平野啓一郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かったです!
人がその人たらしめるものってなんなのだろうと考えさせられました。
過去の話や戸籍という情報はアイデンティティになりえない、個の存在定義のゆるふわさを考えさせられた一冊です!
また、この物語を読んで、私も高校生のとき初めて行った美容院で、ここはずっと通えそうにないなと感じたときに、適当な作り話をしたことを思い出しました。
入ってる部活や家族の話などを友達のものと織り交ぜて作った、私とはまた違う私が出来上がった不思議でちょっと楽しい感覚を覚えています笑
主人公の気持ちが少しわかってしまう、そんなドキドキする読後感でした! -
Posted by ブクログ
映画版を見たし、葬送を読んだので同じ著者の方という事で借りました。ギターを少し始めた事もあって、ギター用語は読んでいてわかったので興味深かった。映画と違うのは洋子の母親が長崎原爆の被爆者という事が強調されている点で、他にも蒔野の共演者がはっきり書かれていないがおそらく自殺したようなくだりは、映画には出てきたかと思います。また洋子が自爆テロに巻き込まれた後遺症でPTSDを患って服薬していて、その心理的負担からやすやすと別れ話を信じていったというのも、小説版では書かれていた事です。概ね普通なら早苗に非が集まるところを、それを回避しているのもこの小説の特徴で、それがこの小説の純な印象を深めていると思われます。
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Posted by ブクログ
平野啓一郎さんの作品は、「マチネの終わりに」「ある男」に続いて3作目。
こちらも素晴らしかったです。こんな作品や文章が書ける作家さん、とても尊いです。
これはこの国の少し未来のお話。事故で突然亡くなった母のVRを作ることから物語が始まる。寂しさからだけではなく、明かされなかった母の「本心」を知りたくて。
これだけでも続きが気になって仕方ないんですが。母の過去を知るために一人の女性と出会う。彼女の内面を知り、慮り、自分との関係性を考え、悩み、自分の現実の世界を生きていく。そこでまた、新たな人と出会い自分自身を発見していく。
…とにかく最初から最後まで心臓ギューッと掴まれて、その世界観で頭がいっぱいになりました。
このままAIが進み、政治が続き、貧富の差が広がり社会の分断が続くと…こんな思想や事件も起こりうる…なるほどと頷きながら様々な事を想像しました。
ラストにかけての衝撃ともよべる驚きが凄まじかったです。朔也と周りの人たちの幸せを願っています。
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Posted by ブクログ
『本心』という題名なのに、本心は分からないという感覚だった。
亡くなった母の言葉や過去をたどり、母を再現したVFと向き合っても、母の本心そのものへ到達できるわけではない。そもそも人の本心は、心の奥に完成した形で隠されているものではなく、本人にも分からないのかもしれない。
どうしても成長物語としては読めなかった。何かを理解して強くなったというより、他人も自分も完全には分からないまま、それでも人と関わって生きる位置を見つけていく話に感じた。
この小説には、家族、友情、恋愛といった言葉だけではうまく名付けられない、人と人とのつながりが描かれていたと思う。相手を本当に理解しているのか、自分の願望を見ているだけなのか分からない。それでも、分からない相手との間に何かが生まれる。その書きにくいものを、小説にしようとしているように感じた。
自由死については、まだ十分に理解できていない。ただ、作家の藤原が否定的に語る場面は強く残った。彼は作品内の世界では受けいられていないみたいだが、唯一の希望に見えた。
そして不思議だったのは、主人公が肯定されることが、読んでいる自分たちの肯定にもつながるように感じられたことだ。明確な本心や強い意志を持てなくても、他人を完全に理解できなくても、生きて人と関わっていていいよ。そのような肯定だったのかもしれない。
一番驚いたのは、これが新聞連載だったことだった。新聞小説には一回ごとの区切りや引きのリズムを感じ、そこで冷めることがある。しかし『本心』には、連載の区切りよりも作品全体を貫く何かが強く感じられ、書き下ろしを読んでいるようだった。
何を伝えたかったのか、説明できない。それはつまらなかったわけではない。これまで言葉にされてこなかった難しい何かを、どうにか表現しようとした小説だったように思う。素晴らしかった