Posted by ブクログ
2010年08月02日
『ウェブ進化論』は読んだことがなかったけど、平野啓一郎の『本の読み方 スロー・リーディングの実践』は読んだことがあったので手にとってみました(ちなみに小説はまだ読んだことがない)。
同じ新潮新書の対談集としては『14歳の子を持つ親たちへ』(内田樹/名越康文)以来で、これはそれとは主題が違うので比べら...続きを読むれないのですが、どちらかというとこちらの方が刺激的だったような気がします。というのも対談している二人が文学とITという、全く異なる世界で生きている二人だから。
随所に見られる二人のネットに対する捉え方の微妙な違いが面白い。おおまかな部分についてはお互い同意している部分も多いけど、もっと深く探っていくとやはり捉え方の相違が徐々に鮮明化してくる。例えば二人の”島宇宙”という語に対するイメージとか。
そういうところから、恐らく彼が作家であることも関係あるんだろうけど、年の若い平野の方が「やや古い(というか従来的な)考え方なのかな」という印象を抱かせたり、またあるところではその印象が逆転したりして、そこもまた面白い。
僕もやや平野寄りの考え方に近い部分があるなあと、彼寄りの視点で見ていたものがオープンソースのところでは逆に梅田寄りの視点になっていたり。
個人的に興味深かったのが資本主義と(ある部分では)対峙するオープンソースの概念とか、後は本書の後半で述べられるウェブ時代の教養の話のあたり(ただし「魅力ある人間とは」における梅田の意図が十全に読み取れなかったのがやや残念ではある)。逆に平野が(作家という立場もあるのだろうけど)必要以上にこれからの本のありかたにおける自身の不安などをぶつけているあたりは冗長だと感じた。
(2006年12月17日)