平野啓一郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
第一弾の「本の読み方」では、スローリーディングについて語られていたが、第二弾のこちらは、小説の仕組みについて語られていた。小説を書く人、書いたことのある人が読むと、新しい視点や面白い試みなどが得られると思う。
前作の方は高校生にもおすすめしたいが、こちらは高校生では少し難しいかもしれない。それだけ小説が複雑で深みのあるものなのだと感じた。
・四つの質問
1.メカニズム(小説の仕組みはどうなっているか)
2.発達(その作家の人生のいつごろの作品か)
3.進化(社会・文学の歴史的にどんな意味を持つか)
4.機能(作者意図と読者の意味づけ、小説の振る舞いはどうか)
・主語になる登場人物と -
Posted by ブクログ
露出プレイから生じた事件のルポルタージュに見せかけた、純文学。テーマがテーマのため性的な描写が散見される。好き嫌い別れるだろうから人には薦めづらいな。
ただのありふれた事件のルポルタージュかと思っていたら、実生活を『本当』と捉え、ネット上の記号に適応した姿を『嘘』と捉える女と、性欲の発露こそ『本当』で、澄ました顔で取り繕う社会生活こそ『嘘』と捉えた男。その場限りの行為の上では利害が一致していたのに、関係が続き今後を考えていく上で互いの世界の捉え方の違いが破滅に繋がっていくという、作者の考えが伺える、評論じみた小説だった。私はこの意図に終盤まで気付けなかった…。
この方ルポも書くんだな、なんて -
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Posted by ブクログ
◆心に刺さったワード◆
⚫一日の中に締切があると、規則正しく進む
⚫中途半端な人こそ自分を天才に見せようとして横柄になる
⚫仕事してる間は、自分の内側のことで悩まなくていい。それに、金銭が発生すると「社会に必要とされてる」と思えて、自分のなかの欠落感が埋まった気になる。その「必要とされてる感」を失う怖さ。今仕事がなくなったときに、その欠落とうまく付き合う 技術や、人間 力への自信がない。そこから来る 強迫観念かもしれませんね。
⚫強い心は強い肉体に宿る
◆読んでみたい本◆
⚫変な恋愛の短編を集めたアンソロジー 岸本佐知子 『恋愛小説集』
⚫肩の力を抜きたい人 森鷗外 高瀬舟
⚫世界の実相 -
匿名
ネタバレ良かったです!
人が人を愛することの多面性を改めて感じさせられる作品でした!
人が人を愛するとき、その根拠を過去の体験に求めることはあり得ます。
一方で、過去の自分に起きた出来事をどう感じとるかは人によって異なるのであり、今回であれば、〈入れ代わった人が語った〉谷口大介の過去にりえが惹かれたのではないかとも思います。
私個人の意見としては、入れ代わった人がありのままの自分の過去を理恵に話したとしても、世間体を抜きにして考えれば、りえに愛されていたのではないかと思います。
城戸も出自に対するコンプレックスを抱いているという意味では大介と僅かに共通点があり、それが城戸の大介に対する印象を美化させていたのでは -
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Posted by ブクログ
ネタバレ先輩に薦められて。視線のドラマ。人は誰しも「悦びに呪われている」というのが引っかかる本でした。
<平野啓一郎解説>
・今回、私に《サロメ》の新訳を依頼したのは、演出家の宮本亜門氏
・「古典を権威にまで堕落させ」、新しい「美」の創造に対して古典を「棍棒として」振り回す保守的な読者への揶揄
・ワイルドのサロメは、もっと少女的で、愛らしい。強いて言えば純真。
・ヨカナーンの言葉は、大別して三種類
①人間ヨカナーンのつぶやき②預言者としての言葉③預言そのもの
・その無邪気なアプローチには、「ヨカナーン!お前の体が愛おしい。」と正直に語ってしまうような、母親譲りの欲望が露わになっている
・サロメ