自分の感情を細かく認知できるようなると、あらゆるアウトプットの質が高くなる。感情を理解することで、自分の価値観や行動特性を理解できたり、感情に脳が支配されずに冷静かつ主体的な行動が選択できたり、他人への過度な期待に苦しめられなくなったり、様々な効果がある。
感情に対して、認知、受容、(行動)選択のプロセスが紹介されている。
1.認知
感情には、強弱や基本感情が混ざったものがある。強弱は、イライラ、怒り、激怒のようなもので、混ざったものは、喜び(平穏)と信頼(受容)が混ざったものとして愛などがある。今感じているものが、どの感情なのか理解する(プルチックの感情の輪が有効なツール)。そして、何に対してその感情を感じたのかを理解する。例えば、相手に怒っているのか、自分に怒っているのか、何を不安に思っているのか、など。ここで、感情を相手に手渡さないことが重要である。相手に手渡すと思考停止に陥る。認知とは、表層的な感情だけでなく、そこに紐づく別の感情や価値観を理解する。
2.受容
嫌悪、嫉妬、不安、惜しみなど一般的にネガティブな感情は認めて受け入れることは難しい。しかし、すべての感情には意味と価値があり、もってはいけない感情などない。例えば嫉妬も自分が何に対して嫉妬するのか知るチャンスでもある。悲しみがあるから、わび、さび的な美しさを感じることができる。
3.選択
感情のどの部分に注目するかで、自分が求める選択が見えてくる。例えば、
・不安はわからないこと
・恐怖は手に負えないこと
・怒りは大切なものが脅かされること
・喜びは獲得したこと
・安らぎはみたされていること
・悲しみは失われること
に関連する。
自分の感情を受容したうえで、どの感情に注目し、自分の納得できる答えを出し、行動を選択する。
ここで、私がこの本を読んでいる間に起った、認知、受容、選択のプロセスを紹介する。
①事象発生
ある朝、自分の有給休暇予定日に自分の出席が必要な会議の案内メールが入っていた。なぜ私の参加が必要な会議を私の休みの日に入れたのだ?その日は、友人と遊ぶ約束をしていたし、その友人に対しては前回リスケしてもらったので、もう一度というわけにはいかない。私には、何かを言う権利はある!
②感情のラベリング(認知)
プルチックの輪を見て、この感情は怒りであることを特定した。うすうすは気づいていたが、改めて言葉にすると原因をつかみやすい。
③感情の原因の抽象的理解(受容①)
怒りはじぶんが大切にしているものが脅かされるときに発言する感情である。この場合、大切なものは自分の存在で、それが蔑ろにされたことに怒っているとわかった。
④感情の原因検証(受容②)
自分は本当に蔑ろにされたのか。可能性としては、a.相手は私の予定を見たうえで、私の予定なんてどうでもよいと思って予定をいれた、b.相手は私の予定を水に、他の重役の予定から設定した、の2つが考えられた。客観的状況から、bである可能性が高い。そうすると大切にしたものが脅かされたわけではないと、怒りが収まった。
⑤対策の立案・決定(選択)
15:30-17:00の打合せなので、電車に乗ってもらい一足早くホテルに入ってもらってゆっくりしてもらおう。観光の時間は少し減るが、なんとかなりたいそう。
①~⑤のプロセスを経ることで、怒りは完全に収まり、建設的な対応をとることができた。
恥について
人間が持ちうる高級な感情。罪に似ているが、罪の告白は英雄になれるが恥はなれない。常識や自分が良いと思っているところから外れた時に感じる。
罪について
社会・自分ルールを破ったことに対する感情。罪の反対は功。
悲しみ
怒りと悲しみは近い。あるべきものがないことに対する感情。失ったものをどう受容する。あきらめるの語源は明らむ(明らかにする)。
絶望
野望 身の丈を超えた。制約を無視した。大きい。強い意志。
希望 身の丈に合った。かなうことが前提。ゆるく握った。
絶望 かなうことを待ち続けている状態。その状態に縛り付けられ不自由な状態。しかし、本当の絶望とは縛り付けから解放された状態を作るもの。
怒り 期待との乖離。歴史上の革命には怒りが関与している。怒りは何かの感情とセットになりやすい。例えば悲しみ+怒り、くやしさ+怒りなど。怒りは瞬間的、悲しみは継続的。悲しみは一つ、怒りは多様。
例えば、何かの可能性を奪う行為に怒り。嘘やこそこそに怒り。思い通りにならないことに怒り。他人を配慮せず自分勝手なふるまいに怒り。こちらの行為や配慮に鈍感で蔑ろにする行為に怒り。
誇り
自分に対して感じにくい。他人や所属集団に対して感じやすい。
堂々と見せる誇りとポケットの中で握りしめながら、自分のいる場所の確からしさを感じる手のひらサイズの誇り。
プライドとは何か強く守りたい。不利な状況でしがみつく根拠(誇りまでは奪われない)。根拠のない自信を根拠あるように見せる。
驚き
どんな感情の前にも小さな驚きの感情が存在している。心が動く=驚き=チャンス。体験知。瞬間的。「●●では」ではなく、「●●」とはで話す。
安心
居場所。受け入れられている感覚と自分らしくいられる場所。与えられた仮面をつける居場所と外す居場所。場所で名前を変える。
役割を与えられる=自由との引き換え。自分はここにいていいんだという気持ち。いつでも仮面を外せるという自信。
感謝
自分の心が動いたことをまっすぐに相手に伝えること。一方通行でいい。感謝が伝わるかどうかは相手にゆだねる。感謝は伝えるものではなく、伝わるもの。
最後に当たり前のことが当たり前ではないことに気づき、幸せを感じる。感じなくなるのは、慣れと教育の問題があると思う。特に教育は、資本主義の計画性と再現性に対し、不確定要素となる感情をできるだけ排除しようという暗黙の合意があるように思う。まずは、慣れない、バカになる。
いる、する、なる(一緒にいる、何かを一緒にする、年に2回旅行する関係になる)。