平野啓一郎のレビュー一覧

  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ

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    本当の自分を追い求めることが求められている現代社会。その中で感じる息苦しさを個人を分解した分人という概念で解きほぐしてゆく。著者が小説を探究して来たこのモチーフを、他の思想家からの引用などはほとんどせずに誰にでもわかりやすいエッセンスとしてまとめた一冊。

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    2025年10月23日
  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ

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    ・ロボットと人間の最大の違いは、ロボットは–今のところ–分人化できない点である。もし、相手次第で性格まで変わるロボットが登場すれば、私たちはそれを、より人間に近いと感じるだろう。

    2012年に発行された本書。時を経て現在、chatGPTの登場で(ロボットではなくAIではあるが)相手に合わせた返答ができるAIが当たり前になりつつある。筆者もある程度予想はしていたかもしれないが、ここまで早く浸透したことには驚きを感じているかもしれない。

    特に若い世代のあいだでは、相談相手としてchatGPTが使われている。それは筆者も言うように「私たちは、尊敬する人の中に、自分のためだけの人格を認めると、嬉し

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    2025年10月20日
  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ

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    「自分探し」とか「本当の自分」はないんだな。
    人間関係に悩んでいる人是非読んでほしい。
    ちょうどこの本を読んだ頃、田中泯が対談番組で「エドガー・ア・ランポーの言葉で『私は群れである』」という言葉を紹介したけれど、それと繋がるのかな。
    「自分」に対する見方を考える最適な本

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    2025年10月19日
  • ある男

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    なんだか小難しそうで敬遠していた平野啓一郎に初挑戦。映画化されていたとは知らず、なんとなくこれは読みやすそうかな?と書店で手に取った。読んでみた結論は、平野さんのファンになりました!笑
    物語は途中までなんとも不気味でうすら怖い。「ある男」の正体が誰なのか見当もつかないまま、戸籍売買や死刑制度、在日差別などの問題について、様々な人たちの様々な視点で語られていく。複雑な話ではあるが、文章が美しく読みやすいので、ストレスなく展開がスラスラと理解できた。登場人物もリアルに生き生きと描かれていて、まるで知り合いの話に首を突っ込んでいるような身近な感覚を覚える。最後は「ある男」に関わった人たちに感情移入し

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    2025年10月18日
  • マチネの終わりに

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    善とか悪とか、そういう平面的な判断基準を超越したところにある、二人の関係。

    会っている時間の長さや回数、結婚とか付き合うとか明確な言葉で定義された明確な関係でいること、そういう社会的な俗的な一般的な交わりを超えた先にある、二人の深い交わり、心の結び付き、魂の深いところの共有。

    その様がありありと、没入できるほどに事細かに描かれていて、ずっとずっと引き込まれた。

    現実を生きることで変えていけるのは未来だけではなく、過去までをも変えられるというのは個人的には新しい視点だった。

    展開がどうとかではなくて、情念の共有ができた感じ。
    これから先も心に残り続ける小説だと思う。

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    2025年10月16日
  • 空白を満たしなさい(下)

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    人にはいくつかの分人が存在する。
    家族や友達、同僚、上司と。
    それぞれと接する時の自分はテンションや気の使い方も異なっていていろんな自分がそのにいる。
    どれが本当の自分なのか。
    幸せであっても疲労は溜まるし嫌いな自分は消したくなる。
    この装丁はなぜゴッホなんだろうという謎も納得。
    ゴッホのいろんな顔と自殺の真実が物語と結びついて後半はかなり面白くなってきました。

    そして、終わり方に鳥肌、、。
    りっくんを抱きしめる直前に消えちゃったってこと、、?
    彼の悔いが残った空白が満たされたから消滅したのかな。
    2回も大切な人がいなくなるなんて耐えられないけど、これを読みきって生の尊さが身に染みました。

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    2025年10月16日
  • ご本、出しときますね?

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    BSジャパンのテレビ番組の書籍化。オードリー若林さんがMCする番組が好きな自分にとっては、読み進めてると声が聞こえてきそうな錯覚に陥った。作家の知らない一面が見えてとてもおもしろかった!読んだ章の中では村田沙耶香さんの変人度が群を抜いていた笑

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    2025年10月15日
  • 空白を満たしなさい(上)

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    「文人」という考え方、とても好き。
    というより、普段から思っていた内容だったから仲間を見つけたような気分。
    社会学におけるアイデンティティに近い考え方のようにも思う。

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    2025年10月15日
  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ

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    ネタバレ

    よく言われる「本当の自分」とは何かみたいなものに感じていた感覚を言語化してくれた一冊。

    近代に生まれた個人という概念=これ以上は分割できないという概念が、人間はひとつしかないのだから多面的な人間がいた場合、ひとつの面しかホンモノではなくそれ以外はニセモノであると捉えさせてしまうが、そうではなく、ありとあらゆる面を持っており、そのすべてが本物であり、その集合体で人は構成されている、そしてその構成比がそのときどきの性格、価値観みたいなものに表出しているというところは自分の感じていたところとしっくりくるものではある。その構成比が同じ感じでないと価値観の相違が生じる。
    あるいはお互いの距離感にズレが

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    2025年10月12日
  • マチネの終わりに(文庫版)

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    36歳で妻子を持ついまだからこそ、この小説が刺さったのかもしれない。
    なんて切ない物語なんだろう。自分だったらどうしていただろう。どうするべきだったのだろう。
    実体験以外で、こんなに胸を締め付けられたのは初めてかもしれない。

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    2025年10月11日
  • ある男

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    ネタバレ

    複雑に価値観も状況も思いも違う人生同士が絡み合う。その人生を生きること他人の人生とそれを絡み合わせること。多種多様に示唆される悲喜交々の人生が影響を与え合い恐ろしく難しい人生同士の交差模様を描いている。他人の人生を介することで自分の人生を見つめ直して愛せるか、自分の人生のままならなさをどう受け止めるか、あるいは自分の人生の可能性を見た上で今生きる人生を見るか、他者の人生の痕跡からその人の人生を見つめることができるということ、別の人生を我が物としてそれを全うしようとすること、人生のあり方によっては人はガラリと変わってしまうということ、相手の人生や過去という不確かなものをどうして愛せるのか、人生同

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    2025年10月03日
  • ある男

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    謎が少しずつ解明されていく過程が面白く、ラストでは子供の成長がひしひしと伝わり、思わず涙が出た。
    強く生きる力や子供の純粋さは、本当に尊いものだと感じる。

    また、人を愛するうえでその人の過去はどれほど重要なのかを考えさせられた。

    また、戸籍を変えて別の人生を歩むことが本当に幸せにつながるのだろうか…
    自分のせいではなく、どうしようもない環境要因によって苦しむ人がいて、そういう人が幸せを掴むのはとても大変だと思う。
    誰もが平等に幸せを掴める世の中であってほしい、と感じた。

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    2025年09月30日
  • マチネの終わりに

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    「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。」
    このパッセージがメインテーマだと思うが、蒔野と洋子の、未来だけでなく大切な過去を変えうる現在を繊細に扱うような生き方をすごく素敵に感じた。

    また僕が一番心を惹かれたのは洋子の生き方だった。
    世間では彼女のことを「冷たい」「選民思想的」と評する声もある。でも僕にはそうは映らなかった。

    洋子はただ、自分に誇りを持って生きることを何よりも大事にしていた。それは他人を見下すためのものじゃない。人に真に優しくするためには、まず自分の自己愛を満たし、自分

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    2025年09月30日
  • ある男

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    ネタバレ

    私という人間は、生まれた瞬間から両親が決まっていて、物心着く頃には名前も決まっていて、それは自分では決められない。
    その人自身には何の薄暗いことがなくても、そのせいで人生に翳りが生じてしまうこともある。
    生まれの豊かさとか、国籍とか、性別とか、身長とか、自分では決められないものが、自分という人間の生身を形作る要因になる。とか思うと子供を産むことにも責任感じちゃうかも。

    警察になる時に身元調査とかあるけど、それも親のせいで子の未来を奪うことになりうるの残酷だなと思う。機密情報のことを考えると必要だけれど。

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    2025年09月27日
  • マチネの終わりに(文庫版)

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    「大切な人へ贈る本」という帯が付いていました。
    まさにその通りでした。

    人を愛するということ…優しさと誇りと悲しみと切なさと、全てが詰まっていて、感動し涙が止まりませんでした。

    読み終えた時、序盤の頃に出てきた「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。」という言葉の真意に触れた気がしました。

    今を生きる私やこれからの私(未来)の考え方捉え方が、過去の出来事に違った意味を持ちうるという。私自身も過去の悲しみを優しく包み込む事ができた気がしました。この本との出逢いに感謝しています。

    実話に基づく小説と、冒頭で述べられています。
    あまりに

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    2025年09月28日
  • 本の読み方 スロー・リーディングの実践(PHP文庫)

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    現代社会では、私たちの意志と関係なく膨大な情報に晒されている。だからこそ、自分が選び、情報を得たり、楽しむことができる「本」は、私にとって貴重なツールである。
    これまで色々な本を読む中で、読みやすい本とそうでない本があり、それを理由に普段から複数の本を同時進行で読んでいた。積読を減らすために急いで本を読んだり、この読み方で本当に良いのだろうかと、どこかモヤモヤしていた。
    そんな時にこの本を出会って衝撃を受けた。本を読むスピードが遅いことは、決して改善すべきことではない。筆者の伝えたいことをじっくりと読み解き、深く楽しむためには必要なことなのだと、考えを改めさせてくれた。
    本書には、実際の書籍を

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    2025年09月23日
  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ

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    ⭐︎私というのは孤独に存在しているわけではなく常に他者との相互作用の中にある

    This book gave me a new perspective. Until now, I believed that changing my attitude depending on the person was a bad thing, and that being consistent in how I deal with people was almost a kind of virtue. But this idea—that the differences in our behavior ar

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    2025年09月13日
  • 文学は何の役に立つのか?

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    学校の教科書に載せてほしい!と思うほどの内容。
    子どもの頃は読書を娯楽として純粋に楽しんでいた。大人になって日々に忙殺され、今また読書をする時間を持つようになったが、読んでいて、この時間に意味はあるんだろうか、単なる趣味ではあるのだけれど…とモヤモヤした事が何度ももある。その感覚を、うまく解消してくれた。
    難しくて理解に時間のかかる批評もあったが、総じて素晴らしい1冊。これは手元に置いて、時々じっくりゆっくりと読みたい。

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    2025年09月05日
  • 死刑について

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    死刑制度については勉強不足で存置派とも廃止派とも言えない状態だったが、本書を読んでこれまでにない死刑制度に対する捉え方を知ることができた。テーマの割に薄いこの1冊で、世界の死刑制度の現状、事例、著者の考えが分かりやすくまとめられていること自体も凄い。

    特に日本ではなぜ死刑が支持され続けるのかについて著者が考える要因が、どれも思いつかなかったもので印象的。
    著者の実体験に基づく考えや、小説家としての発信について触れられていたのもよい。

    本書ももう一度読み直しつつ死刑制度に関する他の書籍も読んで理解を深めたいし、著者の作品ももっと読みたい。

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    2025年09月02日
  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ

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    ⚪︎一つの分人から見えるものだけが個人ではない。
    -相手によって現れる別の自分もまた自分だと受け入れられて心が軽くなった。
    ⚪︎好きな分人を大切にしたい。
    ⚪︎社会的な分人と特定の相手に向けた分人、後者へ円滑に移れる自分でありたい。

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    2025年09月02日