【感想・ネタバレ】決壊(下)のレビュー

あらすじ

戦慄のバラバラ殺人──汚れた言葉とともに全国で発見される沢野良介の四肢に、生きる者たちはあらゆる感情を奪われ立ちすくむ。悲劇はネットとマスコミ経由で人々に拡散し、一転兄の崇を被疑者にする。追い詰められる崇。そして、同時多発テロの爆音が東京を覆うなか、「悪魔」がその姿を現した! 2000年代日本の罪と赦しを問う、平野文学の集大成。芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。

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Posted by ブクログ

初、平野作品。長編の上下巻で圧倒的な読み応え。
ストーリー展開よりも人間の思想、行動に重点が置かれ、純文学的な描写が難しいが今まで読んだことのないようなもので新鮮だった。夢に出てくるだろうな…と思ったら本当にでてきて恐ろしかった。

登場人物が次々と壊れていく。
読んでよかったけど、読まなければ良かったとも思えた。
読むのに体力がいります。晴れた日の、日中に読むことをオススメします。

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2020年06月01日

Posted by ブクログ

主な感想は上巻に書きました。

いろいろな終わらせ方の可能性があったと思うが、著者があれを選んだ理由についてはじっくり考えてみたい。

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2018年12月24日

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ネタバレ

豊富な表現と筆力に引き込まれ、上下巻一気に読んでしまいました。読後は徒労感と悲しみが心を蝕ばみます。重くのしかかる小説です。

名も無い他人の底知れない悪意に恐怖しました。カフェで読み終えましたが、読後周りにいる他人を無性に怖く感じました。冷淡な社会に対して、信頼感をもてずにいる自分と、自分も他人から見ればその冷淡な社会そのものであるという事実に震えます。良介の最後の叫びには涙が止まりませんでした。

「空白を満たしなさい」「マチネの終わりに」に続いて読んだ平野啓一郎さんの作品でしたが、分人主義の鱗片がこの作品からも読み取れました。自分が知っていると思っている人が本当はどんな人間なのか、それは誰にもその人自身にも分からない。その決して埋められない距離に悲しさと救いの両方がないまぜになった感情をおぼえます。

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2018年03月26日

Posted by ブクログ

再読。

私が平野啓一郎先生の本に嵌る切っ掛けとなった本。

2011年12月、これまで痛快娯楽小説しか読んでこなかった私が、単なる推理小説だと思い購入。

読み終わると共に放心状態に陥った。
感想は特に記録していなかったのだが、今でも覚えているのが、「この作者、天才!?」ということだけ。

それから、「ドーン」「透明な迷宮」「本の読み方」「葬送」「顔のない裸体たち」「かたちだけの愛」「マチネの終わりに」「あなたが、いなかった、あなた」と読んでここに来て再読。

初めて読んだ時は、難しい小説だなというのが正直な感想だったのだが、再読だと随分変わる。

「葬送」に比べるとはるかに読み易い。
当時も思ったことだが、これはとても深い本だと思う。このたった2冊の中に、ありとあらゆる世界が詰め込まれている。

エリート公務員とその家族、ネット、少年犯罪、被害者家族、加害者家族、あらゆる側面から緻密に物語が紡がれている。

感想は書ききれない程頭に溢れてくるのだが、文章にするのはとても難しい。

一度手に取って読んでみてほしい。

平野啓一郎先生の本は、読む順番を間違ってしまうと、これは無理だとその後諦めてしまう可能性があるが、是非この本を先に手に取ってほしいと私は思う。

私のような、娯楽小説しか読まない人間にも十分に染みたから。

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2016年08月28日

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非常に陰惨。殺人描写だけではなくて、犯罪被害者や加害者家族を取り巻く状況が全てグロテスクに感じた。
著者は本当に現代の日本社会のありようを、ものすごくシビアにみていて、その通りに写し込んである。
読むのが辛くなるような展開なうえに救いがない。
崇を誰も救えない、その状況がまた居た堪れない。

特にリアルに感じたのは、義理の妹の態度だ。
自分の言葉によって崇を冤罪一歩手前に追い込んだのにも関わらず、自責の念はあまり感じられない。
他に犯人が見つかっても、心の中ではまだどこかで疑っているようで、子どもが抱き抱えられたとき、明らかに触ってほしくない、と思っているように描写されていた。

一度疑われてしまうと、その汚点は、消しても消しても薄い染みが残り、みんなその目で見る。
本人に咎がなくても、一度汚物として扱われたら、元のようにはけして扱ってくれない。現実社会もきっとそうだし、似たようなことはあらゆることで起こっている。本当にゾッとした。

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2025年11月03日

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ネタバレ

最後まで読者をぞくぞくさせる感じ。登場人物の些細な仕草や言葉遣い。

最後に崇が持ってきた黒いバッグ、後で改めて中身見たのかな。怖すぎる。

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2025年08月01日

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長編だけどドンドン引き込まれてしまった。
平野ワールド、報われない思い、バッドエンド、分人、破壊、決壊
崇がいたたまれない

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2025年03月23日

Posted by ブクログ

前編あわせて久しぶりの長編小説。
ラストに行くにつれ不気味な展開になっていき、鳥肌がたつような寒気がした。
それでもやっぱり、どっぷり小説にハマるのは楽しい。
平野啓一郎の小説は、「マチネの終わり」のように文章の綺麗さ、読みごたえが好きだが、この小説はどちらかというと小難しい言い回しが多く、理解が難しいところもあった。
でもやはり、色々考えさせられる。
信じるというのは難しい。

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2024年11月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

⚫︎受け取ったメッセージ
信じることの難しさ

⚫︎あらすじ(本概要より転載)
戦慄のバラバラ殺人──汚れた言葉とともに全国で発見される沢野良介の四肢に、生きる者たちはあらゆる感情を奪われ立ちすくむ。悲劇はネットとマスコミ経由で人々に拡散し、一転兄の崇を被疑者にする。追い詰められる崇。そして、同時多発テロの爆音が東京を覆うなか、「悪魔」がその姿を現した! 2000年代日本の罪と赦しを問う、平野文学の集大成。芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。

⚫︎感想(ネタバレ)
一度疑い始めると、とめどなく押し寄せる不信感。
宗の完璧さは高知能は、平均的な平凡を生きるには、解像度が高すぎて難しいのだろう。それゆえに宗は誰も信じられないのだろうか、、、人を信じることの難しさと折り合いの付け方について考える一冊。

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2023年11月19日

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言葉を重ねると悪魔はどんどん人間臭くなっていったなという印象。結局、最後までどのキャラクターも好きにはなれなかったし、物語の終わり方もモヤッとするものだった。それでも、「あー、こういう正義を振りかざす奴いるよな」とか「こういう境遇なら、こうなっちゃうかもな」とか、感じることは多かった。特に、「なぜ人を殺してはダメなのか」という討論会の内容は興味深かった。ある程度、共通の価値観(認識)を持たなければ、『なぜ?』に回答を示すことは難しい。悪魔の紡ぐ言葉がどうしても自己満足にしか聞こえないのは、私と悪魔の間の価値観(認識)が乖離しすぎているからだと思う。だから、悪魔が発する言葉は自己を満たすだけの、人間臭いものに聞こえてしまう。

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2023年04月30日

Posted by ブクログ

面白くて…というわけではなく、先を読まざるを得ない様な感じで、結局一気読み(^◇^;)

難しいし、よくわからなくて読み飛ばした部分もあるんだけど、妙に共感しちゃう部分もあったり。

あー、芥川賞作家らしいわー、文学だわー、ところでいつ殺されるん?と思いながら読んでたんだけど、いやー、重くて、重くて…。

結末もね、衝撃的でしたわ、確かに。救いが無くて、ドーンと気分が沈んだわのさ…。

まぁ、いろいろ考えさせられる、ってのはあって、普段ボーッと生きてる私でも、たまにはね、という感じで良かったといえば良かったけど、あんまり読みたい作家さんではないな、うん。

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2023年03月27日

Posted by ブクログ

ミステリー的要素があり内容も凄惨。個人的にはあまり好きではないジャンル。ただし平野啓一郎だけあってただのミステリーにはない深さがある。重く残る小説だが評価が難しい。ただ子供には読ませたくない。

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2022年09月17日

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ネット社会、少年犯罪、犯罪被害者、マスコミ報道、罪、病と責任、取り調べ、子との関わり、格差…… 衝撃的な事件をもとに現代が直面する様々な問題を炙り出す。
赦しは赦す側のためにある
共感でつながる現代人
読み進めていくにつれ、自分の心の闇に触れ、それを決して否定できないことに、また恐ろしさを感じる。

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2020年09月27日

Posted by ブクログ

怒涛の展開で、下巻は息もつかせぬ感じだったような気もします。ドミノ倒しのように、悪意とそれに関わった警察・マスコミ・人がさらに人を壊していくということに圧倒されました。

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2020年09月04日

Posted by ブクログ

決壊。
社会全体のことなのか、沢野家のことなのか、崇なことなのか、、、全て含むのか。
すごく考えることと、感じることを絶え間なくさせられる本で、そして終わりも、途中から予想はつくものの救いがなく、一言「疲れた」。
私は、どうも哲学的なことを、論理的に(?)的確に(?)言語化することが苦手なので、読後に改めて皆さんのレビューを拝見して、自分が感じたことが、整理出来たような状況で。なので、分人と言う平野さんの考え方とか、赦すと言うことについてとか、その辺りはここには書かない(書けない(笑))が。
ネット社会の孕む怖さ・危険性とか、警察の捜査のあり方とか、死刑制度の是非とか、現代の多くの問題を描きつつも、それらを表面的になぞり提議していると言うよりも、結局、人の内なる部分の描写にこそ引き込まれていく、平野さんらしい作品だと感じた。

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2020年03月20日

Posted by ブクログ

ひたすらハード。ほとんどの登場人物が砂像のようにジワジワ壊れてゆくその先に希望はない。
主人公の崇の言ってることが難しくて理解できず字面だけ追った頁もあった。なんだか頭が冷静になってしまい「作者が考えてることを言わせてるだけ」じゃないかと思ったり…
読みごたえはある。随所に見られる純文学的表現はさすが。共感できるリアリティ。不気味なまでのリアリティ。
凄い作品だけど読後感は重い。

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2019年11月25日

Posted by ブクログ

京都で崇と会ったあと、良介は猟奇的な殺人事件に巻き込まれてしまいます。さらに警察は、良介とのあいだに心理的な確執のあった崇が犯人ではないかと疑いをいだくことになります。警察の取り調べとマスコミの報道に加えて、家族や親しい人びととの関係が激しく揺さぶられた崇は、理知的な振る舞いによって接点を結んでいた現実との関係にヒビが生まれ、追いつめられます。

その後、友哉が安由実を殺害する事件によって、崇への疑いは晴れますが、事件は「悪魔」による無差別テロへにつながっていくことになります。

上巻とは打って変わってスピーディな物語の展開になり、一気に読んでしまいました。ただ、現代の社会のあり方のほうに焦点が絞られて、上巻で準備されたさまざまな展開の可能性が多少狭められてしまったような印象もあります。とはいえ、これも現実と物語が距離をうしなって接合してしまう問題に、小説のほうからアプローチを仕掛ける試みとして受け取るべきなのかもしれません。

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2018年11月12日

Posted by ブクログ

非常に重い内容.赦すとは何か?強く考えさせれれる.この小説で提示している問題は,答えがでる事柄ではないと認識しつつ,自分なりに逃げずに考えると言うことが大事.著者はほぼ同い年.

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2018年10月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

深い心の闇。暗く渦巻く謎。
未成年者の犯罪。ネットを介した脅威。警察の横暴。
現実にありそうな恐怖。
それらを奥深く描いている作品。
犯人は主人公??と思わせるストーリー。ラストは辛いものでした。
難しい会話が続き、主人公・崇の言葉を理解していないところもあると思う。登場人物の心の声が痛い。
犯罪物の声は理解を絶する。殺人に快楽を覚える闇は、常人では理解できないが、そこをえぐるように描いているのが、ますます恐怖というか気味悪い人物像を想像していきました。
ラストは本当に痛い。悲しいとか、簡単な言葉では表現できません。
胸の奥に真っ黒なインクをこぼしたみたい。それが浸透してしまわないように……。そんな作品です。

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2018年03月19日

Posted by ブクログ

サラリーマン沢野良介は、妻と息子との三人暮らしをする平凡な男。
良介の兄崇は優秀で、そんな兄への羨望や嫉妬といった日常の思いをネットブログに記していた。
中学生北崎友哉は、クラスメイト女子への叶わぬ恋心と、その女子の恋人からの暴力に耐えるといった鬱屈した思いから、殺人への夢想を膨らませていた。
ある日、バラバラ殺人事件が起きる。
見つかった遺体は、良介だった。
崇は被害者家族から一転、良介殺害事件の犯人として疑われはじめる。

良介の遺体が見つかる頃までが上巻、下巻は崇が被疑者となるところから、犯人がわかるところ、その後と描かれる。

上巻で、人物描写として三島論をぶったりするシーンが挟まれる。
そこがグダグダしていたことは既に書いたが、下巻に入り作者が描きたかったことが伝わってくる。

良介の妻佳枝の気持ちが後半描かれている。
失った家族への思い、あのときこうしていたらという後悔、犯人への思い、犯人は社会によって守られるが被害者は放り出される、それでいて好奇の目には晒される、犯人を憎んでいつまでも生きるのか、それでいいのか、憎み続けることは人間として酷いことだと言われることなのか、子供にも父親を殺した犯人への憎悪を教えていくのか、様々な思いに悩む。

良介の両親のその後も描かれる。
父も母も壊れていく。
そして、悲しむ暇もなく疑われる兄崇。
崇には被害者家族としての労りさえかけられない。
犯人さえ知らないところで、様々なひとの人生が狂っていく。

また、現代社会の側面としてのマスコミやネット。
直接には被害者のことも加害者のことも知らない誰かが無責任に垂れ流す言葉。
そういった言葉に煽られ、ネットによって明かされてしまう個人情報を用いて、加害者家族へ正義の代表者のような顔でぶつけられる暴言。

特別新しい着眼ではない。
こういった問題は今までに色々な形で提起されてきている。
それでも、引き込まれ読ませる文章だった。

良介を殺した犯人は誰なのか。
本当に崇は弟を殺したのか。
こういったことを推理して楽しむ読み物だと思っていたので、後半の佳枝や崇の心情描写が予想になく響いた。

上巻の知識を並べ立てる部分に始まり、最後の終わり方を含め、読み手を選ぶ作品だと思う。
文体も少し癖があるようにも感じられる。
わたしのように推理ものとして読んでいて、何だか違うと戸惑う読者もいるのではないかと思う。そのため、せっかくの後半部分がきちんと伝わらず終わってしまうこともあるのではと思う。
終わり方が余りにもというものだったので、もっと救いはないのかと思うところが、きっと被害者家族の気持ちをわかったようなつもりでいて全くわかろうともしていない残酷な傍観者でしかない自分を思い知った気がする。

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2015年10月13日

Posted by ブクログ

平野氏の作品は本当によく考えられ練られている。
上巻では止まらなくなる。一体何が起こっているのか?犯人は誰なのか想像せざるを得ない。
下巻では謎解きが少しずつ。様々なこれまでの言葉の仕掛けが明かされていく。
自分的にはあまり殺人というテーマは好きではないのだが、読んでしまった。うーん。

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2024年05月25日

Posted by ブクログ

一犯罪を取り巻く人々の悲哀がよく書かれている作品。崇を待ち受ける運命はただひたすら暗鬱であるが,それだけに共感をする人も多いのだろう。

ただ各出来事がダイジェスト的にまとめられており,もっとやってくれれば面白いところなのに……という場面が多かった。オチは無難にまとめられているが,そこで問題提起が終わってしまうのはもったいなく思う。

著者の哲学講義は確かに魅力的ではあるが,華麗な修辞による重厚感の演出かもしれず,神学などの学問から注意深く批判する必要がある。

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2024年04月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

感想
非常に内面的に切り込んだ作品。言い回しや文学的な表現が多いため、分からない部分もあるが、この作品を通して色々考えさせられることは間違いない。最後に何かどんでん返しがあるかと思ったが、救いようのないまま終わった。

残された家族の苦しみなど色々考えてしまう。被害者家族も加害者家族も生きていくのが辛い。

サイコパスはどうしても発生してしまうので一概に社会や家族のせいのするのは違うような気がする。

マスコミの過剰な煽りや一部の騒ぎ立てる人に社会が合わせていくと社会が成り立たなくなるし、みんなウンザリする。昨今の社会はそのような気配を多分に感じる。

あらすじ
バラバラ事件以降、模倣犯による犯行が相次ぎ、世の中は混乱を極める。そんな中、警察は兄の崇が怪しいとして逮捕勾留するが、自供を引き出せない。

そうこうする間に北崎が、同級生の女の子を殺害したとして、警察に自首し、京都での良介の殺害への関与も仄めかす。崇は勾留期間が過ぎたことで釈放となる。

事件は、お台場での中継中に再び起こる。北崎と共犯と思われる男が生放送中に自爆テロを起こして多大な被害をもたらす。

主犯は篠崎と北崎だったが、兄の崇への疑いは晴れない。父親が鬱で自殺し、母親も精神を壊していた。最後は兄の崇までも精神を病み、電車に飛び込んで自殺する。

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2024年03月04日

Posted by ブクログ

重いわ。
すごい筆力だけど、なにしろ重い読後感。

「決壊」というワードは、ダムを連想させる。

思えば、崇のダムははじめから満水だった。
それでも、なんとか騙し騙し、運用上の工夫で決壊せずに踏ん張ってきた。
そこへ、既に決壊してしまった者の濁流が、周囲のダムの決壊を誘発し、流量を増した急流となって流れ込んできた。
崇のダムはそれでも持ち堪えた。そして、流域の住民を避難させ、安全を確認した後、決壊した。ダムはもう、カラだ。

僕らはダムを決壊させてはならないルールの中で社会性を保っている。そのルールに縛られているからこそ、決壊への、破壊への欲望が頭をかすめることがある。それにどう立ち向かうか。

「国民の知る権利」「説明責任」というマジックワードを無思慮に振りかざして知性の代わりに暴力を手にしたマスメディアの挙動。
何かといえば「抜本的な改革」と言って歴史を無視した思考の浅い政策を繰り返す政府。
およそ大人の振る舞いとは思えない挙動を通じて、子供たちはどのような知的成熟を得られるというのか。

悪魔の語る言葉と、崇たちエリート同士の会話は、どちらも読者にとって意味不明で支離滅裂に映る。京大出身の作者は、頭脳の優劣や精神疾患の有無によって、語られる言葉の是非に差はないと言っているように思う。

では、何を信じれば良いのか。

その迷いを決壊させてはいけない。
安易な答えに飛び付かず、迷い続ける覚悟を持て。

それをかつて、先達は「節度」と呼んだのではないか。

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2025年03月05日

Posted by ブクログ

平野啓一郎二作目。
どのカテゴリーにもカテゴライズされない作品を描く人だなと思った。
作品については感想が思いつかない。

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2023年01月17日

Posted by ブクログ

平野先生の小説は初めて。
上巻もですが、下巻も難しかった。眉間にシワが寄ってたそうです。
登場人物の言葉も考え方も深い。
私自身のバカさ加減に嫌になる。
わかんない言葉が多くて、何回もググる。
没頭して読めたけど、二度と読みたくない。

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2021年07月12日

Posted by ブクログ

他人のことを本当に知るというのは難しい。そもそも本当に知ることなど出来るのか。本当に知るとは何なのか?
そういうことを考えさせられる。
平野さんの分人という考え方が随所に出てきて、深掘りさせる。

すべては分からないけど、信じるということ。これを何度か伝えたかったのかな。
信じることで相手を救うこともできる。
p.202ページ辺り

信じることは、事実がどうとか関係ない。結果ではない。間違っていたとしてもいい。それが問題ではない。

よって、信じること=事実を信頼するではなく、その人を受容するということ。

読んでいく中で崇を信じきれない自分がいることにも気付かされる。
自分も群衆と一緒なのか。物語の中に自然と引き込まれる。

ただ、読みながらなかなかこたえる内容でもあり、重たかった。


本当に疲れる一歩前に読む方がいい一冊。

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2020年09月11日

Posted by ブクログ

全く救いがなくて、結末はまさに決壊。
心理描写やセリフの中身が深く、
1度読んだだけでは掴みきれなかった。

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2020年07月29日

Posted by ブクログ

そういう結末か…
崇はこうするしかなかったのかな。
ひとつの犯罪は、関係者をこうも変えてしまうんだな。

そして、家族を殺された挙句に容疑者扱いまでされた崇の、罪と罰とか、赦しとかについて語る部分、とても重かった。
すんなり納得はできないけど、でも、永遠に恨み続けるのも確かに辛い人生だよな…
未だに仕事場であったことに関して、誰かになにかを償わせたい、というような不毛な感情を抱えてしまっている私には痛かった。

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2017年03月29日

Posted by ブクログ

やっと読み終わりました!
文章が難解な部分もあり、ちょっととばし読み!

現代に生きる人間の心の闇。
ネット社会の恐ろしさ。
なんだか不気味で、暗くて…
だけど、そういう不気味な事が身近でも起こり得る世の中に生きてるんだな〜って思ったら、すごく恐くなった…

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2016年12月13日

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