平野啓一郎のレビュー一覧
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なんというかな、ストーリーそのものも勿論面白いのだけれど、登場人物、全員ではないが、一つ一つのシーンにおける感情が本当に細やかに目の前に揺蕩うように見せる筆致は凄いものだなと思う。なーんて偉そうなことを言える自分ではないのだけれど、やっぱり日本語で書かれた書物は、その中でも特に小説は、日本という国の日本人たちが、古今東西、紡ぎあげてきた表現にどれだけ逢えるのかというのが、自分がこの本は面白かったなと思える一つの基準?うーん、そんな言葉ではないような気がするが、ともかくそういう事なんだな。新書のカッコいいについての話ではあまり感じられなかったように記憶しているから、この本が最初出た時も興味はあっ
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ネタバレ〜印象的な話〜
八方美人とは、分人化の巧みな人ではない。むしろ、誰に対しても、同じ調子のイイ態度で通じると高を括って、相手ごとに分人化しようとしない人である。パーティならパーティという場所に対する分人化はしても、その先の一人一人の人間の個性はないがしろにしている。だから、十把一絡げに扱われた私たちは、「俺だけじゃなくて、みんなにあんな態度か!」と八方美人を信用しないのである。 分人化は、相手との相互作用の中で自然に生じる現象だ。従って、虫の好かない人といると、イヤな自分になってしまうことだってある。場合によっては、〝八方ブス〟にだってなり得るのだ。
〜大切なのは分人のバランス〜
「生きる -
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すごく面白い小説でした。
前半と後半が別の話のような展開ですが、最初から最後まで展開が多くて一気に読み進められました。
「死」とは何か?
「肉体的に無くなること」「人の記憶や様々な記録から無くなること」など、色々と定義されますが本の中でも登場人物が様々な解釈をしています。解釈は人それぞれで答えなんて無いのかもしれないですね。
主人公ほど若い頃ではないものの、私も父親を亡くしています。大切な人が死ぬことで悲しみ苦しみますが、それを最初に癒して慰めてくれるのは作品でも言及がある通り「ある程度の時間」でした。そして、いつまでも悲しんでいられずに、大切な人の死を受け入れて普段通りに仕事をしなければ -
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「生き返る」という皆が喜ぶであろう架空の現象に対して、それが本当に起こった場合「本人や周りの環境が果たして受け入れてくれるのか?誰しもが喜ぶのだろうか?」など、主人公と家族、周囲の人々のリアルな感情の中で展開されていく上巻の話は、ハラハラして引き込まれるように一気に読んでしまった…!
登場する佐伯という人物は胸糞悪いが、もしかしたら佐伯のような人物は物言わぬだけで周りに居て、知らない間に私の生活を侵食して壊しているのかもしれないと感じるような、首にまとわりつくような気持ち悪さだった。
謎が謎を呼んだ上巻。
下巻をこれからすぐに読み始めます!笑 -
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すさまじく重層的というか、複雑な、でも悪いことばかりではない。前を向いていこうと思わせる希望を感じられるような読後感。子供を持つ身として、悠人とのやり取りとか、彼が気丈にふるまう姿とかを見ていると本当に涙が出てくる。何かが解決するとか好転していくという訳ではなく、過去に起こった事実は変えられないんだけれど、でもその事実の一端を紐解いて知ることで何かが自分の中で繋がったり腑に落ちたりして、前に進んでいけることってあるんだろうなという気がする。
彼とその家族が前に進める、幸せを掴んでいけると信じているし、幸せになってほしいと心から願わずにはいられない。そう思うのもやはり原誠が、真面目に真摯に生きて -
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ネタバレ作者の考える「分人」そして「分人主義」を主張する本。同一人物でも観測者によって見える人格が全く異なるという直感自体は自分の中で以前からあり、この本はそれを分人という概念によって説明していたため腑に落ちた。一方で、その直感を自分は(そしておそらく多くの人は)個人を多面体だと解釈することで説明していたが、著者は多数の分人と呼ばれるノードで構成されるネットワークだと考えている点が興味深い。
この本が導き出す結論そのものに新鮮なものは多くないが、分人というモデル化そのものが興味深く価値がある。後半の個人の死や恋愛の話も面白いので強くお勧めする。 -
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自分の価値観が変わった本を読んだ時は星を5つ付けることにしている。この本もまさにその対象だった。
文量は多くなく、1時間もかからず読める。その中で、いかに今まで私が犯罪をした人、その被害にあった人、もっといえば「人間」と分類される生物そのものに対する解像度が低かったのだと気付かされる記述が多かった。まさに私は人権教育の失敗の成果物だったのだと思う。
一朝一夕で真逆に考えを変えることは難しいが、どんなに理解できない存在であっても、人間である限り人権があるという感覚は育てていきたい。本当に助けが必要な人は助けたいと思う姿をしていないと、誰かが言っていた言葉を心に停めておきたい。 -
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『ある男』という小説をいま読み終えた。
長編小説にも拘らずこれはひとつの長い詩であると思う。文章はあくまでも澱みなく清冽で、決して難しくはなく、人間の心理のもっとも深い内部へ入リ込み、人の心を読み解く世界に引き込む力は、世界の名だたる小説家たちを前にしても曵けをとらない。
作家という職業のみならず、芸術家のその生涯において代表作というものに拘ると思う。音楽でも絵でも映画でも、ひとつ、自他ともに認める唯一無比の作品を創りあげようとすることに自己主張の意義を見出すと思う。その意味でこの小説は平野啓一郎の代表作になるに違いない。
設定が興味深い。4年近く一緒に暮らした夫が突然、木の伐採の仕事をしてい -
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日記を書いたり写真を見返したりして思い出を振り返るばかりの私を掬ってくれるような一冊。明るい未来のために現在を生きるしい人よりも、過去の記憶を心に大切に携えながら生きるようなとても諦めの悪い人を中心に描いてくれて救われた。そういう意味でわたしにぴったりの本だったと思う未来のために今があると言うよりも、過去を変えてくれるいまの瞬間は多くあるのだから現在を過ごしてみようと思う方が私に合っている気がする。私はそういう後ろ向きな人間だとつくづく思う。
「年齢とともに人が恋愛から遠ざかってしまうのは、愛したいという情熱の枯渇より、愛されるために自分に何が欠けているのかという、10代の頃ならば誰もが知っ -
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分人の考え方、すっごく興味深かった。
個人という分けられないものの中に、さらに分人という人格を導入し、個人は分人の集合体であるという考え方。
人は誰しも、接する人によって言動や考え方、性格が変わってしまうものだと思う。
例えば、家族の前と友人の前の自分。変えようと思ってる訳じゃないけど、自然と態度が変わってしまってるなあと思う。
様々なコミュニティに属する自分がいて、それぞれで違った振る舞いをする。
個人が分けられないとすると、その複数の人格の内に、本当の自分がいて、偽りの自分がいることになってしまう。
そこで出てくるのが分人という考え方。
分人は社会との相互作用の中で発生するもの。
分人は -
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天才ギタリスト・蒔野聡史と、聡明なジャーナリスト・小峰洋子。細胞レベルで惹かれ合う二人の恋模様を描いた本作は、読み終えた後も、胸の奥で心地よい余韻が鳴り止まない一冊でした。
特に印象に残ったのは、「言葉の旋律」「現実と虚構の融合」「ラストシーンの希望」という三つの要素です。
1. 音楽のように響く、言葉の旋律
この作品に散りばめられた言葉の数々は、まるで蒔野が爪弾くギターの音色のように、美しく気高い旋律を奏でていました。中でも、私の心に深く刻まれた二つの言葉があります。
「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。」
この本を貫く最 -
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ネタバレ映画→小説→舞台
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言葉にならない。
自分は何者なんだろう。
悠人が自分の苗字が何度も変わることに戸惑うシーン、心が痛かった。
「お父さんが好きだった」への帰着…苗字がどうとか過去がどうとか以前に、その人自身を見つめる大切さ。
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最後スーッと背筋が凍る感じは、星新一の読後感にも似ている。
ラストはルネ・マグリットの『不許複製』。
冒頭をもう一度確認してしまった。
「ある男」は誰だったのか。
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上記は映画を観た後のfilmarks感想だが、小説は映画では描ききれなかった部分を淡々と埋めてくれる感じがして、より一層心を掴まれた。