【感想・ネタバレ】ある男のレビュー

あらすじ

【映画化で話題!石川慶監督 × 原作 平野啓一郎】
★第46回日本アカデミー賞で
作品賞を含む最多の8部門の最優秀賞を受賞

【第70回読売文学賞受賞作】
『マチネの終わりに』『本心』の平野啓一郎による、傑作長編。
人間存在の根源と、この世界の真実に触れる文学作品。

「愛したはずの夫は、まったくの別人でした──」
弁護士の城戸は、かつての依頼者である里枝から、「ある男」についての奇妙な相談を受ける。
宮崎に住んでいる里枝には、2歳の次男を脳腫瘍で失って、夫と別れた過去があった。長男を引き取って14年ぶりに故郷に戻ったあと、「大祐」と再婚して、新しく生まれた女の子と4人で幸せな家庭を築いていた。
ところがある日突然、「大祐」は、事故で命を落とす。悲しみにうちひしがれた一家に、「大祐」が全くの別人だという衝撃の事実がもたらされる……。

愛にとって過去とは何か? 人はなぜ人を愛するのか。幼少期に深い傷を負っても、人は愛にたどりつけるのか?
「ある男」の人生を探るうちに、過去を変えて生きる男たちの姿が浮かびあがる。

『ある男』特設サイト ▶︎ https://k-hirano.com/a-man

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

複雑に価値観も状況も思いも違う人生同士が絡み合う。その人生を生きること他人の人生とそれを絡み合わせること。多種多様に示唆される悲喜交々の人生が影響を与え合い恐ろしく難しい人生同士の交差模様を描いている。他人の人生を介することで自分の人生を見つめ直して愛せるか、自分の人生のままならなさをどう受け止めるか、あるいは自分の人生の可能性を見た上で今生きる人生を見るか、他者の人生の痕跡からその人の人生を見つめることができるということ、別の人生を我が物としてそれを全うしようとすること、人生のあり方によっては人はガラリと変わってしまうということ、相手の人生や過去という不確かなものをどうして愛せるのか、人生同士の一瞬の交錯、人生における傷を共有することとその癒し……面白く胸に残るメッセージも多いが理解しきれない部分も数多い、とにかく面白かった。

0
2025年10月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私という人間は、生まれた瞬間から両親が決まっていて、物心着く頃には名前も決まっていて、それは自分では決められない。
その人自身には何の薄暗いことがなくても、そのせいで人生に翳りが生じてしまうこともある。
生まれの豊かさとか、国籍とか、性別とか、身長とか、自分では決められないものが、自分という人間の生身を形作る要因になる。とか思うと子供を産むことにも責任感じちゃうかも。

警察になる時に身元調査とかあるけど、それも親のせいで子の未来を奪うことになりうるの残酷だなと思う。機密情報のことを考えると必要だけれど。

0
2025年09月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本人自身が犯罪を犯したわけでもないのにレッテルを貼られてその人の善良さなんか全く見てもらえない、そういう不寛容さはどうしてなんだろう

弟と父親を亡くしたけど自力で創作することによって自分自身を救った息子さんの悠人くんとすぐに日韓友好のためのデモ行進に行った美涼さんの輝きがすごかった

0
2025年08月27日

ネタバレ 購入済み

とてもいい作品

最近読んだ中で1番良い作品で、1番表現しにくい作品。
最後に幸せがそこにあって、本当のことを言うべきなのかすら悩んだのではないか、その事で3回目の自殺だったのではないか...。
想像できる限りの当事者の心情を慮ったが、正解はわからない。
生きるとは誰しも難しいのだと、そこに立場や出自は関係なく皆悩みながらそれぞれ懸命に生きているのだと思った。

0
2022年09月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

次男の死と離婚を経て故郷に戻った里枝は「谷口 大祐」と出会い再婚する。長女も産まれ、家族4人で幸せに暮らしていた。しかし、大祐は林業の仕事中に事故死してしまう。
大祐から止められていたが、大祐の親族に連絡を取ると、大祐は別人だと告げられる。
里枝から相談をうけ、弁護士の城戸は「谷口 大祐」の正体を調べていく。

難しい!? いや、面白かったんです! でも、最後までいろいろ考えました。
時間がかかりました。Audibleなのに。

城戸と里枝を中心に、登場人物に感情移入し、楽しみながらも、自分は全てを理解しきれない、明確な答えを出しきれないモヤモヤを抱えて読み進めてるしんどさがありました。

うーん上手く言えないなぁ〜。

人は過去、例えば出自や環境や経験やそれらに伴う感情で出来ているとして、それらが自分自身や社会に受け入れられない物なら、捨ててしまわないと人として愛されないのか。人を愛することは出来ないのか。

うーん上手く言えないなぁ。それだけでは絶対にないんだけどなぁ〜。

ラストは里枝と悠人と花ちゃんの幸せを祈って泣きそうになりました。
悠人の俳句に残された人の言葉に出来ない気持ちを感じてしまいました。


蛻に いかに響くか 蝉の声

0
2025年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2022年に映画化し、気になっていた作品。
やっと読みました。
平野啓一郎さんの作品を初めて読んだが、
文章が硬めで表現方法が難しく何度も単語を調べた。
読み進めていくと、単語の難しさを後回しにしたくなるほど物語が深かった。
単に里枝の亡夫の戸籍交換の事実がわかっただけでなく、戸籍交換しなければならなかった過去、結婚後も嘘をつき騙していた訳ではなく言えない理由があったこと、他人の人生を丁寧に生きていたこと、里枝を心から愛していたこと。
城戸が谷口大佑とすり替わっていた原誠の真実を追うごとに彼の壮絶な過去と芯の部分の優しさを感じた。
城戸の生きる境遇や里枝の息子の葛藤も心動かされた。
とても良い本でした。

0
2025年10月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

宮崎にいるりえと夫と子供たちのパートが一番惹かれた。
不幸ばかりが見つかる過去から逃げ切って、幸せな生活を手に入れて死ねた、とても幸福な人の話だったことに気づくと救われる気持ちになる。
悠人はきっと、束の間のお父さんの一生分の愛を受けて、良い子になる。絶対なる!と思った。
推理するような展開が面白かった。

かげの主人公、城戸の家庭と城戸の逡巡などについてはイマイチ分からなかった。この人物像は作者に近いから省略されているのかなと邪推した。

作者が男だけあって、やっぱり登場人物の男性たちが表情豊かだなと思った。女の人は、良い役を貰っているけれどやっぱり「主観」という描き方じゃなくて遠い感じがした。批判ではなく。

0
2025年09月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自分とは何か。自分を自分たらしめてるものとは何か。戸籍が変わったらもう別人なのか。では、愛した人が別の誰かの人生を歩んでいる人だと分かったら?いったい自分は誰を愛していたのか?その人のことを今も愛し続けられるのか?
私は過去の自分が今の自分を作り出していると思うので、たとえ戸籍を変えようとその戸籍を変えるに至った「私」も「私」なのであり、名前を変えようが過去の履歴を変えようがその人であることに変わりはないと思う。そして愛した人の過去がどうであれ、今この瞬間のあなたを愛していると思う。
美涼が言っていた、「分かったところからまた愛し直すんじゃないか。一回愛したら終わりじゃなくて、長い時間の中で、何度も愛し直すでしょ」という言葉が一番しっくりきた。

重く考えさせられるテーマで興味深い話ではあったが、何だか中途半端に終わった感じがした。最後に悠人が真実を受け入れ、ひとまわり成長した姿には感動したが、城戸と美涼の関係はこれで終わり?美涼と大祐の再会はどうなった?香織の上司からのメッセージの真相は?と、どれも何となく匂わす感じで終わってて、なんだか作者、途中で力尽きた?みたいに感じた。途中で長々と出てくる神話の話とかにページ割くくらいなら、それらの結末をもう少しちゃんと描いてほしかった。

あと、この著者の作品は初めて読んだが、やたらと難しい語彙やまわりくどい表現が多く、読書初心者の私には読みにくかった。文学的、哲学的な思考や対話が好きな人には向いているんだろうなと思った。
また、人は行動するたびにここまで思考を巡らせるものかなとも思ったし、城戸が香織や美涼との関係をあれこれ思考し悩むけど、やたら容姿を褒めてて、結局美人が好きなだけじゃんと思った。

0
2025年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

厳しい環境に置かれた人が描かれる小説の受け取り方がまだわかっていない。著者自身の思想がよく透けていて、他の作品を読んでその思想に近づきたいと思った。美涼が都合よく城戸のことを好きになってるのだけ普通に気に食わなかった

0
2025年11月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

信じて愛した人が名前も生い立ちも違くて殺人犯の子供だと分かっても同じように好きと思えるのかな?と考えさせられた。
今が誠実な生き方をしていれば過去なんて関係ないって思うけど綺麗事かもなー。
過去に囚われて普通の生き方ができなくて戸籍交換したわけだし
朝鮮人の話や神話とかちょいちょいつまらないなって思った。
主人公ちょっとお花畑だよね?なんか痛いおじさんだなって思った。思いとどまれたのは耐え

0
2025年11月15日

匿名

ネタバレ

良かったです!

人が人を愛することの多面性を改めて感じさせられる作品でした!

人が人を愛するとき、その根拠を過去の体験に求めることはあり得ます。
一方で、過去の自分に起きた出来事をどう感じとるかは人によって異なるのであり、今回であれば、〈入れ代わった人が語った〉谷口大介の過去にりえが惹かれたのではないかとも思います。

私個人の意見としては、入れ代わった人がありのままの自分の過去を理恵に話したとしても、世間体を抜きにして考えれば、りえに愛されていたのではないかと思います。

城戸も出自に対するコンプレックスを抱いているという意味では大介と僅かに共通点があり、それが城戸の大介に対する印象を美化させていたのではないかという妄想が膨らみました。

夫婦関係についても繊細な描写で、没入してあっという間に読み進めてしまいました。

#切ない #深い

0
2023年08月01日

ネタバレ 購入済み

アイデンティティを揺がす一作

「ある男」というタイトルは不確かな人物を指す筈だ。そんな曖昧で内容がなかなか見えてこないタイトルが故に「ある男」とはどんな奴だ?と気になり、さらには映画化も決まっているということで手にとってみた。
「ある男」というのは奴のことを差しているのだと思うが、正直なところ、その「ある男」は特別何か光って見えるとかそんなものではなく、日常のどこかに溶け込んでいるような平凡な人物であったなぁというのが私の受けた印象。
ではなぜ奴を「ある男」と呼んでいるかというと、名前を偽って生きてきていたからだ。
奴がしていたように、もし私の妻が名前を偽って、さらには戸籍を他人と交換して生きてきたのだとしたら私はどう思うのか考えさせられた。
そのまま好きでいられるのか?そんな嘘を許せるのか?など。たぶん無理。
他にも、実際戸籍の交換は不可能であると信じたいが、可能であったとして、この戸籍の交換というのは何かメリットはあるのだろうかと読んでいて思った。
戸籍を変えたいと思う理由でまず考えつくのは、傷のついた経歴を無かったことにしたいからだと思う。それって傷のついた経歴同士を交換することになるから、必ずどちらか一方はより傷の深い経歴を持つことになるのでは?



0
2022年07月04日

ネタバレ 購入済み

試し読みでは面白かったのに

映画は見ていないのですが、表紙と映画のシーンに興味があり、試し読みで面白いと思い購入しました。ある男の正体を知りたいと思い読み進めました。結末は戸籍の交換の話ですが、弁護士が在日韓国人の為差別を受けてきた事などのエピソードが何度も何度も出てきて少し鼻に付きましたそこがなければ、もっと面白かったのにと思いました。

#切ない #タメになる

0
2023年02月12日

「小説」ランキング