平野啓一郎のレビュー一覧

  • かたちだけの愛

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    ネタバレ

    ありきたりな言い方しかできないけど、ほんとに本当に、読み応えのあるすごい小説です。
    「ドーン」も、宇宙開発から米大統領選まで、すごい壮大な話でありながら、最終的には「愛」のストーリーだったことに驚かされたけど、これはタイトルからしてもちろん「愛」の話です。
    「愛とは何か」っていう究極の問いから書かれた小説なのか、分からないけど、お腹に「ずん」と来る読み応えのある場面が随所に出てくる。

    事故の場面、事故にあった女優をたすけた主人公の“相良”が、彼女に会いに行く場面、彼女と体を重ねる場面、「魔性の女」と言われた彼女が縁を切れなかったヤクザな男との対決場面・・・。
    あと、いい小説は、脇役のキャラが

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    2021年05月30日
  • 高瀬川

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    ネタバレ

    短編「清水」
    中編くらいの表題作「高瀬川」
    詩「追憶」
    2つの小説が並行して進む実験的な「氷塊」
    の4つが入っています。

    「高瀬川」と「氷塊」はすごく良かった。
    「高瀬川」は、最終的にパンティがペットボトルに入って流れて行っちゃう話。
    その情景がすごく印象的なのと、コトに及ぶ男女の会話のぎこちなさが良い。
    村上春樹の小説で男女の会話がウィットに富んでいてリズミカルな感じなのと真逆で、すごくぎこちなく恰好悪く描いているのが妙に魅力的。
    「氷塊」はページの上半分が少年目線、下半分が30代の女性目線で進んで行って、ときどき真ん中に共通目線の文章が差し込まれる。
    どう読むかは読者次第だと思うが、読み

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    2021年05月30日
  • 「カッコいい」とは何か

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    「カッコいい」という感覚を言語化することの奥深さを知った。

    感覚的なイケてる、ヤバい、スゴいといった言葉にも共通する「理屈抜きの形容詞」をどのように明らかにするかということは、自分の美学を確認することに違いない。

    自分にとってのカッコいいとは何か、を突き詰めることは自分探しと言える。

    単なるルッキズムと言い切れない。
    カウンターカルチャーとしての反骨精神、感情をコントロールできる人、家族や身近な人をまもれる人、卓越した職人技を持っている人、、などなどもカッコいい。

    かわいいは目下に使う。
    カッコいいにはリスペクトを含む。

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    2021年04月14日
  • 悲しみとともにどう生きるか

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    個人的に興味深い作者名が並んでいたこともあり、本屋で衝動買いしたもの。ただひたすら真摯に、悲しみと向き合ったからこそ到達し得た心境が、ことばで生きている諸氏によって語り起こされる内容は圧巻で、それぞれに異なった対峙方法にも関わらず、通底する温もりは十分に享受できる。心のどこかに本書の存在を認識しているだけで、ずいぶん楽に感じられる、そんな座右の一冊。

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    2021年01月12日
  • ドーン

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    『空白を満たしなさい』に続いて分人主義が通奏低音になっている作品で、監視カメラネットワークやAR(拡張ではなく添付)そして火星有人探査などの実現する近未来が舞台。ただそこで語られるテーマは紛争、移民、そして民主主義のあり方など「近い将来ありある」というよりすでに今現在の私たちの社会で起こっていることを考えさせるものです。今年はちょうど米大統領選の年ですし、日本でも首相交代が行われたタイミングでもあるのでこの本を読んで少しだけ考えてみても良いのでは。

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    2020年10月03日
  • 『ある男』無料試し読み

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    偏狭な民族意識や差別感情の
    あふれる現代に「暮らしながら」「悩みつづける」私たちが読んでおくべき逸品であると思う。

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    2020年09月30日
  • 『マチネの終わりに』無料試し読み

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    非常にリアリティと親近感を覚えます。
    しかも、その前後の2人の心理、回想、受能動的な先への向かい、
    身に覚えすら感じ、震えと奇妙な安堵すらもたらしてくれました。

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    2020年09月30日
  • ドーン

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    すごいよかった!

    いまは強固で社会の地盤となってるものごと、
    みんなが持ってる価値観が
    将来は跡形もなくなくなってるのかもしれない。
    と同時に人間が未来も解決できない
    しょうもない問題もあるんだなぁ

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    2020年09月10日
  • 「カッコいい」とは何か

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    ネタバレ

    いやあ、平野啓一郎の洞察は深いなあ。そして難しいテーマも簡潔に整理されていて、それでいて何度でも読み直したい。まさにクール。この新書自体が「カッコいい」な。印象に残ったのは、カッコいい人は、カッコいい名言を残しているということ。しびれるような経験を言語化することができて初めて物語に内包されて体感されるということ。カッコいいを語るにも知性が必要なんだなあ。

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    2020年09月06日
  • マチネの終わりに(文庫版)

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    「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。」

    作中で洋子が何度か思い出す蒔野のこの言葉。この本の最後の1シーンを読み終えた後に思うことは、その後2人の過去は幸せな記憶として変わったのかどうかということと、そうあって欲しいと思うこと。
    それは2人が尊敬しあえる友人としてではなく恋人としてあの夜の続きを進めることで変えて欲しいと思った。

    2人のその後は読者のご想像にお任せしますという感じだったので、最後に蒔野が洋子に会う直前に思い返した幸福の硬貨の一節にあるように.....彼らは、きっと

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    2025年11月04日
  • 『ある男』無料試し読み

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    完全版が読みたくなる

    作品紹介によると謎の多い複雑な話のようで、謎が解明されていくのを追っていく興味だけでなく、読者自身が感じ、考える。何を、かは、それこそ読んでのお楽しみ。人それぞれ違って、そこが、いわゆるミステリーとは違う醍醐味ではないか、と思います。
    この無料お試し版で読める第三章までで、登場人物と謎のさわりが分かるので、これは完全版で最後まで読むしかない、そして読み終わった後の自分の感想が楽しみ、という感じです。

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    2020年05月29日
  • 決壊(下)

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    初、平野作品。長編の上下巻で圧倒的な読み応え。
    ストーリー展開よりも人間の思想、行動に重点が置かれ、純文学的な描写が難しいが今まで読んだことのないようなもので新鮮だった。夢に出てくるだろうな…と思ったら本当にでてきて恐ろしかった。

    登場人物が次々と壊れていく。
    読んでよかったけど、読まなければ良かったとも思えた。
    読むのに体力がいります。晴れた日の、日中に読むことをオススメします。

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    2020年06月01日
  • マチネの終わりに(文庫版)

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    距離感が程良いです

    人と人との程良い距離感が感じられる良い作品でした。仕事の同僚、親と子と孫、夫婦、そして男と女。ちょっとしたボタンの掛け違いから生じる人間関係が、最近の実際の社会的事件と相まって、実にリアルでした。

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    2020年04月10日
  • 「カッコいい」とは何か

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    この軽薄そうなタイトルに対してこのボリューム。
    新書というのは‘掲げたテーマを簡潔に読者に語る’というのをそのスタイルとしたのだと思っていたのに…。だからこの本を手に取った時は『何考えてんだ?』と呟いてしまった。
     著者の平野啓一郎氏も悪いと思ったのか「第10章にはまず目を通し、肝となる第3章、4章を読んでもらえれば…」と多方面の歴史をひもときながら解説するうちに、参考文献の量が多くなったことを詫びている。
     でも、この本の厚さに負けて、第10章だけを読んだ人は、全く面白さがわからなかったことだろうし、その後に肝となる第3章、4章を読んでもやっぱり、平野氏の「カッコいい」に対する熱量は伝わらな

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    2020年02月02日
  • 日蝕・一月物語

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    世界観がすごい。読み進めるうちに異世界に連れ込まれるかのよう。大学生のうちにこの文章を書き上げることができる才能に嫉妬。

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    2019年04月16日
  • これからの教養 激変する世界を生き抜くための知の11講

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    多数のジャンルの話をまとめてくださっているので、自分の好奇心の幅が広げる、とても良い機会となりました。
    特に資本主義のお話や、アートのお話。デザインではなくアートというジャンルが私にとってはとても新鮮でした。改めて、勉強したくなりました。

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    2019年03月22日
  • ドーン

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    ネタバレ

    この「ドーン」という作品、結構な長編だし、場面の切り替わりに頭がついていけなくて最初は結構読み進めるのに苦労したのだけど、平野啓一郎さんが書く半分SF的な未来絵の結末がどうなるのかを知りたくて、少しずつ読み進めました。まず、面白いと思ったのは分人という考え方。本の中では、「日本語で〈分人〉って言ってるその dividual は、〈個人〉individualも、対人関係ごとに、あるいは、居場所ごとに、もっとこまかく『分けることができる』っていう発想なんだよ。(中略)相手とうまくやろうと思えば、どうしても変わってこざるを得ない。その現象を、個人 individual が、分人化 dividuali

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    2018年12月28日
  • 決壊(下)

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    主な感想は上巻に書きました。

    いろいろな終わらせ方の可能性があったと思うが、著者があれを選んだ理由についてはじっくり考えてみたい。

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    2018年12月24日
  • 決壊(上)

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    沢野家の長男、崇が中心となってはいますが、数多くいる登場人物のそれぞれの心の陰影が細かく描き分けられた群像劇風に仕立てられています。
    難解というほどではないが、ほどよく読み応えのある文章で、読んでいて心地よかったです。
    神戸連続児童殺傷事件や秋葉原通り魔事件を受けて、そのような犯罪を犯す人物の心理や、罪とは何かという問題にまで踏み込んでいます。

    崇のセリフあたりはドストエフスキーを意識しているのかなと感じました。
    この崇という人物がまた多面性があって一筋縄ではいかないのですね。主人公になるぐらいだからこういうタイプの人間は結構特殊なんでしょうか?

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    2018年12月24日
  • 決壊(下)

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    ネタバレ

    豊富な表現と筆力に引き込まれ、上下巻一気に読んでしまいました。読後は徒労感と悲しみが心を蝕ばみます。重くのしかかる小説です。

    名も無い他人の底知れない悪意に恐怖しました。カフェで読み終えましたが、読後周りにいる他人を無性に怖く感じました。冷淡な社会に対して、信頼感をもてずにいる自分と、自分も他人から見ればその冷淡な社会そのものであるという事実に震えます。良介の最後の叫びには涙が止まりませんでした。

    「空白を満たしなさい」「マチネの終わりに」に続いて読んだ平野啓一郎さんの作品でしたが、分人主義の鱗片がこの作品からも読み取れました。自分が知っていると思っている人が本当はどんな人間なのか、それは

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    2018年03月26日