平野啓一郎のレビュー一覧
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あらゆるジャンルのものを同時に読む超並列読書術。最後まで通して読む必要はなく内容さえも覚えていなくてよい。読時の衝撃や感動は、自分の中に必ず精神的な組み替えを発生させ、将来必ずアイデアをひねり出すとき、血肉となって影響する。加えてこの読書術は頭の切り替えを速くするとともに考え方を柔軟にする。ありとあらゆる場所に本を置いておき、ちょっとした時間を利用して読書に充てる。どんな忙しい人でも1日に1時間は容易に確保できる。短時間の読書はかえって集中力が身につく。五人の賢人がそれぞれのユニークな読書術を披露。多読もあれば精読もある。自分にあった読書術を見つけ実践すればよい。
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Posted by ブクログ
「日蝕」
「アンドロギュヌスの正体は何か」
「ジャンの父親は本当にユスタスなのか」等
物語の横軸に、いくつかの謎を残す作品で
深読みの余地は多く、それが読後の余韻にもつながっている
しかし
錬金術師の捕縛に際し
逃げ出すことしかできなかったにもかかわらず
「自分自身こそアンドロギュヌスだったのかもしれない」
などとのたまう主人公の
奇妙な図々しさには違和感がある
「自分は、他者の死によって自我に目覚めたジャンと同じだ」
そんなふうに言うならわかる気もするのだけど…
「一月物語」
北村透谷をモデルにしたと思しき主人公が
「胡蝶の夢」をさまようというお話
北村透谷というのは、明治日本を生きた詩人 -
Posted by ブクログ
ネタバレ芥川賞を史上最年少で受賞したあの平野啓一郎のエッセイと聞いて手にとってみたが、期待はずれ。なるほどと思う考察もあったが、素人に毛が生えた程度。
雑誌に発表したものなのでまとまりがないのは致し方ないとしても、自作の宣伝のために文章を書いている感じがしてならない。インタビューも豊富な文学的知識を披露するが、社会を分析するにいささか思考が甘い。
この人はあまり人間観察ができない人なのだろうか。
文語体で話題をさらったあの名作からすでに二十年近く経つも、平常文でのエッセイはあまり練られていない。骨子となる「分人主義」なるものについても、個々人が分けられない個性ではなく、多様な顔をもつ、という単純な -
Posted by ブクログ
とても、きれいな恋愛小説。
それは薄っぺらいとかいう意味ではなく、嫉妬や執着心や憎悪や混沌、醜悪…そういった人の卑しい部分を描きつつ、それさえも凌駕する美しさが混在している…ということ。谷崎潤一郎氏の小説やラヴェルの曲、最後はパリの街並み…とまるで映画を見ているかのような感覚で読み進められた。文字を読んでいるのに、それとは別の視覚や聴覚を刺激されるような感覚は、なんかノスタルジーとワクワクを同時に味わうような不思議さでもあったなぁ…。
平野さんの提唱する『分人』の考えもちりばめられ、家族との顔、仕事の顔、恋人との顔、昔の恋人との顔…と様々な関わりに悩みモヤモヤを抱えて生きる様には共感を覚えた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ作家とITの中枢にいる、まったく出自の違う二人による、インターネット時代の社会論、人間論。二人の考え方の違いがわりとそのまま対談で描かれていて、その緊張感が面白い。ザックリ言うと、楽観主義と悲観主義。梅田さんの言葉を借りれば、同時代や近未来に興味があるか、過去や歴史に興味があるか、ということか。僕はどっちかと言うと平野さん派なんだけど、印象に残ったのがブログ語りなどが全盛の時代に、「自分を語ることは自分を知ることではあるが、同時に自分を誤解することでもある」という一節。
自分の言葉が通じるかどうか、が知らないうちに「多くの人に認められるような語り」に変化したりすることはありそうなことだな、と