平野啓一郎のレビュー一覧

  • 決壊(下)

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    言葉を重ねると悪魔はどんどん人間臭くなっていったなという印象。結局、最後までどのキャラクターも好きにはなれなかったし、物語の終わり方もモヤッとするものだった。それでも、「あー、こういう正義を振りかざす奴いるよな」とか「こういう境遇なら、こうなっちゃうかもな」とか、感じることは多かった。特に、「なぜ人を殺してはダメなのか」という討論会の内容は興味深かった。ある程度、共通の価値観(認識)を持たなければ、『なぜ?』に回答を示すことは難しい。悪魔の紡ぐ言葉がどうしても自己満足にしか聞こえないのは、私と悪魔の間の価値観(認識)が乖離しすぎているからだと思う。だから、悪魔が発する言葉は自己を満たすだけの、

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    2023年04月30日
  • 死刑について

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    ネタバレ

    私は死刑賛成派でした。揺らぎつつの賛成派で、本書を読んでからは揺らぎの振り幅が大きくなりました。
    絶対支持ではないけど遺族がいる場合の感情を考えたら受刑者に死刑を望むのはやむを得ないのでは、とこれまで考えてきました。

    ちょっと長いですが本書p37からの引用。
    「劣悪な生育環境に置かれている場合だけでなく、加害者が精神面で問題を抱えている場合もあります。本来なら、そういう状況に置かれている人たちを、私たちは同じ共同体の一員として、法律や行政などを通して支えなければならないはずです。しかし支えられることなく放置されていることがあります。」
    死刑についての話ではありますが、結局これは法で裁ききれな

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    2023年04月25日
  • 空白を満たしなさい(上)

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    死んで生き返った「復生者」の主人公と、彼をとりまく人々の話。死因は自殺と言われているが本当なのか?などミステリー要素も。
    生き返ったらどうなる?というテーマひとつから膨大な思考や出来事が発生していて、それらはどれも納得のいく流れで、突飛な設定にもかかわらずリアリティがすごい。読み応えがあって面白かった。
    自殺について、ひいては死について、考えさせられた。

    自殺とは、単純に「1人で自分の人生を終わらせること」ではなく「自分を殺す」ということであり、もししてしまったらその人は紛れもなく「自分を殺害した犯人」なのだ、と認識させられた。「殺される被害者」のつもりでいても実際には「殺す加害者」「殺人犯

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    2023年04月28日
  • 空白を満たしなさい(上)

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    ドラマが面白く、先が待ちきれずに原作を読んだ。
    自分が死んでから(自死)3年後に自分としてまた生きる。そして自分が死んだ理由を探すという設定があり得ないはずなのに妙にリアルで。旦那を亡くして3年をとにかく生きた妻、自分との記憶がほとんどない息子、確執のあった義理の親との関係など、再構築する様は、ただ生きているだけではなかなか踏み出せないものばかりだった。

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    2023年04月25日
  • 死刑について

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    他の死刑に関する書籍と大きくはことらなかったが、死刑制度に対して多くの日本人賛成しているというアンケート結果は単に知識不足なのではないかと改めて思った。
    一度じっくりと向き合って考えてみると考えが変わる人も出てくるような気がした。

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    2023年04月08日
  • 決壊(下)

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    面白くて…というわけではなく、先を読まざるを得ない様な感じで、結局一気読み(^◇^;)

    難しいし、よくわからなくて読み飛ばした部分もあるんだけど、妙に共感しちゃう部分もあったり。

    あー、芥川賞作家らしいわー、文学だわー、ところでいつ殺されるん?と思いながら読んでたんだけど、いやー、重くて、重くて…。

    結末もね、衝撃的でしたわ、確かに。救いが無くて、ドーンと気分が沈んだわのさ…。

    まぁ、いろいろ考えさせられる、ってのはあって、普段ボーッと生きてる私でも、たまにはね、という感じで良かったといえば良かったけど、あんまり読みたい作家さんではないな、うん。

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    2023年03月27日
  • 『マチネの終わりに』無料試し読み

    購入済み

    続きが気になる

    無料版では、出会いのシーンが描かれていました。これから二人がどう発展していくのか、続きが気になる作品でした。

    #エモい #胸キュン

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    2023年03月22日
  • 小説の読み方

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    小説を読み慣れてないので、手に取った1冊

    小説の読み方について学んだ

    4つの質問 ニコラス・ティンバーゲン
    ①メカニズム②発達③機能④進化

    プロット前進型述語

    主語充填型述語

    トピックが何か
    今はどんな方向で矢印が進んでいるか
    やっと、平野啓一郎さんの「本心」が読める
    そして、分人も読み直そう

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    2023年03月18日
  • 死刑について

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    正直に言えば、私は同じ死刑廃止論に賛成するものです。他者と議論が始まれば、必ず感情論になり、憂鬱になる話題でした。これまで、私は、自分の考えを、整理することもできず、対する相手に伝える言葉を探し得ないでいましたが、これを読んで、本当に整理された、まさに、そういうことだよ!と思うお話でした。この作家の見識、知識の豊富さ、理論的に展開できる力に感服しました。読んでよかったです。死刑制度に関心を持つ、すべての方にお勧めです。

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    2023年03月08日
  • 死刑について

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    著者の意見に概ね賛成。
    死刑制度の何が一番問題かというと、被害者救済を何もしていないことの隠れ蓑になっているということ。
    以前、報道で見たが、自宅で家族を殺された人が、その自宅に住むことはできず、しかし売れないので、ローンは払い続け、その上に賃貸で暮らす生活費がかかると嘆いていた。精神的にも経済的にも追い詰められ、立ち直れない状態だった。
    心のケアはもちろん大切だが、ケアをしても傷ついた心がすぐに回復するわけではない。だが、経済的支援はすぐできること。犯人を殺しても負債が減るわけでもなければ、心が安らぐわけでもないのに放置されているというのは、被害者を再度鞭打つに等しい。
    そこを放置して、殺人

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    2023年03月05日
  • 高瀬川

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    とにかく実験精神に溢れた挑戦的な文学。
    最初の掌編は記憶と流水のイメージを重ね合わせる。屁理屈っぽさすらあり読むのが少し苦しいが、ここで語られていることが後の3作のモチーフになるため、よく読むと読後感が変わる。
    「高瀬川」は性交のための一夜の営みがクールっぽく描かれるも、何度か挟まれるダサい描写が印象的だ。
    「追憶」は最後のページを読んで思わず拍手。なお、文庫と単行本で文字組はかわるの?と思って単行本も見てみたが、流石に同じだった。
    「氷塊」は上下段の小説が同時間軸で展開され、終盤に交差する。読み応え抜群。

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    2023年02月27日
  • 本の読み方 スロー・リーディングの実践(PHP文庫)

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    【読もうと思った理由】
    最近、一度読むだけだと難解で理解しにくい本を徐々に読むようになり、「もっと読解力があったらなぁ」と思うことが多くなっていた。そんな折、この本とたまたま出会い読むに至る。

    【読後の感想】
    プロの作家の方は、「ここまで考えて本を読んでいるのか」と脱帽し、恐れ入った。

    (以下、感銘を受けた箇所を記載。)
    読書を今よりも楽しいものにしたいと思うなら、書き手の仕掛けや工夫を見落とさないというところから始めなければいけない。
    作家のタイプにもよるが、たとえば、三島由紀夫などは、様々な技巧に非常に自覚的な作家だったので、スロー・リーディングをすると、ここまで気を使うのか!というほ

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    2023年02月19日
  • ドーン

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    分人主義の話。

    最近読んだ転職自己啓発本で、株式会社自分という概念があったんだけど、それと似ている。株式会社自分の中には、家族事業部やお仕事事業部、音楽事業部などがある。一個の事業が上手くいかなくなっても大丈夫なように、いろいろな事業部を抱えている方がリスク分散になって安心だなと、この本を読んだ時に考えたことを思い出した。

    分人も、色々なタイプがいていいんだと思えるし、むしろそれが健全な人生に繋がる。この哲学を身につけると本当の自分探しという不毛な命題から自由になれると思う。

    一つの分人だけだとやっぱりそれは息苦しい。リリアンが、誠実で正直な分人としての自分を生きていくと決めたシーンは感

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    2023年02月09日
  • かたちだけの愛

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    読みやすい恋愛小説。
    最後の愛についての考察、わたしもそうなのではないかと最近考えていた。
    自分のままでいられ、くつろげる、自分を含めたその空間と時間もまるごと好きでいられる。
    そうできる相手に出会い、同じでいられることは紛れもなく幸せだと思う。

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    2023年02月05日
  • 空白を満たしなさい(上)

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    死んだはずなのに3年ぶりに生き返った徹生。しかしその死因は「自殺」。愛する妻と子供を置いて本当に自殺していたのか。

    上巻読んで、続きがめちゃめちゃ気になる…
    徹生は果たして自殺なのか殺されたのか。殺されたのなら誰が犯人なのか気になるし、怪しい人々も。

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    2023年01月27日
  • 小説の読み方

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     「小説読んだら深い感想を書けるようになりたい」そんな思いで本書を手に取った。本の読み方に関する本はたくさんあるが、小説の読み方に特化した本は少ないので貴重。また著者が現役の小説家なので説得力がある。

     本書の重要キーワードでもある「四つの質問(メカニズム、発達、機能、進化)」が目から鱗だった。これを知れただけでも読んだ価値がある。本だけでなく映画を見るときにも役立ちそうなので汎用性が高い。

     今後読書や映画を見る際、四つの質問を意識して鑑賞後のアウトプットに活かしていきたい。また、他人の感想を見るとき「どの質問に重点を置いてるか?」を考えるのも楽しそう。

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    2023年01月10日
  • 死刑について

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    友人から薦められて。平野啓一郎の本だとしても自分では手に取らなかったかもしれません。自分からは積極的に関わりたくないテーマ。でも、それこそが本書で言う〈三人称の死〉としてでしか死刑を見ていないことなんだと思います。昨年11月に「法務大臣は死刑のはんこを押したときだけニュースになる地味な役職だ」と発言した大臣が辞職しました。この時も首相は、続投させる意向だったと言われ、本人の資質とか任命責任とか、そちらの方が報道の主であり、この発言の内容についての問題はまったく深掘りされませんでした。たぶん、社会全体が死刑という刑について触れちゃいけない、ということだけで思考停止しているのだと思います。たぶん、

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    2023年01月06日
  • 死刑について

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    難しいテーマかつ、難しい内容。死刑制度を賛成か反対かの択一では議論し尽くせないことがよく分かる。世界、取り分け欧州での考え方の中枢、巻末の一覧は日本の特異さの一端を表すよう。

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    2022年12月29日
  • 平野啓一郎「分人」シリーズ合本版:『空白を満たしなさい』『ドーン』『私とは何か―「個人」から「分人」へ』

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    「個人individual」という単語は否定語inと「分ける」というdividualでできていて、「(もうこれ以上)分けられない」という意味なのだそう。ひと(人格)はこれ以上分けられないのかというと、そうではなくて、対応する相手や場面によりすこしずつ違った人格が生じていて、しかしそれは何も多重人格という意味ではない。それについて平野啓一郎さんは小説を書きながら気づき、「分人」と名付けて、「ドーン」と「空白を満たしなさい」という小説を書き、「私とは何か-「個人」から「分人」へ」という新書を書かれた。人に合わせて自分を変えるというと、マイナスの印象もあるが、「分人」という考え方を使うとそうわなくて

    #深い #タメになる #切ない

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    2022年12月17日
  • 小説の読み方

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    ネタバレ

    「機能」というのは、ある小説が、作者と読者との間で持つ意味である。人間の優しさを伝えたいと作者が意図し、読者がそのように作品を受け止める。あるいは、自分を理解してもらいたいと思って小説を書き、読者がそれを読んで、少しだけ作者のことが分かったような気になる。現代社会の複雑さが映し出す。人間の心の暗黒面を追及する。いずれも、その小説が作者、読者双方に向けて持っている機能である。もちろん、作者の意図と読者の意図とが擦れ違ってしまうことは幾らでもある。
     この「機能」を単純化して示したものが、ジャンル分けである。
     小説は、ミステリーや恋愛小説、SF、ホラー小説など、様々なジャンルに分けられている。実

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    2022年12月16日