平野啓一郎のレビュー一覧

  • 葬送 第一部(下)
    ここで中心となって描かれるのはサンド夫人の娘であるソランジュと彫刻家のクレサンジェとの結婚と、金の絡んだ複雑な愛憎劇です。俗になろうと思えばいくらでもなるテーマをここまで重厚に纏め上げるのは凄いです。

    やっと。やっとのことで読み終えました。しかし、これでもまだ道半ば。まだ後半分残っているかと思う...続きを読む
  • 葬送 第一部(上)
    ロマン主義の全盛期、十九世紀パリ。音楽家ショパンと画家のドラクロワとの友情を軸とし、女流作家でショパンの愛人でもあるジョルジュ・サンドを始めとする人物たちが織り成す豪華絢爛な芸術賛歌を描いております。

    これは自分の中でずっと読むのを避けていた小説のひとつで、理由はというとなんといってもテーマの重...続きを読む
  • 葬送 第二部(下)
    19世紀のショパン(晩年)とドラクロワを中心に、天才と死について描いた物語。芸術論など難解な個所も多いけど、音や絵を細やかに言葉を使い分けて文章化し、表現しているところがすごい。第2部の方が好きでした。第一部がサンド夫人とその家族の葛藤などが描かれていたのに対して、二部の方がショパンの演奏が多く、音...続きを読む
  • サロメ
    まずは新訳。表紙がなかなかホラー。そのうち鴎外にもとりかかりたいです。
    言葉が右往左往する様が不穏でしゃーない(ドM顔で)
    あとすごくほも
  • 決壊(上)
    圧倒的な知識量で描かれる渾身の現代ミステリ。

    まだ事件の起きない上巻では家族、友人、恋人に対して抱く微かな「不信感」や、自分以外が他者であるがゆえの「心のズレ」を感じる違和感を巧みに書いている。

    人間関係を上辺では体裁良く保っていても、日常的に心の奥底に感じている上記のような空虚感は誰でも抱いた...続きを読む
  • 決壊(上)
    小難しい文章を書くイメージの平野さんだったが、というか過去に読んだ初期2作とは文体が違ったので、読み始めてすぐに過去に読んだ作品よりも読みやすくてこれは楽しめるかもと思い、なんてことない話が続く前半の時点でぐいぐい引き込まれていった。
    上巻を半分ほど読んだあたりで、世界が広がっていく感覚というか、長...続きを読む
  • 葬送 第二部(下)
    死にゆくショパンを中心に描いた巻
    この本を読んでいた2週間に
    iPodにショパンのプレイリストを作成して通勤の間にヘビーローテーションしたり、PCの壁紙をドラクロワの名画のスライドショーにしたりと、作品の世界にどっぷり浸かり込んでいた私には非常に辛かった、早く楽になって欲しかった。

    ドラクロワはシ...続きを読む
  • 葬送 第二部(上)
    ショパンの演奏会のシーンが素晴らしい。
    個人的にはバカみたいに鍵盤に指を叩きつけるような演奏が好きなのですが、ショパンの考えたピアノという楽器の使い方を聴いてみたくなった。

    その後英国に移り、ショパンの体調は悪化する。
    あんなもん、スターリング嬢に体調を悪化させられたようなものだ。
    ショパンかわい...続きを読む
  • 葬送 第一部(上)
    冒頭のシーンに惹かれ読み始めた。
    サンド夫人の意固地さにちょい引き気味。
    カタカナの名前は苦手だ。
  • 決壊(上)
    優秀で世界を冷淡に見つめる兄と平凡な日常を愛する弟。テーマは犯罪といえば結構シンプル…かもしれないが。犯罪はあくまで題材であり、テーマは宗教観や世界観といった領域にまで踏み込んでいる。上巻は、ストーリがようやく進みだしたといった内容。
  • 決壊(上)
    順風満帆と思える生活の中で自殺願望を抱く兄、妻子がいながら満たされず疑念を抱く弟、隠居生活でうつ状態に陥る父、周りから浮いてしまっている中学生、そこに<悪魔>が忍び寄り、決壊が始まる。
    ***
    一回読んだだけでは理解できていなかった、崇の内省的な苦悶や哲学的な思索の数々が、<悪魔>の登場後に改めて浮...続きを読む
  • 文明の憂鬱
    文明という巨大な対象を、日常レベルの細かな観点から考察し抜いている。

    著者は日々こんなことを考えて生きているのだろうか。
    生きているうちに経験するあらゆる事象が、興味深さを備え始める。
  • 葬送 第二部(上)
    天才音楽家ショパン。
    生きたいと願いつつも病に冒されてゆく「生」。

    ショパンの友人であった天才画家ドラクロワ。
    老いを感じいつか訪れる死を感じながら生きる「生」。

    この本はショパンやドラクロワの生きた1800年代においても2000年を過ぎた現代においても共通する主題で描かれている。それは「生と死...続きを読む
  • 葬送 第一部(下)
    解説に作者のことばとして
    「ある真理を明示的に分割してひとつひとつの要素で描き、それらが読者の心の中であわさった時、直接的には表現しにくい複雑な真理がいきいきと理解されるように試みた」とある。

    なるほど、丹念な状景描写や心理描写は総合的に相まって、読者(私)が抱えている言い表せない心情を言い表して...続きを読む
  • 葬送 第一部(上)
    [ (注) 思ったこと感じたことをそのまま勢いで書いているので読みにくく、まとまりがないかもしれません。ご勘弁を。]

    まず装丁。
    大抵は単行本の方が良いのだけど『葬送』は文庫の装丁の方がいい。
    たぶん単行本の方はショパンのイメージなんだろうと思う。軽やかで繊細で華やかで。
    それに替わって文庫本の方...続きを読む
  • 葬送 第一部(上)
    ショパンに関する小説で、これほどのものはもう誰も書くことはできないだろう。この完成度に圧倒される。

    とにかく文章が美しい。
    言葉のひとつひとつが選び抜かれ、表現の精緻さが際立っている。
    その選ばれた言葉はこれでしかありえないという洗練であいまいで表現しにくいニュアンスを余すとこなく伝える。 ...続きを読む
  • 葬送 第一部(上)
    冒頭、ショパンの葬儀の様子。本編は、ジョルジュ・サンドと不仲になり始めた頃のショパンから葬儀の少し後までのお話。ショパンとドラクロワという2人の芸術家の視点をメインに、周囲の人々の視点からも時代を浮き彫りにしていく。語り手の移行の滑らかさと正鵠に描かれている感情が素晴らしい。また、ドラクロワの芸術論...続きを読む
  • 高瀬川
    3/6
    「氷解」は上下二段で別の視点人物から物語を描いており、二人が共有する世界を描くときだけ中段に文字が置かれる。
    言説/内容にもう一つの観点が用いられるようになった現代小説の先鋒。
    青山真治の解説も秀逸。
  • あなたが、いなかった、あなた
    2/3
    文学の限界を超える。
    三重の構造になっていたり(「『フェカンにて』」)、同じ言動をする人物の背景だけ変えてみたり(「母と子」)。
  • 葬送 第一部(上)
    購入済み

    内容(「BOOK」データベースより)
    ロマン主義の全盛期、十九世紀パリ社交界に現れたポーランドの音楽家ショパン。その流麗な調べ、その物憂げな佇まいは、瞬く間に彼を寵児とした。高貴な婦人たちの注視の中、女流作家ジョルジュ・サンドが彼を射止める。彼の繊細に過ぎる精神は、ある孤高の画家をその支...続きを読む