【感想・ネタバレ】ある男のレビュー

あらすじ

【映画化で話題!石川慶監督 × 原作 平野啓一郎】
★第46回日本アカデミー賞で
作品賞を含む最多の8部門の最優秀賞を受賞

【第70回読売文学賞受賞作】
『マチネの終わりに』『本心』の平野啓一郎による、傑作長編。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。

「愛したはずの夫は、まったくの別人でした──」
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。
ところがある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に、「大祐」が全くの別人だという衝撃の事実がもたらされる……。

愛にとって過去とは何か? 人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を負っても、人は愛にたどりつけるのか?
「ある男」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。

『ある男』特設サイト ▶︎ https://k-hirano.com/a-man

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

城戸の考え方とか、感性が自分と似ていてすごい共感しながら読めた。めっちゃ自分に向いてる本やと思った。読みやすいのに、考えさせられる本。平野啓一郎もっと読む。

0
2025年11月26日

Posted by ブクログ

"一体、愛に過去は必要なのだろうか?"
在日朝鮮人 、親族の犯罪、差別や偏見、死刑制度、戸籍のロンダリングなど、重くて深い話題がたくさん出てきます
でも意外と難しくはなく読みやすかった
テーマが一貫していたからわかりやすかったのだと思います
読後感も良い
過去から離れたくて大祐になった「ある男」…幸せな月日があって良かった

0
2025年11月05日

Posted by ブクログ

なんだか小難しそうで敬遠していた平野啓一郎に初挑戦。映画化されていたとは知らず、なんとなくこれは読みやすそうかな?と書店で手に取った。読んでみた結論は、平野さんのファンになりました!笑
物語は途中までなんとも不気味でうすら怖い。「ある男」の正体が誰なのか見当もつかないまま、戸籍売買や死刑制度、在日差別などの問題について、様々な人たちの様々な視点で語られていく。複雑な話ではあるが、文章が美しく読みやすいので、ストレスなく展開がスラスラと理解できた。登場人物もリアルに生き生きと描かれていて、まるで知り合いの話に首を突っ込んでいるような身近な感覚を覚える。最後は「ある男」に関わった人たちに感情移入して泣いてしまった。

0
2025年10月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

複雑に価値観も状況も思いも違う人生同士が絡み合う。その人生を生きること他人の人生とそれを絡み合わせること。多種多様に示唆される悲喜交々の人生が影響を与え合い恐ろしく難しい人生同士の交差模様を描いている。他人の人生を介することで自分の人生を見つめ直して愛せるか、自分の人生のままならなさをどう受け止めるか、あるいは自分の人生の可能性を見た上で今生きる人生を見るか、他者の人生の痕跡からその人の人生を見つめることができるということ、別の人生を我が物としてそれを全うしようとすること、人生のあり方によっては人はガラリと変わってしまうということ、相手の人生や過去という不確かなものをどうして愛せるのか、人生同士の一瞬の交錯、人生における傷を共有することとその癒し……面白く胸に残るメッセージも多いが理解しきれない部分も数多い、とにかく面白かった。

0
2025年10月03日

Posted by ブクログ

謎が少しずつ解明されていく過程が面白く、ラストでは子供の成長がひしひしと伝わり、思わず涙が出た。
強く生きる力や子供の純粋さは、本当に尊いものだと感じる。

また、人を愛するうえでその人の過去はどれほど重要なのかを考えさせられた。

また、戸籍を変えて別の人生を歩むことが本当に幸せにつながるのだろうか…
自分のせいではなく、どうしようもない環境要因によって苦しむ人がいて、そういう人が幸せを掴むのはとても大変だと思う。
誰もが平等に幸せを掴める世の中であってほしい、と感じた。

0
2025年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私という人間は、生まれた瞬間から両親が決まっていて、物心着く頃には名前も決まっていて、それは自分では決められない。
その人自身には何の薄暗いことがなくても、そのせいで人生に翳りが生じてしまうこともある。
生まれの豊かさとか、国籍とか、性別とか、身長とか、自分では決められないものが、自分という人間の生身を形作る要因になる。とか思うと子供を産むことにも責任感じちゃうかも。

警察になる時に身元調査とかあるけど、それも親のせいで子の未来を奪うことになりうるの残酷だなと思う。機密情報のことを考えると必要だけれど。

0
2025年09月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本人自身が犯罪を犯したわけでもないのにレッテルを貼られてその人の善良さなんか全く見てもらえない、そういう不寛容さはどうしてなんだろう

弟と父親を亡くしたけど自力で創作することによって自分自身を救った息子さんの悠人くんとすぐに日韓友好のためのデモ行進に行った美涼さんの輝きがすごかった

0
2025年08月27日

匿名

購入済み

人の感情を繊細に表現されていて登場人物それぞれがリアルに目に浮かぶようでした。Xに対して最初は不気味さを感じたけれど、弁護士の彼を通じて正体が明らかになるにつれ、Xの生い立ちが不憫で胸が苦しくなりました。最初の家族と過ごした時間だけは幸せだった。それが救いでした。

#泣ける #切ない #タメになる

0
2025年01月06日

購入済み

深い

重厚な文体ですが読みやすい作品。重犯罪加害者の家族の問題とか、社会問題を扱っていてとても考えさせられた。さすが作者は法律に詳しい。弁護士ではなく、渦中のXさんの視点で読んでみた。司法とかhateとか今まであまり考えないことを考える機会になって良かった。

#切ない #深い #共感する

0
2024年05月08日

匿名

購入済み

読む価値有り!!

最近読んだ中で上位に入る作品でした。
続きが気になりすぐに読み終えました。
楽しい秋の夜長を過ごせました。
また、作者さんの他の作品にも興味がわきました。
是非、読んでみたいです。

#深い

0
2023年09月23日

購入済み

複雑な背景に戸惑いながらも、その物語の世界に引き込まれていった。何も疑うことなく過ごす中で、触れることのない事実があるということが、衝撃的でもあった。人を愛することが人としての全てなんだと思う。家族のかたちはそれぞれであるが、子どもが穏やかに成長できるように、その根底に愛は存在して欲しい。

#切ない

0
2023年02月24日

ネタバレ 購入済み

とてもいい作品

最近読んだ中で1番良い作品で、1番表現しにくい作品。
最後に幸せがそこにあって、本当のことを言うべきなのかすら悩んだのではないか、その事で3回目の自殺だったのではないか...。
想像できる限りの当事者の心情を慮ったが、正解はわからない。
生きるとは誰しも難しいのだと、そこに立場や出自は関係なく皆悩みながらそれぞれ懸命に生きているのだと思った。

0
2022年09月17日

Posted by ブクログ

最後の方は人がたくさん出てきてややこしかったけど笑、全体的にすごくよくできていて、いろいろな伏線も回収していた。関係なさそうな変身物語の話とかも話に実は関係していたところがよかったなぁ。

0
2025年11月30日

Posted by ブクログ

実写化の方を先に視聴。
改めて原作を読んで振り返り。

労働事故で亡くなった夫の素性を調べながら
社会で起きている色々な問題が描かれています。
差別、家族、死刑制度、ちょっとした恋慕。
何というか、いい意味で"人間臭さ"がキャラクター達に
出ていて、共感は出来ない所もあったが
え方とか見れて楽しく読めました。

過去を書き換える事は出来ないからね。
読んでいて"世知辛い"なと思いました。
騙したくはないけど、自分を偽らないといけない。
忘れたくても、背負ってしまう辛い過去。

行きついた答えが"戸籍"だったのかもね。。

人間は過去を知りたがる生き物だ。
そこから得られるヒントが大きい部分もあるし
その人の軌跡を知る事でどんな人間が分かる部分もある。
"真実"を知って、知らない方が良かったという事もあるだろう。

しかし、"愛"と"幸福"には過去は要らないね。
現在進行形で感じる事が出来るから。
谷口一家は、真実と正面から向き合った上で
この2つを強く貰っていたと思いました。

0
2025年11月29日

Posted by ブクログ

『ある男』を読んで、私は二つの楽しみ方を味わった。

第一の楽しみは、物語そのものの魅力だ。
この作品は、登場人物の複雑な心理を精緻に描き出し、読者を深く物語へと引き込んでいく。里枝の再婚相手・谷口大佑が仕事中の事故で突然命を落としたことをきっかけに、彼が“谷口大佑として生きていた別人”であることが明らかになる。真実を求める里枝は、弁護士・城戸に依頼し、「夫はいったい誰だったのか」という謎に迫っていく。
その過程で浮かび上がる人間模様は、ときに痛ましく、ときに深く考えさせられ、ただのミステリーにとどまらない重層的な読書体験をもたらしてくれた。

第二の楽しみは、時系列を読み解く面白さだった。
この作品には、登場人物の生年月日や出来事の前後関係など、時系列を示す手がかりが緻密に散りばめられている。東北の震災を一つの基点として、点と点がつながり、全体の時間軸が少しずつ明確になっていく。そのパズルを解くような感覚が心地よく、まるで自分自身も別のミステリーに挑んでいるかのようだった。

二重構造の謎を追う面白さと、人間の内側を照らし出す深いドラマ。その双方があるからこそ、『ある男』は読み終えたあともしばらく心に残る作品だった。

0
2025年11月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

次男の死と離婚を経て故郷に戻った里枝は「谷口 大祐」と出会い再婚する。長女も産まれ、家族4人で幸せに暮らしていた。しかし、大祐は林業の仕事中に事故死してしまう。
大祐から止められていたが、大祐の親族に連絡を取ると、大祐は別人だと告げられる。
里枝から相談をうけ、弁護士の城戸は「谷口 大祐」の正体を調べていく。

難しい!? いや、面白かったんです! でも、最後までいろいろ考えました。
時間がかかりました。Audibleなのに。

城戸と里枝を中心に、登場人物に感情移入し、楽しみながらも、自分は全てを理解しきれない、明確な答えを出しきれないモヤモヤを抱えて読み進めてるしんどさがありました。

うーん上手く言えないなぁ〜。

人は過去、例えば出自や環境や経験やそれらに伴う感情で出来ているとして、それらが自分自身や社会に受け入れられない物なら、捨ててしまわないと人として愛されないのか。人を愛することは出来ないのか。

うーん上手く言えないなぁ。それだけでは絶対にないんだけどなぁ〜。

ラストは里枝と悠人と花ちゃんの幸せを祈って泣きそうになりました。
悠人の俳句に残された人の言葉に出来ない気持ちを感じてしまいました。


蛻に いかに響くか 蝉の声

0
2025年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2022年に映画化し、気になっていた作品。
やっと読みました。
平野啓一郎さんの作品を初めて読んだが、
文章が硬めで表現方法が難しく何度も単語を調べた。
読み進めていくと、単語の難しさを後回しにしたくなるほど物語が深かった。
単に里枝の亡夫の戸籍交換の事実がわかっただけでなく、戸籍交換しなければならなかった過去、結婚後も嘘をつき騙していた訳ではなく言えない理由があったこと、他人の人生を丁寧に生きていたこと、里枝を心から愛していたこと。
城戸が谷口大佑とすり替わっていた原誠の真実を追うごとに彼の壮絶な過去と芯の部分の優しさを感じた。
城戸の生きる境遇や里枝の息子の葛藤も心動かされた。
とても良い本でした。

0
2025年10月11日

Posted by ブクログ

改めて、刻一刻と過去になる今を大切に噛み締めて生きたいなと思った。過去は変えられないが、そのことは人生においてプラスにもマイナスにも働く。城戸と同じような夫婦関係を私も築いているが、城戸はこの先をどう生きていくか気になった。私は城戸のように妻を受け入れたり、まわりの情にほだされたりしないことはできないかもしれない。

0
2025年10月08日

Posted by ブクログ

初めての平野啓一郎。面白い。単純にこの作品を1人の人間が考えて書ききったことに驚嘆。世の中には天才がいるんだなあ。戸籍のことや在日朝鮮人への関心も生まれ世界が広がった。主人公の苦悩にシンクロして自分もパートナーとの関係を改めて考えた。自分たちのパートナーシップは自分の家族、友人、職場の人間、そして社会から良くも悪くも影響を受け続けていく。関係を続けていくには対話が必要で、それができない人との関係は長く続かないなと思った。相手の言うことに耳を傾けて、相手がちゃんと聞いてもらえたと思ってくれるようにこれからも頑張ろうと思った。

0
2025年10月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

宮崎にいるりえと夫と子供たちのパートが一番惹かれた。
不幸ばかりが見つかる過去から逃げ切って、幸せな生活を手に入れて死ねた、とても幸福な人の話だったことに気づくと救われる気持ちになる。
悠人はきっと、束の間のお父さんの一生分の愛を受けて、良い子になる。絶対なる!と思った。
推理するような展開が面白かった。

かげの主人公、城戸の家庭と城戸の逡巡などについてはイマイチ分からなかった。この人物像は作者に近いから省略されているのかなと邪推した。

作者が男だけあって、やっぱり登場人物の男性たちが表情豊かだなと思った。女の人は、良い役を貰っているけれどやっぱり「主観」という描き方じゃなくて遠い感じがした。批判ではなく。

0
2025年09月23日

Posted by ブクログ

この人の2冊目だから、わかってきた感。難しいとこもあるし、スッキリする訳でもないんだけどなんか好きなんだよな~~おもしろいし

0
2025年09月20日

Posted by ブクログ

在日三世であることを川底に置きながら、弁護士として関わる人の人生をなぞり、自分とはなにか、死とは何か問い続ける。これは、日常の自分にいつもある問いではなくとも、ふとした時に気付かぬうちに隣ににあるような問い。そして慈善活動に対する思いの家族間での違いもリアル。夫婦とは、そのような些細なしかし根底として譲れない価値観を実は押し込めながら長年過ごし、人によっては見ないふりをしたり別れたりする。

平野作品は過去に何度か挫折していて、文体が自分に合わないのではと思っていた。この本を読んで、他の本も絶対読もうとすぐに次の本を探すほどに作者に興味が湧いた。

自分とは何か、戸籍とは、無戸籍になること、在日問題、社会的スティグマ、夫婦関係、子育て観といった深い問いから広く共感しやすいものを絡めながら、物語は謎にむかってスピード感をもって心を惹く。古典文学の表現や音楽も取り上げながら無知の読者を置き去りにしない。
ミステリー感だけならよくある一瞬の読後感、しかし私はラストがとても好きで、人の複雑さや不条理を文学を通して浄化へ導くような心地よさがあった。桜の木と蟬の抜け殻をそのように感じ表現する子どもを描く、その句の感性を、作者が作り上げた。もっと別の作品で作者の目を通した言葉の世界を知りたいと思った。

0
2025年09月09日

Posted by ブクログ

他人の人生を生きるって
どうなんだろ…
幸せにはなれないと思う

次男の話は読んでいて辛かったけど
里枝と長男の関係は素敵だな

0
2025年09月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分とは何か。自分を自分たらしめてるものとは何か。戸籍が変わったらもう別人なのか。では、愛した人が別の誰かの人生を歩んでいる人だと分かったら?いったい自分は誰を愛していたのか?その人のことを今も愛し続けられるのか?
私は過去の自分が今の自分を作り出していると思うので、たとえ戸籍を変えようとその戸籍を変えるに至った「私」も「私」なのであり、名前を変えようが過去の履歴を変えようがその人であることに変わりはないと思う。そして愛した人の過去がどうであれ、今この瞬間のあなたを愛していると思う。
美涼が言っていた、「分かったところからまた愛し直すんじゃないか。一回愛したら終わりじゃなくて、長い時間の中で、何度も愛し直すでしょ」という言葉が一番しっくりきた。

重く考えさせられるテーマで興味深い話ではあったが、何だか中途半端に終わった感じがした。最後に悠人が真実を受け入れ、ひとまわり成長した姿には感動したが、城戸と美涼の関係はこれで終わり?美涼と大祐の再会はどうなった?香織の上司からのメッセージの真相は?と、どれも何となく匂わす感じで終わってて、なんだか作者、途中で力尽きた?みたいに感じた。途中で長々と出てくる神話の話とかにページ割くくらいなら、それらの結末をもう少しちゃんと描いてほしかった。

あと、この著者の作品は初めて読んだが、やたらと難しい語彙やまわりくどい表現が多く、読書初心者の私には読みにくかった。文学的、哲学的な思考や対話が好きな人には向いているんだろうなと思った。
また、人は行動するたびにここまで思考を巡らせるものかなとも思ったし、城戸が香織や美涼との関係をあれこれ思考し悩むけど、やたら容姿を褒めてて、結局美人が好きなだけじゃんと思った。

0
2025年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

厳しい環境に置かれた人が描かれる小説の受け取り方がまだわかっていない。著者自身の思想がよく透けていて、他の作品を読んでその思想に近づきたいと思った。美涼が都合よく城戸のことを好きになってるのだけ普通に気に食わなかった

0
2025年11月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

信じて愛した人が名前も生い立ちも違くて殺人犯の子供だと分かっても同じように好きと思えるのかな?と考えさせられた。
今が誠実な生き方をしていれば過去なんて関係ないって思うけど綺麗事かもなー。
過去に囚われて普通の生き方ができなくて戸籍交換したわけだし
朝鮮人の話や神話とかちょいちょいつまらないなって思った。
主人公ちょっとお花畑だよね?なんか痛いおじさんだなって思った。思いとどまれたのは耐え

0
2025年11月15日

Posted by ブクログ

感想が難しい。面白かった点と、何だかなぁって点が混在している。素朴ながらも素敵な出会いで再婚した夫が、実は偽名でまったくの別人だった。その謎を解くというあらすじは興味深くそそられたが、ストーリーの軸となるのは弁護士の人生観みたいな?なかなか偽名の謎が進展せず、弁護士のアイデンティティをじっくりと読ませられている感じ。これが個人的にはちょっと冗長だった。しかし「愛にとって過去とは何か」という問いかけとアンサーは腑に落ちて良かった。それにしても文章といい言葉のセンスといい、独特な作家さんだなぁ。

0
2025年10月30日

Posted by ブクログ

事故で亡くした夫が「谷口大祐」ではなく全くの別人だった。愛にとって過去とは何か?

差別、出自、社会構造などに対する問題意識への語りが強く、ゆえに「愛に過去は必要か」という物語上のテーマがぼやけてしまっているものの、平野さんの知性や思考性が存分に堪能できる作品でもあった。

自分ではない人生を生きるということ、自分とは何か、自分と過去の連続性とはという思想的なテーマに対してじっくり論理的な分かりやすさのもと物語ってもらえるのは、なかなかに興味深い体験だった。

謎を紐解いていくようなストーリーそのものは魅力的で面白かった。

0
2025年11月15日

Posted by ブクログ

平野さんの物語りには、最後に「未来」や「救い」があるので好きです。

本当は誰なのか?
が知りたくて読むパワーになるけれど、本当は誰か?なんて、、、そんなに重要じゃない、、、かな、少なくてもワタシにとっては。

ワタシにしたって、貴方は本当は誰?と聞かれても…これこれこういうモノです…というのは、その時々で違いそう。

名前なんて、もっとそう。
イーロンマスクじゃないけれど「記号」のようなもの。

戸籍を変えたとして…
ルーツや過去の物語りを変えたとして…
何が変わる?何か変わる?

変わったと思ってるのは気のせいなんじゃないかな。

さして、重要だとは思わないかな。

どこをどういじっても、ワタシの目の前にいる「その人」を、その時どう見てどう感じて、どう愛したか。
そして「その人」と過ごした時間がどんなものだったか…は…ワタシの中では変わらない。
目の前の「その人」の過去がどうであれ
名前がどうであれ。。。

もし偽りの仮面があったとしても…

その時、それを知った時、、、
どう思いどう行動するか、、、はその時に決める。

だから、それまでの自分を疑わないし、「その人」を疑わないし、共に過ごした時間はもっと疑わない。

疑わない、っていう決意をできる自分でありたいし、その目を持つ自分でありたい、と思う。

0
2025年10月21日

Posted by ブクログ

面白いんだけど…
他の人も書いてるように城戸さんのいらん情報も多すぎて途中で挫折しかけるという気持ちもわからんでもない…

全て書いてあることに意味を持てとはもちろんいわないけど…そこは謎の人である夫の細かい部分を書くとか…そんなんを思ってしまいました

0
2025年10月19日

Posted by ブクログ

自分ではどうすることも出来ない出自や差別について考えさせられた。偽りの戸籍であっても、里枝と過ごした3年9ヶ月は本物の幸福な時間だったに違いない。

0
2025年10月02日

Posted by ブクログ

 平野さんは好きになりたい作家だけれど、なんだろうか、最後のラストスパートがスッキリしない。文体なのか、文調なのか、結末がありがちな内容だからなのか。そこに行くまでの面白さが萎んでいく気持ちを抑えられなかった。でもトーンば純文学、なかなか芳醇にならない日本文学をさかせて欲しいなと思います。

0
2025年09月19日

Posted by ブクログ

2022/12/27
「ある男」読み始めました。通勤時間が短くなったのと朝は結構な満員電車なので毎日ほんのちょっとしか進まない。牛歩読書。

(友人)
その本は見た事が無いような漢字がちょいちょい出てきました。まあ読めなくても文章の流れとか漢字そのもの意味でなんとなく理解はできるんだけど…私はそういうのをきっちり調べないと気が済まないのでスマホを手離せなかった。
そんなんだから本を読むのにいつも時間かかっちゃうのよねー

わかるー!この作者は漢字にこだわりがあるのか同じ読みでも一般的に使わない方の漢字を当てはめてくるよね。わたしも同じくスマホ片手に読んでますw

0
2025年09月10日

Posted by ブクログ

難しい本で、一回読むだけでは、全てを理解できなかったと思います。
(結婚観、人種差別云々…)
人のルーツは良くも悪くも、将来に何らかの影響を及ぼす。
未来は自分次第で切り開けるかもしれないが、それは綺麗ごと。
やっぱりどうしても過去がまとわりつき、自分の立場が形成される。
「一回、愛したら終わりじゃなくて、長い時間の間に、何度も愛し直すでしょう?色んなことが起きるから。」という美涼の言葉が印象に残りました。

0
2025年09月06日

Posted by ブクログ

愛に過去は必要か?
生まれ、出自、親、戸籍、、、、
私たちを私たちたらしめるものは何だろう?

他人の人生を生きてみたい。
自分の人生を愛せない。

もし私もその呪いを解くため、自分を辞めることを選ぶ悲しい人生だったならば、
その選択は、
自分を自分たらしめるものが意志ではなく、
外界から受ける自分への扱い方と、自分自身を許せない、愛せない呪いのようなもので縛り付けることから逃げるための楽になれる唯一の解決策がこれだけだったのかもしれない。

0
2025年08月26日

匿名

ネタバレ

良かったです!

人が人を愛することの多面性を改めて感じさせられる作品でした!

人が人を愛するとき、その根拠を過去の体験に求めることはあり得ます。
一方で、過去の自分に起きた出来事をどう感じとるかは人によって異なるのであり、今回であれば、〈入れ代わった人が語った〉谷口大介の過去にりえが惹かれたのではないかとも思います。

私個人の意見としては、入れ代わった人がありのままの自分の過去を理恵に話したとしても、世間体を抜きにして考えれば、りえに愛されていたのではないかと思います。

城戸も出自に対するコンプレックスを抱いているという意味では大介と僅かに共通点があり、それが城戸の大介に対する印象を美化させていたのではないかという妄想が膨らみました。

夫婦関係についても繊細な描写で、没入してあっという間に読み進めてしまいました。

#切ない #深い

0
2023年08月01日

購入済み

ある男

この小説のミステリーな部分とあったかい部分の割合が心地よかったです。
じんわりあったまる感じが。

人ってびっくりするようなことが自分に起きたら、実際はこんな感じなんだろうな、て気がしました。
この微妙な感じをうまーく表現出来ていて、引き込まれたんだと思います。

家族の在り方てほんとそれぞれだけど、そこに心を乗っけるか乗っけないかでまるっきり行き先違うんだなぁ、て再確認した作品でした。
フィクションだけれどもこの家族がうまくいくように応援して祈りました。

#ほのぼの #泣ける #切ない

0
2023年05月17日

ネタバレ 購入済み

アイデンティティを揺がす一作

「ある男」というタイトルは不確かな人物を指す筈だ。そんな曖昧で内容がなかなか見えてこないタイトルが故に「ある男」とはどんな奴だ?と気になり、さらには映画化も決まっているということで手にとってみた。
「ある男」というのは奴のことを差しているのだと思うが、正直なところ、その「ある男」は特別何か光って見えるとかそんなものではなく、日常のどこかに溶け込んでいるような平凡な人物であったなぁというのが私の受けた印象。
ではなぜ奴を「ある男」と呼んでいるかというと、名前を偽って生きてきていたからだ。
奴がしていたように、もし私の妻が名前を偽って、さらには戸籍を他人と交換して生きてきたのだとしたら私はどう思うのか考えさせられた。
そのまま好きでいられるのか?そんな嘘を許せるのか?など。たぶん無理。
他にも、実際戸籍の交換は不可能であると信じたいが、可能であったとして、この戸籍の交換というのは何かメリットはあるのだろうかと読んでいて思った。
戸籍を変えたいと思う理由でまず考えつくのは、傷のついた経歴を無かったことにしたいからだと思う。それって傷のついた経歴同士を交換することになるから、必ずどちらか一方はより傷の深い経歴を持つことになるのでは?



0
2022年07月04日

ネタバレ 購入済み

試し読みでは面白かったのに

映画は見ていないのですが、表紙と映画のシーンに興味があり、試し読みで面白いと思い購入しました。ある男の正体を知りたいと思い読み進めました。結末は戸籍の交換の話ですが、弁護士が在日韓国人の為差別を受けてきた事などのエピソードが何度も何度も出てきて少し鼻に付きましたそこがなければ、もっと面白かったのにと思いました。

#切ない #タメになる

0
2023年02月12日

「小説」ランキング