平野啓一郎のレビュー一覧

  • 顔のない裸体たち

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    第三者の目を通して冷静に描く主人公二人の描写がリアリティーに溢れ、本当に現実の事件として起こっているのではないかと思うほど。

    平凡な中学校教師<吉田希美子>は、とあるきっかけで出会い系サイトを介し、一人の男性<方原盈>と出会う。<ミッキー>というニックネームを名乗っている間は、現実の地味な<吉田希美子>とは切り離され、大胆に振舞えた。

    インターネット上、特に自分を知るものがいないとき、人は奔放に自分を表現できる。現実社会での「自分」、例えばSNSの中での「自分」。もちろん両者とも「自分」である。
    「本当の自分」とは一体何なのか、少し立ち止まって考えてみるいいきっかけになる一作だと思う。


    文体は、取り扱うテーマに合わせてか平易で読みやすく、しかしその表現は逐一的確なもので読ませる作品になっている。
    平野氏にとっては軽い挑戦だったのではないだろうか。
    何かとエロスの部分だけが取り沙汰されているようだが、平野氏の描くエロスはこのように陳腐なものではないと期待して★★★★☆

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    2010年03月27日
  • ウェブ人間論

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    梅田望夫さんと芥川賞作家の平野啓一郎さんの対談を収めた本
    です。
    梅田さんほどはウェブについて詳しくない平野さんが、梅田さん
    とは違った視点からいろいろと聞いてくださっているので、ウェ
    ブについて詳しくない人にも読みやすくなっているのではないで
    しょうか。
    私が聞きたかったことも平野さんが変わりに聞いてくださってい
    る(と勝手に解釈しているのですが)ところもあり、梅田さんの
    考えをもっと深く知りたいという方にもおすすめです。
    対談の良さが本当にプラスに働いている本だと思います。

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    2010年03月10日
  • ウェブ人間論

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    ・ウェブ=外部記憶
    ・ネット上に膨大な情報がある=情報がないに等しい
     -膨大すぎて埋もれてしまう
    ・逆に情報をばらまくことで情報を隠せる
     -一度出た情報そのものを消し去ることは難しい
    ・リアルが充実していない人がネットに傾倒しがち?

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    2009年10月26日
  • 高瀬川

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    表題作。高瀬川。京都の一夜。その「性」をどっぷり。ただ性欲を満たすだけならば小説などなんの意味も立たない。SEX本。心理学本。そんなの意味がない。恍惚感。死の気配。隠された過去。本能。アンバランス。否定。肉体から心まで奪うこと。過去を消しさること。一度傷ついた心。もどらないこと。心の平安を取り戻すこと。二人の絡み合った下着。押し込まれたペットボトル。衝動に駆られて決行した。心と心がどれだけ近づけるか。距離だ。ひとつになれるか。そうでなきゃ。切ないだろ。

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    2011年09月15日
  • ウェブ人間論

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    ネタバレ

    自分が日頃から疑問に思っていることや、うすうす感じ始めていることが明文化されており、「あ。やっぱりそうか。」と思えた。
    (本という媒体がなくならないことに関して)梅田 一覧性とか携帯性とか、やっぱりコンテンツ自身ではなくパッケージ性が重視されているということですよね。
    (グーグルはダークサイド的なものを嫌悪しているのに、中国の検閲を受けたり、アメリカ政府の介入を認めていることについて)梅田 情報を広くあまねく皆に利用可能にするというビジョンを、世の中との軋轢を最小化しつつできる限り実現していくという、プラクティカルな考え方だと思います。
    (ハッカー・エシックスについて)梅田 プログラマーという新しい職業に携わる人たちが共有する倫理観とでもいうべきものですね。プログラマーとしての創造性に誇りを持ち、好きなことへの没頭を是とし、報酬より賞賛を大切にし、情報の共有をものすごく重要なことと考える、そしてやや反権威的、というような考え方の組み合わせというか、ある種の気概のようなものです。

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    2020年01月04日
  • 文明の憂鬱

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    好きな作家平野啓一郎さん。梅田望夫さんとの対談本もあったり、はてなでブログ書いていたり、小説はガチな純文学系ですけどけっこうメディア・テクノロジー系も強いのだと思っています。

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    2009年10月04日
  • 高瀬川

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    純文学というのは、とっつきにくくてどうも苦手です。

    「清水」「追憶」は、どうしても読めませんでした。
    「清水」は、阿部公房のような、いわゆるシュールレアリズムというものでしょうか?
    文庫版を電車の中で読んでたら疲れてしまいました。
    「追憶」も同じく。実験的すぎて、頭に入ってこなかった。

    こういう類の作品は、静かなところで落ち着いて読まなければならないな、と思いました。

    「高瀬川」「氷塊」は、見事です。
    丁寧な心象描写にぐいぐいと引き込まれていきます。

    特に「氷塊」に出てくる少年の思春期らしい、真っ直ぐで繊細な感情は、読んでるこちらにもひしひしと伝わってきて、身を切られる思いでした。

    収録4編とも、すべて毛色の違う、盛りだくさんな一冊でした。読み応えは十分あります!

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    2009年10月04日
  • 葬送 第一部(上)

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     創造という行為の価値を考える。具体的な作品名が挿入されるおかげでショパンやドラクロワの芸術に浸れる(気分になる)ところも魅力的。

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    2022年11月20日
  • 葬送 第一部(上)

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     ショパンとドラクロワが小説の中心ですが、物語というよりもその二人を通して作者が哲学的・芸術的思索をしているように感じました。しかし人物の心理描写が非常に細かいので、物語としての質は保っています。一月物語などよりも語彙は平易。

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    2009年11月01日
  • 葬送 第一部(上)

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    長い物語です。最期を迎えるまでの人間ショパンを見てください。圧倒的な文書力、平野啓一郎の最高傑作です。

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    2009年10月04日
  • 葬送 第二部(下)

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    ついに最終巻。ショパンはいかに生き、いかに死んだか・・・彼に思いを馳せるのは、ドラクロワだけではない・・・。

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    2009年10月04日
  • 高瀬川

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    日蝕で挫折したリハビリ。表題作『高瀬川』はあと4年経ったら読み直したい。壁一枚向こうであるような奇妙なリアリティがある。とにかく印象的でドキドキしてしまった氷塊。でもなんだかんだで追憶が一番好きです。読みやすいので平野氏を敬遠している方にもオススメ。

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    2009年10月04日
  • ウェブ人間論

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    ネタバレ

    片やウェブビジネスに生きる人、片や文学の世界に生きる人。
    まったく違うジャンルの世界に生きる人が対談している様子がとても面白い。
    最初はなんか微妙に話がかみ合ってない感じがしたんだけど、
    最後はけっこうしっくりきてたな。
    むしろ、異なる考え方を持つふたりの対話では、よい相乗効果が出ていた。
    考え方が違うからこそ、話が膨らんでいった。
    双方ともやはり知性があり、かしこい人だ。
    専門用語になりがちなウェブの世界を分かりやすい言葉で説明できる人たち。
    とても勉強になったぞ!!

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    2013年04月07日
  • 文明の憂鬱

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    2006年2月 平野氏のエッセイは優しい内容をここまで難しく書くか?と思うほど理論化してくれるところが面白い

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    2009年10月04日
  • ウェブ人間論

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    「ウェブ進化論」の著者である梅田さんと小説家である平野さんとの対談。「ウェブ進化論」をストックとするなら、「ウェブ人間論」はフロー。ITだけではなく文学についても知識がないと完全に理解することが難しいのではないか。「ウェブ進化論」の続編と思って読み進めると壁にぶち当たることになると思う。ちなみに、私は完全に理解できなかった。
    いい本であることには変わりないので、いずれ改めて読みたい。

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    2009年10月07日
  • 顔のない裸体たち

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    誰にも有り得る話。物語というより論文に近かった。肉体と精神の分離。快楽にすがっても大抵の人間は虚無に辿り着く。ミッチーのような例外を除いては。

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    2009年10月04日
  • ウェブ人間論

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    「WEB進化論」の梅田さんと75年生まれの作家・平野さんの対談集。ネット世界にどっぷりつかり、自在に泳ぎまくる梅田さんと、そういう世界になんだかんだで懐疑的で否定的な意見を出してくる平野さんが、超平行線上でガチンコ勝負。初めのうちはどちらかと言えば平野さんよりだったけど、後半は梅田さんの意見の方が納得できたかなあ・・・。まあ、どっちも少々極端なんですが(^^;ま、この本の趣旨は『どっちに賛同』というよりは、『じゃあ自分はどう思う?』ってのを考えさせることみたいですが。読んでる間中、「自分の頭を使って考えろ」と繰り返し言われていた気がします。印象的だったのは、平野さんは紙の本がなくなることに危惧してるのに、梅田さんは「なくならない」とほぼ断言しているところ。本の価値は文章そのものではない、という意見にはちょっとびっくり。他にも「地方ほどネット革命の恩恵をうけている」「情報は量をあびると質に転化する」などなるほどなと思う言葉も沢山ありました。納得できる部分もあるし、反論したい部分もあるし、確かにそうだけど心情的に納得したくない部分もあったり。超楽観論とあがき系懐疑の狭間で自分の立ち位置を考えてみる。ネットはリアルを越えるのかな。とゆうかネットとリアルを分ける事自体が前近代的になっていっちゃうのかな。

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    2011年07月15日
  • 死刑について

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    ある友人と知り合った頃、死刑制度についての話題がチラッと出た時に自分は何か言えるほど考えたことがないなと思い、本を購入したが積んでいた。死刑制度がテーマの書籍を購入したのは初めてだと思う。

    本を読む前の時点で、私はどちらかというと日本の死刑制度存置派の立場を取っている。その理由は自分と同じ社会に生きる人間がやったとは信じられないほど残虐で凶悪な犯罪があったことを知り、その内容の凄惨さに怒りが湧くから。その犯人たちはもう「人間」ではないので人権なんてないし、社会に戻ってほしくないし「人間」として刑務所に入っていることすら生ぬるいと思うから。

    犯罪被害者やその遺族でもないのにここまでの怒りを持つ私はどうすれば死刑制度廃止派の意見を飲み込めるだろうと思ったが「「人間の業」とは思えないようなことをしてしまうのが人間です。歴史を見れば、そういう事例は枚挙に暇がありません。人間とは、そういう存在であるにもかかわらず、私たちは「人権」という概念にたどり着いたのです」という文章を読み、拳を下ろすしかなかった。


    命を尊重し人を殺さない共同体であるという原則を維持するべきであることや、犯罪者の背景にある生育環境の問題等をフォローできなかった社会の責任ではないかという点は理解できても、この怒りや恐怖の感情はどこにやればいいんだろうと飲み込むのが難しかった。
    犯罪被害者のケアについては全く気にしたことがないテーマだったので、新たな視点をもらったように思う。
    あと、「死刑制度が存在せず、最高刑が例えば終身刑であれば、必ずしも死刑を望まないという人もいるのでは」という指摘はその通りかもしれないと思った。

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    2026年10月12日
  • マチネの終わりに(文庫版)

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    ネタバレ

    三谷さん許せないんですが!
    でも真実を本人の口から聞いた2人のそれぞれの受け止め方や、新しく産まれた子供たちのことを考えると、元に戻れるわけもなく...とても複雑な感情でした。最後お互いに成長した姿でまた出会えて本当に良かったです。何歳になっても変化を受け入れて成長出来たらなと思いました。

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    2026年10月09日
  • 本心

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    盛りだくさんな小説だった。途中から物語として面白くなったけれど、夢中になって読んだ、という感じではない。

    主人公の朔也がとても理性的で、こんなに自分の感情や周囲の世界を分析しながら生きている人っているのかな、と少し思った。読んでいるうちに、朔也が考えているというより、朔也を通して作者が世界を分析しているようにも感じた。

    私は小説から何かを「教えて」もらいたいわけではないのだと思う。作者が切り取った世界を差し出してくれて、そこに自分で入って、自分なりに何かを発見した気持ちになりたい。

    この小説は、世界を見せるだけでなく、その見方や捉え方、さらには示唆までかなり見せてくれる。とてもよく考える人なんだろうなと思うし、興味深い。でも、ときどき「そこから先は自分で考えさせて」とも思った。

    『本心』を読んで、自分が小説に何を求めているのかが少しわかった気がした。

    【映画鑑賞後・追記】

    映画も鑑賞。原作はやや説明的で理屈っぽく、いろいろなテーマを詰め込みすぎていると感じたが、それでも話についてはいけた。一方、映画はその説明を削りながら、人物やエピソードは次々と登場するので、かなり唐突に感じる場面が多かった。特に終盤になってイフィーが登場したときには、「ここからこの話をやるの?」と思ってしまった。原作未読だったら、私はどこまで理解できただろう。

    ただ、映画を見て本当によかったと思ったのは池松壮亮。感情を表情や声で「演じて見せる」のではなく、内側で感情が動いた結果として、頬が震えたり、目に涙がたまったり、顔が赤らんだりする。そんな身体の変化そのものが演技になっているように見えた。感情の動きは大きいのに、芝居が決して地面から浮かない。うまい俳優とはこういう人なのか、と改めて思った。

    映画そのものにはかなり物足りなさも残ったけれど、池松壮亮の演技を見られたという意味では、見てよかった。

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    2026年10月02日