【感想・ネタバレ】日蝕・一月物語のレビュー

あらすじ

錬金術の秘蹟、金色に輝く両性具有者(アンドロギュノス)、崩れゆく中世キリスト教世界を貫く異界の光……。華麗な筆致と壮大な文学的探求で、芥川賞を当時最年少受賞した衝撃のデビュー作「日蝕」。明治三十年の奈良十津川村。蛇毒を逃れ、運命の女に魅入られた青年詩人の胡蝶の夢の如き一瞬を、典雅な文体で描く「一月物語」。閉塞する現代文学を揺るがした二作品を収録し、平成の文学的事件を刻む。

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Posted by ブクログ

少し、今敏の映画作品を思い出した。夢と現実が交互して、混ざり合って、なにがなんだかどっちがどっちだか分からなくなってくる有り様が描かれている。特に一月物語でそのように感じた。
あとは、文体美が凄い。ルビの振り方も使う言葉古くて一般的で無いものばかりで、始めは難しいが、慣れてくると、むしろ文体の滑らかさにびっくりする。こんなに難解語しか無いにも関わらず、頭にダイレクトに映像が浮かぶ。

解説に、一月物語はまるで「能」のようだとあった。目から鱗だった。また日蝕についての解説もとても示唆的で良かった。

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2025年06月04日

Posted by ブクログ

20年ほど前に一度読んで、今回再読。難解な漢字、擬古的と言われる文章、歴史的にも知らないことが多い中世ヨーロッパ、そしてキリスト教。20年経っても、私の知識は然程の進歩はなく、やっぱり難しいわ〜と思いながら読んだ。
だが、両性具有者が登場してから物語にどんどん引き込まれて、日蝕の場面では自分もその場にいるような、そんな感覚に陥るほど物語にのめり込む。こうなってくると、難しい漢字も読みづらい文章もむしろリズムにのって読めてしまう。20年前も同じように日蝕の場面に衝撃を受け、その後なんとなく中世ヨーロッパが気になり出した。だが、衝撃は今回の方が上回った。少しは20年で場面を思い描けるだけの多少の知識が増えたからなのか?
一月物語は初めて読んだ。恥ずかしながら、泉鏡花を読んだことがないが、こんな感じなのだろうか?と思いながら読む。こちらはどこか懐かしい感じのする文章。森鴎外、三島由紀夫に通じる雰囲気の文章かな、なんて思いながらページをめくる。これも途中からドキドキが止まらず、一気に読んだ。平野啓一郎。彼の頭の中は一体どうなっているのか!ガッツリ読書時間を過ごせたことに感謝!

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2024年10月30日

購入済み

『とある魔術』世界の根源の考察

〇聖トマスとはトマス・アクィナスですね。
 宗教と科学、神中心と人中心の両立を
 考えた?
〇もちろん現代人にとっては
 科学的に人造人間を作るとしたら今後かな?
 でも、世界のことわりを知ったら、
 錬金術的に実現していたかもしれない。
〇両性具有者は単に両性を備えるだけでなく、
 善悪とか全てにわたって統合されているようだ。
 世界とか存在そのものか?
〇堕落司祭がもっと大きな堕落から
 堕落的に弱まっていて
 むしろ敬虔な修道僧にも見えるというくだり。
 (カラマーゾフ家の父親?水商売を振興する?)
 托鉢僧が、知的に低俗でも労働している者へ
 引け目を持っていること。
 一般的な宗教的高みに対して
 観察者である語り手は
 堕落や労働ともある意味同列に考え、
 また、錬金術、異教にも
 公平な目を持っている。(混乱かも?)
〇エンターテインメント方面で、
 アニメ『とある魔術の禁書目録』というのが
 あるが、そのエピソードとして、素人が
 魔術を使うことになって
 部屋全体のものの配置に合わせて
 机上に小物を並べるところがある。
 小物と部屋全体が同調する。(風水か?)
 『日蝕』でも村の地図的配置が魔術に
 関係しているようだ。
 司祭が堕落したり、観察者が来ることなど
 起こること全てが真摯な錬金術者の作業
 によって、そうなるようにされたのかもしれない。
〇両性具有者の登場やその後について
 迫真の描写だと思う。引き込まれる。

#ドキドキハラハラ #深い #シュール

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2021年09月09日

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世界観がすごい。読み進めるうちに異世界に連れ込まれるかのよう。大学生のうちにこの文章を書き上げることができる才能に嫉妬。

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2019年04月16日

Posted by ブクログ

すごい文章力!これを20代で書けるのは天才だと思います。一月物語のベースになった場所に行ってみたい。日蝕も翻訳小説みたいで好きでした。

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2024年07月13日

Posted by ブクログ

久々にこんなカチコチの文体に目を通しました いやはやこの本を大学生?の時に書ける平野啓一郎さんに感動しかない 読破出来て良かった

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2022年05月07日

Posted by ブクログ

 ルビなしでは読めない漢字の連なりで、読み続けることができるか不安なままページを進めるうちに、この漢字を含めた表現力に引き釣りこまれていきました。 自分にもう少し、中世キリスト教の基礎知識があったらなぁとも思いました。
 科学ではまだ解き明かされない領域の広いころを舞台にしているて、この「日蝕」も「一月物語」も死を直面にした刹那の輝きに神を感じさせられる。
 「一月物語」では泉鏡花の高野聖を思い出していました。夢と現の境界線の甘さ、古典的な味わいがある。

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2012年12月16日

Posted by ブクログ

表面的には、硬派な文体を取っている。それでも、どこか暴風のような乱流も感じる。それはまるで、本質そのものを知ってしまったが、若さゆえに、その非情な感情が過剰な顕示欲に結晶化しているような感触だ。確かに硬派な清閑さはあるが、その裡で燃え盛る狂気にも近い情動を感じる。しかもその光景は、無声映画を見るように、静かだ。そこに作者自身の強烈な生命力を感じた。

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2012年03月02日

Posted by ブクログ

著者の作品は初めて読んだが、独特の世界観に引き込まれた。
文章や単語の使い方の分かりにくさはあるにしても、それを上回る魅力たっぷりの作品だった。
読み応えのありそうな著作が多々ありそうなので、今後も楽しめそうだ。

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2011年11月16日

Posted by ブクログ

『日蝕』も『一月物語』も単行本で読みました。
読みづらいとかいう意見はよく聞きましたが、大学時代に、お前の頭の中は別世界か!ってつっこみたくなる哲学書を読まされてばかりだったので、それに比べたら読みやすかったです。漢字もわざと難しいものを用いてますが、文脈でおおよそ読めます。
 逆にこんな漢字があるんだと新しい発見もあったりして、別の楽しみもあります。

 

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2017年08月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

〈日蝕〉
例えば、昼は夜があるからこそ存在する。
生は死の訪れによって完結し「生涯」となる。
物事は、自らと対をなすものによって定まるようだ。どちらか一方だけでは不完全なのだろう。
だとすれば、男と女を兼備する存在は、完全性を体現したはずだ。しかし社会はこれを焚刑に処した。何やら示唆的であり、とても痛ましい。

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2025年07月12日

Posted by ブクログ

芥川賞受賞作の「日蝕」よりも、もうひとつの「一月物語」の方がストーリーとしては面白かった。

高子を貰い受けた坊主が山奥の庵で実際には何を行ったのかは、はっきりとは書いてないが、流れ的には、光源氏的生臭坊主なのかと思ってしまった。

前半は、夏目漱石の「草枕」と雰囲気が似ていた。文体は当時読もうとして苦しんだ明治文語体風だし、場面設定も似た感じだし。

二篇ともルビだらけなので、一頁あたり15行と空間がとってあって、その点は配慮があるつくりだった。

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2024年10月08日

Posted by ブクログ

著者のデビュー作である『日蝕』と、第二作『一月物語』を収録しています。

『日蝕』は、ルネサンス期のリヨンを舞台に、トマス主義者である一人の青年僧が、ヘルメス主義にもとづいて錬金術をおこなっているという老人のもとを訪ね、奇怪な出来事を体験する話。『一月物語』は、明治30年の奈良県十津川村を訪れた青年が、夢とも現実ともわからないなかで美女と出会い、その謎めいた魅力に惹かれていく話。

両作品ともに、晦渋な文体とシンプルなストーリー・ラインがアンバランスさを感じさせます。デビュー直後には「三島由紀夫の再来」という煽り文句と、何人かの批評家たちの辛辣な評価に取り巻かれていました。なかには「暴走族の落書き」といったようなことばもあったように記憶しています。

ただ、その後の著者の作品を知ることのできる現在から振り返ってみると、このころから著者は一貫して、小説でなしうることはいったいなにかという問題に持続的に取り組んでいることがわかります。そうしたものとして見れば、本書も一つの試みとして興味深く読めるように思います。

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2018年10月24日

Posted by ブクログ

「日蝕」
「アンドロギュヌスの正体は何か」
「ジャンの父親は本当にユスタスなのか」等
物語の横軸に、いくつかの謎を残す作品で
深読みの余地は多く、それが読後の余韻にもつながっている
しかし
錬金術師の捕縛に際し
逃げ出すことしかできなかったにもかかわらず
「自分自身こそアンドロギュヌスだったのかもしれない」
などとのたまう主人公の
奇妙な図々しさには違和感がある
「自分は、他者の死によって自我に目覚めたジャンと同じだ」
そんなふうに言うならわかる気もするのだけど…

「一月物語」
北村透谷をモデルにしたと思しき主人公が
「胡蝶の夢」をさまようというお話
北村透谷というのは、明治日本を生きた詩人で
近代日本文学の確立に深くかかわったと言われる
よく知られるのは、「恋愛至上主義」を日本にはじめて打ち立てたこと
これにより、すべての男子は「白馬の王子」になる資格を得たのであり
またすべての女子は「囚われの姫」たりうる存在になったのだ
しかし同時にこれは、「心中」を肯定する理屈にもなった
「ストーカー行為」を正当化する理屈にもなった
さらには
ナショナリズムのための「殉死」を肯定しうるものでもあったわけだが
そもそもそいつは文明開化にかこつけて
てめえのエゴと性欲を言い訳してるだけじゃないのかい
…という批判は、検討されてしかるべきだろう
ちなみに「恋愛はただ性欲の詩的表現」と言ったのは芥川龍之介だったが
それはさておき
この作品じたいは、端正な構造にまとまっていて
なかなか読ませるものだ
美醜をめぐってただよう自意識も
この段階ではニヒリズムの態に保たれており
さほど嫌味ではない

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2014年12月01日

Posted by ブクログ

文庫本ながらサイン本。出だしから難解で、長いことほってあり、観念して、お風呂の読書タイムに持ち込んだ。何とか読み終えたが、難解この上なく、これがデヴュー作とは驚き。サインをもらうとき、著者のお姉さまが私と同名だと聞いた、その一点にのみ、親しみを感じます。繰り返し。難解。

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2012年12月25日

Posted by ブクログ

デビュー作の「日蝕」で三島由紀夫の再来と言われたとかなんとか、確かに三島由紀夫っぽさを感じる作品だった。小難しい文書だけど、意外と読みやすく話の内容も意外とわかりやすい。個人的には「一月物語」の方が好き。主人公が現実と夢と幻の間を彷徨っている感覚が凄いと思った。

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2012年09月09日

Posted by ブクログ

 以前読んだ「ドーン」の時にも感じたが、言葉の使い方が面白い。
 幻想的な物語。
 個人的には一月物語が読みやすいと感じた。

 言葉の中に、上手く自分の気配を隠していて、非常に制御されている文体だなと思う。うかつに真似したら、中2病この上ないだろう。

 文庫とはいえ、解説が3つも入っているあたりに、文壇の期待のほどが伺える。あまり見たことがないので驚いた。

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2011年03月07日

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