平野啓一郎のレビュー一覧

  • ある男
    ずっと気になってた初めましての平野啓一郎作品、映画原作、すごく面白かった!
    全体的に暗いけど、「人を愛するとは?」「自分とは何か?」という疑問を常に投げかけてくる。
    主人公の弁護士・城戸の思考や会話が賢過ぎて「え?大衆小説で合ってる??」と時折戸惑ったけど、平野さんは京都大学出身なのね…納得。「マチ...続きを読む
  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ
    人を表す最小単位として使われてきた「個人」。
    社会においてはそれが最小単位だけど、自分の内側においてそれは一つではない。
    Aさんと会ってる時の自分、Bさんと会ってる時、Cさん…、それぞれ違うことを自認している。
    この人といる時の自分が好き は、相手のことを好きである理由にならないと思ってたけど、その...続きを読む
  • ある男
    きっと誰もが持つだろう変身願望。自分という存在、固有名詞に対する違和感。そんなものを表象したような小節。
    人は誰も心の奥底に虚ろなものを抱え、それでも生きていくのだろう。
    ミステリーではないが男の正体を探る主人公の弁護士に感情移入してスラスラと読める作品であった。
  • マチネの終わりに(文庫版)
    『空白』以来、平野作品二作目。ほとんど読まない恋愛小説だったが、そんな私でも作品世界にどっぷりハマりました!恋愛関係って複雑で本当に些細なことで壊れてしまうものですね…。あのとき二人が少しでも若ければすれ違うこともなく、結ばれていたと思うのですが…。歳をとって、相手のことをより考えられるようになった...続きを読む
  • マチネの終わりに(文庫版)
    冒頭は、文章の表現が少し難解で蒔野と洋子の出逢いまでは淡々と読み進めていましたが、その後は惹き込まれました。

    人生経験を積み、その人なりの信念、価値観や生活スタイルが固まりつつある年齢で、自分の世界観を広げたり、お互いの感性が響きあい、今まで感じたことのない感情を抱かせてくれる人との出逢いは、会っ...続きを読む
  • ある男

    深い

    重厚な文体ですが読みやすい作品。重犯罪加害者の家族の問題とか、社会問題を扱っていてとても考えさせられた。さすが作者は法律に詳しい。弁護士ではなく、渦中のXさんの視点で読んでみた。司法とかhateとか今まであまり考えないことを考える機会になって良かった。
  • ある男
    映画を観てからずっと読みたいと思っていて、やっと入手。

    もう打ちのめされっぱなし…

    平野さんって、やっぱり文学なんだよなぁ。

    先に映画を観ていたのも良かったかも。

    良い作品に出会えて良かったな。
  • マチネの終わりに(文庫版)
    人は誰でも、理解されたい
    では、天才はその願望がみたされるのか?
    天才でなくとも誰しも、人とは違う、オリジナリティの意識はあり、理解し合える人との出会いは、一生で一度あるかないか…

    本書は、そういう誰でも持つ未熟な願望と、天才ギタリスト、国際的ジャーナリストという稀有な生き方とを結びつけることによ...続きを読む
  • 本心
    すごく刺さった文章

    「何のために存在しているのか?その理由を考えることで、確かに人は、自分の人生を模索する。僕だって、それを考えている。けれども、この問いかけには、言葉を見つけられずに口籠もってしまう人を燻り出し、恥じ入らせ、生を断念するように促す人殺しの考えが忍び込んでいる。勝ち誇った傲慢な人間...続きを読む
  • 小説の読み方
    物語を
    メカニズム、発達、機能、進化
    の観点から考察してみる。
    創造的な誤読を楽しむ。

    ケータイ小説「恋空」について、文体の特徴として、形容詞、形容動詞、副詞といった修飾語が極端に少なく、まるでマンガの一コマを思わせるテンポ感、という平野さんの指摘に納得。

    物語の中で、主人公がA君について語ると...続きを読む
  • 私とは何か 「個人」から「分人」へ
    10年以上も前の本だが、普遍的な概念の提示をしてくれる本書。
    結構、人間観が変わると思う。

    人を「個人」(individual:分けられないもの)として考えるから色々複雑になってしまうのではないか、という問題意識から、人の中には複数の分人(dividual:分けられるもの)があるのではないか、とい...続きを読む
  • マチネの終わりに(文庫版)
    こんなに心動かされる恋愛小説は初めてかもしれない。途中でとても陰鬱な気持ちや焦燥感襲われるようなな気持ちに出来事があったけど、それを全部ひっくるめて感動に変えてくれる美しい話だった。人が運命的な出会いをするとどうなるのだろう?やはり運命っていうのは神様がもたらしてくれる奇跡で人生の中で運命というべき...続きを読む
  • 本心
    私自身、数年前に母が亡くなり、主人公の想いに共感できる部分が多かったです。子供を授かった今だからこそ聞きたいことが沢山ありました。小さい頃に疑問に思っていた母の言動や行動、あの時こういうふうに思ってたのかな、本当はすごく愛されていたのかな、と常にポジティブ変換しながら、自問自答しながら子育てをしてい...続きを読む
  • ある男
    めちゃめちゃはまった。平野の文体はさすがに美しい。展開もそれぞれの個性もきれいにはまっていてお見事。「ある男」を通していろんな人生を見ることができた。人間にとって過去とは何だろう。
  • マチネの終わりに(文庫版)
    筆致が美しい、平野さんらしい作品。
    前半部分だけでは、蒔野の想いは理解できるが洋子はなぜ蒔野に惹かれたかがよく分からなかった。
    後半にかけて、そのなぜが解明されてきて2人が時間や立場を越えて特別な関係であることが分かる。
    読者の方には共感出来ない、世界に入りにくいと感じる人もいると思う。
    過去が今を...続きを読む
  • 死刑について
    死刑存置派も一考する内容がある。
    被害者への配慮は、存知派の方も根本では同じではないだろうか。
    著者は自身の意見においての変遷を丁寧に書いており、賛成派も反対派も頷ける部分もあると思う。
    結論や正しさを明確に述べている書ではなく、更に理解を深め、自身の意見を構築するために著者は投げかけているのではな...続きを読む
  • ある男
    小説を見てから映画を。
    サスペンスの要素もあり、家族の物語でもあり、差別を考える内容でもある。
    確かに一緒に生きた幸福な時間があっても、自分と出会う前にどのような人生を生きてきたかは確かめずにはいられない。
    出自は自分の力ではどうすることもできないのに、そこに根強くある差別はなくらならいのだろうか。
  • 本心
    プロローグ/〈母〉を作った事情/再会/
    知っていた二人/英雄的な少年/心の持ちよう主義/
    ”死の一瞬前”/嵐のあと/転落/縁起/
    〈あの時、もし跳べたら〉/
    死ぬべきか、死なないべきか/言葉/本心/
    最愛の人の他者性


    AI で蘇る在りし日の母。
    会話することで学習する彼女はどう変わっていくの?
    ...続きを読む
  • ある男
    主人公が絶えず、色んなことを自分に返って考えていて、私もこの本を通じて、木戸さんの人生を考え方を教えてもらった。震災後の木憂鬱な社会が、震災の色々な長い影響を思い出した。だんだんと真相に迫ってくるのも面白く、あっという間に読めた。
  • ある男
    名前は生を受けて初めに授かるもの。でもそれは極論ただのラベルにすぎない。“人”を”その人“たらしめるものとは何か、を考えさせる作品だった。

    ーーー
    この作品は、ある男を中心に描かれる。彼は林業に携わりながら素朴な絵を描く男で、文房具店の娘里枝と結婚し、花という娘と連れ子の悠人と4人で暮らす、よくい...続きを読む