【感想・ネタバレ】高瀬川のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編「清水」
中編くらいの表題作「高瀬川」
詩「追憶」
2つの小説が並行して進む実験的な「氷塊」
の4つが入っています。

「高瀬川」と「氷塊」はすごく良かった。
「高瀬川」は、最終的にパンティがペットボトルに入って流れて行っちゃう話。
その情景がすごく印象的なのと、コトに及ぶ男女の会話のぎこちなさが良い。
村上春樹の小説で男女の会話がウィットに富んでいてリズミカルな感じなのと真逆で、すごくぎこちなく恰好悪く描いているのが妙に魅力的。
「氷塊」はページの上半分が少年目線、下半分が30代の女性目線で進んで行って、ときどき真ん中に共通目線の文章が差し込まれる。
どう読むかは読者次第だと思うが、読み進め方によって印象も変わるだろうし、とても面白い。
共通の文章の差し込まれる感覚が、最初は長く、後の方は短くなっていくので、小説にスピード感が出てきてドキドキする。
おもしろかった。

0
2021年05月30日

Posted by ブクログ

3/6
「氷解」は上下二段で別の視点人物から物語を描いており、二人が共有する世界を描くときだけ中段に文字が置かれる。
言説/内容にもう一つの観点が用いられるようになった現代小説の先鋒。
青山真治の解説も秀逸。

0
2010年03月08日

Posted by ブクログ

とにかく実験精神に溢れた挑戦的な文学。
最初の掌編は記憶と流水のイメージを重ね合わせる。屁理屈っぽさすらあり読むのが少し苦しいが、ここで語られていることが後の3作のモチーフになるため、よく読むと読後感が変わる。
「高瀬川」は性交のための一夜の営みがクールっぽく描かれるも、何度か挟まれるダサい描写が印象的だ。
「追憶」は最後のページを読んで思わず拍手。なお、文庫と単行本で文字組はかわるの?と思って単行本も見てみたが、流石に同じだった。
「氷塊」は上下段の小説が同時間軸で展開され、終盤に交差する。読み応え抜群。

0
2023年02月27日

Posted by ブクログ

実験的な試みによる短編が収められた短編集。

ある一夜を切り取って細かな行動描写と
心理描写で男女の心のなかを探った高瀬川は、
セクシャルな内容に目が行きがちだけど
描写の模索が感じられて面白かった。

あとは、氷塊。
2人の物語の交錯が見事だった。

0
2019年09月30日

Posted by ブクログ

高瀬川、と氷解、が好きでした。

高瀬川は少し官能小説のようでもあるのだけれど、陳腐でなく愛情を感じるまでもないような、表現の仕方で。
でもやっぱり、少し男性目線かなと。

氷解が良かったのは特異な文章構造でときたま2人の人生が交差するところに少しはっとさせられる。
女の人から見た目線、思考、感情と
男の子が考える構想と現実のあい交える妄想と

0
2019年05月21日

Posted by ブクログ

「高瀬川」と「氷塊」は面白かった。「氷塊」のつながりは見事。「清水」と「追憶」はよくわからなかったが、全体を通して構成が芸術だと思った。カバー写真も美しい。

0
2017年08月24日

Posted by ブクログ

平野啓一郎さんが「葬送」後に著した短編集。
当時平野さんは28歳。ご自身の言葉によると
「作家としての挑戦」であり
「男と女の性的な関係に取り組んだ」作品集。

男女の性行為を細かに描いた「高瀬川」
不倫に悩む女性と
実母を求める少年の妄想が交差する「氷解」
の2作のみならず
難解な「清水」と「追憶」にも
確かに、若さが迸るにおいがする。

「高瀬川」には 男女間のズレの
居心地の悪さが見事に描かれている。
セックスという最も密なコミュニケーションを経ても
ラブホテルの作為的で冷笑的な空気がそうさせるのか
二人の距離は濃厚になっていく。
そんな一夜を「ペットボトル」に詰め込み
時間という川に流してしまう男の残酷さ。

「氷解」では 喫茶店のガラスを隔てて
女性と少年が視線を交わす。
その瞬間に勘違いが生まれる。
二人の妄想が膨張し破裂する過程がスリリングだ。
不倫に悩む女性の心情も実にリアルに描かれている。

余談だが、女性が思っているように
「好きと言わないのが不倫」、である。
もしも既婚者が「好き」と言えば
新たな意味と時間が生まれてしまい
同時にそれを収束させる責任も生じる。

既婚者の皆さん、
不用意な発言にはご注意ください。
この作品とは関係ないけど(^.^)

0
2016年06月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 近作『空白を満たしなさい』の感想ツイートがわたしのTLを潤す今日このごろ、待って待ってまだ追いかけ切れてない作品いっぱいあるねん!! ということで読んでみた『高瀬川』。
 ざっくり言うとおもしろかったです。

■清水
 この人の小説には、いつも説明が明晰すぎるところがあると思う。「存在が、――そう、今はもう疑うべくもなく、この私の存在が、次々と過去へと放り出されてゆくのだった。」(p22、原文は「この私の存在が」に傍点)この段落を書けるならば、この小説はあまり書かれる必要がなかったのではないか、というような気がした。滴り落ちていく清水とか、鳩の屍体とか、そういったイメージを付随することに意義があるというなら異論はとくにないけれど。

■高瀬川
 生々しいのになぜか下品ではないエロス。
 会話文のぎこちない感じは相変わらずだなあと思ったけど、細かい心理描写はけっこう楽しく読めた。
 鴎外の『高瀬舟』は、どのくらい関係あるのかな。裕美子が流産について語るところは、弟殺しの罪を告白する喜助と通じるところがあるかも。
 そういえば、流産も「流れる」といいますね。
 最後の、鷺が流れずにひっかかっちゃったペットボトルを不思議そうに眺めているシーンが好き。
 余談ですがこれ読んでたら、電車の中で男子高校生がチラチラこっちを見ていた。
 うーん、きみには、ちょっとまだはやいかな~(笑)

■追憶
 レイアウトを駆使した視覚的な作品。
 おぼろげ。読むというより絵のように眺めて鑑賞するものかな。
 最後には全文がついているので、そこを読むと何が書いてあったのかはわかるけど。
 これだけ視覚的だと、文庫と単行本では、同じ小説なのに全然違う作品になるのじゃないか。
 
■氷塊
 少年と女性の両方の視点から二段組で同時に描かれる(二人にとって共通な部分は一段になる)という面白い試み。
 少年は女性を見て死んだと聞かされていた母親が実は生きていたのだと思い込み、女性は少年を見て不倫相手の息子なのだと思い込む。
 なんかアンジャッシュのコントに似てる。
 少年パートを最初に読むか、女性パートを最初に読むか、どういう読み方をするかで感じ方が変わってきそう。わたしは両方少しずつ読んだ派。もどかしい感覚。

 こんな風にいろんな文体や技法を駆使していろんな小説を書く作家である平野啓一郎が、「分人」という概念を思いついたのは、なんだかよく分かる気がするな、などと。

0
2013年07月13日

Posted by ブクログ

小説は、他者と自己の関係というテーマを絶えず題材としてきた。

そんな中で、タイトルにもなっている「高瀬川」という短編は、男女の性にからんだ人間の関係性を、男と女がホテルで一夜を過ごすというシチュエーションで、こんなにリアルに掘り下げることができるのか、と驚かされる作品だった。

遠い昔にサトウトシキのピンク映画を初めて見た時に、タブーである男女の性にまつわる心理描写をこんなにリアルに描く世界があるのか、と当時学生だった僕は驚いたのだが、それに似た、しかしそれを純文学としてさらりとやれるんだなあ、という感嘆と呆れが混じったような。。

 どこまでが作者自身の体験に基づくものかは知らないが(知っちゃいけない気もする)、こんなに感情的な一コマを客観的な心理描写で重ねられると、僕だったら(同性だけど)怖くてこの人とはつき合えないなと思う。体を許した後に女性が、心を許すべく、自分の秘密を語り始める描写などは、リアルすぎて吐き気がした。

「大野」が主人公の短編は「フェカンにて」もあるが、いずれも読後感がたまらない。くせになる。

0
2013年01月21日

Posted by ブクログ

表題作。高瀬川。京都の一夜。その「性」をどっぷり。ただ性欲を満たすだけならば小説などなんの意味も立たない。SEX本。心理学本。そんなの意味がない。恍惚感。死の気配。隠された過去。本能。アンバランス。否定。肉体から心まで奪うこと。過去を消しさること。一度傷ついた心。もどらないこと。心の平安を取り戻すこと。二人の絡み合った下着。押し込まれたペットボトル。衝動に駆られて決行した。心と心がどれだけ近づけるか。距離だ。ひとつになれるか。そうでなきゃ。切ないだろ。

0
2011年09月15日

Posted by ブクログ

純文学というのは、とっつきにくくてどうも苦手です。

「清水」「追憶」は、どうしても読めませんでした。
「清水」は、阿部公房のような、いわゆるシュールレアリズムというものでしょうか?
文庫版を電車の中で読んでたら疲れてしまいました。
「追憶」も同じく。実験的すぎて、頭に入ってこなかった。

こういう類の作品は、静かなところで落ち着いて読まなければならないな、と思いました。

「高瀬川」「氷塊」は、見事です。
丁寧な心象描写にぐいぐいと引き込まれていきます。

特に「氷塊」に出てくる少年の思春期らしい、真っ直ぐで繊細な感情は、読んでるこちらにもひしひしと伝わってきて、身を切られる思いでした。

収録4編とも、すべて毛色の違う、盛りだくさんな一冊でした。読み応えは十分あります!

0
2009年10月04日

Posted by ブクログ

日蝕で挫折したリハビリ。表題作『高瀬川』はあと4年経ったら読み直したい。壁一枚向こうであるような奇妙なリアリティがある。とにかく印象的でドキドキしてしまった氷塊。でもなんだかんだで追憶が一番好きです。読みやすいので平野氏を敬遠している方にもオススメ。

0
2009年10月04日

Posted by ブクログ

いずれも実験的な試みを含む短編四編を収録しています。

「清水」は、京都の街を歩きながら、自己の意識が刻々その現実感をうしなって不確かな過去へと流れ去っていくことに対する想念をつづった作品です。

表題作「高瀬川」は、小説家の大野と雑誌の編集者である裕美子が身体をかさねる物語です。著者はこれまでにも、現代文学のさまざまな可能性を宣明するような試みをこれまでにもつづけてきており、本作もその一環であるということはいちおう理解できます。大野がラブホテルの汚さに神経質になったり、彼がうっかりひざで裕美子のふとももを踏んでしまったりといったシーンに、多少目をみはることもありましたが、正直なところこの程度の作品であれば神崎京介でも書けるのではないかという感想をいだいてしまいました。

「追憶」は、作品の最後に示される現代詩めいたテクストをズタズタに切り裂いて複数のテクストが錯綜する作品世界をつくりあげた実験的な試みです。

「氷塊」も、自分の本当の母親に出会ったのではないかと考える中学一年生少年と、妻子のある医者と不倫関係にある女性の二人の物語が、並行した二つのテクストとして配置され、それがやがて交錯する帰結をえがいています。ジャック・デリダ『弔鐘』のような思想書での試みなどもありますが、そもそもさまざまな人物の物語をひとつのテクストのうちにえがくことのできる小説でこうした試みをおこなうことに意味があるのか、よくわからないというのが率直な感想です。

0
2020年09月03日

Posted by ブクログ

表題作は、作者と思しき若い作家と女性編集者が京都のラブホテルに入ってから朝方そこを出て別れるまでの一部始終を描写したもの、と言ってしまうと簡単ですが、ありそうでなかった小説だと思いました。
ふつうはあえて細かく書かないで済ますというか、書かずに逃げるようなことを淡々と読ませておいて「どうでもいいよ、そんなこと」と思わせないのはさすがだと思います。

「氷塊」も構成が面白かったですが、ラストの氷の場面はタイトルとも相まってちょっと計算高い感じがしてしまいました。

0
2016年07月26日

Posted by ブクログ

じっくりと腰を据えて読みたい短編集。実験的な要素も高いけれど、その言葉の紡ぐ美しさは、やはり、平野啓一郎。その感想を言葉にするのは、とても難しいけれど、なんだろう…水の滴をたどるような感じでした。

0
2015年09月23日

Posted by ブクログ

この作家は一所に落ち着かず、新しい手法に果敢にトライしていく。この本は、最後まで読んで計算され尽くした顛末に思わず嫉妬すら覚えてしまった。

0
2012年04月14日

Posted by ブクログ

作者前著のノリで読み始めてみたら、

『高瀬川』が、
エロい( 一一)。

電車で読んでて、思わず周囲をキョロキョロ(゜o゜)してしまったではないか。

『氷塊』は面白かった。

0
2017年01月22日

Posted by ブクログ

4編の短編小説の中では『清水』がいちばんよかった。
何がどう良かったのかを説明するのはとても難しいのだけれど、言葉の紡ぎ出す世界の中に ”すとん” と入ることのできる作品であるというところが好きなのかもしれない。
文章には選ばれた言葉が放つ気配がある。そしてその気配が織り成す空間があり、その空間には新しい世界が生まれる。
言葉が生み出す別の世界に連れて行ってくれる小説が私はいい小説だと思う(なかなかそういう作品はないのだけれど、、、)。

0
2010年06月10日

Posted by ブクログ

短編集ですが「高瀬川」たまりません。見られてるのか、と思うほど性描写とその心の動きがリアルです。世代が近いと言うことで。

0
2009年10月04日

「小説」ランキング