平野啓一郎のレビュー一覧

  • 死刑について

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    素晴らしい本だった。数十年来の考え方がガラッと変わった。
    現在、日本人の8割が死刑制度継続を支持しており、年に数件執行されている。死刑制度が無い国が多数派を占めるなか、日本で依然として死刑が行われている文化的背景などが書かれてある。
    本書を読むまで知らなかったのだが、死刑制度が無いことがEU(欧州連合)に加入する条件なのだそうだ。私が居住する国も死刑制度は何十年も前に廃止になっているが、その理由は冤罪が後を絶たないからということだった。
    死刑制度が存続する理由は、被害者に対して責任を取る、自分がしたことに対して罰を受けるというものだ。こういう行動に対して、従来から日本では潔く良いこととされてき

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    2023年06月20日
  • 理想の国へ 歴史の転換期をめぐって

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    知性、思想、お人柄において信頼という意味では間違いない大澤真幸さんと平野啓一郎さんの、2019年1月平城天皇退位宣言の直後、コロナ禍となった2020年8月そしてロシアによるウクライナ侵攻後の2022年4月に行われた対談をまとめたもの、
    コロナ禍、ウクライナ侵攻という大きなパラダイムシフトととなるような危機、事態を目の当たりにし、大変冷静に語られている。帯には、鍛え上げられた施策と言葉で日本をバージョンアップする、と書かれているが、悪夢の安倍一強政権(アベスガ時代)の後岸田政権以降もマシになりどころか酷くなるばかりの中、なかなか現実にはバージョンアップは起こりそうにない。
    大澤真幸さんは前書きで

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    2023年05月14日
  • ご本、出しときますね?

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    オードリー若林さんと作家さんの対談のような感じで進むテレビ番組の書籍化。 作家さんってなかなか面白い人がたくさんいるものだなと感じられるし、心の中はちょっと黒い人が多いのかなと。 そして、意外と作家さん同士って交流あるものなんだなと。

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    2023年04月16日
  • 葬送 第二部(上)

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    ネタバレ

    今回もかなり盛りだくさんでした。
    ✔︎ショパンのピアノ論(リストとの比較)
    ✔︎ショパンの演奏会
     →表現が秀逸過ぎて音色が聞こえるようだった
    ✔︎人々のショパンの演奏会の感想(技術面に特化した)に対してのドラクロワの反発
     →分析よりも驚嘆が先に来るはずだというドラクロワの芸術論。「知識の増加が感性の摩耗を招くというのは、どうした不幸な現象だろう?」
    ✔︎フォルジェ男爵夫人の恋心と葛藤
     →会えない寂しさと、会うことによって生じる寂しさ
    ✔︎ドラクロワの天才としての葛藤、それをヴィヨに言えなくなってしまった気まずさ
    ✔︎ショパンの事故
     →死への恐怖よりもピアノが弾けなくなる恐怖の方が大きい

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    2023年03月22日
  • 空白を満たしなさい(上)

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    ネタバレ

    平野啓一郎さんの本はやはり読みやすい…情景が簡単に思い浮かべられるというのが読んでいて嬉しい事だなと思う。
    自分の身内が亡くなってから3年後に生き返ってきたらどんな気分だろう。1年とかなら嬉しいと思うが3年となると微妙な気がする。もう亡くなったことを受け入れていたのに…という感じで。こんなことが現実世界になくて良かったな…嬉しい人も居ると思うが自分はそれよりも生き返ってからの辛いことの方が多そうだと感じた。
    徹生結局自殺だったのか…
    でもまだ何かどんでん返しがありそうで楽しみだ。

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    2023年03月17日
  • 透明な迷宮

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    記憶の連続
    寝て起きたときの自分は、昨日の自分の続きである。疑いもなく信じている。その人が、その人であることを支えるものとは何なのか。記憶なのか、記録なのか。
    日常のすぐそばに紛れている非日常を描くことで生み出されるリアリティ。人にはどこか思い当たることがあるのではないかなぁ。短編6話。

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    2023年04月05日
  • 空白を満たしなさい(上)

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    前半は、死んだ人が世界中で次々と生き返るって話でありえない設定だったのでなかなか物語に入り込めなかった。感想は下巻に続く→

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    2023年03月04日
  • ある男

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    複雑な背景に戸惑いながらも、その物語の世界に引き込まれていった。何も疑うことなく過ごす中で、触れることのない事実があるということが、衝撃的でもあった。人を愛することが人としての全てなんだと思う。家族のかたちはそれぞれであるが、子どもが穏やかに成長できるように、その根底に愛は存在して欲しい。

    #切ない

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    2023年02月24日
  • 本の読み方 スロー・リーディングの実践(PHP文庫)

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    ネタバレ

    スローリーディングを訴える、今の時代にこそ必要な良書。自分自身、早く読まないとと焦って読んでしまったことが何度もあった。それは、速読とか多読といった情報をいかに早く要点だけに絞って取り入れるかという観点のもの。一方で、スローリーディング、とりわけなぜ作者はこの一文を入れたんだろうか、なぜこんな表現なんだろうか、と立ち止まって自分なりの考えと照らし合わせてみたり、思考をさらに深めてみたりしてみてはどうだろうか?というススメである。長い時間をかけてじっくりと読んでいく、量ではなく質こそ大事、その人となりを大きく、豊かにしてくれる。そんな読書をしたいものだと思うから、じっくり腰を据えて本と向き合う。

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    2023年02月05日
  • 死刑について

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    高校生の頃、「決壊」を読んだ。
    「加害者家族の問題はあまり考えたこと無かったな…あくまでも尊重されるべきは被害者や被害者遺族だけど、加害者家族も在り人間や生活が存在するのも事実だ。それでも何よりも被害者や遺族がもっとも尊重されるべきだし、被害者遺族大なり加害者家族だろうよ」と感想を抱いた…ような気がする。印象は強かった。

    あれから10年経ち、この本で久しぶりに平野啓一郎の文章に触れた。10年も経てば人の考え方は別人のように変わる。社会や様々な環境に翻弄される生身の人間に触れた、私の道程を思い起こす本だった。
    平野氏の伝えたいことにふれるほど、とても個人的な自分自身のあゆみについて考えてしまう

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    2023年01月05日
  • 『ある男』無料試し読み

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    気になる

    いくつか無料試し読みを読ませていただきましたが、最も続きが気になりました。
    映画も上映中で、読んでから見るか、見てから読むか悩ましいところです。

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    2022年12月13日
  • ご本、出しときますね?

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    同名のテレビ番組の書籍版。対談番組なので普通の対談本として読める。内容は若林×小説家2人の対談。読んだことない人も多かったけどどの人も面白くてみんな読んでみたくなったし、小説家の皆さんのとがり方は自分とは違くて自分はやっぱ作家ではないな、とも思った。

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    2022年12月04日
  • 『ある男』無料試し読み

    匿名

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    面白い

    平野さんが提唱する分人主義を念頭に読むと見方が変わるように思う。人は誰しも割り切れない気持ちを抱えていきているのではないだろうか

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    2022年11月24日
  • 理想の国へ 歴史の転換期をめぐって

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    読み易さと内容の濃さの両方を叶えた充実した対談。この組み合わせでは当然と思えるが、改めて1990年以降の日本が辿ってきた道を考えさせられる。本筋とはやや離れるがイチローが変えたベースボール感には鳥肌がたった。

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    2022年11月20日
  • 『ある男』無料試し読み

     

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    何も見ずに読んでほしい

    映画もやってますが、個人的には小説のほうがよかった。内容がどうというよりも文字のほうが作品とあっている気がするので

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    2022年11月16日
  • ご本、出しときますね?

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    面白すぎてあっという間に完読。
    物書きの皆さんは日々何を考えてるんだろうって気になって仕方なかったので、得にしかならない!と鼻息荒めで読んだ。
    勉強になったのは、森鴎外の行き着いた哲学が
    【諦め】ということ。
    対談されていた作家さんの本や、処方された本など読みたい本が増えたので何を読んだらいいかわからない人にもオススメ。
    若林くん、佐久間さん、素晴らしい企画をありがとうございます。

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    2022年11月08日
  • 死刑について

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    この様な重たいテーマを、この短い論考で述べられていることに、まず感嘆した。著者の誠実な考え方が短く凝縮された秀逸な書である。「死刑」という国家による暴力で、問題を解決する社会でいいのか。死刑問題を考えるにおいては、この社会のあり方も含めて、大きく捉えていることが必要と思う。著者は当初は死刑賛成論者であったが、小説を書く中で反対論になった。その理由として、冤罪の問題、加害者の生育環境の問題を挙げ、根本問題として、「人が人を殺していいのか」という根本問題まで至っている。被害者に対するケアが弱いという面もある。最後に、この問題は人権として考えてみるべきであると提起している。と同時に日本の人権教育が感

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    2022年11月06日
  • ある男

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    とてもいい作品

    最近読んだ中で1番良い作品で、1番表現しにくい作品。
    最後に幸せがそこにあって、本当のことを言うべきなのかすら悩んだのではないか、その事で3回目の自殺だったのではないか...。
    想像できる限りの当事者の心情を慮ったが、正解はわからない。
    生きるとは誰しも難しいのだと、そこに立場や出自は関係なく皆悩みながらそれぞれ懸命に生きているのだと思った。

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    2022年09月17日
  • ウェブ人間論

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    何と、15年強も前の本だったということにびっくり。たしかに、FacebookやTwitter、スマホが一般化する前の時代として語られている。当時でも十分にネット社会の到来を思わされていたけど、いまになってみれば隔世の感あり。特に梅田さんの予測的発言なんか、2022年のいまとなってはどうだろうなんて底意地悪く読んでみたんだけど、けっこう的を射たこと言ってたんだなという印象。
    当時にしてどっぷりウェブ社会にハマっている梅田さんと、ちょっと懐疑的に見ている平野さんの対話が面白い。平野さんのほうがだいぶ頭カタいなあという印象。自分もどっちかというと、(いまでもなお)平野さん寄りだけどその自分ですらそう

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    2022年09月03日
  • 平野啓一郎「分人」シリーズ合本版:『空白を満たしなさい』『ドーン』『私とは何か―「個人」から「分人」へ』

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    分人と個人について

    空白を埋めなさいのドラマを観て興味を持ち読みました。統一されない人格として人を考えると破綻してしまいますが、分人としてレイヤーする状態で存在する人と捉える考え方で少し気持ちが楽になりました。また分人の好き嫌い相手にも半分責任があるという言葉で何処で誰といる時の自分の状態を分析して考えられました。
    自分という言葉も自らが分かる なのか 自ら分るなのか語源を調べて考えてみようと思いました。文明開花がもたらした意識改革は東洋的な自己理解とは異なりつつ整理できないままでしたが本書で整理できました。

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    2022年08月06日