【感想・ネタバレ】空白を満たしなさい(下)のレビュー

あらすじ

全国で生き返る「復生者」たち。その集会に参加した徹生は、自らの死についての衝撃的な真相を知る。すべての謎が解き明かされ、ようやく家族に訪れた幸福。しかし、彼にはやり残したことがあった……。生と死の狭間で「自分とは何か?」という根源的な問いを追究し、「分人」という思想が結実する感動長編。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

これ読んでると、マジで自分の分人について深く考えるし、みんなの分人についても考えるし、私の好きなみんなの私に対する分人が、その人にとってかけがえのない好きといえる分人だといいなと思う。結局何のために生きてるか、なんのために生き返ってるか、命は尊いものとこ自殺はダメとかそんなことを言いたいんじゃなくて、自分の好きと思える自分を生きることとか、そこに他者をうまく介入させなきゃいけないとか、どんなふうに生きたら良いのかなってことを深く考えさせられる。

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2026年06月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

名作、、、平野さんの本はどれも示唆に富んでいて考えさせられるけど、中でも一番好きかも。
どの瞬間か分からないけどどこかで消失してしまうと分かってからの日常の輝きたるや、、最後の湖のほとりのピクニックは本当に何気ない一瞬なのに儚くて美しくてぼろぼろと泣いてしまった。公園の「イカ」も、何気ないけど楽しい日常の1シーンとして良い象徴だった。
千佳の「秘密」のこともすっかり忘れていたけど、一緒に実家に帰って徹生が千佳のことを「善い人」だと説いたシーンもとても印象的で泣いてしまった。このあとも一緒に生きていけたらいいのにね、残された千佳がまた実家に帰れる未来はあんまり想像できなかったな。分人主義の考え方も含め、自殺遺族の救いの書になり得るテーマだった。

ラデックとの会話は深くて、でも穏やかな時間で何度も読み返したくなる魅力がある。

「アダムとエヴァを追い出したあと寂しくなる神様」の詩
「誰も、人間の苦悩する権利を否定することは出来ません。それは、残酷なことです。我々はいつでも、癒しを与えることを急ぎすぎ、自分の住んでいる世界を憎悪から守るのに必死で、他者の苦悩を尊重することを忘れがちです。」
「苦悩を否定された人間は、悲劇的な方法で、それを証明するように追い詰められます。多くの場合、我々は、決して否定できない深刻な事態が生じてから、初めて彼の苦労を知るのです。」
「生きることに肯定的な人間も、否定的な人間も、同じこの世界を生き、同じ人間としての生を生きています。世界を愚弄され、人生を貶められれば、生きようとする人間は、当然、反発します。自分を守るためです。私たちは無価値な世界で、無価値な生を生きているなどということには到底耐えられません。それは恐ろしいことです。」

→本当に、だから生きることに否定的な人間は孤独なんだなあと思った。生きることに否定的だから死ぬんじゃなくて、否定的であることが許されないから死ぬって選択になることもあるよなあと思った。

「死は傲慢に人生を染める」
自分の人生を彩るための様々なインク壺で丹念にいろんな色を入れて重ねていく。たまたま最後に倒してしまったインク壺の色が全部を一色に染めてしまう。

→死に方で判断するのは違う。違うんだけど死ぬ瞬間はセンセーショナルで、その先のその人の話は新たに紡がれなくなって、周りの人の頭の中で想起されるのは常に「過去」
そして最も最近の過去が死ぬ瞬間だから(上巻の冒頭に繋がるが)、死に方でどうしても判断してしまうのだろうな。

文人主義の考え方、「誰かといるときの自分を愛す、その分人を足場に生きていけばいい。」というの刺さったなあ。

「心の誤訳」ラデックが説明した、伊勢物語の時代は現代の「自殺したい」という感情を「出家したい」と訳したのだろう、という考え面白いな。社会的な文人を消すことで命まで失わずに済む。この考えが自殺者を救う気がするな。

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2026年05月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ゴッホのついての学びを深めたかった時に、ゴッホの表紙が気になり購読。
「分人」という新しい哲学に触れ、自分の中でも腑に落ちる点があったので、新たな視点として咀嚼していきたい。
分人は、相手毎に生じる自分の分身がいるという思想で、自分という根本は変わらないが、相手が恋人なのか友達か、嫌いな人かによって異なる分人がいるということである。
自殺についての解釈は、自身にいる嫌な分人を「消したい」という感情から生まれ、分人を理解していない人にとっては、嫌な自分を「殺す」しか手段がなく自殺するということに納得がいった。
嫌な分人と向き合うには、「見守る」と本書ではアドバイスしていたが、私の意見では「受け入れる」と感じている。そういう分人も含めて自分を愛したいからだ。
ゴッホとの関連性は薄かったが、分人と自殺の解釈を説明するうえでの、新しい視点としては興味深い話だった。

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2025年06月29日

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下巻は「分人」解説主体で、そこばかりに目が向きがちになるけれど、ラデック氏や池端氏の語りから"生き方"や"死後の生き方"など、なかなか重たいものについて考えさせられる。哲学的なようで、宗教的なようで、現実的でもあり、混乱。

未知の父親の影を追い求めていた主人公だからこその「空白を満たしなさい」。父から息子への想いが凝縮されたタイトルの意味に、鳥肌其の一。どう活用するかは、大人になった息子がその時判断するでしょう。託せば良いさ。つべこべ言わず、子を信じろ。

個人的には、自分が死んだ後で誰に何と言われようと気にならないし、まだまだ生きていかねばならない人たちにいつまでも自分を想ってほしいなどとは思わない方なので、〈ネイバー〉の在り方や復生者のエゴに、後半はあまり共感できない部分も多かった。何をしたかよりも何が目立ったのか問題とか、死後どうありたいかを考えるとか、あとゴッホの件などは納得しかないのだけれど。

ただ生きて、今そこに存在していることが尊いのだと、改めて思った。一度死に、生き返ったからこそ、の二重三重の苦悩も、不幸なようで幸せな時間だったと言えるのかも知れない。

最後の最後に鳥肌其のニ。これはどういうことなのでしょう?
「だった。」が「だ。」とか、「あと少」でぶったぎるとか、色んなパターンに置き換えて考えてみたのだけれど……。ただ、璃久くんがそれまで以上に傷ついていなければいいなと思う。4歳の子供にこれは惨すぎる。

分人主義という考え方をもう少し掘り下げてみたくなって、この本を読みながら新書をポチり。

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2025年12月26日

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ネタバレ

「死」について深く考えさせられた作品。特に自殺について。自殺をしてしまう人の考えは、もちろん死者に聞くことができないのであくまで推測の話になると思うが、自分自身を消してしまいたくなるほどに追い込まれていると死のうとしていなくてもそういう行動となってしまうという作者の考えに深く考えさせられ印象に残った。最後の終わり方も読者にその後を託すような感じのため想像力を掻き立てられた。読後の口コミや評価などをみて読者それぞれの解釈、ストーリーがあって見ていて楽しい。

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2025年11月16日

Posted by ブクログ

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死んだ人が生き返って、その死の真相を探るミステリー……だと思ってた。その謎の部分を指して「空白を満たしなさい」っていうタイトルだと思ってた。違う違うそうじゃない。私が思うに、これは残された人たちの空白を満たすための物語だったのだ。

普通は人が一度死んだらもう二度と蘇ることはない。残された人たちの中にはその人の死を引き摺り続ける人もいるだろう。心にポッカリと空いた穴を塞がないまま生き続けることの辛さは推し量るべくもない。彼らがそういう人たちのために生き返ったのだとしたら……。さあ、空白を満たしなさい。

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2025年09月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一気に読んでしまった下巻。
平野作品のカバーはよく考えられているのだろうと思ったから、絶対にゴッホの「自殺」についての描写(もしくは自
殺ではなかったのではないか)というテーマが出てくるのかと思ったら、下巻の絵が実はゴッホではなく、弟のテオだったのでは?という説が出てきて、それは私も初耳だった。
野さんが興味を示している「分人」についてこの作品ではよりわかりやすく語られている気がする。やはりこの作品を読んでから、「本心」を読むともっとわかりやすかったのかなとも思う。
でも入門というか、手にとるようなテーマとして、「本心」に出てくる母親のVFっていうのは興味深かった。
子供2人、家族を持つものとして読んでいくとしかし、やっぱり徹生は幸せ像に殺されてしまったのではないかと思ってしまう。必死になりすぎて、疲れていることも認めずに、自ら命を絶ってしまうなんて。でもそれが日本社会が築き上げた、働きづくめの日常、そしてそれすら相談し合えない時間の無さとすれ違い、こんなことはあり得るんじゃないかという気がしてくる。あまり育児のプレッシャーや子供への愛情を感じなかったけれど、それは璃久との描写が「子供の日の兜の写真を撮った時」ばかり強調されたからかもしれない。でも、叱ってしまう部分の描写や、離乳食を食べさせるときにイライラしてしまうのは共感した。
側から見ていると、もっと良いアプローチがある(正解)がある、と思ってしまうのかもしれないけれど、両親たちは必死にやっているんだよな。親たちのメンタルを健康に保ちつつ、子供をしつけていくのって本当に大変だと思う。

映像化作品も途中まで見てみたのだが、やはり徹生の心理描写が全然足りていない気がしたのと、妻、千佳は小説にはもっと可愛らしさとうちに秘めた弱さや脆さみたいな絶妙なバランス感があった気がする。

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2025年07月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

分人という視点、苦悩の扱い方、そして「死」がもたらす余波に深く揺さぶられた。
分人について、誰かと一緒にいるときの自分と、一人のときの自分って確かに違う。その中には好きな自分もいれば、あまり好きじゃない自分もいる。

本書の中にはすごく哲学的な内容もあり難しい部分があって、そこは斜め読みしてしまった
いつか再読したときには少しでも分かるといいな。

ラストのシーン、光の描写が美しくて切なくて…。
残された家族のことを思うと胸が痛いし、「死ぬことって、自分だけの問題じゃないんだな」と改めて考えさせられた。読後も余韻が残る、深い一冊だった。

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2025年05月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

難しかった。というのも、哲学的な要素が多く、すべての考えを理解し考えさせる内容で難しいと感じた。
作者はエッセイなどでも分人という考えを提唱しているようで、自身の考えをそのまんま物語に持ってきてしまうとはすごいなと思った。
また、死について、遺された側のことを考えると亡くなった側の葛藤もよくわかった
タイトルは完全に主人公目線の意図かと思いきや、遺された側へのメッセージとは思っていなかった。
装丁にも意図があり仕掛けが多い作品。

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2026年05月12日

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