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Posted by ブクログ 2024年03月24日
めちゃめちゃはまった。平野の文体はさすがに美しい。展開もそれぞれの個性もきれいにはまっていてお見事。「ある男」を通していろんな人生を見ることができた。人間にとって過去とは何だろう。
Posted by ブクログ 2024年03月19日
小説を見てから映画を。
サスペンスの要素もあり、家族の物語でもあり、差別を考える内容でもある。
確かに一緒に生きた幸福な時間があっても、自分と出会う前にどのような人生を生きてきたかは確かめずにはいられない。
出自は自分の力ではどうすることもできないのに、そこに根強くある差別はなくらならいのだろうか。
Posted by ブクログ 2024年03月17日
主人公が絶えず、色んなことを自分に返って考えていて、私もこの本を通じて、木戸さんの人生を考え方を教えてもらった。震災後の木憂鬱な社会が、震災の色々な長い影響を思い出した。だんだんと真相に迫ってくるのも面白く、あっという間に読めた。
Posted by ブクログ 2024年03月07日
名前は生を受けて初めに授かるもの。でもそれは極論ただのラベルにすぎない。“人”を”その人“たらしめるものとは何か、を考えさせる作品だった。
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この作品は、ある男を中心に描かれる。彼は林業に携わりながら素朴な絵を描く男で、文房具店の娘里枝と結婚し、花という娘と連れ子の悠人と4人で暮らす、よくい...続きを読むる幸せな家庭を築いた男だった。
だが事故で亡くなったことをきっかけに、名乗っていた「谷口大祐」が本当の名前ではなかったことが発覚する。
里枝から依頼を受けた弁護士城戸が、「谷口大祐」を名乗る”X“の正体を辿っていく。
序盤ではミステリー要素にかなり引き込まれ、この男は誰なのか、ということが知りたくなり読み進めていた。
しかし読み進めていくうちに、これはただのミステリーではないと感じた。
Xの正体という点では、何度か戸籍を交換することで「谷口大祐」となった殺人犯の息子「原誠」であったが、そこは物語の本質ではないように思う。
Xが里枝と会って過ごした時間は間違いなく(何が本来かはわからないが)本来の彼だった。だが彼が原誠だったら里枝と出会っていたのか、彼の語る過去が谷口のものでなく誠のものだったらどうなっていたのか。彼は原誠、谷口大祐、簡単に割り切れる存在ではなく、原誠と谷口大祐、二人の人間が混じり合った人物だったのだと思う。
自分と違う人生、自分以外の人間が混じり合った人生を生きるのはどういう感覚なのだろうか。
違う人生を生きてみたい、というのはたまに思うが、どこか非現実的で、ありえないと思っている。でもそれが叶った時、そしてそれを心から望んでいた時、自分はどういう気持ちになるのだろうか。
私自身、”名前”について考えたことがなかった。親から与えられたもので、それに対して違和感や疑問を持つことなく、当然のものとして過ごしてきた。
だが、名前というものは唯一のものである一方で親や子など他者との繋がりを持ち、そして戸籍がなくなってしまえば案外脆いものなのだと思った。
本書の冒頭では、小説家である”私”が出てくる。
彼は、「他の登場人物(おそらくXなど)を主人公にしなかったことを疑問に思うだろうが、城戸さんにこそ見るべきものを感じた」と言っている。
おそらくは「谷口大祐」を名乗る”X“と、在日3世の弁護士城戸がどこか自身の存在に不安を持つという共通点を持ち、のめり込んでいく城戸にこそ魅力を感じたということなのだろう。
アイデンティティの不安定さに共通点を見出す著者がすごいと思った。
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内容として素晴らしいのはもちろん、本書の構成も練られたものだった。
最後にまた序章を読み直すことで、”私”から見た城戸を改めて見ることができる。
それにより、今まで読んできた”城戸章良”という人間は実在する人物だったのか、を疑わせる構成となっている点に、さらに感動。
Posted by ブクログ 2024年02月23日
その人はどんな人なのか?
人の中にあるもの・性質と、外から貼られるレッテルや扱われ方に関して、本人視点で主人公の弁護士・城戸が語り、城戸の妻、依頼人、そして準主役?の依頼人の亡き夫『大祐』についても同様に第三者的視点から推察と考察がなされていく。
人の複雑さ、そして時間と共に上書きされていくことも...続きを読む含めて、人と自分が生きていくことについて、入れ子のように構造が二重三重と重ねた物語で語っている。
鏡に映し出されるようにそのテーマを読者にも投げかけてくる小説でした。
だからなのか、没入・ハマるというよりも一定の距離感で伴走して一緒に考えていくような読書感でした。
Posted by ブクログ 2024年02月10日
展開に驚かされる箇所がいくつかあったが、最後に読み終わった後に冒頭を読み直し、その部分の伏線の意味も分かりさらに大きな衝撃をうけた。読んだ後は興奮が冷めず、この本がどれだけすごいか家族に語ってしまった。
途中で出てくるセリフや心情描写も心にぐっとくるものがあった。
人生の中でも心に残る数冊のうちのひ...続きを読むとつになった。
この作家さんの作品は初めて読んだが、才能に脱帽した。
Posted by ブクログ 2024年02月06日
亡くなった夫が実は別人で、その真相を弁護士が調べるお話
以下、公式のあらすじ
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愛したはずの夫は、まったくの別人であった。
「マチネの終わりに」から2年。
平野啓一郎の新たなる代表作!
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」について...続きを読むの奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。
長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。
ある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に「大祐」が全くの別人だったという衝撃の事実がもたらされる……。
里枝が頼れるのは、弁護士の城戸だけだった。
人はなぜ人を愛するのか。
幼少期に深い傷を背負っても、人は愛にたどりつけるのか「大祐」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。
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実は別人だったというのは、普通であれば誰かが本人を殺して成り代わっているか、またはお互いに合意の上で交換しているのは容易に想像できる
戸籍の売買や交換の物語として、宮部みゆきさんの「火車」が有名
この作品は、その辺に焦点を当てているのではなく、他の要素を重視しているように思える
主な視点である城戸が在日三世の韓国人で
現在は帰化しているという背景
ヘイトスピーチや関東大震災の朝鮮人デマなど
自らのアイデンティティはどこにあるのか?という要素
また、帰化しているという事情も
未だルーツが韓国という差別感や、自らは帰化した以上は日本国籍としての立場なのではという自問自答
戸籍に由来するアイデンティティを、調査している相手と自身の両方に重ね合わせているのが物語に深みを出している
あと、死刑に関して
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国家は、この一人の国民の人生の不運に対して、不作為だった。
にも拘らず、国家が、その法秩序からの逸脱を理由に死刑によって排除し、現実があるべき姿をしているかのように取り澄ます態度を城戸は間違っていると思っていた。
立法と行政の失敗を、司法が、逸脱者の存在自体をなかったことにすることで帳消しにするというのは、欺瞞以外のなにものでもない。
もしそれが罷り通るなら、国家が堕落すればするほど、荒廃した国民はますます死刑によって排除されねばならないという悪循環に陥ってしまう。
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という主人公のスタンス
立法と行政の失敗により人生を逸脱させてしまうケースがあるのはわかるけど、不運な人全てが犯罪者になるわけではないわけで
全面的には同意できないかな
不運なら不運なりに穴だらけではあるもののセーフティーネットはあるわけで、やはり犯罪に手を染めてしまう、特に現在の制度で死刑に至るまでの罪を犯してしまう人というのは明確なラインを越えているように感じる
それこそ応報刑であるなら人一人殺したら死刑になってもおかしくないのに現状はそうなっていない
そんな、加害者と被害者で命の価値が偏って評価されている制度の下で死刑宣告された人に更生の機会を与えるというのは心情的に同意しにくい
犯罪を犯した者にも更生の機会を、という意見にも一部同意はするけど
それよりも、もう帰ってこない大事な人を失った周囲の人達に寄り添う社会であって欲しい想いのほうが強い
まぁ、犯人が死刑になったところでその人達の心が慰められるようなものではないのでしょうけどね
あ、そう言えば、幼い我が子を殺された親の視点で
犯人が死刑になるのであれば、未来の被害者を助けるという意味が我が子の存在した理由として捉える小説があったな
個人的な考えとして
法律というものは、社会の大多数の人が生活を送る上で、合理的で許容できるルールだと思っている
なので、社会のモラルや人々の意識が変わればそれに応じたルール変更が必要であり、また変更可能なものとも思っている
まだまだ議論がされているとは言えないけれども、死刑廃止を求める声よりも、刑罰が軽すぎるという批判の声が多いような状況では死刑廃止なんてできないでしょうねぇ
とまぁ物語の横道に逸れてしまった
物語のテーマとしては、「愛」に過去は影響しているのか? でしょうか
相手の言っている過去が嘘だとしたら、それは偽物の愛なのか
その人を、人たらしめているのは、過去の経験なのか?
その経験が現在になっているのか?
現在の姿を為した過去が偽りだったら?
でも実際に現在があるならそれが本当なのではなかろうか?と個人的には思う
人は誰しも何かしらの人格を使い分けて演じているわけで
そんな行動ができる時点で、もう本物といっていいような気がする
あと、「本当のお父さん」という言い方についての言及は響いた
私も血縁関係のない娘がいるけど、何年も一緒に暮らした経験を通じて親子の関係性結んだ以上はもうそれは親子なんだよね
血縁上の父親を「本当のお父さん」と言うのであれば、娘がそう認めるのであれば私も本当のお父さんだと思ってる
実際に、離婚したけど養子縁組は解除してないし、もし解除したとしても気持ちは変わらないと思う
Xは、多分幸せな生活の中で亡くなったのだと思う
里枝や子供達を愛することができたという幸せ
父親と同じように人殺しになってしまうのでは?という疑念を払拭する事ができたわけだし
自分が親から与えられなかったものを我が子に与えることができ
また、そんな事と関係なくただ子供を愛するという事ができたのが何よりの幸せだったでしょうね
冒頭は最初に読んだときは「ん?」と思ったけど
最後まで読んで、冒頭を読み直すと「なるほど」と思える
小説家の平野啓一郎が「城戸」にバーで出会ったと想像できる作りになっているわけですね
物語の構成として、伏線っぽく感じたところがいくつかあるけど
回収されていないなぁ
となると、伏線ではなかったという事ですね
あと、文章の特徴として、鉤括弧の末尾に句点を入れているのが珍しいのでちょっと違和感を感じた
文章の表記としてどっちでも構わないけど、現代の小説家の大部分は会話の末尾に句点を使ってないですからね
使ってるのは、よしもとばななさんとかですね
Posted by ブクログ 2024年01月28日
ミステリ要素だけでなくて、戸籍や在日差別に関するアウトローな話、ギリシャ神話や愛について多元的に描かれていて、読み応えがありました。
最後の2行でウルッときて、良い読後感でした。
読んでる最中は誰が誰になって、何がどうなってるのか分からず、数ページ戻って読んだり、序文にまで戻ってみたりと忙しい内容で...続きを読むしたが、とても面白かったです。
読む価値有り!!
匿名 2023年09月23日
最近読んだ中で上位に入る作品でした。
続きが気になりすぐに読み終えました。
楽しい秋の夜長を過ごせました。
また、作者さんの他の作品にも興味がわきました。
是非、読んでみたいです。
複雑な背景に戸惑いながらも、その物語の世界に引き込まれていった。何も疑うことなく過ごす中で、触れることのない事実があるということが、衝撃的でもあった。人を愛することが人としての全てなんだと思う。家族のかたちはそれぞれであるが、子どもが穏やかに成長できるように、その根底に愛は存在して欲しい。
最近読んだ中で1番良い作品で、1番表現しにくい作品。
最後に幸せがそこにあって、本当のことを言うべきなのかすら悩んだのではないか、その事で3回目の自殺だったのではないか...。
想像できる限りの当事者の心情を慮ったが、正解はわからない。
生きるとは誰しも難しいのだと、そこに立場や出自は関係なく皆悩み...続きを読むながらそれぞれ懸命に生きているのだと思った。
Posted by ブクログ 2024年04月18日
映画を見てスッキリしない部分の、補足説明的に読んでみた。
映画と原作はそんなに違いはなかったが、原作の方がズドンと重い気持ちにはなった。
他人と戸籍ごと人生を交換するなんて事あるのか?!という驚きがあったが、死ぬ以外で人生をリセットできる方法でもあるのかと考えさせられた。誰かと語りたくなる話だった。
Posted by ブクログ 2024年04月02日
先日、NHKの「スイッチインタビュー」という番組で、 作家の平野啓一郎さんとタレントのpecoさんの対談を見ました。 pecoさんは昨年亡くなられたryuchellさんの元奥様で、 平野啓一郎さんは、私も「マチネの終わりに」や「ある男」が好きな人気作家です。 大きな悲しみに直面した時、 どのようにし...続きを読むて前を向いて歩んでいけば良いのか、 とても考えさせられる内容でした。 これは、我々精神科医にとっても大きなテーマです。 患者さんの治療に当たる時、 薬の治療などで改善すればもちろん一番良いのですが、 実際には薬が効きにくい人もいらっしゃったり、 困難な環境要因などで、 なかなか良くならない人も少なからずいらっしゃいます。 そんな時こそ、精神科医としての力量が問われます。 どのように患者さんと共に歩んでいくか、 一生勉強ですが、常に考えて成長していきたいと思います。
Posted by ブクログ 2024年03月31日
徐々に登場人物の過去、真実が明らかになっていく展開がおもしろくて、のめり込んでしまった。
序章のバーで出会った「城戸さん」は、宮崎で谷口大祐のふりをしていた城戸章良だったのかな。その後出会った弁護士が中北のことで。
Posted by ブクログ 2024年03月28日
読み終わった後、少し寂しさもありながらお腹の底からジーンと静かに伝わる温かさを感じた。人と関係を結ぶのに私はその人のどの部分を見ているのか考えさせられた。城戸の中で原誠が善人であって欲しいとする気持ちはとても理解出来た。最後の方でミスズの言葉からイメージしていた谷口大輔と城戸が実際にあった谷口大輔の...続きを読む印象が全然違うことに驚いた。谷口大輔という人間は1人だけど谷口大輔と関わる人の数だけ、その人を通した沢山の谷口大輔がいて、その人らしさなんてあって無いようなもので、関わる人がどう見出すかに大きく影響されるものなのだなと思った。とすれば自分の良いところを見出してくれる人と一緒にいるということが幸福な人生を送る上でとても大切で、それを自分の過去が邪魔をするなら私も名前を変えるだろうな。というかこれからの時代、もっと自分のアイデンティティは自分で選べるというふうになっていくんだろうなと思った。名前って過去と結びつく強固なものなんだなと思った。
Posted by ブクログ 2024年03月08日
海外旅行に行った際、誰しも思うのではないだろうか。『ここには〝自分〟を知ってる人は誰1人いないのだ』と。そしてなんとなく心の皮が一枚向けたような、そんな解放感を味わったことはないだろうか。読後、ふとその感覚が心をよぎった。
何を持って「自分だ」とするのか。そう聞かれたときに、一番自分を自分たらしめ...続きを読むるもの、その軸になるのは「生きてきた過去」ではないだろうか。現在の判断や評価も、未来における可能性も、その人が今まで歩んできた「過去」を足場としている。では、その足場がなかったとしたら、もしくはその足場を変えることができたとしたら・・・。
本書は弁護士・城戸に舞い込んできた『愛した夫の正体が分からない』という謎を、彼と一緒に解き明かしてゆくミステリーである。なぜ、彼は他人の過去を背負い、今を生きる事になったのか。そのことにより、彼の自我・存在はどうなるのか。事件を追うことで、そして根無草のように漂う『存在X』を通すことで、これが特殊な事例ではなく私たち全員に当てはまる『自分とは何か』という哲学・テーマへと視線の内面化が引き起こされてゆく。
作者平野啓一郎氏による『分人主義』のエッセンスを作品の隅々から読み取ることができた。『統一した自我ではなく、その時・その場に応じた様々な自分を人は使い分けている、そしてその全てを総合したものを〝私〟と呼ぶ』。分人主義について自分はこう理解している。谷口にとっては辛い過去を背負う自分も〝私〟であり、愛する妻と子と過ごした短い日々も〝私〟なのだろう。本書後半の林業に関する部分(木としての50年、木材としての50年)も、谷口の人生を象徴しているようで考えさせられてしまった。今の自分を証明・支えてくれている物の揺らぎに不安を覚えると同時に、Xのようにそれらを薙ぎ払い、新しい自分の人生を歩むことにもそこはかとない魅力を感じた。
とはいえ平野氏の表現についてはまだまだ味わえていない部分が多い。Xの謎を追うことばかりに興味を惹かれ、神話についての引用などをじっくり読み味わうことができなかった。本書は映画化もされているため、そちらを鑑賞してからもう一度読み直したい。
Posted by ブクログ 2024年03月04日
登場人物の心理的な揺れ動きが丁寧に描かれて楽しんで読めた。
あまり気にしてこなかった在日という背景がぼんやりとした不安に変わる。社会の風潮が変わると危うい立場に転落してしまうという不安。
なるほどという感想。
Posted by ブクログ 2024年03月03日
純文学、訳わかんない表現とかありそう…すごい偏見で読み始めたけど、どんどんストーリーに引き込まれて集中。
ボランティア活動して、他人の為に動きたい主人公。それを偽善と呼び、家族や身内とそれ以外の人たちをきっぱり分ける奥さん。
完全に私と夫の関係と同じだなぁと共感。私も夫にそれは偽善だとよく言われます...続きを読む…でも、いつも思うのは、そんなふうに私が偽善者でいられるのは、現実的な夫が側にいて日々の暮らしをキープしてくれているから。哀しいけど、理想だけではメシは食えない。
あなたの隣にいる大切な人、本当は誰ですか?
Posted by ブクログ 2024年02月28日
愛に過去はどう関係するのか。
この命題について、
はじめから最後まで一貫したストーリー。
この小説で気になるのは序盤の存在。
これは誰が書いたことになっているのか。
城戸さんと同じ1975年生まれ、小説家とあるから、著者の平野さんが城戸さんとあったというていで、この小説が始まっているのかな。
...続きを読むそのあたりからもう面白くて、引き込まれた。
城戸さんがある男のことをのめり込んで調べていくけれど、ある男のことを考えながら、実は自分のことを考えざるをえなくなっていく。自分の出生ルーツもある種あまり人に知られたくない過去であり、でも「気にしてないって感じが気にしているってことだ」みたいなことを人に言われてめちゃくちゃ腹たったりとか、ほとんど自分にも向き合う旅になってしまったのでは。
あとこの作者は、嫌な感じのする人物描写を、ほんとに嫌な感じに描くのがうまいと思った。
恭一郎の田舎のイタい経営者風情とか、ブローカーの会うだけで気が滅入りそうなゲスさとか、何より再会したダイスケの荒みっぷりがなんか読んでいて辛かった。美涼がまだかわいいですか?とかヤバいなとか、なんか生きていて欲しいってあれほど願っていたその人の痛みっぷりが…なんとも。
人は過去を取り替えても生きていけるけど、そこから良い現在を積み重ねていかなければ、結局幸せな人間にはなり得ないというか。健全さを少しずつ失ってしまうのかな。
文章中の言葉も独特というか…知らない言葉もあり、なんどか辞書を引いて調べた。勉強になりました。
Posted by ブクログ 2024年02月25日
城戸さんと、里枝さんと心の描写が丁寧に描かれているなあも思いました。
城戸さんが周りから、「大丈夫?」と聞かれるのはいろいろ考えすぎる所があるからかしら?
具体的に何かあった訳ではないけど、相手との心の動きが描かれているのは流石です。細やかでした。
読み終わって、また最初を少し読みました。
導入部分...続きを読むも改めて読むとまた最初とは違って読めました。
Posted by ブクログ 2024年02月03日
他者への愛情は、どこに向けられて感じるものなのか。
もし今隣に居る人が本当の過去も名前も隠していたら、あなたは一緒にいられますか?
美しく薄暗い文学的作品。
「亡くなった配偶者は、あなたが認知している名前も過去も違う別の人でした。」
もうパニックですよね。
本当は一体誰だったのか?弁護士が調べます...続きを読む。
この弁護士が主軸となるお話。
遺された家族も真実が気になるけど、相談された側も気になりますよね。
そこで弁護士さん、「普通」とは「愛情」とはと考えを巡らせながらの謎解きを始めます。
「愛する」ことに過去は必要なのか、違う誰かだったとしても「その人」を愛することが出来るのか。
たぶん「イエス」「ノー」で答えられる問題ではないけれど、考えてしまう作品。
Posted by ブクログ 2024年04月03日
他人の戸籍を譲り受け、自分の過去を上書きした男の話。男が死んで真相が判る。感動したのは、残された中学生の息子がその調査報告書を読んで、母親と会話を交わす場面。父親の過去を全部受け止めて生きていこうとする姿に胸が熱くなった。
Posted by ブクログ 2024年03月24日
作者が天才過ぎて、難しい表現で話が遠くに飛んでしまうことが多々あった。私には理解できなかった。過去にも現在にも避けられない事実はある中で、みんな幸せになるために今を一生懸命生きてるんだな。
Posted by ブクログ 2024年03月24日
宮部みゆきの火車を思い出した
そちらでも言及されていたと思うのだが戸籍とは一体なんなんだろうか
こんなに簡単に交換などができてしまうものになんの意味があるのだろうか
戸籍交換をした後に必要ないはずなのに、元の戸籍の持ち主の歴史を背負って振る舞うのは面白かった
他人になることに快感を覚える描写があっ...続きを読むたと思うがその感覚なのか
もしくは単純に語るのが楽なのだからなのか?
Posted by ブクログ 2024年03月06日
犯罪者の息子は何もしてないけど、被害者側からしたら、犯罪者の息子もきっと許せないだろうな。もし私がそうならば、できれば幸せになって欲しくないし、辛くて惨めに底辺で生きていてほしい。でも、犯罪者の息子からしたら?自分は何もしてないのに、何故日陰で生きねばならないのか。ふついに生きていたいだけなのに。
...続きを読む戸籍を交換したあと、Xは幸せだったのかな。そうだといいな。里枝はXの本当の過去を知って、Xへの愛は変化したのかな。私もそうやって人を愛し続けることができればいいな。
とても辛い話だけど、とても愛に溢れた話だった。
Posted by ブクログ 2024年03月03日
夫が亡くなり、夫のものだと信じてた名前、生い立ち、過去全てが別人のものと分かる。自分は誰を愛していたのか。奥さんの立場になるともう何も信じられなくなるだろうけど、残された血の繋がりのない子供の心情まで描かれていて胸が苦しいと同時にその描写が素晴らしいと思いました。
『わかったってところから、また愛し...続きを読む直すんじゃないですか?一回、愛したら終わりじゃなくて、長い時間の間に、何度も愛し直すでしょう?色んなことが起きるから。』
解決はしないけど温かな気持ちになれたフレーズでした。
Posted by ブクログ 2024年02月27日
2024.2.26
恭一を呼んでいなかったらこの事件に発展していなかったことを考えると嫌な奴だと思いながらもキーパーソンなんだよね、、と思いながら読んでた
戸籍を交換するとか自分には別世界のようで、身近に感じられなかったけどほんとにそういうケースも同じ世界であるんだよねと思った
誠は過去が辛かった分...続きを読む、戸籍交換して幸せを掴んでて良かったと思った
この人に自分の人生歩んで欲しいとかこの人になら譲れると思ったと言った大祐も素敵だと思ったね
Posted by ブクログ 2024年02月02日
面白かった。少し私には読みにくい文章で、新鮮みがある本でした。
思っていたミステリー的な要素はあんまりない。
タイトルのある男とは、どの男のことを指しているのか、、興味深い。
Posted by ブクログ 2024年02月01日
平野氏のアールデコっぽい文章は、たまに無性に読みたくなる。
死んだ家族が他人だった話。
途中まで焦れったい感じだったが、中程の急展開から俄然面白くなる。
・時間の経過と愛
・相手の過去まで愛せるのか
・普通に生きたかった男とチャンピオンになって欲しかったオーナー
・自分が他人の人生と入れ替わった...続きを読むとして、元の人間より上手くやれるのか
・他人が自分の人生をやることになったとして、「これはいい人生だ」と思うのか
・ナルキッソスの過去とエコーの愛
等々、咀嚼が必要なテーマが矢継ぎに出てくる。
点在していたモチーフが最終的にまとまり収束するのは見事。
しばらく思考の海に沈んで、自分なりの見解をまとめていきたい。
異世界転生とか親ガチャとかのブームを、穏やかに説き伏せる感じ。
あ、2018年連載か。こっちのが先か。
Posted by ブクログ 2024年01月20日
神話とか音楽に学がないので読みにくかったのですが、人をいい方に変えるのが『自信』で、悪い方に変えるのが『万能感』かな...と思いました。確かに、弱者から強者になったらそうなるなぁ。普通の人生を歩みたくなる、という境遇には共感しました。原誠が死ぬ時になにを思ったのかを想像して切なくもなりました。
Posted by ブクログ 2024年01月19日
読み終えたところでもう一回序文はどんな内容だったっけ?と思った。
違う人になるということの不思議さを哲学的な表現で展開されるストーリー。神話や音楽などを用いた抒情的な表現がやや鼻につく印象はあるが面白く読んだ。
良かったです!
匿名 2023年08月01日
人が人を愛することの多面性を改めて感じさせられる作品でした!
人が人を愛するとき、その根拠を過去の体験に求めることはあり得ます。
一方で、過去の自分に起きた出来事をどう感じとるかは人によって異なるのであり、今回であれば、〈入れ代わった人が語った〉谷口大介の過去にりえが惹かれたのではないかとも思いま...続きを読むす。
私個人の意見としては、入れ代わった人がありのままの自分の過去を理恵に話したとしても、世間体を抜きにして考えれば、りえに愛されていたのではないかと思います。
城戸も出自に対するコンプレックスを抱いているという意味では大介と僅かに共通点があり、それが城戸の大介に対する印象を美化させていたのではないかという妄想が膨らみました。
夫婦関係についても繊細な描写で、没入してあっという間に読み進めてしまいました。
この小説のミステリーな部分とあったかい部分の割合が心地よかったです。
じんわりあったまる感じが。
人ってびっくりするようなことが自分に起きたら、実際はこんな感じなんだろうな、て気がしました。
この微妙な感じをうまーく表現出来ていて、引き込まれたんだと思います。
家族の在り方てほんとそれぞれだけど...続きを読む、そこに心を乗っけるか乗っけないかでまるっきり行き先違うんだなぁ、て再確認した作品でした。
フィクションだけれどもこの家族がうまくいくように応援して祈りました。
「ある男」というタイトルは不確かな人物を指す筈だ。そんな曖昧で内容がなかなか見えてこないタイトルが故に「ある男」とはどんな奴だ?と気になり、さらには映画化も決まっているということで手にとってみた。
「ある男」というのは奴のことを差しているのだと思うが、正直なところ、その「ある男」は特別何か光って見え...続きを読むるとかそんなものではなく、日常のどこかに溶け込んでいるような平凡な人物であったなぁというのが私の受けた印象。
ではなぜ奴を「ある男」と呼んでいるかというと、名前を偽って生きてきていたからだ。
奴がしていたように、もし私の妻が名前を偽って、さらには戸籍を他人と交換して生きてきたのだとしたら私はどう思うのか考えさせられた。
そのまま好きでいられるのか?そんな嘘を許せるのか?など。たぶん無理。
他にも、実際戸籍の交換は不可能であると信じたいが、可能であったとして、この戸籍の交換というのは何かメリットはあるのだろうかと読んでいて思った。
戸籍を変えたいと思う理由でまず考えつくのは、傷のついた経歴を無かったことにしたいからだと思う。それって傷のついた経歴同士を交換することになるから、必ずどちらか一方はより傷の深い経歴を持つことになるのでは?