平野啓一郎のレビュー一覧
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とても、きれいな恋愛小説。
それは薄っぺらいとかいう意味ではなく、嫉妬や執着心や憎悪や混沌、醜悪…そういった人の卑しい部分を描きつつ、それさえも凌駕する美しさが混在している…ということ。谷崎潤一郎氏の小説やラヴェルの曲、最後はパリの街並み…とまるで映画を見ているかのような感覚で読み進められた。文字を読んでいるのに、それとは別の視覚や聴覚を刺激されるような感覚は、なんかノスタルジーとワクワクを同時に味わうような不思議さでもあったなぁ…。
平野さんの提唱する『分人』の考えもちりばめられ、家族との顔、仕事の顔、恋人との顔、昔の恋人との顔…と様々な関わりに悩みモヤモヤを抱えて生きる様には共感を覚えた。 -
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ネタバレ作家とITの中枢にいる、まったく出自の違う二人による、インターネット時代の社会論、人間論。二人の考え方の違いがわりとそのまま対談で描かれていて、その緊張感が面白い。ザックリ言うと、楽観主義と悲観主義。梅田さんの言葉を借りれば、同時代や近未来に興味があるか、過去や歴史に興味があるか、ということか。僕はどっちかと言うと平野さん派なんだけど、印象に残ったのがブログ語りなどが全盛の時代に、「自分を語ることは自分を知ることではあるが、同時に自分を誤解することでもある」という一節。
自分の言葉が通じるかどうか、が知らないうちに「多くの人に認められるような語り」に変化したりすることはありそうなことだな、と -
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芥川賞作家・平野啓一郎のエッセイ集。
月刊誌「Voice」連載当時は、毎月、編集部からトピックス的な写真が
20~30枚送られてきて、平野氏が気になったものを直感的に選び、
思うままに書くというスタイルをとっていたらしい。
印象的だったのは「錠と鍵とを巡るイメージ」の章。
中国からのピッキング集団が大きな社会問題化していることを受け
日本人のセキュリティ意識を論考してくかと思いきや、
論旨は思わぬ方向に進む。
同氏が以前、ノルマンディのベネディクト会博物館を訪れた際、
膨大な数の「鍵」のコレクションに仰天した話を持ち出す。
これらの鍵は当時の修道士達の労働の産物で、
いずれも「複雑な -
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梅田望夫と平野啓一郎の対談
梅田氏の『ウェブ進化論』により、
ウェブの現状がどうなっているのかを明らかにした業績は大きい。
はてなの近藤社長と同世代の小説家平野啓一郎氏が、対談集。
●ウェブの世界で生活すると言うこと・・・
それが、自分の分身ともなっていること。
バーチャルな世界
●匿名・・・という特殊な世界。
(中国のチャットをみてみると同じように匿名が多い。
匿名にするのは、東洋人の気質かもしれない。
ブログの5つのパターン
●iPOD、グーグル、ユーチューブ・・・などの新しい動き。
情報に対する能動性
私は、ポッドキャストにはまってしまった。
音で、情報を仕入れていく・・・ -
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ネタバレショパンとドラクロワの友情を中心に描かれる彼らを取り巻く人間関係と、芸術家としての創作の日々。
いきなりショパンの葬儀の場面から物語は始まる。既にして複雑な人間関係が見て取れる。時を遡って、晩年のショパンとドラクロアの係わり合いを中心に物語は進む。愛人との関係が終わりに近づいたショパン。円熟期を迎え、これから更なる大作に挑もうとするドラクロア。
上巻では、芸術批評の場面が多く、理解できないところも多かったのは事実。ただ、もともと第一部として1冊の本だったことを考えると、前半は時代背景や人物像を紹介するために割かれたと考えても致し方ないところでしょう。 -
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なかなかページが進まずに、読み終えるのに2週間もかかってしまった。
早く続きを読みたいとずっと思っているのに、時間をみつけ、いざこの本を手にすると、何だか再び表紙を捲るのが躊躇われてしまう。その繰り返しだった。
しかし長い物語に飽きてしまったのではない。断じて違う。
続きを読むのが億劫なのではなく、恐ろしいのだ。
全てを読み終えるまで、もう、ここから出られなくなってしまうのではないか、という気がして。
上巻を読み終えた時に、「まるで一つの荘厳な神殿のようだ」という感想を持った。
それならば、その奥に座する神に謁見するにも辞去するにも、相応の作法と覚悟が必要なのは自明の理だ。
物語は一つの終 -
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全4巻から成る大作の、一冊目。
この巻は主人公たるショパンとドラクロワの人物像、彼らの日常と交流の様子、その周辺人物と舞台である19世紀のパリの街並、といった背景の描写が中心となっていて、何か重要な事件が起きるわけではない。だから正直、重苦しい語り口とも相俟って、読みやすいとは言い難い。
しかし300ページも使って語られるほどに作り込まれた人物像、舞台背景はとても魅力的で、念入りに推敲されたのであろう重厚な文体はまるで、一つの荘厳な建築物を思わせる。
読み進めるにつれて、冒頭から立ち込めていた「死」の匂いが次第に濃くなり、『葬送』という題名の意図するところが見え始めてきたところ。
繊細なピア