平野啓一郎のレビュー一覧
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この著者の文章は不思議である。確かに表現としては難解である、が、ギリギリのラインで内容がわかる。一たび内容がわかると難解な文章が、著者の感性や考えを実に的確に表現している事に気づく。きっと人の想像や感性を文章に表すと、必然的にとても難解なものになるのかもしれないしそれが文学の使命でもある。平野啓一郎は文学というものにかなり近い人物かもしれない。ところで内容は、どこかであったような、どこにでもあるような男と女の痴情のもつれ。ややアブノーマルか。逆算的に事件の起こるあらましを女の側から描く。ひたすらローな空気が文章中に漂う、そのなかで性にたいする一種独特な視点が面白かった。
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「ウェブ人間論」とは、紹介した新進気鋭の芥川賞作家・平野啓一郎氏と、「ウェブ進化論」の著者・梅田望夫氏との対談をまとめたもの。両者に共通した関心事である「ウェブ」をテーマにしつつ、とりわけ「ウェブ人間」に焦点を当てて議論が展開する。平野氏が前書きを書き、彼自らがこの対談を提案して実現したことを認めている。
全体的な流れとしては、小説家、表現者としての平野氏が様々な疑問をぶつけ、ウェブ専門家の梅田氏がそれに答えていくというものだ。
デジタルブック等の出現における著作権の問題についても、両者ともに重大な関心を持っている。ことに平野氏においては身に降りかかる切実な問題として捉えていることがわかる -
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ショパン、ドラクロワをはじめジョルジュ・サンドなど後世に名を残した芸術家たちの日常を垣間見ている気分で、読んでいて楽しいです。結構下世話な話題で盛り上がっていたりするし、ドラクロワはしよっちゅう批評家や他の画家の悪口を言っているし。
単純に「天使のような」(と作中でさんざん絶賛されている)美しい金髪のショパンと、自画像を見ても男前なドラクロワが親しく話をしているところは想像するだけでテンションが上がる。
ショパンとドラクロワは篤い友情で結ばれているのですが、ドラクロワがショパンの音楽をも深く尊敬しているのに対してショパンはドラクロワの絵を心からは好いておらず、「自分が彼の音楽を愛するほ -
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話題の大型新進作家の対談集。これと併せてエッセー集もあるとのこと。
始めに1999年に対談した日野啓三はその3年後には亡くなっている。以後対談したメンバーは2007年の近藤淳也まで13人。日野啓三,古井由吉と島田雅彦,山折哲雄,菅野昭正,鐘下辰男,瀬戸内寂聴,高橋源一郎,横尾忠則,キム・ヨンス,青山真治,大江健三郎,近藤淳也。
それぞれ興味深く、平野が主人役で話を回していることが多いように見えたが,ハッキリと平野がゲストのような感じになっていたのは、文芸評論家の菅野昭正との対談。これは菅野の仕掛けたコースで、平野が力一杯語るという具合で、その分大変判りやすかった。もっとも平野の小説を一 -
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平野啓一郎が疑問を投げかけ、梅田望夫が適当にいなすというスタイルで進む対談。
3年以上前に書かれた本であるが、平野の懐疑心と梅田の示す方向性とも、なかなか的確に現在を予測していることにまず感心する。
印象的なのは、趣味の島宇宙にこもることを「現実は結局何も変わらないまま放置されている」と辛辣な眼差しを向ける平野に対し、梅田が「自分としては結構いいなと思ってるんですよ」と呑気に肯定する箇所でありました。
その両者ともに違和感を感じてしまうのは、「リアル」のとらえ方によるものでしょう。島宇宙を現実からの逃避と見るか、現実の延長と見るか、視点は違えど「リアル」の基軸は同じようです。けど例えば