平野啓一郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ速読が流行る中、本書は「スローリーディング」を軸に、小説をどう味わうかを提示している。
印象に残ったのは「述語」の二種類――主語を説明するものと、物語を前進させるもの。これを意識するだけで小説のテンポの違いが見えてくるのは大きな発見だった。
一方で、理論編と実践編のつながりがやや分かりにくく、登場人物が多い小説の攻略法が示されていないのは残念。そこで自分なりに「人物を主語として整理し、述語の役割で物語を動かす人物を見極める」という読み方を提案したい。
小説を論理的に読む試みとして刺激的な一冊。自分なりの読み方を模索するきっかけになった。 -
Posted by ブクログ
やっと読み終わった上巻
ぞわぞわと恐怖の波が押し寄せてくる
はじめから
畳み掛けるように一気に話す崇の言葉に
ちょっと戸惑いつつ
一気に読み進めてきたけれど
頭が理解するのに時間がかかる文章に
自分の理解力のなさを
感じずにはいられないと共に
なんだか違和感を感じた
すべてが夢の中のことのように
何気ない家族の出来事は
どこにでもある
家族の悩みであって
何も珍しいことではない
だからこそかえって
恐怖を感じるような気がする
時に信頼が疑惑に突然かわることがある
その瞬間を
自分の目で見たかのような衝撃
崇と佳枝の関係がいったいどんなものなのか?
母と父の関係は?
少年と両親、同級生との関 -
Posted by ブクログ
ネタバレなにかすごく大きな事件が起きているわけではないのに、母の死に対する朔也の心の描写やAIが発達した世界の様子、なんとなく暗い読感が続いて、読みきるのに時間がかかった、、、
この1冊に様々な問題を取り上げ、社会に提起していることに驚き。
母がいない世界で生きていくには母が必要だった朔也。
時事を学習したり、相手の表情を読み取ったり、最新鋭のAIでまるでそこに生き返ったようなのに、やっぱり本物とは違って朔也の知らない母の気持ちや母の過去、人間関係は反映されないし、母が言わないようなことを言うし、生きていた頃は知らなかった情報を取り込むからそれは母ではない。
母だけど母じゃない。それはやっぱり本物 -
Posted by ブクログ
登場人物の特徴的な部分でもあるが、哲学的な要素と独特な比喩表現が相まって読みづらい部分と、物語として面白いゾクゾクする狂気的な部分が入り混じっていて読み進める速度に山がある…笑
悪魔的な思想の「死」「殺人」において、自分のテリトリーで起きるか、テリトリーの外で起きるかによって考え方が違うという言い分はとても共感できる。
初・平野啓一郎で作家のクセって面白いなぁと俯瞰的に思いながら読む自分もいた。
【あらすじ】
地方都市で妻子と平凡な暮らしを送るサラリーマン沢野良介は、東京に住むエリート公務員の兄・崇と、自分の人生への違和感をネットの匿名日記に残していた。一方、いじめに苦しむ中学生・北崎友 -
Posted by ブクログ
ネタバレ母という、自分にとって一番身近な人を亡くしたとき、私はその事実をどうやって受け止め、その悲しさから抜けられるのだろう。
この本は、主人公・朔也が「母の死」を受け入れることを拒み、AIを使って母ともう一度会話をしながら、また現実を生き続けることを決意する物語だ。
朔也は周りから(母からも)「優しい人」と思われているが、実はそんな清廉な感情ではなく、もっと狡猾で打算的に考えて行動していたのだ、と赤裸々に語っている。
(そういう傲慢でない性格が、朔也の優しさだと思うが)
朔也のあけすけな心の内を読んでいくと、身近な人の死をどう受け止め、自分の人生を投げ捨てずに、未来のことを考えられるようになって -
Posted by ブクログ
20年以上前のエッセイだが、楽しめた。
ソニーのAIBOとか、9.11同時多発テロとか、そんな頃の作品だが、話題の古さよりも、言い回しや説明の仕方、言語を用いて正確にかつできるだけフランクに伝えようとする姿勢が印象的。
「鍵というものは、あのキザギザした複雑な形状に或る種の色気があって、それは聞より明かされてはならない等の錠の内部の秘密を精密になぞったものであるのだが、その錠の秘密こそは、奥に隠された錠に守られるべき秘密と直接に通ずるものであるのだから、鍵の形状は、いわば錠の奥に控える秘密そのものの内から銀った堅固なネガということになる。宝物を収めた箱の鍵であるならば、それは、宝物そのもの