平野啓一郎のレビュー一覧

  • 決壊(下)
    非常に重い内容.赦すとは何か?強く考えさせれれる.この小説で提示している問題は,答えがでる事柄ではないと認識しつつ,自分なりに逃げずに考えると言うことが大事.著者はほぼ同い年.
  • 自由のこれから
    今まで自分が考えていたことを正確に言葉で表現してくれていて、すごくスッキリした。
    自分の行動は全て自由で自分自身が決断しているのだと思われがちだが、実は周りの価値観や環境によって行動が制限されている事実を認識しておかなければいけない。

    この「〇〇しなければいけない」という表現自体も誰にとってどうい...続きを読む
  • 決壊(下)
    深い心の闇。暗く渦巻く謎。
    未成年者の犯罪。ネットを介した脅威。警察の横暴。
    現実にありそうな恐怖。
    それらを奥深く描いている作品。
    犯人は主人公??と思わせるストーリー。ラストは辛いものでした。
    難しい会話が続き、主人公・崇の言葉を理解していないところもあると思う。登場人物の心の声が痛い。
    犯罪物...続きを読む
  • 自由のこれから
    自由の根幹である「〜がしたい」あるいは「〜がしたくない」さらには「どっちでもいい」という欲望が自発的なものと外部から刺激がどのように組み合わさって作用するのかを考察。
    イノベーションによる未来、法のシステム、遺伝と環境それぞれと自由の関係性についてはその道の専門家と対談を行い掘り下げる。
    締めは著者...続きを読む
  • かたちだけの愛
    作者の恋愛観には、そうだよなあと共感できるところが多かった。分人主義を恋愛の形から理解するにはもってこいの一冊。
  • ドーン
    分人主義の理解を深めようと読む。自分としては「空白を満たしなさい」の方が、よりポジティブな分人主義の理解に役立った。本作は、600ページを超える大作だが、全体を通して暗く陰鬱な気持ちから逃れられない。ただ、分人主義の考え方がなければ、未だに主人公の救いはないのかもしれない。
  • 自由のこれから
    自由について、それはどういうことが問題になるの色々な話を通して見つめる。体系的な本ではないけれど対談などもあるので、多角的でわかりやすいかもしれない。自動運転の例なんかはわかりやすかった。
  • サロメ
    妖しい月光の下、継父ヘロデ王の御前で艶やかに舞ってみせた王女サロメが褒美に求めたものは、囚われの美しき預言者ヨカナーンの首だった――少女の無垢で残酷な激情と悲劇的結末を鮮烈に描いた「世紀末最大の傑作」が、芥川賞作家・平野啓一郎の新訳で甦る! 宮本亜門舞台化原作。(裏表紙)
  • マチネの終わりに

    大人の恋愛小説

    ピースの又吉さんイチオシの小説ということで購入した一冊。
    この本のキーワードを自分なりに5つ挙げるとしたら、すれちがい、嫉妬、過去と未来、後悔、葛藤。
    イラク情勢やリーマンショックからの経済破綻や大規模災害などの世界的なテーマを絡ませ、その時代的な流れと共に愛し合う二人の主人公の恋愛を描いた作品。専...続きを読む
  • 高瀬川
    「高瀬川」と「氷塊」は面白かった。「氷塊」のつながりは見事。「清水」と「追憶」はよくわからなかったが、全体を通して構成が芸術だと思った。カバー写真も美しい。
  • 自由のこれから
    「考える本」というよりは「模索する本」という感じ。

    「自由とは何か」という茫洋とした命題に対し、様々な角度からのアプローチが提示され、そして一つの答えを出すのではなく、それこそ分人主義的に多角的に完結されている感じ。

    この本を読む前に筆者の分人主義に関する本を、小説でも新書でも良いので、読んでお...続きを読む
  • 透明な迷宮
    いやー、面白かった!

    どれも不思議な感じのする短編ばかり。
    とにかく最後の「Re:依田氏からの依頼」がすごかった。
    表題作「透明な迷宮」も結構好き。

    「Re:依田氏からの依頼」の中の気に入ったフレーズを少し。
    「受信したメールの返事を書きそこなって過ぎた二日間は、あっという間に感じる。しかし、送...続きを読む
  • 「生命力」の行方――変わりゆく世界と分人主義
    社会からアート、エンターテイメント、そして文学まで、多様性における生命力(強い影響力を持つこと)が何処に向かうのかをエッセイと対談で考察、通低するのは個人の多様性である分人です。本丸の文学についてはやや難解ではあるものの他の分野での著者の博覧強記ぶりには驚かされる。先日参加した人工知能のイベントでは...続きを読む
  • ドーン
    初平野啓一郎作品。SFだが非常に近い未来を想像させる設定が見事だった。火星という非現実的な環境と、大統領選というタイムリーな出来事、登場人物のリアルな心情部分のやり取りなど、構成要素が上手く絡み合い面白かった。
  • 葬送 第一部(下)
    上巻ではややもたついていたストーリー展開が,サンド夫人の娘のソランジュがクレサンジュと結婚するあたりから加速し,ドラクロアが自ら描いたリュクサンブール宮の天井画を観て自ら驚愕するところまで.
    徐々に病に冒されていくショパンの影が薄くなってゆき,話の着地点がどこなのかが見えなくなってきた.第2部が楽し...続きを読む
  • 高瀬川
    平野啓一郎さんが「葬送」後に著した短編集。
    当時平野さんは28歳。ご自身の言葉によると
    「作家としての挑戦」であり
    「男と女の性的な関係に取り組んだ」作品集。

    男女の性行為を細かに描いた「高瀬川」
    不倫に悩む女性と
    実母を求める少年の妄想が交差する「氷解」
    の2作のみならず
    難解な「清水」と「追憶...続きを読む
  • あなたが、いなかった、あなた
    短編集だが、色々な手法を凝らしている。
    これまでに味わったことのない短編集。

    「鏡」「女の部屋」「母と子」は特に驚いた。

    文学には程遠い自分が一番気に入ったのが「フェカンにて」
    この短編の主役は、平野啓一郎先生ごい本人にとても近い。
    私はご本人であろうと思い込んで読んでいた。

    先生の作品である...続きを読む
  • 葬送 第一部(上)
    日本人らしからぬ古典のような書き口。心のひだに分け入った心情表現。ドラクロワ、ショパン、サンド…いい意味で偉人を俗にしてくれている。
  • 「生命力」の行方――変わりゆく世界と分人主義
    平野啓一郎のエッセイ集
    社会論、思想論からエンターテインメント論まで、理論の納得感と博覧強記ぶりに感動しました。
    以下、印象的だったところ
    ・教養は話題のデータベース。話題たりうるトピックが色々ある中でも、それを話題にすることでコミュニケーションが一段上等になるものが、教養だった(p.18)
    ・殺人...続きを読む
  • ドーン
    人間と社会への深い考察を行い、
    それを小説の中にわかりやすい形で盛り込み、
    読者に考えるきっかけと示唆を与える
    ということこそが小説家の仕事だと考えると
    極めて誠実な仕事を継続的に行っている作家だと思う。

    平野啓一郎という作家は。

    いろんな概念や象徴、考えが詰め込みすぎなくらいに
    盛り込まれてい...続きを読む