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Posted by ブクログ
清水
人の生死の一部始終は、清水の水滴が落ちるその一瞬なのかもしれない。滴り落ちる水滴の音は希死念慮だったのか…。
高瀬川
官能的な時間は、その後の出来事や明かされる過去によって、こうも印象が変わってしまうのか、と感じた。一度読んで感じた気持ちはもう戻ってこないと思い知らされます。
追憶
「複雑なことを複雑に考えている人にとっての追憶とはこうなのか?」と思う新たな読者体験。
伝えたい内容の難解さを前に、言葉の定義を自分は果たしてしっかりと理解できているだろうかと自問させられた。
氷塊
氷は2人にとって何を意味していたのだろう。溶けることは…
描かれなかった物語の背景ー氷山の下では、氷に触れ続けてしまった2人はこの短編の構造のように重なり合ってしまっていたのか…
Posted by ブクログ
平野啓一郎さんが「葬送」後に著した短編集。
当時平野さんは28歳。ご自身の言葉によると
「作家としての挑戦」であり
「男と女の性的な関係に取り組んだ」作品集。
男女の性行為を細かに描いた「高瀬川」
不倫に悩む女性と
実母を求める少年の妄想が交差する「氷解」
の2作のみならず
難解な「清水」と「追憶」にも
確かに、若さが迸るにおいがする。
「高瀬川」には 男女間のズレの
居心地の悪さが見事に描かれている。
セックスという最も密なコミュニケーションを経ても
ラブホテルの作為的で冷笑的な空気がそうさせるのか
二人の距離は濃厚になっていく。
そんな一夜を「ペットボトル」に詰め込み
時間という川に流してしまう男の残酷さ。
「氷解」では 喫茶店のガラスを隔てて
女性と少年が視線を交わす。
その瞬間に勘違いが生まれる。
二人の妄想が膨張し破裂する過程がスリリングだ。
不倫に悩む女性の心情も実にリアルに描かれている。
余談だが、女性が思っているように
「好きと言わないのが不倫」、である。
もしも既婚者が「好き」と言えば
新たな意味と時間が生まれてしまい
同時にそれを収束させる責任も生じる。
既婚者の皆さん、
不用意な発言にはご注意ください。
この作品とは関係ないけど(^.^)
Posted by ブクログ
小説は、他者と自己の関係というテーマを絶えず題材としてきた。
そんな中で、タイトルにもなっている「高瀬川」という短編は、男女の性にからんだ人間の関係性を、男と女がホテルで一夜を過ごすというシチュエーションで、こんなにリアルに掘り下げることができるのか、と驚かされる作品だった。
遠い昔にサトウトシキのピンク映画を初めて見た時に、タブーである男女の性にまつわる心理描写をこんなにリアルに描く世界があるのか、と当時学生だった僕は驚いたのだが、それに似た、しかしそれを純文学としてさらりとやれるんだなあ、という感嘆と呆れが混じったような。。
どこまでが作者自身の体験に基づくものかは知らないが(知っちゃいけない気もする)、こんなに感情的な一コマを客観的な心理描写で重ねられると、僕だったら(同性だけど)怖くてこの人とはつき合えないなと思う。体を許した後に女性が、心を許すべく、自分の秘密を語り始める描写などは、リアルすぎて吐き気がした。
「大野」が主人公の短編は「フェカンにて」もあるが、いずれも読後感がたまらない。くせになる。
Posted by ブクログ
純文学というのは、とっつきにくくてどうも苦手です。
「清水」「追憶」は、どうしても読めませんでした。
「清水」は、阿部公房のような、いわゆるシュールレアリズムというものでしょうか?
文庫版を電車の中で読んでたら疲れてしまいました。
「追憶」も同じく。実験的すぎて、頭に入ってこなかった。
こういう類の作品は、静かなところで落ち着いて読まなければならないな、と思いました。
「高瀬川」「氷塊」は、見事です。
丁寧な心象描写にぐいぐいと引き込まれていきます。
特に「氷塊」に出てくる少年の思春期らしい、真っ直ぐで繊細な感情は、読んでるこちらにもひしひしと伝わってきて、身を切られる思いでした。
収録4編とも、すべて毛色の違う、盛りだくさんな一冊でした。読み応えは十分あります!
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