平野啓一郎のレビュー一覧
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死が色濃くこの最終章を彩ってた。死について、そして生きるということについて、いろいろと考えさせられた。考えるという意味では、いろいろなことを考えさせられた。例えば、芸術について、愛について、恋について、愛の表現について、革命、政治、名誉、音楽、絵画、仕事、死ぬこと、生きること、友情、生きるということは喜びか、悲しみか、そういう意味では、さくっと読める作品ではないし、ある程度の時間を取って、ゆっくりじっくり読みたい作品だった。ここにもし、キリスト教やもしくは他の宗教的なスパイスが加わったら、どうなるんだろうと少し思った。それにしても、相当に質の高い本でした。
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第一部(上)は、深い思索がとても哲学的で、時に難解さをも感じたけれども、(下)の途中からは一転、昼ドラ的などろどろとした人間模様が描写されていて、それはそれでおもしろかった。ドラクロワやショパン、ジョルジュ=サンドの感じている憂鬱は、現代の若者の抱えているそれにも通じるような気がしたが、これは、ドラクロワらが現代にも通じるような同じような悩みを抱えて当時を生きていたということを表しているのか、それとも著者である平野氏自身が感じている現代社会の若者の悩みを、ドラクロワ、ショパン、サンド夫人を通して語らせているのか、ちょっとした倒錯感があって、それがまたおもしろかった。
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この作品は464ページあるのですが、その真ん中あたりで三谷さんという方が、つい魔が差してある行動をしてしまうシーンがあり、そこから一気に物語に引き込まれます。
序盤は音楽用語などのオンパレードで、もしかしたら音楽に詳しくない方は読むのを諦めてしまうかもしれませんが、そこはグッと堪えて、ぜひ真ん中あたりまで読み進めてみてほしいです。
そして洋子さんは最初、婚約者がいるのにどんどん蒔野さんに惹かれていくのは読んでいて複雑だったのですが、終盤のとあるシーンがとてもカッコよくて印象に残っています。
わたしもあの場面で、ああやって言えるような人間になりたいです。
ただ、洋子さんはチケット代まで受け取ら -
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ネタバレ重大な犯罪をおかして指名手配されている人間が、別人として生きる。
どうしてそんなことが可能なんだろうと前々から疑問でした。
悪いことをしたらどこかからか必ずばれるし逃げきれない。
社会の目は絶対にごまかせない。
そういう考えが、子供のころからガッチリと根付いているけれど、自分が知らないだけで、社会というのは割と穴だらけなんだなと思いました。
気になって調べてみたら、日本での年間行方不明者は約8万人いて、これは1時間に10人のペースという計算になるそう。
隣に住むおばあさん、散歩中に会うお姉さん、コンビニの店長さん、皆は本当に私の知っている彼らなんだろうか。
そんなことを考えると、なんだか怖くて -
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ネタバレ名前や戸籍は記号でしかない。それでいて、とりわけ現代人は記号に依存して生きている。戸籍交換をして幸せを掴み取った原誠と、対極とまではいかないものの、少なからず後悔をしている谷口大祐。子の成長とともに前に進んでいく里枝。
城戸は在日3世であることの悩みを抱え続けていた。何世代も前の木が、今の城戸を作っている。
自殺を2回試みて戸籍交換という手段で短いが確実な、目の前の幸せを得た原誠に対して、美涼との未来は選ばなかった城戸は大祐に対して尊敬と羨望の感情を抱いていたのではないか。
颯太への愛は絶対だとしても、幸せだと言い聞かせて、別の誰かに変身してまで変える勇気がなかった、もしくはそうしようとするほ -
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自分とは何か何者なのかがずっとわからなかったけど、この本を読んでその原因がやっとわかった。
自分を一個人としか考えれてなかったからだ。分人としての単位、付き合うそれぞれの分人で考えると合点がいく。親友と話す時の自分、友達といる時の自分、ママと話すときの自分、同僚と話す時の自分、先輩と話すときの自分、全部違うし、それは当たり前のことなんだと。
新しい発見は、どの分人でいたいかで付き合う人を選ぶ環境を変えることができるってこと。どの人といる時の自分が好き?そう考えて人間関係を少しずつ整理していくことも年齢を重ねていく上で、なりたい自分に近づくには重要だな。生きてる人間以外に対する分人もね。 -
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私は死刑廃止派
死刑について深く考えるために読む。
在置派だった筆者による考察・論調は自分では到達出来ないような視点を提示してくれる。
法のもとに人を殺すことが可能な国は…人権を軽視しているようで嫌だし、殺人をしてはいけないけれど死刑による殺人はOK(やむを得ない)というのは、人間が命に優劣をつけているとも取れる。
同じ命あるものに、同じ人間の自分が優劣を決める可笑しさ、悲しさ、、不思議に思うけれど、自分が判断・手を下す訳じゃないから、他人事なのかな?廃止は理想なのかな?
なんて自分の考えに固執しないよう、在置派の考え・論理をこれからも知っていきたい。
まずは、考えるきっかけに良本だと思う。 -
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「分人主義」という他者に対する「個人」という見方ではなく、いろんな他者と相対するときの複数の人格を自分と捉える考え方がベースにあって、そのベースの中で、「自由」「幸福」「テクノロジーの進化」「本当の自分」などのテーマをさまざまな専門家と対談しながら、書かれていた。
分人主義という考えが非常にしっくりきて、心理学的には「自立」の考え方と似てると思った。「自立」は1人でなんでもできることではなく、様々な組織、コミュニティーに属することで依存先を増やすこと。そうやって、自分を見つけることが「自立」と言われたりしてる。
「分人」や「自立」は全然違う表現だけど、複数の他者から見た自分という観点が全く同 -
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私は友達に「多重人格者」と指摘されたことがある。
学校で見せる顔、サークルで見せる顔、バイト先で見せる顔、親しい友達にだけ見せる顔…たしかにすべて、同じ人物とは思えないくらい違う。
だけど、それらは「ウソの自分」であるとは思わない。全部、偽りの私ではないように感じていた。じゃあ、本当の私って一体なんなんだ…?
そんなことを考えながら、ちょうど読んだのが小説家平野啓一郎さんが書いたこの本。三宅香帆さんオススメということで読んでみた。平野さんが唱える分人主義、日常を振り返ると納得する事ばかりで、そして読みやすいためにスっと自分の中に落とし込むことができた。「ウソの自分/本当の自分」で二分するの