一つである、
    「誰といるときの分人が好きなのか」をテーマにしてたのも良かった。

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    2020年04月06日
  • 決壊(下)

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    決壊。
    社会全体のことなのか、沢野家のことなのか、崇なことなのか、、、全て含むのか。
    すごく考えることと、感じることを絶え間なくさせられる本で、そして終わりも、途中から予想はつくものの救いがなく、一言「疲れた」。
    私は、どうも哲学的なことを、論理的に(?)的確に(?)言語化することが苦手なので、読後に改めて皆さんのレビューを拝見して、自分が感じたことが、整理出来たような状況で。なので、分人と言う平野さんの考え方とか、赦すと言うことについてとか、その辺りはここには書かない(書けない(笑))が。
    ネット社会の孕む怖さ・危険性とか、警察の捜査のあり方とか、死刑制度の是非とか、現代の多くの問題を描きつ

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    2020年03月20日
  • 「カッコいい」とは何か

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    カッコいいとは何か。
    この本を読めば分かると思ったら、かえって分からなくなった。
    そんな本だと思う。
    でも、わかる本がいい本だとも思わない。

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    2020年02月19日
  • ウェブ人間論

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    2008/11/13開始
    対談形式で読みやすいと思いきや、お二方とも頭の良い人なので、逆にちょっとだけ読みづらかった(笑)

    ウェブ進化論に関してつっこんだ内容を、平野啓一郎氏による文学的検知からひたすら語りまくった内容をログしただけの本であるが、ウェブ進化論で語られなかった部分についてもかなり深いところまで話し合われているため、梅田氏の一連の「ウェブ〜」を補完する内容としては読んでおいて損はないと思う。

    特に「リンクされた脳」というセクションで語られる、その人の能力というものが、その人本人の力ではなく、自分の力を補完してくれる人や引き出しをどれだけ持っているか?というものに変わっていくとい

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    2020年02月17日
  • 「カッコいい」とは何か

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    タイトル通り「カッコイイとは何か」について考察した本。カッコイイは巷で特に若い人達の間で使われるが、その語源、定義は曖昧で、何をもってカッコイイというのかは、人それぞれである。
    著者は古今東西のカッコイイ事例を取り上げ、思想、歴史、芸術、ファッション等様々な観点で考察している。著者の定義によると主に3つの分類がある。
    ・1 見た目のカッコよさ
    ・2 一見平凡だが、本質的に優れている。そのギャップがカッコいい
    ・3 優れた本質が矛盾なく外観に現れ、存在自体がカッコいい
    自分もこの分類は間違っていないと思う。自分の周辺にもそれぞれの定義で思い当たる事例があった。人生で出会った友人知人、テレビや映画

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    2020年02月13日
  • ドーン

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    長編だけど、読みやすい。
    二つのストーリーが進んでいくので、あきが来ないし、シチュエーションを上手に利用していると思った。
    何よりは、この本の面白さをTwitterで呟いたら、作者様からリツイートしてもらえたこと。

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    2019年12月11日
  • 決壊(下)

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    ひたすらハード。ほとんどの登場人物が砂像のようにジワジワ壊れてゆくその先に希望はない。
    主人公の崇の言ってることが難しくて理解できず字面だけ追った頁もあった。なんだか頭が冷静になってしまい「作者が考えてることを言わせてるだけ」じゃないかと思ったり…
    読みごたえはある。随所に見られる純文学的表現はさすが。共感できるリアリティ。不気味なまでのリアリティ。
    凄い作品だけど読後感は重い。

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    2019年11月25日
  • 高瀬川

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    実験的な試みによる短編が収められた短編集。

    ある一夜を切り取って細かな行動描写と
    心理描写で男女の心のなかを探った高瀬川は、
    セクシャルな内容に目が行きがちだけど
    描写の模索が感じられて面白かった。

    あとは、氷塊。
    2人の物語の交錯が見事だった。

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    2019年09月30日
  • 決壊(上)

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    平野作品初読。短い叙述でもいちいちうまいなあ、プロだなあ、と感心しつつ読み進めました。
    筋は下巻からいよいよ佳境で、読むのが楽しみ。

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    2019年09月08日
  • マチネの終わりに(文庫版)

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    相手の事を考え過ぎた故の愛
    たった数回の出会いで、分かってくれてると思い過ぎた故の過ち
    第三者の想いに対する無関心さ
    そんな話。
    情景が美しくて映像で見てみたくなりました。
    映画楽しみ

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    2025年12月07日
  • 「カッコいい」とは何か

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    ネタバレ

     今日でも私たちは、ルーヴル美術館でドラクロワの≪サルダナパールの死≫の前に立ったり、ブルーノ・マーズがコンサートで≪Just the Way You Are≫を歌い出したり、ワールドカップでメッシがスーパーゴールを決めた瞬間などには、激しく「戦慄」し、「しびれる」ような生理的興奮を味わう。何かスゴいものを目にした時には、「うわっ、鳥肌が立った!」と、その証拠に服の袖を捲って、わざわざ見せてくれる人までいる。
     ドラクロワは、美を端的に、「戦慄」をもたらす感動の対象と捉えていた。「戦慄」があれば、つまり、それは美なのだという彼の確信は、それだけ、芸術家としての自らの感受性に自負を抱いていたから

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    2019年08月30日