あらすじ
全国で生き返る「復生者」たち。その集会に参加した徹生は、自らの死についての衝撃的な真相を知る。すべての謎が解き明かされ、ようやく家族に訪れた幸福。しかし、彼にはやり残したことがあった……。生と死の狭間で「自分とは何か?」という根源的な問いを追究し、「分人」という思想が結実する感動長編。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
人にはいくつかの分人が存在する。
家族や友達、同僚、上司と。
それぞれと接する時の自分はテンションや気の使い方も異なっていていろんな自分がそのにいる。
どれが本当の自分なのか。
幸せであっても疲労は溜まるし嫌いな自分は消したくなる。
この装丁はなぜゴッホなんだろうという謎も納得。
ゴッホのいろんな顔と自殺の真実が物語と結びついて後半はかなり面白くなってきました。
そして、終わり方に鳥肌、、。
りっくんを抱きしめる直前に消えちゃったってこと、、?
彼の悔いが残った空白が満たされたから消滅したのかな。
2回も大切な人がいなくなるなんて耐えられないけど、これを読みきって生の尊さが身に染みました。
死んだものは蘇らないから生は尊い。
今を大事に噛み締めた生きなければ。
Posted by ブクログ
この人はえげつないものを書くなーと毎回思わされる。小説であり哲学書でもあるような。
同著の『私とは何か』を読んだことがあったから文人主義の理解は容易かったけど、この概念を復生者のレンズでみるって言うのはほんとに面白い。
なんかまたすごい本に出会ってしまったなぁ。
しばらくは余韻に浸ろう。
Posted by ブクログ
衝撃的なストーリー
哲学的であり、心理学的であり
その都度納得の内容にため息が出る
ゴッホの絵の繋がりもたっぷり盛り込まれている
ただ、切ない
分人という考えにも納得ではあるが
すべてひっくるめてのその人で
自分でも考えれば
何個の分人を抱えているか数えきれない
なんともせつない
生き返った意味があったから
生き返ってやることがあったから
生き返ってきたのだろうか
そうでなければ
危険人物も蘇ってしまうわけで‥
閻魔様の悪戯なのか
だとしてもせつない
璃久ちゃんのどんぶらっこは
はたして父を運んできたのか
これからの父への暗示なのか?
今もどこかでこんなことが
おこっているのではないかと
思わずにはいられない
Posted by ブクログ
ゴッホのついての学びを深めたかった時に、ゴッホの表紙が気になり購読。
「分人」という新しい哲学に触れ、自分の中でも腑に落ちる点があったので、新たな視点として咀嚼していきたい。
分人は、相手毎に生じる自分の分身がいるという思想で、自分という根本は変わらないが、相手が恋人なのか友達か、嫌いな人かによって異なる分人がいるということである。
自殺についての解釈は、自身にいる嫌な分人を「消したい」という感情から生まれ、分人を理解していない人にとっては、嫌な自分を「殺す」しか手段がなく自殺するということに納得がいった。
嫌な分人と向き合うには、「見守る」と本書ではアドバイスしていたが、私の意見では「受け入れる」と感じている。そういう分人も含めて自分を愛したいからだ。
ゴッホとの関連性は薄かったが、分人と自殺の解釈を説明するうえでの、新しい視点としては興味深い話だった。
Posted by ブクログ
氏の分人の概念が、小説内で存分に開陳される。なるほど。個人的には既知のものなので、特に違和感なく物語の重要ポイントとして味わえたけど、結構唐突に出てきたな、っていう気がしないこともなく…。上巻に比べたら文学感が増したけど、それでもやっぱり、ミステリやSF的にも楽しめた。素敵。
Posted by ブクログ
上巻は推理小説みたいに読んでいたんだけど、下巻は生きるってなんだろうとずっと考えながら読んだ。「死は傲慢に人生を染めるべきではない」という話と、分人についての考え方は、すごくいいものもらった‼︎って感じ。
Posted by ブクログ
主人公やその奥さんの状況に自分がなったらと考えただけでこれはしんどいなー辛いなーと思い続けながら読んだけど、最後!終わり方!涙も出たけどいろんな感情が押し寄せて来る。子ども居てるからよけいそう思うのかな?平野さんの子どもの描写は好き。父親目線やなーと思うけど、愛情表現がリアルで好きなのよねー
佐伯の気味悪さと、でもどんどん彼の考えに取り込まれてそうになってゆくのは圧巻ってか読んでる自分もそうなってくのが面白い体験だったな。
Posted by ブクログ
【生と死】を考える本に出会った。
若い人達に読んでもらいたいな。
何か人生に疲れて終わらせたい時あるけど
長生きはするもんだな。
どんな自分に出会えるか分からないから。
分人という教えは自分のモヤモヤが解されて透き通った感じ。
大好きなゴッホの表紙も何でなのか下巻で分かった。
Posted by ブクログ
分人主義という、著者の主張がメインの話になっていた。哲学や宗教的な要素が強め。ユングのペルソナに近いような、似て非なるもののような。一方、物語としても面白かった。
スッキリした
下巻に入り、謎が次々と明かされていく。
少しずつ記憶が呼び戻され、周りの人との対話の中で考え方も変わっていく。
分人の考え方や表紙になっているゴッホの考察も面白かった。家族の在り方もそれぞれだけど、主人公の母親の言葉には深いものがあった。毎日を大切に生きていきたいと思える本だった。
Posted by ブクログ
人の死について考えさせられる作品でした。
大切な人に先立たれ、この世に置いてかれた人たちは、その、ぽっかりと空いた「空白」をその大切な人との記憶や記録などで満たそうとする。
それは故人を、ある意味「理想化」することでもあり、はたして正しかったとは限らない。
しかし、そうでもしないと「空白」を満たせずに壊れてしまうから。
「分人」という考え方に納得しました。
(「分人」とは他人と関わっている自分の部分的一面のようなこと。)
自分もこれに思い当たる節があり、裏表を使い分けているってよりかは、あの人といると自然とこういう態度をとるなぁってことがありました。
完璧主義な自分でもあるので、自己否定して嫌になるときには、その「分人」を見守るような人になりたい。
Posted by ブクログ
「死」について深く考えさせられた作品。特に自殺について。自殺をしてしまう人の考えは、もちろん死者に聞くことができないのであくまで推測の話になると思うが、自分自身を消してしまいたくなるほどに追い込まれていると死のうとしていなくてもそういう行動となってしまうという作者の考えに深く考えさせられ印象に残った。最後の終わり方も読者にその後を託すような感じのため想像力を掻き立てられた。読後の口コミや評価などをみて読者それぞれの解釈、ストーリーがあって見ていて楽しい。
Posted by ブクログ
平野啓一郎はジャンルがないと言われるけれど、私にとってはやっぱり平野作品にしかない特徴があると思う。文体の滑らかさも含めて。
出てくる人物の思考が、紡がれる描写の端々から伺えて、人格を持った存在として認識させられる。当たり前だけれど、悪人や善人で人を切り分けない。だからなのか、物語が終わると置いてけぼりにさせられた気持ちになる。あまりにも人々がリアルすぎて、この人たちのその後の人生があることを前提のように捉えてしまって、私にはもうその人生を垣間見させてくれる権利が無くなったような。そんな心持ちになる。
分人思考というが作家の思想に深くあるのだと思うけれど、そこが本作品に組み込まれたことで、それゆえに物語の輪郭がぼやけてしまった?追えなくなった部分が発生した。
それでも読んで良かったと心から思う作品。
Posted by ブクログ
死んだ人が生き返って、その死の真相を探るミステリー……だと思ってた。その謎の部分を指して「空白を満たしなさい」っていうタイトルだと思ってた。違う違うそうじゃない。私が思うに、これは残された人たちの空白を満たすための物語だったのだ。
普通は人が一度死んだらもう二度と蘇ることはない。残された人たちの中にはその人の死を引き摺り続ける人もいるだろう。心にポッカリと空いた穴を塞がないまま生き続けることの辛さは推し量るべくもない。彼らがそういう人たちのために生き返ったのだとしたら……。さあ、空白を満たしなさい。
Posted by ブクログ
他人との関係を「分人」という概念を使って表現していた。自分も、自己について周りとの関係によって変わる曖昧なものだと感じていたので、理解が深まった。
この本を読んで思ったこととしては、分人は離散的でなく連続的な概念だと思った。筆者もきっと分かっていて、離散的の方が分かりやすいからそう書いたんだと思うけど
自分にはいま子供のような守るべきものはないが、もし大切な存在ができたら徹夫と同じような考えをしてしまうかもしれないと思った。
Posted by ブクログ
一気に読んでしまった下巻。
平野作品のカバーはよく考えられているのだろうと思ったから、絶対にゴッホの「自殺」についての描写(もしくは自
殺ではなかったのではないか)というテーマが出てくるのかと思ったら、下巻の絵が実はゴッホではなく、弟のテオだったのでは?という説が出てきて、それは私も初耳だった。
平野さんが興味を示している「分人」についてこの作品ではよりわかりやすく語られている気がする。やはりこの作品を読んでから、「本心」を読むともっとわかりやすかったのかなとも思う。
でも入門というか、手にとるようなテーマとして、「本心」に出てくる母親のVFっていうのは興味深かった。
子供2人、家族を持つものとして読んでいくとしかし、やっぱり徹生は幸せ像に殺されてしまったのではないかと思ってしまう。必死になりすぎて、疲れていることも認めずに、自ら命を絶ってしまうなんて。でもそれが日本社会が築き上げた、働きづくめの日常、そしてそれすら相談し合えない時間の無さとすれ違い、こんなことはあり得るんじゃないかという気がしてくる。あまり育児のプレッシャーや子供への愛情を感じなかったけれど、それは璃久との描写が「子供の日の兜の写真を撮った時」ばかり強調されたからかもしれない。でも、叱ってしまう部分の描写や、離乳食を食べさせるときにイライラしてしまうのは共感した。
側から見ていると、もっと良いアプローチがある(正解)がある、と思ってしまうのかもしれないけれど、両親たちは必死にやっているんだよな。親たちのメンタルを健康に保ちつつ、子供をしつけていくのって本当に大変だと思う。
映像化作品も途中まで見てみたのだが、やはり徹生の心理描写が全然足りていない気がしたのと、妻、千佳は小説にはもっと可愛らしさとうちに秘めた弱さや脆さみたいな絶妙なバランス感があった気がする。
Posted by ブクログ
分人という視点、苦悩の扱い方、そして「死」がもたらす余波に深く揺さぶられた。
分人について、誰かと一緒にいるときの自分と、一人のときの自分って確かに違う。その中には好きな自分もいれば、あまり好きじゃない自分もいる。
本書の中にはすごく哲学的な内容もあり難しい部分があって、そこは斜め読みしてしまった。
いつか再読したときには少しでも分かるといいな。
ラストのシーン、光の描写が美しくて切なくて…。
残された家族のことを思うと胸が痛いし、「死ぬことって、自分だけの問題じゃないんだな」と改めて考えさせられた。読後も余韻が残る、深い一冊だった。
Posted by ブクログ
オカルト?ミステリー?哲学?ジャンル分けするのが難しい作品ですが、平野さんが一貫して提唱されている分人主義という概念を知ることができる物語です。
一見オカルトチックな設定ですが平野さんの重厚で繊細な描写のおかげで没入感も深く、ずしんと重くて暗いけど気になる、気になるけど知るのが怖い。そう思いながら最後まで興味深く読みました。
ラデックの出家についての考え方もとても面白かったです。
Posted by ブクログ
中学生の頃、「あいつは裏表があるから性格が悪い」みたいな陰口が横行していて、その時から相手によって態度、接し方が変わることは当たり前のことだと考えていたから、本書の分人の考え方には強く共感した。
Posted by ブクログ
私が家族が好きであるという意味は家族といるときの自分のあり方が好きという意味であるんだという考えを知りました。
人間という社会的であるためいろんな人と対峙するときのそのときどきの自分があるんだな。
そんないろんな自分を含めて大きく愛せるといいな。
そして、生きることや死ぬことという実存についても考えさせられました。
仕事で忙殺されてしまう日々。
答えは出ないけれどこの小説から人生をふりかえることが少しではありましたができました。
それは私にとってひとときでありますが心の安寧となりました。
生きるってつらいな。けどとても美しいなとも思ったり。
Posted by ブクログ
・関わる人によって、分人が変わって、自分の中の不適切な分人をまともにするために攻撃して鬱になったり、自己嫌悪に陥る
・例)親と関わってる自分の分人:ほんまにいや、しんどい
→時間的にも物理的にも距離とると分人が薄れて、楽になれる
・なにか気晴らしをしても体力を使うから、コップから水があふれるみたいに死に至ってしまうこともある
最初、あんまりやなーって思ってたけど後半の自殺・鬱に対する考え方云々は興味深かった。
Posted by ブクログ
表紙がなぜゴッホの自画像なのかと考えながら読んでいたが、後編中盤に明らかになる。おそらくはゴッホの自画像の謎から着想を得た作品なのではと考える。分人という思想は、人格という解釈ておぼろげに思っていたが本編でとても丁寧に考察しておりとても面白く読めた。ネイバーというサービスはとても面白い着想て、実際にあったらいいのではと思う。生に観する様々な考察を一度生き返った人の考えに説得力を感じる。死んだ人が生き返るという超常現象については残留思念かな、程度で考えればいいと思う。作者の素敵な表現力が好きで、他の作品を読みたくなった。
Posted by ブクログ
設定には最後まで違和感があったけど、このテーマを扱うにはこうするしかなかったし、これでよかったのだろうと思う。
とても考えさせられる作品であったし、感情も揺さぶられました。
Posted by ブクログ
この作品は自殺防止の意味も込めて書かれたのかなって思った。死んでまた生き返ってその時初めて自分のしたことに対する後悔と周りへの影響が身に沁みてわかるのだと思う。(実際、生き返れないから無理な話ではあるが)
でも徹生もそうだったように、自殺する明確な理由ってきっとなくて一時の心の迷いなんだろうな…
Posted by ブクログ
後半が切ない... 小説で久しぶりに泣きました。
自分の死期を悟って、残る大切な家族や知人のために何かすることって第三者から見ても胸が張り裂けそうな思いになります。
平野さん、最後の一文がうまい...!徹生がどうなるのか断定的な描写はなく、読者の想像に任せる感じだと思いますが、言い切らないでくれたこと、書き切らないでくれたことにかなり救われました。
Posted by ブクログ
上巻のミステリーわくわくな感じと違って、
下巻は分人の話が主。
ミステリーのわくわくの着地を期待してたので、
これが書きたかったんかよ…とちょっとずっこけた。分人の考え方に救われる人は読んでみてもいいかも。
Posted by ブクログ
付箋の回収には、あまりにも詳細すぎた印象がある。復生は、ひょっとするとあるかもしれない。と思いつつ「命は恐らく、一つだけだから尊い」この言葉が、本作で最もグットきたワードだ。
生きる喜びと苦しさを感じる一冊。
Posted by ブクログ
死んだ人間が生き返って、自分の死因について探る物語。ミステリーかと思いきや、自分とひたすら向き合い自問自答する主人公を通して、『分人』主義を理解する哲学書のような小説でした。
表紙も素敵で飾りたい。
人は関わる相手ごとにキャラクターは多少変わるものだから、この人といる自分が好きだな〜と思う人と一緒にいる時間を大切にすれば良い。