平野啓一郎のレビュー一覧
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ネタバレ表題作を含む、6編の短編が収められています。
どれもちょっと不思議で、背中をぞわぞわ感が這いあがってくる平野氏らしい物語。「火色の琥珀」は、火に性的興奮を覚える(?)いわゆる火フェチな男性の話。リアルで怖い。本当に変態的な(失礼)フェチの人とかに取材して書くのかなぁこういうの。想像力のたまものかなぁ。
「透明な迷宮」は海外で変な集団につかまってしまった男女のその後…。これも最後が怖い。AをBと思って行動していたら実はBはAだった、それで今度こそ本当にBをAと思って行動しようと思ったら今度はAがBだった、みたいな。結局どこからどこまでが自分の真実の感情なのかわからない、どうすりゃよかったのかもわ -
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ネタバレ平野啓一郎くんの壮大な長編。
壮大すぎてレビューが長くなりそうだけど書いてみる。
舞台は21世紀半ばの近未来。
私たちは、いろいろなものが進化しすぎて複雑化し、世の中がこの先どこへ進んでいくか想像もつかないけど、小説の中ではやはりまだまだ世界は複雑に進化している。
整理すると…
○人類は火星に降り立つ
○アメリカはアフガン戦争に続き、「東アフリカ戦争」なるものに介入している
○東京大震災がおこり、甚大な被害が出た
○テレビ電話的なものが更に進化し、通話相手がホログラムで目の前に登場
○車は「自動運転レーン」を走ったりする(しかしウィルスによって事故ることも)
○「無領土国家」なるものが登場 -
Posted by ブクログ
ネタバレありきたりな言い方しかできないけど、ほんとに本当に、読み応えのあるすごい小説です。
「ドーン」も、宇宙開発から米大統領選まで、すごい壮大な話でありながら、最終的には「愛」のストーリーだったことに驚かされたけど、これはタイトルからしてもちろん「愛」の話です。
「愛とは何か」っていう究極の問いから書かれた小説なのか、分からないけど、お腹に「ずん」と来る読み応えのある場面が随所に出てくる。
事故の場面、事故にあった女優をたすけた主人公の“相良”が、彼女に会いに行く場面、彼女と体を重ねる場面、「魔性の女」と言われた彼女が縁を切れなかったヤクザな男との対決場面・・・。
あと、いい小説は、脇役のキャラが -
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ネタバレ短編「清水」
中編くらいの表題作「高瀬川」
詩「追憶」
2つの小説が並行して進む実験的な「氷塊」
の4つが入っています。
「高瀬川」と「氷塊」はすごく良かった。
「高瀬川」は、最終的にパンティがペットボトルに入って流れて行っちゃう話。
その情景がすごく印象的なのと、コトに及ぶ男女の会話のぎこちなさが良い。
村上春樹の小説で男女の会話がウィットに富んでいてリズミカルな感じなのと真逆で、すごくぎこちなく恰好悪く描いているのが妙に魅力的。
「氷塊」はページの上半分が少年目線、下半分が30代の女性目線で進んで行って、ときどき真ん中に共通目線の文章が差し込まれる。
どう読むかは読者次第だと思うが、読み -
購入済み
非常にリアリティと親近感を覚えます。
しかも、その前後の2人の心理、回想、受能動的な先への向かい、
身に覚えすら感じ、震えと奇妙な安堵すらもたらしてくれました。 -
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「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。」
作中で洋子が何度か思い出す蒔野のこの言葉。この本の最後の1シーンを読み終えた後に思うことは、その後2人の過去は幸せな記憶として変わったのかどうかということと、そうあって欲しいと思うこと。
それは2人が尊敬しあえる友人としてではなく恋人としてあの夜の続きを進めることで変えて欲しいと思った。
2人のその後は読者のご想像にお任せしますという感じだったので、最後に蒔野が洋子に会う直前に思い返した幸福の硬貨の一節にあるように.....彼らは、きっと -
購入済み
完全版が読みたくなる
作品紹介によると謎の多い複雑な話のようで、謎が解明されていくのを追っていく興味だけでなく、読者自身が感じ、考える。何を、かは、それこそ読んでのお楽しみ。人それぞれ違って、そこが、いわゆるミステリーとは違う醍醐味ではないか、と思います。
この無料お試し版で読める第三章までで、登場人物と謎のさわりが分かるので、これは完全版で最後まで読むしかない、そして読み終わった後の自分の感想が楽しみ、という感じです。 -
購入済み
距離感が程良いです
人と人との程良い距離感が感じられる良い作品でした。仕事の同僚、親と子と孫、夫婦、そして男と女。ちょっとしたボタンの掛け違いから生じる人間関係が、最近の実際の社会的事件と相まって、実にリアルでした。
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Posted by ブクログ
この軽薄そうなタイトルに対してこのボリューム。
新書というのは‘掲げたテーマを簡潔に読者に語る’というのをそのスタイルとしたのだと思っていたのに…。だからこの本を手に取った時は『何考えてんだ?』と呟いてしまった。
著者の平野啓一郎氏も悪いと思ったのか「第10章にはまず目を通し、肝となる第3章、4章を読んでもらえれば…」と多方面の歴史をひもときながら解説するうちに、参考文献の量が多くなったことを詫びている。
でも、この本の厚さに負けて、第10章だけを読んだ人は、全く面白さがわからなかったことだろうし、その後に肝となる第3章、4章を読んでもやっぱり、平野氏の「カッコいい」に対する熱量は伝わらな