平野啓一郎のレビュー一覧
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上下巻を一気に読んだので疲労感と謎の涙。
黄泉がえりという映画が昔あったなぁ。
死者がやり残したことをやるというファンタジー感と、誰が犯人なのか?というサスペンスミステリー感がありつつも、テーマは「死」そのもの。残された人の空白や、残してしまう人への焦燥感、一瞬の死際の印象でそれまでの「生」が塗り変わってしまう影響力、自殺、分人の概念など、さまざまな角度から「死」を照らしている。
「死」は暗闇、消滅といったイメージもある一方、佐伯のいうように、義務からの解放という救いの側面もあるように思う。
「死」という事実やそれまでの過程を知ってしまうと思い出すたびに胸が苦しくなるので、いっそのことなにも知 -
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創作活動と並行して積み重ねた講演、批評、随筆をまとめたもの。
文学は、声にならない違和感、説明できない痛み、うまく言えない孤独。そういうものを、 無理に整理せず、そのまま差し出す。
平野啓一郎氏が
読んでると、どんな文学に影響を受け、どんな作家を座標軸にしているのかがわかる。
流行や話題性ではなく、 人間の内面・倫理・孤独・分断・時間を 粘り強く掘り下げてきた作家たち。
だからこの本は、 文学論であると同時に、 平野啓一郎という作家の精神史みたいにも読める。
文学は役に立つか、ではなく 自分はどんな文学を必要としてきたか。
と言う感じ?
関係ないけど、
最近「瀬戸内寂聴」というワードが出て -
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ネタバレ「大人の恋愛小説を、インテリな著者が文学にしたらこうなりました」という感じ。
以下、少しネタバレになりそうです。
韓国ドラマとかの設定にもありそうな、壮大な設定やすれ違い、恋の天敵、ドラマチックな展開などなど、一見俗っぽい??って思うんだけど、旧ユーゴスラビアの歴史的な問題や、シリアの紛争、クラシック音楽やドイツ文学をはじめとする文学や詩の世界の奥深さなどをお話に盛り込みながらなので、俗っぽさがなくなる感じでした。
このスタイルの本、初めてでした。
初めての読書体験。
私の教養が浅いので、分からない文学作品等も多く、後から読み返して学びたいので付箋を貼りました!
トーマス・マンとか、読 -
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芥川賞受賞作家による死刑廃止論。
講演の内容ベースだから読みやすい。
なぜ死刑廃止論の立場に至ったか、日本での死刑存置論の問題点はどこか。単なる冤罪のおそれを超えて、日本の立法、行政、行政、さらに人権教育の不完全さにまで及ぶ、考え抜かれた廃止論が展開される。
死刑に賛成し存置を唱えることは、被害者遺族への真の思いやりではない、というのは重要だと思う。
「憎しみ」の連帯ではなく、「優しさ」を持つ国へ、という主張は、死刑に限らず、昨今の日本の抱える分断・対立全般に当てはまる。著者の小説のファンにも是非読んでもらいたい。
それにしても、某有名大学で名誉教授の憲法学者は、死刑に当た -
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ネタバレ下巻は「分人」解説主体で、そこばかりに目が向きがちになるけれど、ラデック氏や池端氏の語りから"生き方"や"死後の生き方"など、なかなか重たいものについて考えさせられる。哲学的なようで、宗教的なようで、現実的でもあり、混乱。
未知の父親の影を追い求めていた主人公だからこその「空白を満たしなさい」。父から息子への想いが凝縮されたタイトルの意味に、鳥肌其の一。どう活用するかは、大人になった息子がその時判断するでしょう。託せば良いさ。つべこべ言わず、子を信じろ。
個人的には、自分が死んだ後で誰に何と言われようと気にならないし、まだまだ生きていかねばならない人 -
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文学・芸術に関して、著者が寄稿したエッセイや批評、講演録、弔辞などをまとめたものである。ドナルド・キーンや大江健三郎、瀬戸内寂聴といった錚々たる顔ぶれとの交遊も伺い知れる。
著者の小説はまだ読んだことがなく、文章を読むのは初めてだったが、硬質に見えて、意外と読みやすい。
評論を書こうとすると、対象をよくよく観察し、客観性をもって言語化する技術が必要になる。多様な視点を持たなければ、独りよがりな説得力に乏しい論文になる。
つまり文学とは、人間を多面的に考察していく営みであり、これは古来から、おそらく未来永劫なくなることはない。
「文系不要論」が言われて久しいし、文系の中でもとくに人文学の肩身がせ -
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表題の講演録について。
「役に立つか」と「価値があるか」は違う。「役に立たなくても価値がある」と言い続けることが大事。
…とのことだが、これは文学に限らず、必需品以外のモノ・コト全てに当てはまる。
「役にたつ」と「価値がある」は違う、よく考えれば当たり前とも言えるが、日常の中では同一視していると思える出来事、言葉、人も思い当たる。役にたつこと至上主義、みたいな。
もちろん、価値がある、ということの判断軸は多様であるべきで正解はない。人によって、また同じ人でも時々によって違うだろう。
なので、読みながら自分の思考は次第に文学の話から離れて、色んなところに乱れ飛んでしまった。 -
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ネタバレ死刑廃止に限らず、何かを論じようとすると、必ず出てくるのが感情論。声が大きいのも感情論派。
物事に「絶対」と言い切れるものはほとんどないと思うので、自分たちが「絶対」正しいという人たちとは距離を置きたい。
争いの多くはその対立から生まれるが、一歩離れて両方を理解しようとするとなかなかどちらにも与せない。当事者以外はそうあるべきだと思うのだけれど。それが法治国家のはずなのに。
筆者は「人権教育の失敗」を死刑が支持され続ける理由の一つとして挙げている。確かに「人権」を正しく理解している人がどのくらいいるかと考えると、己を省みても心許ない。