平野啓一郎のレビュー一覧
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ネタバレ作家とITの中枢にいる、まったく出自の違う二人による、インターネット時代の社会論、人間論。二人の考え方の違いがわりとそのまま対談で描かれていて、その緊張感が面白い。ザックリ言うと、楽観主義と悲観主義。梅田さんの言葉を借りれば、同時代や近未来に興味があるか、過去や歴史に興味があるか、ということか。僕はどっちかと言うと平野さん派なんだけど、印象に残ったのがブログ語りなどが全盛の時代に、「自分を語ることは自分を知ることではあるが、同時に自分を誤解することでもある」という一節。
自分の言葉が通じるかどうか、が知らないうちに「多くの人に認められるような語り」に変化したりすることはありそうなことだな、と。「語ること」は安易にはできないな、と普段良く思っていることを再確認。で、「思ってて語らないこと」をどう記憶にとどめるか、という問題が出てきて・・・堂々巡り・・・ -
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芥川賞作家・平野啓一郎のエッセイ集。
月刊誌「Voice」連載当時は、毎月、編集部からトピックス的な写真が
20~30枚送られてきて、平野氏が気になったものを直感的に選び、
思うままに書くというスタイルをとっていたらしい。
印象的だったのは「錠と鍵とを巡るイメージ」の章。
中国からのピッキング集団が大きな社会問題化していることを受け
日本人のセキュリティ意識を論考してくかと思いきや、
論旨は思わぬ方向に進む。
同氏が以前、ノルマンディのベネディクト会博物館を訪れた際、
膨大な数の「鍵」のコレクションに仰天した話を持ち出す。
これらの鍵は当時の修道士達の労働の産物で、
いずれも「複雑な細工たるや、殆ど呪文の如き印象を与えるものばかりであり、
しかも、どれもが競い合うかのようにしてその厳めしいほどの
頑強さを誇示し合っている」。
これを同氏は日々の労働に勤勉だった修道士達の
「抑圧された欲望の恐るべき化身」のように見受けた。
少し長いが引用すると。
「彼らの作り上げた鍵の迫力は、まさしく彼らのファロスそのもののような
魁偉な軸と、そこに膨らんだ不在の対象への屈折した夢想の表現であり
且つ混乱に満ちた複雑な禁止の印でもある歯との、強引な統一にこそあり、
その沈静化された火照りの暗く重々しい佇まいは、彼らの敬虔さの
苦悶そのもののようであった」
時に、衒学的と非難の対象となる同氏の深い教養と
小説家ならではの視座が融合された随筆は興味深く、
しかも、このエッセイが書かれたのがどうやら26~28歳くらいで、
更に実は自分と同い年であることを考量に入れた時の、
同氏への驚愕に似た敬意と自分への嘆息が入り混じって実に味わい深い(笑)。 -
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梅田望夫と平野啓一郎の対談
梅田氏の『ウェブ進化論』により、
ウェブの現状がどうなっているのかを明らかにした業績は大きい。
はてなの近藤社長と同世代の小説家平野啓一郎氏が、対談集。
●ウェブの世界で生活すると言うこと・・・
それが、自分の分身ともなっていること。
バーチャルな世界
●匿名・・・という特殊な世界。
(中国のチャットをみてみると同じように匿名が多い。
匿名にするのは、東洋人の気質かもしれない。
ブログの5つのパターン
●iPOD、グーグル、ユーチューブ・・・などの新しい動き。
情報に対する能動性
私は、ポッドキャストにはまってしまった。
音で、情報を仕入れていく・・・ということの魅力。
繰り返し同じことを聞くというのもまた新しい発見がある。
●人間は、ネットによってどう進化(変化)するのか?
希薄で濃密なニンゲン関係
自分の変容
ウェブ人間論は
ウェブに対して懐疑的でウェブ上の人間不信におちいった経験と
ウェブのよって 本がなくなるのではないかとおもっている・・・
平野氏に対して、
ウェブに対してポジティブ(楽観的)な梅田氏が・・・
実に明快に その限界と可能性を語っていることに興味が深い。
時代が変わるのは、人間が変わっていくことだということを
つくづく理解をした。
ウェブの進化によって、生れ落ちた時期によって
違った意味を持ってくるというのに・・・
なんとなく、ニンゲンの連綿としたたくましさを感じた。 -
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ネタバレショパンとドラクロワの友情を中心に描かれる彼らを取り巻く人間関係と、芸術家としての創作の日々。
いきなりショパンの葬儀の場面から物語は始まる。既にして複雑な人間関係が見て取れる。時を遡って、晩年のショパンとドラクロアの係わり合いを中心に物語は進む。愛人との関係が終わりに近づいたショパン。円熟期を迎え、これから更なる大作に挑もうとするドラクロア。
上巻では、芸術批評の場面が多く、理解できないところも多かったのは事実。ただ、もともと第一部として1冊の本だったことを考えると、前半は時代背景や人物像を紹介するために割かれたと考えても致し方ないところでしょう。 -
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なかなかページが進まずに、読み終えるのに2週間もかかってしまった。
早く続きを読みたいとずっと思っているのに、時間をみつけ、いざこの本を手にすると、何だか再び表紙を捲るのが躊躇われてしまう。その繰り返しだった。
しかし長い物語に飽きてしまったのではない。断じて違う。
続きを読むのが億劫なのではなく、恐ろしいのだ。
全てを読み終えるまで、もう、ここから出られなくなってしまうのではないか、という気がして。
上巻を読み終えた時に、「まるで一つの荘厳な神殿のようだ」という感想を持った。
それならば、その奥に座する神に謁見するにも辞去するにも、相応の作法と覚悟が必要なのは自明の理だ。
物語は一つの終焉を迎えた。この小説の内に潜む音楽の神と、絵画の神と、それから物語の神に、更に続くであろう大いなる時間を捧げたい。 -
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全4巻から成る大作の、一冊目。
この巻は主人公たるショパンとドラクロワの人物像、彼らの日常と交流の様子、その周辺人物と舞台である19世紀のパリの街並、といった背景の描写が中心となっていて、何か重要な事件が起きるわけではない。だから正直、重苦しい語り口とも相俟って、読みやすいとは言い難い。
しかし300ページも使って語られるほどに作り込まれた人物像、舞台背景はとても魅力的で、念入りに推敲されたのであろう重厚な文体はまるで、一つの荘厳な建築物を思わせる。
読み進めるにつれて、冒頭から立ち込めていた「死」の匂いが次第に濃くなり、『葬送』という題名の意図するところが見え始めてきたところ。
繊細なピアノの音色が流れ、勇ましくも思索に満ちた絵画が飾られた、この聖堂のような大作を、最後まで、心行くまで堪能したいと思う。 -
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ここ10〜20年の間に一般人の生活を画期的に変えた発明というのは、インターネットと携帯電話ぐらいじゃないだろうか。テクノロジーの革命が以前と比べ鈍化したか、もしくはその逆かは正直全然わからないんだけど、少なくとも我々の生活様式を大幅に変えるような技術革新は少なくなってきたと言っていいのだろうと思う。しかし、21歳の自分がそれでも下の世代と感じるギャップ。流行とかじゃなくて思考様式や常識のギャップ。それはほとんどこれらの新しいコミュニケーションツールの存在が関与しているように思う。
この本の著者(対談本なので著者と言っていいのかわからないけれど)は二人とも知らない人だったんだけれども、梅田さんっていうのは「はてな」の取締役の人なのね。少し身近に感じるわ。でも、取締役って何をしてる人なんですか。わかりません。