ブックライブでは、JavaScriptがOFFになっているとご利用いただけない機能があります。JavaScriptを有効にしてご利用ください。
無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで100万冊以上配信中!
来店pt
閲覧履歴
My本棚
カート
フォロー
クーポン
Myページ
4pt
地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。許されぬ罪を巡り息づまる物語が幕を開く。衝撃の長編小説。
アプリ試し読みはこちら
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
1~2件目 / 2件
※期間限定無料版、予約作品はカートに入りません
Posted by ブクログ
沢野家の長男、崇が中心となってはいますが、数多くいる登場人物のそれぞれの心の陰影が細かく描き分けられた群像劇風に仕立てられています。 難解というほどではないが、ほどよく読み応えのある文章で、読んでいて心地よかったです。 神戸連続児童殺傷事件や秋葉原通り魔事件を受けて、そのような犯罪を犯す人物の心理や...続きを読む、罪とは何かという問題にまで踏み込んでいます。 崇のセリフあたりはドストエフスキーを意識しているのかなと感じました。 この崇という人物がまた多面性があって一筋縄ではいかないのですね。主人公になるぐらいだからこういうタイプの人間は結構特殊なんでしょうか?
『その苦しみを優しい寛大さと喜びもを以て耐えている姿にはね、生まれてくるこの子にとってだけじゃなくて、僕らすべての生を生きられるに値すると感じさせるような慰めがあると僕は思う。』 『この世界に3キロほどの重みを持って、最早、否定出来ないような事実として放り出される前にはね、やっぱり、母親という一個...続きを読むの人間の内部に、最初の場所を許されていた。これは、人間の生が始原に於いて抱えている根源的な条件だよ。』 『今もまだ、「優しい」理由は何だろうか? 別れてからも、いつまでもよく思われていたいという、男のあの見苦しい、単純な願望のせいだろうか?』 『なぜそうしたいんだろう? 俺が今、生きようとしている理由は何だろう? ここから落下するための数秒では足りなくて、更に数十年が必要な理由とは、一体何だろう!』 『…俺はただ、捏造された自殺の苦痛を、新鮮に保ち続けることでしか、生き続けることが出来ない!』 『俺は名声には興味がない。しかし、その考えを突き詰めれば、たった一人から蒙る評価だって、捨てなきゃならないだろう。他方で、名誉はどうか? 名声は量的な評価で、名誉は質的な評価だと言う。しかし、俺にはその違いが分からない。誰に褒められるかに拘ってみせることは、実は軽薄なんじゃないかと思う。』 『人に喜ばれると、実際は当たり前に嬉しいと感じるからね。だけどね、自分という人間が、そういう他人からの承認の束を支えにして存在しているという考えには、救われないんだよ。』 「シャワーじゃ物足りなくてお風呂に入りたいっていうのは、一種の退行的な儀礼なんだと思うよ。合理的に考えれば、ヘンな習慣だから。夜になる度に、こういう狭い場所に全裸で身を屈めて入って、体温くらいの液体に浸るっていうのは。浴槽が母親の子宮の象徴で、お湯が羊水でって考えると、ちょっと分かりやすすぎるかもしれないけど。…」 「眠りが死の象徴っていうのは世界中で共通してるのかもしれないけど、その前に必ず入浴があるっていうのは、そんなに一般的にじゃないよ。日本人は、そういうところで、手が込んでいるだね。母親のお腹に回帰したような余韻に浸って、布団に入るなら、死ぬっていうより、自分がこの世界に出現する前のゼロの状態に戻るみたいな感じがするかもしれない。ーー沙希ちゃんが言うみたいに、リセットっていう感じなのかな、それは。…」 『そうして彼が今、苦しい胸の裡を明かすのが、自分でなく見ず知らずの誰かであるということが、彼女には理解できなかった。それも、浮気をしているだとか、おかしな趣味があるだとかいったことではない。誰よりも家族が支えとなるべき仕事のことで、彼は妻を相談相手として選ばなかったのだった。』 『彼女は、再び自問した。なぜ、自分ではないのだろう? 愛していればこそ、相手に知られなくないというのだろうか? しかし、そうまでして守る愛とは、一体何なのだろう? そんな、こわれものを扱うようにして大事にするのが夫婦の愛なのだろうか?…』 「知性というものが、蛇に似ていると気がついた古代人は偉大だね。そう思わないか? 柔軟で、艶々しくて、掴み所がなく、何でも一呑みで消化して、頭から尻尾へという単純な一本の線にしてしまう。おまけに不気味で、凶暴だ。咬まれれば全身に毒が回る。ーーあなたを留まらせたのは、あなたの蛇だよ。」 「あなたには、殺したい人間がいる。ーー結構。殺すべきだ! あなたがそう思ったという事実こそが、あなたの殺人を全面的に肯定してくれる。」 「殺人は、太古の昔から今日に至るまで、一日として例外なく行われてきたことだ。自然死と同じくらい自然にね。そして、未来永劫にこの事実は変わらない。」 「人間というのは、そういう愚かな存在だ。ーーその愚かさこそを、むしろ人間は、人間性と呼んでいる。」 「ーーところでだ。人間の行為の中で、最も愚かなのは、殺人ということになっている。つまり、殺人こそは、最も人間的な行為というわけだ。ーー分かるね? 簡単な三段論法だ。」 「いいかね? 存在者から存在を奪う! これは月の引力が海をも引っ張り寄せるように、人間を密やかに、しかし、逃れ難く強力に拘束している考えだ。この世界は、表面上、確かな殺人を駆逐するフリをしてきた。尤も、その唯一の現実的な方法は、常に殺人だったがね。」 『テレビは視聴率の前では盲目のブタだ。』 『殺す阿保に見る阿保 同じ阿保なら殺さな損損www』 『わたしは、わたしの生きている世界には、わたしの居場所がないと思っています。反論する人がいるでしょうが、もう聞き飽きました。 人間はひとりとして同じ人はいません。なのに、この世界は一つしかありません。その世界は、一部の人たちにだけ、都合よくできていて、わたしにとってはそうではありませんでした。だからわたしも、離脱者の一人になることにしました。法律からも、道徳からも、完全に離脱します。 わたしは、世界は、人間の数だけ多様であるべきだと思います。みんなが納得できる世界なんて、あるはずがないと思います。それで、わたしはわたしの世界で生きていくことに決めました。 人を殺すのはどうかと思いましたが、それもわたしが、離脱する前にいた世界の勝手なルールにとらわれているからだと考えなおしました。 わたしは、わたしに、とても言葉では言い表せないような残酷なことをしてきた人たちに、これから一人ずつ復讐していきます。その人たちは、わたしのやりかたを責めるかもしれませんが、それはその人たちの考えなので、わたしには関係ありません。』
ネット社会の到来以前には感じることはなかったであろう違和感。よく知っているはずの人物が、自分以外の人と接するときに見せる意外な一面。他人の日記を盗み見るのとはまた違った感覚。 我々は身近な人のことをどこまで知っているのか。あるいは本当に知っていると言えるのか。 地の文の視点は目まぐるしく変わり、すべ...続きを読むての登場人物が主観を語る。我々は登場人物のことを「よく知っている」ようなつもりになる。 が、「悪魔」を名乗る謎の男の登場により、我々の偏見は打ち砕かれる。「悪魔」って誰?崇?良介?それとも?どちらでもないと言い切れない気持ち悪さ。
「決壊(上巻)」 きっかけは、日常にあり。 ある日に見つかるバラバラの遺体が発見された。被害者は沢野良介。平凡な家庭を営む会社員だ。事件当夜、彼は兄・崇と大阪で会っていたはずだった。 と言う文言が表紙に載ってしまっている。おかげで被害者は分かってしまうし、犯人も何と無く兄じゃないかと推測して...続きを読むしまう。 上巻は、事件の背景や刑事の捜査が描かれると思いきや、良介と崇の生活が主に描かれる。良介は家族と仲良く実家に帰り、久々に兄と語る。崇は、海外から帰ってきて公務に職しながら、独身生活を楽しむ。一見、楽しい生活である。 しかし、一見は一見。よく見ると葛藤が見えてくる。弟は、実家に帰る途中に不思議な現象に襲われ、語らう兄にはコンプレックスを抱えていた。一方、兄は人を愛せず、不倫を常習化している。どこか語り口調もヒステリックだ。 インターネットに吐露する良介は、人には吐露出来ず、深みにはまっていくようで、熱くなると宗教臭くなる崇も心のどこかに小さなヒビが入れば、一気に決壊しそうな危うさがある。 更に、父親の鬱病まで、2人は抱えることになるのだ。今後、彼らは決壊せずに居られるのかは疑わしい。尤も良介は既に死んでしまったが。 この物語には、既に心が決壊している少年が登場する。この少年は、悪魔のような男に説き伏せられ、どんどん壊れていく。正直、初めからどこかおかしい為、さほど同情の気が沸かない。サイコパスでは無いのだが、十分に悪質な変態っ振りを見せ付けているのだ。そりゃ、悪魔も目をつけちゃうよなぁと。 因みに、本作は「殺しと赦し」をモチーフにしている。人はなぜ人を殺すのか、人を赦すとはどういうことか、絶対に赦し得ない事が起きた時、人はどんな行動を取るのか。それを著者は追求したかったと言う。 その追求も下巻で一気に進むに違いない。そして、願わくば納得出来る追求結果を見たい。
「利己的な欲望の中で、人間は他者と交わりながら生きている。それはどうやったって否定出来ないよ。『自然は人類を苦痛と快楽という、二人の主権者のもとに置いてきた。』ー吐き気のするようなベンサムの宣言だが、これは俺にとって頭痛の種だよ。一人の人間と向かい合うことを考える時にはね、何を言って否定してみても、...続きを読むいつもこれにつきまとわれてしまう。まさかこれが、道徳及び立法の諸原理だとは思わないけれどね。」まだ上巻しか読んでないけど、面白い!
圧倒的な知識量で描かれる渾身の現代ミステリ。 まだ事件の起きない上巻では家族、友人、恋人に対して抱く微かな「不信感」や、自分以外が他者であるがゆえの「心のズレ」を感じる違和感を巧みに書いている。 人間関係を上辺では体裁良く保っていても、日常的に心の奥底に感じている上記のような空虚感は誰でも抱いた...続きを読む事があるのでは無いだろうか。 序盤のシーンで韓国語教室のCDを義母が流した時に、佳枝が「夫が在日韓国人なのではないか」と不意に疑ってしまう部分から、様々な人間が抱く不信感の連鎖はまるで自分を見ているかのよう。 ただ上巻は地の文が三人称なのだが、二次的な一人称が一つの章の中でコロコロと変わってしまって分かりづらいシーンが多かった。
小難しい文章を書くイメージの平野さんだったが、というか過去に読んだ初期2作とは文体が違ったので、読み始めてすぐに過去に読んだ作品よりも読みやすくてこれは楽しめるかもと思い、なんてことない話が続く前半の時点でぐいぐい引き込まれていった。 上巻を半分ほど読んだあたりで、世界が広がっていく感覚というか、長...続きを読む編独特の良さを感じることができ、使われている語彙を楽しみながら丁寧に読み進めた。 人にどこがどう面白いと説明するのが難しいが読んでいて非常に楽しい、下巻にも期待。
優秀で世界を冷淡に見つめる兄と平凡な日常を愛する弟。テーマは犯罪といえば結構シンプル…かもしれないが。犯罪はあくまで題材であり、テーマは宗教観や世界観といった領域にまで踏み込んでいる。上巻は、ストーリがようやく進みだしたといった内容。
順風満帆と思える生活の中で自殺願望を抱く兄、妻子がいながら満たされず疑念を抱く弟、隠居生活でうつ状態に陥る父、周りから浮いてしまっている中学生、そこに<悪魔>が忍び寄り、決壊が始まる。 *** 一回読んだだけでは理解できていなかった、崇の内省的な苦悶や哲学的な思索の数々が、<悪魔>の登場後に改めて浮...続きを読むかび上がってきて、これからどう結集していくのか楽しみ。 複数の視点からの描写や喩えを含んだ文章の連続に、想像を刺激され続けて読んだ感がある。人の多面性と某国をダブらせたり、言葉による拘束など面白いアイデアがいっぱいあった。
⚫︎受け取ったメッセージ 平野啓一郎さんの提唱する「分人主義」前期の作品。相手の、全く知らない相手の部分を知る怖さを、ミステリー、サスペンスの形で見せてくれる。 ⚫︎あらすじ(本概要より転載) 地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人...続きを読む生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友哉は、殺人の夢想を孤独に膨らませていた。ある日、良介は忽然と姿を消した。無関係だった二つの人生に、何かが起こっている。許されぬ罪を巡り息づまる物語が幕を開く。衝撃の長編小説。 ⚫︎感想 一気に引き込まれる設定。すぐに下巻を読みたくなる。
レビューをもっと見る
新刊やセール情報をお知らせします。
決壊
新刊情報をお知らせします。
平野啓一郎
フォロー機能について
「新潮文庫」の最新刊一覧へ
「小説」無料一覧へ
「小説」ランキングの一覧へ
小説の読み方
私とは何か 「個人」から「分人」へ
富士山
『ある男』無料試し読み
試し読み
あなたが、いなかった、あなた
あなたが政治について語る時
ある男
かたちだけの愛
「平野啓一郎」のこれもおすすめ一覧へ
一覧 >>
▲決壊(上) ページトップヘ