平野啓一郎のレビュー一覧

  • 葬送 第一部(上)
    ドラクロワとショパンの二人の芸術家を中心に、ロマン主義の大きな潮流に包まれる19世紀パリの社交界をえがいた作品です。

    著者は、作品におうじてさまざまな文体を使い分ける作家ですが、この作品では翻訳小説を思わせる文体と、とくに第一分冊となるこの巻ではドラクロワの芸術観が長いセリフを用いて描写されており...続きを読む
  • ご本、出しときますね?
    オードリーの若林さんと受賞歴のある若手作家の対談だが、本人たちの素のエピソードが面白く、作家に親近感が持てる。これを読むと、小説家という職業に就くためのレールはないのだろうと思う。小説を書くのに理論や構図の基本もあるのかもしれないが、そんなことは気にせず書いているイメージを持ってしまう。動画でもアッ...続きを読む
  • ご本、出しときますね?
    面白かった〜!これは番組観たかったな…

    小説家の方々が個性的な方々で、本を読んでるのに声を出して笑ってしまった〜
    「全部完璧なセンスにしてる部屋を信用しない」っていうところで凄く同意してしまった。ノイズお土産なるほどねえ(笑)

    登場した方々の小説をもっと読みたくなったし、さらに紹介された本と読み...続きを読む
  • 透明な迷宮
    世界が壊されて、また再構築されるような感覚を得られる短編集。

    なかでも私が気に入ったのは、「火色の琥珀」。
    火にしか恋愛感情や性欲を抱けない男の独白である。平野さんの好きな、三島由紀夫の「仮面の告白」に似ている。
    あちらが同性愛なのに対し、こちらは無生物への愛。そんな本作は火に関する描写がとても緻...続きを読む
  • 空白を満たしなさい(上)
    私とは何か。
    平野啓一郎さんのこの作品を読んでから、すっかり「分人」という捉え方の虜になっている。
    この作品の中で、平野さんは対人関係ごとの様々な自分のことを「分人」と定義づけている。(「私とは何か、P7」)つまり、人間を「分けられる」存在とみなし、恋人との分人、両親との分人、職場での分人など、人は...続きを読む
  • ご本、出しときますね?
    色んな本が読みたくなる1冊。
    元々はテレビでやっていた、作家さんたちの対談を本にしたものだが、作家さんたちの人となりがなんとなく伝わってくるのと、こんなに身を削って小説は書かれているのかと驚いてもっと本が読みたくなる。テーマごとにおすすめの本を作家さんが紹介してくれるので、好きな作家さんがどんな本を...続きを読む
  • 透明な迷宮
    人間のアイデンティティと愛の形をいろいろな視点から実験的に考察した短編集。

    私の定義とは?
    私は誰かに代替しうるのか?
    愛も代替しうるのか?
    私は他人や映像を通しても私そのものなのか?あるいは別の私が映るのか?

    独立した短編作品の中で問われるのは、このように
    私をいろいろな切り口、視点で見たとき...続きを読む
  • 決壊(下)
    ネット社会、少年犯罪、犯罪被害者、マスコミ報道、罪、病と責任、取り調べ、子との関わり、格差…… 衝撃的な事件をもとに現代が直面する様々な問題を炙り出す。
    赦しは赦す側のためにある
    共感でつながる現代人
    読み進めていくにつれ、自分の心の闇に触れ、それを決して否定できないことに、また恐ろしさを感じる。
  • 「カッコいい」とは何か
    「カッコいい」という現代的な美意識について、美学や社会学などの観点から考察をおこなうとともに、ジャズやロック、ファッション、文学についての著者自身の意見を交えながらの議論がなされています。

    著者は、アメリカにおける「クール」の概念やヨーロッパにおける「ダンディ」の概念などをたどり、「カッコいい」と...続きを読む
  • 決壊(上)
    一見問題なさそうな家族の日常に軋む小さなひずみ、危うい家族・不穏な学校生活の爆発前の状況が書かれており、読む人間を不安へと引きずり込むのがうまい。上巻の終わりには一気にそれらが不幸の連鎖へとなだれ込んでいく。
    ひどく残虐な事件を描写しているにも関わらず、嫌悪感を持たせないのは、各々の思考の解説を克明...続きを読む
  • 決壊(下)
    怒涛の展開で、下巻は息もつかせぬ感じだったような気もします。ドミノ倒しのように、悪意とそれに関わった警察・マスコミ・人がさらに人を壊していくということに圧倒されました。
  • ドーン
    人に薦められて読んだ。

    最初は分人主義やら「散影」やらいろいろ近未来要素がたくさん出てきてよくわからなかったり、登場人物の相関関係が把握できなかったりしたけれど、読んでよかった。最後まで読んで、もう一度、読み直すと、よりいろいろわかりながら読める気がする。

    近未来のお話。火星に初めて降り立った宇...続きを読む
  • ドーン
    初のSF小説。SF小説はフィクションでありながら、実社会の問題を定義していると思っているため、社会情勢、経済や政治の歴史であったり、社会が向かっている方向を知っていなければ理解できないジャンルであると思い敬遠していた。

    本作は火星探査船「ドーン」で、人類初の有人火星探査から帰還した医師であり宇宙飛...続きを読む
  • 「カッコいい」とは何か
    文化を本格的に分析する本って、あまり読めていませんでした。
    この本はとても面白かった。
    丁寧で、論理的で、読み応え、納得感がとてもあります。

    「かっこいい」っていう感覚って、常に大切にしたいと思うんですけど、
    そのかっこよさって、いったい何なのか。
    それを考える基盤を与えてくださったかなと思います...続きを読む
  • 「カッコいい」とは何か
    筆者は、「かっこいい」を「しびれるような生理的興奮をもたらし、強い所有願望、同化・模倣願望をかりたてるもの」と定義している。この本を読む数ヶ月前、あるロックバントの初ライヴに行って、まさに「しびれる」ような体験をしたばかりだったので、どんどん読み進めた。音楽、ファッション、文学、宗教、政治、経済など...続きを読む
  • サロメ
    巨万の富を約束されても欲しいのは一貫としてヨナカーンの首。
    頑固一徹。
    王様に長々と説得されたとしても、欲しいのはあの人の首の一言。
    一連のやりとりがとても滑稽でもあり、サロメのどうしようもない感じがまた狂気を感じました。
    愛を知らないから?拗らせてしまったから?
    純粋過ぎるから?後のとんでもない行...続きを読む
  • 自由のこれから
    自由というのは、一人ひとりが、尊厳を持った状態で暮らせる社会
    ・『私とは何か』を読んだ時にも感じたことですが、改めて平野さんは凄い人だと思いました。『私とは何か』では、私が中々腑に落とすことができないでいた構造主義についての疑問に「分人」という言葉でヒントを与えてくれました。この『自由のこれから』で...続きを読む
  • ドーン
    最愛の子を失った夫婦が、互いが知らなかった、それぞれの「分人」を認め、受け入れ、「個人」として新たな一歩を踏み出す物語。
    「火星プロジェクト」「大統領選」「戦争」。ストーリーは壮大。一方で、物語の終末が「個人」の歩みに還るのは、それらの物語を紡ぐのが、あくまでも「個人」であり、人類は地球で「個」を認...続きを読む
  • かたちだけの愛
    作中で相良は2人に自分のマイナスな過去・生い立ちを話している。マイナスな過去・生い立ちを話すのはとても勇気のいることだし、本当に仲を深めたいと思った人にしか自分は話せない。
    話しても良いと思うような人と出会えることは幸せだと思う。

    「私とは何か」で好きな考え方の一つである、
    「誰といるときの分人が...続きを読む
  • 決壊(下)
    決壊。
    社会全体のことなのか、沢野家のことなのか、崇なことなのか、、、全て含むのか。
    すごく考えることと、感じることを絶え間なくさせられる本で、そして終わりも、途中から予想はつくものの救いがなく、一言「疲れた」。
    私は、どうも哲学的なことを、論理的に(?)的確に(?)言語化することが苦手なので、読後...続きを読む