平野啓一郎のレビュー一覧
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購入済み
完全版が読みたくなる
作品紹介によると謎の多い複雑な話のようで、謎が解明されていくのを追っていく興味だけでなく、読者自身が感じ、考える。何を、かは、それこそ読んでのお楽しみ。人それぞれ違って、そこが、いわゆるミステリーとは違う醍醐味ではないか、と思います。
この無料お試し版で読める第三章までで、登場人物と謎のさわりが分かるので、これは完全版で最後まで読むしかない、そして読み終わった後の自分の感想が楽しみ、という感じです。 -
購入済み
距離感が程良いです
人と人との程良い距離感が感じられる良い作品でした。仕事の同僚、親と子と孫、夫婦、そして男と女。ちょっとしたボタンの掛け違いから生じる人間関係が、最近の実際の社会的事件と相まって、実にリアルでした。
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Posted by ブクログ
この軽薄そうなタイトルに対してこのボリューム。
新書というのは‘掲げたテーマを簡潔に読者に語る’というのをそのスタイルとしたのだと思っていたのに…。だからこの本を手に取った時は『何考えてんだ?』と呟いてしまった。
著者の平野啓一郎氏も悪いと思ったのか「第10章にはまず目を通し、肝となる第3章、4章を読んでもらえれば…」と多方面の歴史をひもときながら解説するうちに、参考文献の量が多くなったことを詫びている。
でも、この本の厚さに負けて、第10章だけを読んだ人は、全く面白さがわからなかったことだろうし、その後に肝となる第3章、4章を読んでもやっぱり、平野氏の「カッコいい」に対する熱量は伝わらなかったのではないだろうか。まるで、教科書を読んで、その後にかなり詳しい参考書を読んだくらいの感覚だろう。
私は平野氏のように多趣味ではないので、こんなに多方面から「カッコいい」を見つめることはできない。だから、知らない音楽やファッション、エンタメなどのカタカナをググりながら、彼の連れて行く多方面の「カッコいい」が紹介されている477ページに付き合った。
そして、こんなにもの分量の言葉を積み重ねないと、しっくりと「カッコいい」が伝えられたと感じられなかっのか。という思いにもなった。
それは平野氏の言っている『「カッコいい」は体感で「しびれ」をともなうもの』で、言葉で説明べきるものではないということの証でもあることを語ってもいる。
今日のお昼、DVD で『ボヘミアンラプソディ』を観たのだけど、昔、フレディ・マーキュリーの歌を初めて聴いたときにまさに『しびれ』が体を走ったのを思い出した。
まさに「カッコいい」とはこういうことなんだと、当時一緒にレコードを聴いていた友人に、言葉も無しに伝えられた気がした。
そう、人は少なからずこの「カッコいい」によって人生の幾つかの選択肢を選んできているのだ。
言葉の重量は感じないが、電光石火、人に瞬間にして決意と行動を、もしかしたら転向を促すかもしれないものすごい力を生み出す「雄叫び」だったのだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ純文学らしい丁寧で繊細な表現、複数の主題が折り重なる流れの一方で、テンポ良いストーリー展開を兼ね備えていて、一気に読み切った。
抑制の効いた文章がかえってイメージを色鮮やかにさせる。
ラストシーンが強く印象に残った。
And now, at the end of the matinee, I will play one more melody, a very special melody, for you.
2026.02.25 再読
映画も非常に良いが、原作を読み直すと重要な部分の違いがあることに気づいた。
すれ違いの原因を洋子が知る場面で、映画では早苗が自分から話していたのだが、原作では洋子が話の流れから気づいた、という形になっている。
両者の間には、早苗の心情の変化や人物設定そのものに大きな違いがあり、原作では早苗をヒール役と捉える人もいるようだ。
私自身は、原作では成りすましメールを送信してしまった時やその後の早苗の心情変化を細かく描写し、こういう人もいるんだろうな、と感じた。ただ、映画ではここまで表現しきれないので、人物設定を少し変えたのでは、と勝手に考えた。
原作と比べて映画の方がどうしてもシンプルにせざるを得ないと思うが、比較してみると面白い。
また、世間では天才と呼ばれる蒔野の心情は、別ジャンルの天才である平野さんだから書ける表現だと思う。
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Posted by ブクログ
ネタバレこの「ドーン」という作品、結構な長編だし、場面の切り替わりに頭がついていけなくて最初は結構読み進めるのに苦労したのだけど、平野啓一郎さんが書く半分SF的な未来絵の結末がどうなるのかを知りたくて、少しずつ読み進めました。まず、面白いと思ったのは分人という考え方。本の中では、「日本語で〈分人〉って言ってるその dividual は、〈個人〉individualも、対人関係ごとに、あるいは、居場所ごとに、もっとこまかく『分けることができる』っていう発想なんだよ。(中略)相手とうまくやろうと思えば、どうしても変わってこざるを得ない。その現象を、個人 individual が、分人化 dividualize されるって言うんだ。で、そのそれぞれの僕が分人 dividual。個人は、だから、分人の集合なんだよ。──そういう考え方を分人主義 dividualism って呼んでる。」と説明されている。そして、「人間は、ディヴをそれなりにたくさん抱えて、色んな自分を生きることでバランスが取れてるんだと思う。その相手がいないと、行き場を失ったディヴは、過去の記憶や未来の想像の中にばかり溢れ返ってしまう。」さらに「誰も自分の中のすべてのディヴィジュアルに満足することなど出来ない。しかし、一つでも満更でもないディヴィジュアルがあれば、それを足場にして生きていくことが出来るはずだ。」という発言があるように、この作品全体はこの分人という考え方がとても大事なポジションを占めている。大切な人を失ってしまったディブは行き場を失ってしまうこと。全てがダメだと思った時も、満更でもない自分のディブがあれば、生きていくことができること。そして、「人間は、社会に有益だから生きていて良いんじゃない。生きているから、何か社会に有益なことをするんだ。」という言葉も心に響いた。大変不名誉なことがあって、絶望があって、でもまずは生きることが一番。そして生きている中で、満更でもないディブを見つけていければ、何か社会的に有益なことができるという風につながるのではないかなと思料する。
ドーンというのは2030年代に火星に有人宇宙船が火星探索に行くという話。日本人宇宙飛行士であり医師である明日人はこの計画に参加し、見事に帰還した英雄だけど、宇宙船の中で女性宇宙飛行士を妊娠させ、堕胎させるという事件の当事者になる。明日人が結婚していること、女性宇宙飛行士の父親は保守派の副大統領候補の政治家で堕胎には反対派。こうしたこともあって、宇宙船内の事故の発覚は英雄を一気にダーティーなイメージに貶めてしまう。そもそも明日人がなぜ宇宙飛行士になったのか。明日人には東京大地震で失った一人息子の太陽という子供がいた。太陽に向かっていたディブが行き場を失ったことが根底にあった訳だ。事件発覚後、ボロボロになった明日人は結局自分のディブを整理するきっかけをつかみ、最後は立ち直れたのかな・・・ディブを整理して妻今日子との関係を再構築できたところで物語は終わるという理解をした。 -
Posted by ブクログ
沢野家の長男、崇が中心となってはいますが、数多くいる登場人物のそれぞれの心の陰影が細かく描き分けられた群像劇風に仕立てられています。
難解というほどではないが、ほどよく読み応えのある文章で、読んでいて心地よかったです。
神戸連続児童殺傷事件や秋葉原通り魔事件を受けて、そのような犯罪を犯す人物の心理や、罪とは何かという問題にまで踏み込んでいます。
崇のセリフあたりはドストエフスキーを意識しているのかなと感じました。
この崇という人物がまた多面性があって一筋縄ではいかないのですね。主人公になるぐらいだからこういうタイプの人間は結構特殊なんでしょうか? -
Posted by ブクログ
ネタバレ豊富な表現と筆力に引き込まれ、上下巻一気に読んでしまいました。読後は徒労感と悲しみが心を蝕ばみます。重くのしかかる小説です。
名も無い他人の底知れない悪意に恐怖しました。カフェで読み終えましたが、読後周りにいる他人を無性に怖く感じました。冷淡な社会に対して、信頼感をもてずにいる自分と、自分も他人から見ればその冷淡な社会そのものであるという事実に震えます。良介の最後の叫びには涙が止まりませんでした。
「空白を満たしなさい」「マチネの終わりに」に続いて読んだ平野啓一郎さんの作品でしたが、分人主義の鱗片がこの作品からも読み取れました。自分が知っていると思っている人が本当はどんな人間なのか、それは誰にもその人自身にも分からない。その決して埋められない距離に悲しさと救いの両方がないまぜになった感情をおぼえます。 -
Posted by ブクログ
『一日二四時間の中で、人間が考えられることって、三つしかないと思うんです。ー過去のことか、現在のことか、未来のことか。』
『人はなるほど、たまたまそんなふうに誰かを見ることなど出来ないのだろう。彼の中の何かが、そんなふうに彼女を見させていた。』
『私は、人間のへそ曲がりなんだと思いますね。完璧だって言われると、完璧じゃないところが気になるじゃないですか。』
『人が一緒の時には、相変わらずの他人行儀だったが、二人きりになると、もう敬語は使わなかった。お互いに、声のトーンが少し低くなり、ゆっくり話すようになって、ささやかな笑いの吐息が、電話をしていると、よく耳に触れた。大げさな相槌も、捻り出したような話題も、自然と必要なくなっていった。』
『恋愛とは、よく言った言葉だと彼は思った。好きという感情に前後があるのならば、なるほど、前半は恋で、後半は愛なのだろう。恋が、刹那的に激しく昂ぶって、相手を求める感情だとするならば、愛は、受け容れられた相手との関係を、永く維持するための感情に違いない。』
『愛とは今、相手に配慮を通じて表現されるよりも、無我夢中に自己満足を通じて表現された方が、遥かに信用出来、真実らしいと感じられるのだった。』 -
Posted by ブクログ
ネタバレ結核に冒されたショパンに遂に死が訪れる.ショパンの矜持と高潔さ,一方の画壇の異端者ドラクロワの生きるための処世術と密かな望みが対比され,二人の友情を軸に,スターリング嬢を代表とする周りの人々の視野の狭さや俗さ,あるいはショパンの死に際しての悲しみ,サンド夫人親子の確執などの多層構造を,ポトツカ伯爵夫人やフランショームの言葉を借りれば「不協和音」として描いた大河小説である.
細やかな心理描写が見事で,特にドラクロワの思考の流れに共感する場面が多々あった.また,本書の主人公は一見ショパンであるが,真の主人公はドラクロワであろう.ショパン死去,それにともなう葬儀の混乱,財産の処分などの喧噪から一歩身を引くドラクロワ.彼が取り組むことになった教会の天井画について,その希望に満ちた内容を思い描く場面で本書は終わる.
行間から少し作者の「どうだ」という態度が透けて見えるのだが,古典を読むような重厚さがあり,非常に読み応えのある小説であった.
恐らく再読することになると思う. -
Posted by ブクログ
すごい。こういうのが読みたかった。
今の10代が30代、40代として活躍しているような近未来。
大震災後、有人火星探査、可塑整形、散影(divisual/監視カメラのオープンなネットワーク)、AR(死んだ人間のその後の人生をプログラムし、立体映像化する)、分人主義(dividualism)、生物兵器(蚊)、ウィキノベル(Wikinovel)。
これでもかというほどアイディアが詰め込まれている。
全般的に希望的な未来としては描かれていない。
書かれたのが2009年。東日本大震災以前というのがすごい。
そして、現実はこの小説が持つ雰囲気に近い状態で進んでいるように感じる。