平野啓一郎のレビュー一覧

  • マチネの終わりに(文庫版)

    距離感が程良いです

    人と人との程良い距離感が感じられる良い作品でした。仕事の同僚、親と子と孫、夫婦、そして男と女。ちょっとしたボタンの掛け違いから生じる人間関係が、最近の実際の社会的事件と相まって、実にリアルでした。
  • 「カッコいい」とは何か
    この軽薄そうなタイトルに対してこのボリューム。
    新書というのは‘掲げたテーマを簡潔に読者に語る’というのをそのスタイルとしたのだと思っていたのに…。だからこの本を手に取った時は『何考えてんだ?』と呟いてしまった。
     著者の平野啓一郎氏も悪いと思ったのか「第10章にはまず目を通し、肝となる第3章、4章...続きを読む
  • 「カッコいい」とは何か
    平野先生のカッコよさについての思考をひたすら追っていく本。かなり長めで読み応えがあります。最終章に議論のまとめがあり、正直大変助かりました。
  • 「カッコいい」とは何か
    相も変わらず流れるような、しかし決して感情に押し流されない文体と執拗なまでの深堀りが気持ち良い。「本の読み方」も小説やエッセイ、ましてその辺の新書にあるような似非学術とは解離している、新しい文芸ジャンルだった。本書はさらにそれを確立した感がある。
    かなり難解な思考も繰り返し別方向から例示されるため、...続きを読む
  • 「カッコいい」とは何か
    本屋で見かけて即購入を決めた本。タイトルの通り「カッコいい」という言葉やそれが表す概念について丁寧に考察した本です。語源についても「格好いい」と「カッコいい」との意味の違いというところから、他の似た概念を表す言葉を日本語、他の言語も含めて考察「重ねています。言葉の使われ方や表すものを理解する上では当...続きを読む
  • 日蝕・一月物語
    世界観がすごい。読み進めるうちに異世界に連れ込まれるかのよう。大学生のうちにこの文章を書き上げることができる才能に嫉妬。
  • これからの教養 激変する世界を生き抜くための知の11講
    多数のジャンルの話をまとめてくださっているので、自分の好奇心の幅が広げる、とても良い機会となりました。
    特に資本主義のお話や、アートのお話。デザインではなくアートというジャンルが私にとってはとても新鮮でした。改めて、勉強したくなりました。
  • ある男

    本屋大賞の本命ナンバーワン!

    真実の内容や、個人の性格、環境にもよると思いますが、 過去を知ってしまった以上、何も知らなかった時と同じような関係を続けていくのは、やはり難しいと思います。

    里枝の場合は、あの三年九ヶ月は幸福だったのだと括られ、相手を亡くしているので、新事実でも出てこない限り、思いが変わることはないでしょう...続きを読む
  • ドーン
    この「ドーン」という作品、結構な長編だし、場面の切り替わりに頭がついていけなくて最初は結構読み進めるのに苦労したのだけど、平野啓一郎さんが書く半分SF的な未来絵の結末がどうなるのかを知りたくて、少しずつ読み進めました。まず、面白いと思ったのは分人という考え方。本の中では、「日本語で〈分人〉って言って...続きを読む
  • 決壊(上)
    沢野家の長男、崇が中心となってはいますが、数多くいる登場人物のそれぞれの心の陰影が細かく描き分けられた群像劇風に仕立てられています。
    難解というほどではないが、ほどよく読み応えのある文章で、読んでいて心地よかったです。
    神戸連続児童殺傷事件や秋葉原通り魔事件を受けて、そのような犯罪を犯す人物の心理や...続きを読む
  • 決壊(下)
    主な感想は上巻に書きました。

    いろいろな終わらせ方の可能性があったと思うが、著者があれを選んだ理由についてはじっくり考えてみたい。
  • ある男

    人生

    色々な人生があります
  • 決壊(下)
    豊富な表現と筆力に引き込まれ、上下巻一気に読んでしまいました。読後は徒労感と悲しみが心を蝕ばみます。重くのしかかる小説です。

    名も無い他人の底知れない悪意に恐怖しました。カフェで読み終えましたが、読後周りにいる他人を無性に怖く感じました。冷淡な社会に対して、信頼感をもてずにいる自分と、自分も他人か...続きを読む
  • サロメ
    戯曲。これがとても面白かった。今はもうこういうの出てこないだろうけど新訳で読みやすくなり雰囲気がつかみやすかった。何を見るかによって印象が違うかもしれないがそれぞれに何かを象徴していて印象的だった。
  • マチネの終わりに
    たった5年半の間の事とは思えない
    色んな事があり過ぎた。

    大人の愛はもどかしいな
    自分に正直にガツガツ行けば良いのにね

    そうすればもっと展開は変わっていたはず
  • 透明な迷宮
    一つの体験を複数の人間が体験した時に、それぞれがどう感じ、どう行動するかの違いとか、自身の選択の結果で人生が決まっていること、他人の影響が自分の人生に関与してくることを、複数の短編を読みながら考えた。
  • かたちだけの愛
    『一日二四時間の中で、人間が考えられることって、三つしかないと思うんです。ー過去のことか、現在のことか、未来のことか。』

    『人はなるほど、たまたまそんなふうに誰かを見ることなど出来ないのだろう。彼の中の何かが、そんなふうに彼女を見させていた。』

    『私は、人間のへそ曲がりなんだと思いますね。完璧だ...続きを読む
  • 葬送 第二部(下)
    結核に冒されたショパンに遂に死が訪れる.ショパンの矜持と高潔さ,一方の画壇の異端者ドラクロワの生きるための処世術と密かな望みが対比され,二人の友情を軸に,スターリング嬢を代表とする周りの人々の視野の狭さや俗さ,あるいはショパンの死に際しての悲しみ,サンド夫人親子の確執などの多層構造を,ポトツカ伯爵夫...続きを読む
  • 葬送 第二部(上)
    二月革命の余波で,貴族に対するピアノレッスンによる生活が立ちゆかなくなり,病身を押してのイギリス渡航を決行するショパン.しかし,それはショパンの体をさらに弱らせるばかりであった.一方,天井画を完成させたドラクロアは革命後も上手く立ち回るのだが,友人ヴィヨに関してショックな出来事が起こる.
    時代と病に...続きを読む
  • かたちだけの愛
    「分人」という単語が直接出てくるわけではないが、2人の人間がいかにして「分人化」するか(関係を深めていくか)というのが主題となっている。
    平野作品の中では読みやすい、爽やかなラブストーリー。
    2人の肌と肌(指先)が初めて触れ合う瞬間の描写が秀逸。